Music Synopsis

音楽に思考の補助線を引く

プログレッシブ・ロック特集 (発展編)

f:id:sai96i:20220319171133p:plain

いつぞやに出したプログレッシブロック特集(初級編)の続きを書こうと思い続けはや数年。無理に背伸びしすぎた記事を21年に乱発したので、今年はもう少しまったりと好きな音楽でも語ろうと思った矢先、そういえばプログレの記事の続編だしてないことに気づき、タイミング的に丁度いいので、今回はプログレ特集第二弾です。応用編と書いてありますが、端的に書くとは枷を外した状態で好きな作品を紹介するということです。要約すると

"このプログレ盤が面白い"を紹介するという趣旨の記事です

前作を読んでいる体で進むので、プログレが何かをわかっていない人や代表作すら聴いたことがない人はプログレに於ける最低限の基礎教養を前作を読んで学んでから当記事を読んでください。

sai96i.hateblo.jp

では早速本編にいきましょう。

 

 

・mouse proof/G.F Fitz-Gerald

Mouseproof

Mouseproof

  • G.F. Fitz-Gerald
  • ヴォーカル
  • ¥1528

ギター、ピアノ、ボーカルetc..というthe 70年代的な諸要素で構築されている本作ですが、とにかくフォークありである一方、Queen的なミクスチャやピンクフロイドで散々聴いたカセットテープの切り替えで鳴らしていくアプローチだったりと色々な方向に手をだしているの曲が入り混じっていて(トラックが繋がっているタイプでもあるから余計に)相当込み入っている作品である。1.2.3の流れは特に美しい曲線のように流れている

April Affair

April Affair

  • G.F. Fitz-Gerald
  • ヴォーカル
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
New Lodger

New Lodger

  • G.F. Fitz-Gerald
  • ヴォーカル
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
Country Mouse

Country Mouse

  • G.F. Fitz-Gerald
  • ヴォーカル
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

当然4以降もなんだこれはというタイプ曲続きで何度聴いても美味しい。

a) Ashes Of An Empire / b) The End

a) Ashes Of An Empire / b) The End

  • G.F. Fitz-Gerald
  • ヴォーカル
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

a) Ashes of an empire/b the endなんて最初は民族的なメロディにワイルドな歌声かと思った矢先、女性ボーカルが乱入してきてそしてまたワイルドな声に戻りの繰り返し。音調も女性か男性かとで明確に区分している感覚がいい。半分ジャズのノリが入ったりしているのもいい。それでありつつアウトローはそれまでとは全く違う次元に突入するが如く轟音が鳴り響き終わっていくところとか、そして次のunder and over the waterfall

Under And Over The Waterfall

Under And Over The Waterfall

  • G.F. Fitz-Gerald
  • ヴォーカル
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

のサックス、フルート、オルガンの掛け合いに名ばかりベースが歪曲し始めて、そこからギターの実験的メロディの兼ね合いでカオスと言わんばかりの音数を放ってくる。冒頭のノリは一体どこへともっていると、また楽観的なサウンドに戻ってくるが、それも束の間。次のトラックでは精神世界にいったが如く、効果音の連続。ピアノが打点的であり、ギターのメロディも残響音で「なんだこれ」と思っているうちに本格的に音源が狂っていきます。本格的にドラッキーなことをするとこうなるんだということを実感できます。political machineは「machine」の台詞だけでこんなにも不気味さを出せるのかと言わんばかりの強弱の扱い方が秀逸だし

Political Machine

Political Machine

  • G.F. Fitz-Gerald
  • ヴォーカル
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

ラストトラックのopal pyramid drifting over timeでは8mかけてノーボーカルなプログレというデザートがまっています。

Opal Pyramid Drifting Over Time

Opal Pyramid Drifting Over Time

  • G.F. Fitz-Gerald
  • ヴォーカル
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

この感動だけは文章にするのはもったいないので、聴く人向けの楽しみとします。こんだけ色々やっておきながら10曲で33分というこの絶妙な構成。分数で言えばミニアルバムなのに、中身はフルアルバム的と言える。本当このアルバムを知っている人を実人生でもネットでも知っているひとが少ないので、この機会に知っておいた方がいいです。ニッチ産業を極めたその先にあるような作品のため、人は選びますが、そこに合点すれば必ずハマります。

 

・Muttered Promises from an Ageless Pond/Galadriel

Muttered Promises from an Ageless Pond

Muttered Promises from an Ageless Pond

  • Galadriel
  • ロック
  • ¥1681

さてこのアルバムがどれだけ狂っているかは、一トラックに20mを要している作品があると言うこと、というところからもお分かりいただけるだろう。「いやぁ、別におなじみピンク・フロイドAtom Heart MotherやELPの音楽群で十分耳は慣れてます」という言い草もできるが、そんなことを言える変態は滅多にいない。プログレとはいえ、20mというのはかなりの長尺である(自分が知る限りの1曲の最大時間は50m)。スペイン音楽がプログレを作るとこうも様変わりになるのかというのが自分がこのアルバムのファーストインプレッション。track1.2.3からももわかる通り雰囲気としてはイエスジェネシスを足して作った作品。

The Day Before the Harvest / I. Lagada

The Day Before the Harvest / I. Lagada

  • Galadriel
  • ロック
  • ¥204
  • provided courtesy of iTunes
The Day Before the Harvest / II. Virginal

The Day Before the Harvest / II. Virginal

  • Galadriel
  • ロック
  • ¥204
  • provided courtesy of iTunes

II.virginalはアコギメインで進行するのがある意味このバンドの個性と考えられる点。

Nunca da Nocheでもやっぱりアコギが中心なのでここは間違いがなさそう。

Nunca da Noche

Nunca da Noche

  • Galadriel
  • ロック
  • ¥204
  • provided courtesy of iTunes
The Day Before the Harvest / III. To Die in Avalon

The Day Before the Harvest / III. To Die in Avalon

  • Galadriel
  • ロック
  •  
  • provided courtesy of iTunes

しかし面白いのがこの音楽はスペイン産、つまりヨーロッパ音楽というのが本作の面白いところだ。そのせいかイギリス特有のプログレでもなければアメリカのプログレでもない。それ自体が自分にとっても面白い。ある種捉え所がないのだ。これがブリティッシュアメリカのアルバムであれば〜と比べてという相対的にどうかということが書けるのだが、イエスジェネシスの融合系としてのアルバムという点以外わかりやすい読み方というのがない。そんな中、本作で一番のメインディッシュにあたるのがThe Year of the Dream / II. Landhal's CrossとMuttered Promises from an Ageless Pond.

The Year of the Dream / II. Landhal's Cross

The Year of the Dream / II. Landhal's Cross

  • Galadriel
  • ロック
  •  
  • provided courtesy of iTunes
Summit

Summit

  • Galadriel
  • ロック
  •  
  • provided courtesy of iTunes

流石に勝負曲だけあって攻めてくる。特にsummitの後半におけるピアノのメロディはラフマニノフ的な情動型であり(わかりやすく例えると鷺巣詩郎的)を感じる。それでありながら、少しずつ実験的なラインに移っていく感覚が良い。2001年と音楽史的にみても古典になった作品であはありますが、知られていない。プログレでもこんなに不思議でなんだけど、イギリスプログレをタイトに詰め込んだ作品を自分は他に知らないので自身をもっておすすめの逸品として紹介できます。この作品に限ってはどういう感想をもつかを逆に聞きたいタイプの作品です。

 

・octopus/Gentle Giant

Octopus

Octopus

(´・ω・`)オクトパス、オクトパス、、うーん良いジャケット。しかしそれに反して収録されている楽曲の質は相当レベルが高い。まぁそもそも話ジェントル・ジャイアントというバンドはテクニシャンの集まりなので、このアルバムに限らず基本的には楽器で魅せる方向の楽曲群の作品ばかりですが。その意味では実験的な試みはプログレとしては抑えられている分、万人向けとも言える。プログレ特有の歪感はありますが。

knots

Knots

Knots

  • provided courtesy of iTunes

なんかはちょっと小山田が好きそうな始まり方だなぁと思っていて、そういえばと思い色々漁っていたらありましたよ。

じぶんがいない

じぶんがいない

  • provided courtesy of iTunes

何気に歌っているのが小林武史ファミリーのsalyuというこのアンビエントの幅の広さ。

(salyuを知らない人はterminalを聴いてください)

Terminal

Terminal

閑話休題

本作の中でもプログレらしい曲がこの2曲がa cry for everyoneとthe boys in the band 

A Cry for Everyone

A Cry for Everyone

The Boys In the Band

The Boys In the Band

  • provided courtesy of iTunes

A cry fore everyoneなんかメロディが単調なのに聴かせ方で如何様にでもなるということをまじまじと感じさせるトラックだと思うんです。the boys in the bandではジャズの風味が出ていながら、メロディの紡ぎ方がプログレという込み入った作品で、技巧派ならではの味わいと言うものがあります。そのほかにも弦楽器との融合ジャンルであるシンフォニックロックが入っています。その中でも特にdog`slifeなんかはクラシックメロディアプローチが誰が聴いても感じられる程度には当時からしてもジェントル・ジャイアントは古典主義なのかなぁと考えることもできます。

Dog's Life

Dog's Life

  • provided courtesy of iTunes

そしてこの曲を聴いてやっぱり既視感ならぬ既聴感を感じるのだ。

The Castle

The Castle

  • 植松 伸夫
  • テレビゲーム
  • ¥153
  • provided courtesy of iTunes

サンプルだけでは該当のメロディが流れないので個々で聴いてほしいのだが音のタッチやクラシカルな音楽な要素など共通するところが多い。まぁそもそも植松さん自身がプログレ博士みたいなところがありますし、ネタ元とかそういう次元以前に押さえている作品だなぁと今更ながら思いました。

そしてtrack.7のthink of me with kindness

Think of Me With Kindness

Think of Me With Kindness

  • provided courtesy of iTunes

プログレ作品に収録されているとは思えないほどメロディアスな楽曲も収録されています。イントロ部分の落ち着き具合といい、先述した万人向けと書いた理由にはこういった「バランス」として均衡があることが大きい。

 

・brave/marillion

Brave

Brave

  • マリリオン
  • ロック
  • ¥1935

マリリオンといえばこれ!!といって過言ではないほど圧倒存在感を誇るbraveです。マリリオンはイングランドバンドですが、広義的な意味でイギリスバンドとカテゴライズできるので、その意味で系譜的バンドと言えます。ネオプログレの中では群を抜いた存在と思いますが、そんなマリリオンのディスコグラフィー上最も大事なアルバム。そしてロック史的な意味でも大変重要な(少なくとも90年代の枠組みでは)作品でもある。

ピックアップ曲

・Living with the Big Lie 

Living with the Big Lie (1998 Remastered Version)

Living with the Big Lie (1998 Remastered Version)

  • マリリオン
  • ポップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

・Goodbye to All That: Wave/ Mad /The Opium Den /The Slide/Standing in the Swing 

・Alone Again in the Lap of Luxury / Now Wash Your Hands (Medley) 

・The Great Escape / The Last of You / Fallin' From the Moon (Medley)

聴いていただければわかると思うが音調は真っ暗。中でもgoodbye~は基本的にはPink FloydのThe Great Gig In The Sky 的暗鬱のメロディ

The Great Gig In the Sky

The Great Gig In the Sky

  • provided courtesy of iTunes

を色々なパターンで楽曲化している印象を受ける.全体のタッチは同じくpink flyodのアルバムmeddleに収録されているOne of these daysに近いが。

One of These Days

One of These Days

  • provided courtesy of iTunes

そしてシンセサイザーが90年代っぽいのも聴きどころ。Alone Again in the Lap of Luxury / Now Wash Your Hands (Medley) なんかは本作が94年出という点を含め91年のNirvananevermind以後の匂いを感じ取れたりもする。great escapeは本作ではgood byeの類似楽曲といっていいが、より過激というかプログレ的なのはgreat escapeの方。なにより起伏が激しい。ギターで盛り上げた後にピアノソロが入ってその後にメロディアスのギターソロで占めるといった巧さがある(ギターソロがまた素晴らしい、ギターリストで魅せてくる点はデヴィッドギルモアっぽいので余計にフロイドを彷彿する)。そして唯一の明るい楽曲であるmade again という曲、多分関係ないと思うけどちょくちょくメロディがamazarashiっぽいのでもし参照していたのなら激アツだなぁと思ったり。まぁないだろうな。

Made Again (1998 Remastered Version)

Made Again (1998 Remastered Version)

  • マリリオン
  • ポップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

コンセプトアルバムの性質も秀逸で記憶をなくした少女という実話を元にしていることから、音楽の重厚さがより深い領域になっているところも注目すべき点。やっぱりイギリス人が考えるロック=UKrockって暗いサウンドやメッセージ性(テーマ性)に余計に凝っていたりと音楽以上に語りかける何かがあるなぁと英国ロック固有の遺伝子を感じられたりもするお得なアルバムです。

 

・Dragonfly/Strawbs

Dragonfly

Dragonfly

  • ストローブス
  • ロック
  • ¥1630

ストローブスは元々がブルーグラスというジャンルで始まったということもあり技術ありきの楽曲が目立つ。そしてこのアルバムからプログレっぽくなったという点ではそこまでプログレ的ではない。むしろフォークの曲が多い。が、だからこそ。転換期の時期に発表している本作を推すというややこしい選出理由。その意味ではプログレとして推す曲はThe Vision of the Lady of the Lakeの1曲だけ。がこれがかなり面白い曲。

The Vision of the Lady of the Lake

The Vision of the Lady of the Lake

  • ストローブス
  • ロック
  •  
  • provided courtesy of iTunes

そこまで派手でもないし、変な実験性のあるサウンドも特出して目立たないのに、しわがれ声からシャウトになってからバッと変わる様がとにかく良い。ボーカルのギャップとそれに付随するサウンドの追加(エレキとドラム)の様変わりさがポイントです。

・Quatermass/Quatermass

Quatermass

Quatermass

  • Quatermass
  • ロック
  • ¥1375

マリリオン、ストローブスと比較的有名どころから引っ張ってきてからのquatermass。活動時期は少ないし、メンバーがどんどん変わっているところからわかる通り、アルバムは少ない。一応2枚でているが、完成度の高さ云々を考えたら実質この1枚だけ。メロディからわかる通り思いっきりコテコテのイギリスバンドです。共同事業者にパープルがいるというだけでも納得いくサウンド作り。このアルバムの一推しはやっぱり

・Laughin' Tackle

Laughin' Tackle

Laughin' Tackle

  • Quatermass
  • ロック
  •  
  • provided courtesy of iTunes

ボーカルなしのinstrumentalプログレ楽曲10mという、楽曲体験型。これだけならまぁよくあるという評価で終わりなのですが、この曲なんと中盤に長いパーカスソロが入ってくるのです。展開部→パーカスソロ→展開部→再現部みたいな中々類例をみない構成。厚いサウンドばかりでベースが目立つのもいいし、控えめ程度のキーボードもかなりツボ。それでいて途中にキングクリムゾンの21世紀の精神異常者のアウトローオマージュを入れてくるという完膚なきまでにプログレッシブロックをぶつけてくれます。絶対に押さえておきたい1曲でもあります。

 

Bluebell Wood/big sleep

Bluebell Wood

Bluebell Wood

  • big sleep
  • ロック
  • ¥1069

the 隠れた名盤。big sleep自体もこの1枚しか出していないことから知名度が低い。track1.Death of a Hopeから

Death of a Hope

Death of a Hope

  • big sleep
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

哀愁あるピアノメロディと弦楽器との掛け合いだけの曲が出てくるのだが帰結の仕方があまりに自然。バランス感覚が優れた楽曲を最初にぶつけてくるあたりこのアルバムのレベルの高さが窺えます。

free lifeという曲は

Free Life

Free Life

  • big sleep
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

比重がかなりベースによっているためイコライザなどで調整してベース音だけでも何回も楽しめます。この曲は途中ではいるwギターのソロに味がある。ハモンドの音は70年代ならではの年代物(本作は71年の作品)の聞き応えがある。そしてBluebell Woodは

Bluebell Wood

Bluebell Wood

  • big sleep
  • ロック
  •  
  • provided courtesy of iTunes

前半4m弱がローテンポなのに対して、残りは飛ばしてきます。まるでリニアカタパルトの如く。ロー<ミドル<ハイとテンポがどんどん早まっていく点こそ最大のポイント。そこにハモンド、ドラム、ギターが重なっていく様はまさにプログレでしか再現しようがないほどに美しい。今回のラインナップの中でも華麗なサウンドという意味では群を抜いています。

 

salisbury/Uriah Heep

土着的な感じん音が目立つユーライア・ヒープよりsalisbury。一々ギターのかっこよさが目立つという意味ではこれまで紹介したどのアルバムよりもぶっ飛んでいる。そしてどう聴いてもブリティッシュロックだろこれと言わんばかりの地域的と言いますか、地産地消的な風味も感じられる珍品。そもそもユーライア・ヒープは有名バンドだろという話ではあるのですが、led zeppelindeep purpleほど日本では知名度を勝ち得ていないので、おそらくマイナー部類になってしまうでしょう。先述したギターのかっこよさというのも恐らく、ジミーペイジやリッチブラックモアらと同等程度の厚みがあると考えていい。冒頭トラックのbird of preyのイントロ運びなんて

Bird of Prey (2016 - Remaster)

Bird of Prey (2016 - Remaster)

  • provided courtesy of iTunes

もろled zeppelinのcommunication breakdownであることは、ちょっとでもロックをかじっていればわかるレベル。当然zeppelinの方が69年ではやいです。当然踏襲しているはずですが、ユーライア・ヒープの楽曲としてちゃんと単なるなぞりで終わっていないという点が大事。ここまでくればお察しの通り、本アルバムはどっちかっていうとHigh Priestess,Time to Liveなどを聞けばわかる通り文脈としてはハードロックアルバムなのですが、途中トラックにあたるSalisburyがとかく良いわけですよ。

Salisbury (2016 - Remaster)

Salisbury (2016 - Remaster)

  • provided courtesy of iTunes

16mの大作であり傑作プログレに比べれば冒頭こそ、日本人が聴けば時代劇かみたいなサウンドからスタートするのですが、そこを我慢すれば後はひたすらかっこいいの嵐。具体的なタイムを書くと4m46sまで耐えぬけば(それまでの展開も悪くはないですが)後はひたすらメインディッシュの連続といっていいほどかっこいいサウンドの嵐。しかもシークエンスごとに自然流れで切りつつ、よりアップテンポになっていくというこの感覚は中々ないと。類似で例をだすならマイケルジアッチーノのインクレディブルのスーパー・クレジット

的な展開と躍動があるようにも聴こえます。

余談と雑話..この曲はあまりにかっこいいですよね。恐らく自分の中でピクサー映画の中で最も好きな作品がインクレディブルです。続編含め大好き。というかブラッドバードが超絶すごいクリエイターという話でもあるのですが、それは別の話。ちなみに本作のOSTを担当しているマイケルジアッチーノの今、世界では話題のthe batmanでかなり重厚なサウンドも担当しており、かなり洗練されたピアノテーマで名曲を書いているので

The Batman

The Batman

  • provided courtesy of iTunes

・sonata in darkness

(これもエンドロールに流れるという粋な演出。クレジットが流れていくシークエンスでこの曲はあまりにもずるいと思いませんかね。)

是非聴いてください。ついでにthe batmanも見てくれると嬉しい。中々手堅い作品ですし、バットマン映画としてはdetective comicとしての先祖返りをしていて、探偵バットマンという所にフォーカスがあたっているという、過去のバットマン映像化作品の中でも「本来のバットマン」をしっかりと描いているので自分は凄い楽しめました。多分来年のオスカーの作曲賞に絡んでくると思う。思えばめちゃくちゃダースベイダーの変化球或いは、本作のバットマンのイメージソースの一つになったカートコバーンがNirvarnaにて発表したsomething in the way

(原曲も流れるという意味で)ベースのメインテーマという点含め、やっぱりマイケルジアッチーノは最高の作曲家だと思います。いつか特集したいですね。実は過去に一度書いてはいるのですが浅い記事でしかないので。

sai96i.hateblo.jp

閑話休題

 

super nova/exodus

Supernova

Supernova

  • Exodus
  • ロック
  • ¥1528

さて、次に紹介するのはexodusというポーランドのバンドサウンド。81年のアルバムにしてはかなり電子サウンドが目立つなぁという印象。元々ポーランド音楽というのがどう素地で成り立っているかというのが恥ずかしながら押さえていないので、「〜の文脈」という意味での説明は難儀ではあるのですが、先ずはボーカルの声ですね。絶妙な按配な声だと思います。楽曲的なところではWielki wyścigがいいですね。

Wielki wyścig

Wielki wyścig

  • Exodus
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

ゲームサントラにハードロック文体のギターを入れたアレンジver.的な趣向が窺えるのと、2m8s~29sまでの魅せ方はお見事。メロディのアップダウンの段落の付け方が上手い。後半のギター(音作りも微妙な掠れ具合がブリティッシュアメリサウンドっぽくないという印象を受ける)とソロとその下地を支えるベースの掛け合いも良い。

Płynąca rzeka marzeń

Płynąca rzeka marzeń

Płynąca rzeka marzeń

  • Exodus
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

イントロとアウトローだけで何度でも聴ける。そんな楽曲。3m47s以降からアウトローはまさしくプログレ的ですね。それと同時にこれがラストトラックにあるというのがアルバム構成的にも優れていると思うのです。なんだかんだラストはギターソロで締めてくるし、その後のアウトローを考えれば、本作のサウンドの構成具合は抜群と考える。なんとなくアルバムのトラック的な読み解きにはなるのだが、1~8まである中で最初は掴みどころがない形からどんどん本作の音楽性が浮き彫りというか滲み出してくるという点含めプログレアルバム的と思ったのおすすめアルバムとして入れました。

 

ATTAHK/MAGMA

Attahk

Attahk

magamaといういえば同名のアルバムのmagmaが真っ先を想起するのが大半ですが、あちらがジャズの形をしつつも、音楽の方向がサイケデリック寄りなのに対して、こっちはよりスタイリッシュかつ、リズミカルなので聴きやすさという意味ではattahkの方がより優れています。ジャケを描いたのは世界で最も有名なエイリアン(ビックチャップ)

f:id:sai96i:20220402235918j:plain

amazonの写真より引用

をデザインし、そしてエイリアンという単語を変えるほどの革命を起こした天才画家HRギーガーです。絵のタッチでわかりそうなものですが。track1.のThe Last Seven Minutes (1970-1971, Phase II)

The Last Seven Minutes (1970-1971, Phase II) - Original

The Last Seven Minutes (1970-1971, Phase II) - Original

  • provided courtesy of iTunes

からしてもわかる通りメロディが質素でありながらbpmがやや早めでミニマム的な進行で展開されていくというなんともわかりやすいサウンドライティングになっています。1m53sからの唸るようなベースが目立つのはまさにプログレならではの高揚さを表しています。同じくベースが主役を張ってる楽曲はDondai (To An Eternal Love)とNono (1978, Phase II) の2曲

Dondai (To An Eternal Love) - Original

Dondai (To An Eternal Love) - Original

Nono (1978, Phase II) - Original

Nono (1978, Phase II) - Original

  • provided courtesy of iTunes

これらの曲は頭から結までメロディの繰り返しがゆえに、そもそも楽器が目立つ構成的といえるのですが、その中でもベースがずっと動いているので中々主張してくるなぁと思います。

そのほかにもドラマチックなピアノが主体のRinde (Eastern Song)

Rinde (Eastern Song) - Original

Rinde (Eastern Song) - Original

  • provided courtesy of iTunes

を始め、楽曲の完成度の高さとして象徴的なMaahnt (The Wizards Fight Vs The Devil)

Maahnt (The Wizards Fight Vs The Devil) - Original

Maahnt (The Wizards Fight Vs The Devil) - Original

  • provided courtesy of iTunes

など全ての収録曲に様々な味わいがあり、何度も聴いて楽しめるタイプのアルバムになっています。ちなみにこのアルバムジャケット既視感があるなぁと思ったら後発の作品ではあるのですけどcapsuleflash backっぽいなと思った。いやありがちな構図だし偶々なんだろうけど。

Flash Back

Flash Back

  • CAPSULE
  • エレクトロニック
  • ¥1377

ちなみにこちらのアルバムにはライアーゲームの屈指の劇伴作品(基本的にライアーゲームOSTは全部レベル高いのだが)flash backが収録されていますのでこちらも是非。

FLASH BACK

FLASH BACK

  • CAPSULE
  • エレクトロニック
  • ¥153
  • provided courtesy of iTunes

 

 

・終わりに

今回はあくまでも紹介記事なのでいつもよりかは力まずに軽いタッチで書きました。一枚一枚に意味というか繋がりを書こうと思えばやりようというのはいくらでもありますが敢えて抑えてみました。その方が作品紹介記事という観点上読みやすいですし、あくまでもアルバム紹介ですから。今回は発展ということでプログレ世界における名盤を紹介しましたが多分、このラインナップを作るのには中々体力が必要(勿論有名どころも出しましたが)でした。当然のことながら、この手のプログレおすすめ記事というのは山ほどあるわけで、それらの既存記事と似てしまっては意味がないため、自分流であり、ほかの人がそこまでピックアップしていない作品というのを選びました。執筆中は音楽サブスクのありがたみをひしひしと感じました。無難にelp(Emerson, Lake & Palmer)のTarkusとか、プログレといったこれは外せないという意味での名盤:magmaを紹介して、コバイア語という架空言語まで作ってる凄い設定厨みたいなバンドですといった趣旨や、atollのL'Araignee-Malをはじめ、ドイツバンドのFaustの1stアルバムのジャケットの異様なかっこよさについてなどについてや同じく独のアーティストneuschwansteinのbattlementの素晴らしさ等語るといった草案もあったが、これらを採用すると世界のあらゆる名盤を扱わないと自分の気がおさまりそうになかったため(現に後書きでかなりの文章量を使ってしまっている)、マイナー中心に時たま有名作を挟むという構成になりました。多分この記事を進んで読む人やいずれ何かの拍子でたどり着くような人たちはメジャーどころは全部押さえているでしょうから、そこで肩透かしを食いたくないという配慮もありました。多分、入門編を出した時の自分なら没の草案で書いていたと思う。その意味では1.5年の間に見方聴き方が変わったということですね。まぁそういった形でプログレって面白いし、作り手によって全然違う作品形態になるという、音楽の中でも異質なジャンル体系だから食わず嫌いせずに聴いてみてくださいということを最後に書いて終わりにします。ここまで読んでくださりありがとうございました。そして次回こそは本ブログの主流でありメインにあたる解説記事を出す予定です。アーティストは未定ですが、あらゆる画策して何パターンか下書き程度にはできているのでそう遠くはない中に出せると思うので気軽に待っていただければと思います。

ヴァイオリン・ストラディバリウスについて

今回は別格な品位と歴史を誇り、黄金に輝くストラディバリウスについての紹介・解説記事になります。当然ながら所持しているはずもないので、歴史と成り立ちなどといった背景が中心となっています。

音を説明するというのは難しい&烏滸がましい。楽曲のコードなど基準が明確化されているものならまだしも、音そのものの違いなんて説明できるはずがない。例えば調律をする時に440hzと442hzを比較した時にその違いを400文字で説明しろと言われて満足のいく文章が果たして書けるか?、或いは一度440hzで楽器の調律を合わせてみて欲しい。たった2hz違うだけでも音の聞こえ方は変わる。まずそこが聴き分けできるかどうかという点が一つ、そしてもう一つ、今では大半が442hzで調律するのが当たり前になっているが、440hzで調律をしていた演者が442hzに合わせるように対応するのにはプロの奏者でもかなり苦労するという話もある。つまり音の調節でさえプロでも立ち行かないのに、音の解説なんてもってのほかである。ましてやストラディバリウスの音そのものについての聴き方を紹介しますというのは原理的に不可能である。

仮に所持していたとしてもそんなことをする人はいない。正月特番の格付け番組といったあくまでもバラエティ番組という枠組みでしか成立しえない。なぜそう言えるのか。理由は簡単で学術、技能的にトップであり狂った連中しかいない藝大の凄腕でも判断を見誤る&パガニーニのような天下無類のヴァイオリニストでさえも自分の愛機の贋作(シヴォリ)を作らせた結果と本物との見分けつかない事態を招いた。またそれ以上に弾き手の実力や音が鳴っている環境など、総合的なバランスを考えたら100万のヴァイオリンとストラディバリウスとの聴きわけなど、そうそうできるわけない。ましてや普段ヴァイオリンの音に触れていない人たちなら尚更。こういった部分を抑えているとあれがやらせだろうがなかろうが、そういうところを抜きに格付けチェックのA or Bでやってるいることは茶番にしか過ぎない。

まぁテレビだからできるバラエティ番組なのでこういう真面目なツッコミを本来するべきではないのですが、「敢えて」書かせてもらいました。

ストラディバリウスの大まかな概要

ストラディバリウス(ストラド)とは、リュータイオであるアントニオ・ストラディバリとその子供たちによって作られたヴァイオリンをはじめとする弦楽器であり、三大名器の一つである。(残り二つはアマティとヴァルネリ)。音楽の好事家であればその名を知らない人はいないだろう。それほどまでに絶妙な設計、隅から隅まで徹底された胴体(ボディ)〜テールピース、パーフリングなどで奏でられるその音はまさに国宝級。弦楽器最高峰の技量をもって作られた楽器であるため、現在個人で所有している人はかなりの少数派であり、大半が団体からの貸し出しになっているほど「希少」である。そんな名器を現在でも「ストラディバリウスをもう一度」という意気込みでさまざまな製作が試みられています。

f:id:sai96i:20220122162129j:plain

アントニオ・ストラディバリ肖像画

いきなりストラディバリウスについてのことを書いても概要だけの知識では意味をなさず前後の脈絡を理解していないと楽しめないので、段階を踏まえてた上でストラディバリウスについて紹介いたします。

ではまず最初に名前の区別から。一般的に言われるStradivariusとは当時の慣例にそった時に古代ローマ帝国の共通語であるラテン語表記する必要があり(クレモナという地域は紀元前218年にローマ人によってつくられたことからはじまっているため、古代ローマの共通語のラテン語を当時としては用いることがあった)StradivariをStradivariusとラベルに書いたことから楽器を指す場合「ストラディバリウス」、製作者を指す時を「ストラディバリ」ということになります。

f:id:sai96i:20220122225209p:plain

実際のラベル

あまりにも前者の名前が定着したせいか、はたまたかっこいいせいか、今では「ストラディバリウスが作ったストラディバリウス」という認識をされているように見受けられます。根本的には間違ってはいないが相手によっては面倒な弦楽器警察の場合もあるのでここで使い道を覚えておきましょう。

 

ではまずヴァイオリンのがどうしてできたかという点と、如何に突発的な楽器であったかを簡素に紐解いていきます。1500年代の半(最古のものが1564年といわれています)ば北イタリア地方のクレモナで産まれた楽器です。ではここでそれらの大家というべききか、元祖リュータイオとしての役割を果たした人物が

  • アンドレア・アマティ(1505-1578)
  • ガスパロ・ディ・ベルトロッティ(1540-1609)

この二人がいます。1564年のものが最古だとするアマティが51歳、ベルトロッティが24歳となります。どちらが先かというのはこの場合あまり意味はなく、年季の意味合い、経験値などを考慮してもより優れた、より完成度の高いヴァイオリンを製作することができたのはアマティであるというのは間違い無いでしょう。この二人の関係性に関してはあらゆる説が出ていますがそれらの 真偽はわからないため、この二人で一代目とされています。

では次にアマティがヴァイオリンに施した革命をいくつか挙げます。 

・ギターに代表されるフレットを削ぎ落としたこと

・音響箱にアーチングをいれた

・f字型のサウンドホール

まず最初のフレットを削ぎ落としたという点について

フレットの有無と書いてもいまいち想起が難しい人もいると思うので写真を貼ります。

f:id:sai96i:20220122200725p:plain

実際のヴァイオリンと中の人の手

 

f:id:sai96i:20220122201533p:plain

ギターの場合

 

この画像とギターを比較するとわかるようにギターの場合銀色の針金状の横線が入っており、フレットを抑えることで*1音程を取るというのはわかると思います。ヴァイオリンにはそれが*2ありません。基本の形としてフレットを取り除くことによって楽器が奏でられる表現というものが格段に広がったということです。だからこそその後のパガニーニのような悪魔的な技術というのが*3成立するのです。

※因みにパガニーニが愛用したのはグァルネリのカノーネという名器

次に音響箱にアーチングを入れたという点についてですが、流石に楽器を分解することはできないのでこちらの画像をみていただきたい。

f:id:sai96i:20220122203037p:plain

https://il-violino.com/の記事より3枚目を引用

il-violino.com

これはみた通りで隆起している部位があると思いますが、所謂ここがアーチングを指すヴァイオリン特有の響きにこの中核部位にアーチングの影響もあると考えると非常に画期的なことだと感じます。そしてなんといっても擦弦楽器におけるサウンドホールの形状でf字型にしたことが一番の発明と考えていいでしょう。振動音の出口の形として究極系であり、ヴァイオリンの音をたらしめている最重要の因子かもしれません。実際にそれ以前までの擦弦楽器(ex.ヴィオールという楽器など)との比較をすると以下の画像の通り

f:id:sai96i:20220123001928p:plain

以上のことから如何にヴァイオリンが特異的な産物であるか、そしてアンドレア・アマティが偉大であるかが理解できると思います。なによりヴァイオリンが台頭して以降その後の音楽シーンが劇的に変わったことはその後の歴史が証明している。

思えばバッハをはじめ、その後のロマン派の偉大な作曲家などは例外なくヴァイオリンなしには語れない楽曲群を作曲している。知名度的にわかりやすい例をあげるのであればヴィヴァルディの四季のシリーズ(春と冬が好きという典型的な人間)などがまさにそうです。

何気なく聴いているクラシック楽曲の「らしさ」の大半の魅力というのは実はヴァイオリンが買っているといっても過言では無いほどに存分な魅力を詰めた楽曲群であるということはお分かりでしょう。読者の中でも弦楽器の中でも一番の主役はヴァイオリンであると感じている人は多いのではないか。まぁそれはともかくこのアンドレア・アマティの直系の孫にあたるニコロ・アマティこそが三大名器の中核を担う人物になります。なぜならニコロ・アマティとその弟子たちの派生してきた人たちこそがアンドレア・グァルネリ(孫がグァルネリ・デル・ジェス)であり、アントニオ・ストラディバリだからです。ちなみにグァルネリと聴いてシンフォニックメタル/ネオクラシカルメタルのgalneryusを想起した人もいるでしょう。その通りでgaleneryusはヴァルネリに由来しています。フロントマンのsyuがヴァイオリンを弾けることに起因しています。

初めて聴く人向けにはangel of salvationとかがいいですね。技術、楽曲などどれをとっても技巧がとんでもないので知らない人はここで知っておいた方がですよ。

ANGEL OF SALVATION

ANGEL OF SALVATION

  • provided courtesy of iTunes

おすすめアルバム単位ではULTIMATE SACRIFICEを薦めます。正直英語と日本語が混ざっている歌詞が主流なので、ボーカルの英語発音が気になるところではありますが、やはり全てJapanese Englishにしか聴こえないため、そこで好きか嫌いかが別れるますが(かくいう自分もvo.のJapanese Englishぶりにはダサさを感じます。それをも許容してしまう楽曲が本当に素晴らしい。総合的な歌唱の意味では流石の小野正利なんですけどね) 

Ultimate Sacrifice

Ultimate Sacrifice

閑話休題

では次におまたせストラディバリストラディバリウスについて

アントニオ・ストラディバリは16歳〜92歳という間、楽器製作者として活動、生涯で俯瞰した時に作った楽器の数は約3000挺以上。現存するのは1/5の600挺。ヴァイオリンのみならずギターやマンドリンといった楽器も作りました。実際の内訳は明確ではありませんが、3000の内、大半がヴァイオリンで占めており、その数は1000を超える。先述の通りストラディバリの他にも優秀なリュータイオの弟子がいたと考えるのが自然ですが、かならずストラディバリ*4チェックは入ったと思うとやはり異常値です。そんな膨大すぎるストラディバリウスの中でも黄金期に作られた優れた名器が*5 3本あります。これらの名称は基礎知識として覚えておいたほうがいいポイントでしょう。

他にもメディチタスカンやクステンダイク、ダ・ヴィンチなど色々なタイプのストラディバリウスの種類があるのですが一つずつ名前を挙げるとキリがないので知りたい人は個人で調べてください。

・なぜあそこまで高級なのか?

家を数軒売ったとしてもストラディバリは買えないとまで言われるその高さの所以は一体何か。色々な研究がされているからこそ、あれこれ言われているのでそれらに倣って挙げるとまず奏でることによって鳴る音そのものがある。現在造られる楽器よりも「何か」が優れている。それを形容するのは難しいが今を持って再現性がない(なぜないか、という点についても大いに研究されていますが、本項目においてそれらの深掘りする必要性がないのでしません)という点や数百年前、つまりは劇場(オケ)での公演がない、室内音楽が主流だった時代に作られたのにもか関わらず、その後の音楽形態に適応できるポテンシャルを持っていたこと(要約すれば、300年前のものが今でも*6使えるということ)がある。これは他の媒体価値にも言えることでもある。例えば本。本という紙で編集されたそのものには価値はなく、人に読まれて語られていくことで初めて価値が発生するように、或いは映画は観客のそれぞれが受容することによって初めて作品として成立するように、楽器もまた存在しているだけではあまり価値はなく、それが時代を超えてあらゆる*7名プレイヤーによって奏でられ続けている(現代にわかりやすく言えばエイジングとでもいうべきか)。それが自体が奇跡であり、ここにかかる歴史自体はお金では買えないものであることは言うまでもない。尚、製法における木材が〜、ニスが〜といった話は当然把握しているが、あまりにも地味な話になるので割愛します。というよりそこであれこれ言ったところで結局、なぜ高いかは結局「300年前に作られたものに歴史が重なった上に今も現役」ということに集約されることに他ならないから。そして今でも再現が難しいということ自体が、製法を語ることの無意味さでもある。

だからそれをお金で買おうとすれば億単位の値打ちがついて当たり前なのだ。ストラディバリウスと調べるとサジェストで「なぜ高い?」という検索ワードがでるが(ちょっと考えれば分かるだと思ったりますが)その「なぜ」というのは先述の通り(専門家に言わせればもっと具体席のある論拠などがあるだろうが)日本がStradivariusを出品した時、落札値にして12億というのも頷けますね。

 

最後に、日本でストラディバリウスをどこが所持しているのかが気になったので調べてみたところ以下のような団体・人物の名前がありました。

・誰が(どこの団体が)所持しているのか?(敬称略)

有名どころだけ抜粋してみましたけどざっとこんな感じ。持ってるだろうな〜という団体はともかく、前澤さんもコレクターしているのが意外でした。その他にも子供のゲーム機をバキバキで折ったことでも有名な高嶋ちさ子さんなどが所有しているとのことでした。

日本音楽財団が所有している楽器群はHPに詳細があったので書き出してみました

www.nmf.or.jp

・ヴァイオリン

ドラゴネッティ/ロード・ニューランズ/ハギンス/エングルマン/カンポセリーチェ

ドルフィン/ヨアヒム/ブース/サセルノ/ジュピター/ウィルヘルミ/サマズィユ/ムンツ

・チェロ

ロード・アイレスフォード/フォイアマン

グァルネリのヴァイオリンも

デル・ジェス ムンツ/デル・ジェス イザイ

の二機と、案外多く所有しているなという印象です。

 

以上ストラディバリウスについての紹介記事でした。いつもよりは薄味の記事になりましたが意識的です。書き用はもっとあるのですが(クレモナについて、ストラディバリウスの木材云々など)、本当に読みたい部位だけをピックアップしたというのがまず一つ。二つ目に、ここ最近1万字以上の記事が続いたのでそれらよりは各類テキストで収めてみました。(というより、1万字以内で書くことを意識した)年明けの肩鳴らし的な記事とでも思ってください。本命というか、ちゃんとした記事は次にお預けということでお願いします。では次の記事で

 

参考文献

・中澤宗幸 (2018). 修復家だけが知るストラディバリウスの真価. 毎日新聞出版

*1:gとfとかああいった類のものです

*2:初心者向けに音の位置がわかるようにした指板を入れたものもありますが

*3:成立すると書きましたが、二コロ・パガニーニは別格すぎるというか次元を超越した技術の持ち主なのでそういう人がもったからこそ「悪魔的」技巧ができる楽器になったということをお忘れなく

*4:ジブリで例えるのであれば一流アニメーターが描いた絵に最終的な宮崎駿御大のチェックという名の描き直しが入ることによって凄まじい動的の力を持った画が生み出されるあの感じ。

*5:頭文字をとってDAMと言われてたりもします。

*6:経年劣化防止による改造は施されてはいるが

*7:パガニーニクライスラーオイストラフ等をはじめ、宮廷のヴァイオリニスト

駄話

22年度、初めての記事が駄話ってどんだけ手を抜いているのだという話ではあるのですが、記事は引き続き執筆しているのでお待ちください。

さて、はてなでブログを開設してから4年と数ヶ月が経ったわけですが、ようやく総アクセス数が10万という大台を達成しました。

f:id:sai96i:20220122140015p:plain前身をlivedoorで書いていたことを考えるとこのブログを自分が始めて(当初はrinoブログという安直なブログ名)から5年。最も、誰も知らないであろうameblo批評時代を含めると6年以上ブログを何かしらの形で書いているわけですが(いかに自分が暇人だったかがわかりますね)、今のスタイルに定着するまでに色々時間がかかったものです。マクロの視野でみれば別に大した数字ではないのですが、それでも自分の中でどうしても突破したい数字でしたので当初のスタイルをすこしだけ拡張し、ブログ記事における質を練り、具体性・信憑性・正確性など始め一回読了しただけでは分からない程の情報量を詰め込むことで、面白く何度でも読まれる記事をここ2年の間に出した結果、は数多くは出していないものの、代わり一つ一つの記事が瞬く間に伸びて6~8割の記事がGoogle検索の上位に来るというこの抜群さも合間って、以前とは比較にならないほどアクセス数が上昇し、10万という数字に到達したわけです。

 

今でこそ、濃い解説記事の更新に安定したサイトになったものの、古参読者であれば当初からそういった因子はあったものの、今のスタイルではないことはご存知のはず。

sai96i.hateblo.jp

*1

sai96i.hateblo.jp

*2

思い返せば、今の方向性を示唆する記事はlivedoor時代の当初から出していたが、その真価に気付くことなく、余計な文章ばかり出していたような気がします。それらの価値に気づいたのは19年のこれらの記事がきっかけがこちらの記事

sai96i.hateblo.jp

数年ぶりの新曲が出るということでsupercellを初めて聴く人向けにも、懇切丁寧な記事を書いた時に自分のスタイルは、聴いた音楽系のいわゆる音楽ブログの量産型の記事ではなく、アーティストについて深く広く掘った記事の方が向いていると思い始めて、そこからあらゆる可能性の考えを巡らせて、その方向性にシフトしていったわけです。そんなこんなで20年度初頭に「聴いた音楽」シリーズを廃止。

sai96i.hateblo.jp

(アーカイブ残していましたが、読まれないないので全て削除しました)

そして徐々に今のスタイルになっていったというわけです。そのため20年以前と以降とで明らかに当ブログ記事の性質が変わったことがわかると思います。

(過去記事を遡れば一目瞭然です)

そして、以降の時代になり、今の方向性を決定的にした記事がこちら

sai96i.hateblo.jp

これを公開したあたりから読み手の層が広がったのが明らかに分かるほどにアクセスも以前より伸び、反響もそれなりに感じられるようになった。当時あまりに嬉しく、もっともっと面白記事を!!という心境で一気に書き上げた大作記事がlofiの歴史を簡易的に書いたこちら。

sai96i.hateblo.jp

これlofi関係の単語でで調べるとかなり上位に組み込むようになったのでその分読まれているわけで、甲斐があったものです。そして年末に某カレンダーの記事で書いたEGOIST特集記事

sai96i.hateblo.jp

当ブログのスタイルが定着した状態で出す推しアーティストへの記事というのはそれもう書きやすい状態でなおかつ深く広く、存分に偏愛を語り尽くしたら見事EGOISTの一般ブログでは最上位に位置する記事になりryo(supercell)信者としては至れり尽くせりなものをお届けできた上に、最も読まれる記事なれたという2つの嬉しさがありました。

2021年の一発目に出したまふまふ記事

sai96i.hateblo.jp

は最近になって(多分紅白の影響)アクセスがあがり貢献していますがまだまだスタンダードにはなっていないので少し残念ではある。それに主なリスナー層のことを考えるとこの手の記事はあまり需要がないようにも思えます。がしかしまふまふ作家論の記事の中でこれ以上に作家性を論じた文章はそんなにはないと思うのでこれからも読まれる対象になると信じています。

 

そして去年の2月に久石譲の音楽についての解説記事を公開したわけですが

sai96i.hateblo.jp

これが思いもよらぬ速度で大ヒット。まだ1年も経過していないのにミニマルと久石譲を絡めた解説記事としてグーグル検索の1ページ目に来るというこの異例さ。さすがに驚きました。圧倒的なビックネーム、実績をほこりでありだれもが、その魅力を知りたいのに深く広く解説している記事がなかったことと、その点をこの記事は全てクリアしているという意味で一撃を加えた感覚はあります。がしかし、まさかここまで伸びるとは自分でも想定していなかった。

 

その次に出したのは80年代に活躍したハードロックバンドVOWWOWとそのボーカル人見元基についての記事です。

sai96i.hateblo.jp

この記事は出す前から「そこまで読まれないだろう、だって読者の大半が知らないし(生きている年代的な意味で)どうせ興味も示さない。がしかし、おっさんほいほいになる」と読めたのでそこまでのアクセスは期待はしていませんでした。なにより自分も当時はこの世に生まれていないわけで。ただ自分の中で主に人見元基のvocalistとしての異質さを消化したい欲求やVOWWOWというバンドが和製バンドとしてどれだけ凄かったかを指し示したかったので書き上げたところ案の定Twitter上では反響は皆無に等しかったのですが、ところがどっこい日を経つにつれて常連記事になるというこのラッキーボーナス感。

そしてこれををはさんだ後に満を辞してamazarashiの記事を出すわけですが

sai96i.hateblo.jp

(以前から執筆していたとはいえ)この記事に於ける圧倒的なボリュームの濃さ。書くのが難しい記事はたくさんありましたが、この記事ほどタイプが進まなかったものはないですね。歌詞性が強い分いつもの楽曲のルーツ云々という手が封じられた気持ちでした。と同時に日頃の読書の大切さを学んだ記事でもあります。それは宮沢賢治寺山修司中原中也等の作品群を基礎教養として読んでいたという点よりもamazarashi関連の記事や文章を読んでいるだけでは書けなかった文章があるからです。具体的な場所はあえて明言しませんが自分が普段から積んでいる読書量と言いますか、読んだ書籍が周り巡ってブログに活かすことができた。そんな思い出深い記事です。とにかく書いていて辛かった記事no.1という印象だけが残っています。

この段階で21年度における記事はこの段階で字数にして累計約5万字という異常さからもわかる通り、次の記事をかける気力体力時間等が全然取れない中「どうせそんなには読まれないけど書いておきたい作家について」という考えのもと書いた記事が伊福部昭についての記事になります。

sai96i.hateblo.jp

ゴジラの人で片付けられることが個人的に嫌で(作品の偉大さから仕方ないところもあるのですが)もっと知られていい作品群があるし作曲家伊福部昭は大半の人が思っているよりも偉大な人であるということをいいたかったのが一つ。次にクラシック史から考える伊福部昭のバックボーンを覗いて見たい人向けにここは一発書いておこうという2つの要素をメインに書いています。脱線が最も激しいのも多分この記事かなぁと思ったり。

(故に脱線が好きな人には非常に知見に飛んだ記事になっています)

案の定そこまで読まれませんでしたけれど、個人的に総括できたことが嬉しかった。ブログを出すことって当然発信の意味もあるのですが、同時に自分の頭にある知識、情報を文章にして整理する媒体にもなるものだなぁと学習しました。

 

以降、全くブログに時間を費やすことなく日常を送っていたのですがどこかで音楽記事を更新をしなくては、、なんて思っているうちに11月に入り、楽曲カレンダーの募集ツイートがあったので、軽い気持ちで最終日登録。同時に時間制限をかけた上で一から菅野よう子を振り返る記事を出そうという心意気に至ったわけですが、当然一人で納得がいくクオリティを20数日足らず出かけるはずもないのでtwitter菅野よう子の楽曲有識者を招いて共作という形をとり、妥協に妥協を重ねてできた記事がこちら

sai96i.hateblo.jp

総字数が5万字以上というこの「ブログ記事」としての一般性を失っている記事に。書き上げた時はまず最初に読まれるかどうかが心配でしたが、流石菅野よう子パワーというべきか。届く人にはしっかりと届き(届かない人には一生縁のない記事)、当ブログに相応しい記事を一つ積み重ねることができました。余計な文章を付け加えると21年度の楽曲カレンダーの中で発表されたどの記事群よりもずば抜けた完成度だと自負しております。

楽曲オタク Advent Calendar 2021 - Adventar

(よろしければ回っていってください。面白い記事がたくさんあります)

そんなこんなで10万突破にいたるわけですが、記事以外にもアクセスを稼ぐための手練手管はやっていて、記事の充実度意外にも自分が開設したまふまふ速報

mafusoku.com

の記事に当サイトのリンクを忍ばせたり(正当性がある文脈で挿入)数十人にDMで拡散の協力を仰いだりと馬鹿みたいに必死になってその繰り返しでようやく10万という境地に辿り着けたわけです。がしかし、そこの拡散も更新時の初動の時しか行わなかったし、自分は馬鹿の一つ覚えみたいに朝昼晩「更新しました!!」といった宣伝もしない。まぁここにはTwitterで宣伝しないがその分検索エンジンでのアクセスを増やすという意図的な戦略もあるのですが。

f:id:sai96i:20220122150508p:plain

現段階で当サイトに訪れる人の約8割がGoogle、1.1割がその他の検索サイトという結果なので筋書きどおりの勝ち筋を達成

更新頻度は極遅でちゃんとした記事数は1年で10もいかないのに数万のアクセスを得たというのは、やはりそれなり当ブログの記事は面白く、何度でも読まれているというわけです。

(ブログになにをこんなに必死になっているのだと自分でも偶に思ったりしますが)

これらの過程で書いた文章は10年後もちゃんと残るものになるし(これから出す記事もそうですが)何よりも読み手が読了時に得られる知見、楽曲の奥深さなどの度合いでいえば当ブログほど充実したサイトもそこまで多くないと勝手におもったり思わなかったり。(自分が知る限りの一般音楽ブログにはない)

 

まぁそういうわけで、今後もmusic synopsisというブログは何度も読まれることを重点的に置いたブログということを意識して今後も記事を提供していこうと思っています。一ブロガーとしては、そろそろはてな公式の紹介枠に載りたいし(というか載って然るべき記事は多少なりともあるはずなのですが音楽知見のセンスのかけらもない人たちのせいで紹介されない)、Google砲(Chromeがおすすめする記事)を味わってみたいものです。歴は少し長いものの方向性が決まってからという意味ではまだ19~なのでその意味ではまだ3年目と考えればまだまだなわけで。更新頻度は遅くなるとは思いますが、気長に待っていただければと思います。心意気では今年こそ濃度の高い記事をたくさん出すという気持ちでいるのですが、中々時間がとれないので多分難しいとは思いますが極力努力します。前回のラインナップのうちどれか1つは出したい。

sai96i.hateblo.jp

これに加えて麻枝准の音楽作品についても語りたい欲が出てきたのでこれもいつか出します。なによりアニソンを考えた時に麻枝准のメロディについては外せないので。どれになるかは自分次第ですが、恐らく読者層が読みたいのは1,2,3,5あたりだろうな〜と思ってます。というか自分で書いておいてなんですが、1,2,3は言い換えれば全部一直線に繋げられる系譜をバラしているだけなので最悪一つの記事にするかもですが、多分分けて出すと思います。これを複雑化したら間違いなく10万字を越すから。ともかくどれか一つはGWまでには出したいですね。

以上、10万アクセス記念の自分語りコーナーという名の駄話でした。いつもよりも自由気ままに書いたのでちょっと感じの悪い記事になったかもしれませんがまぁそういう回もあるということで。では次の記事で会いましょう。

*1:この時期にこれを出していた自分を褒めたいくらい。なんなら小林武史おすすめ楽曲を今調べるとこれが一番最初に出てくるから。本当に嬉しいし今後もtop5常連になる。

*2:当時から聴けば誰でもわかるくらい当たり前だと思っていた神僕のメンバー正体記事がここまで伸びるとは全く思いませんでした。今になってやっと浸透してきた形はありますがそれでもなお、この記事が読まれ続けているのは非常に光栄なことです。

今年出した記事を振り返る。

ちょうど一年前に20年度の振り返りをしたので今年も出した記事をダイジェスト的な形でやってみようと思います。出した記事数は11本(この記事で12本目)で昨年より更新頻度は遅めでしたけど今年はそれ以上に大作記事を量産でき、しかもそのうち2つは1年を待たずしてGoogle検索の1ページ目のトップに来るという読まれよう。量産型の記事を書くようなブログ(の流れはそういう人に任せて)をやめて本当によかったと痛感しています。

まふまふ音楽のルーツ・魅力を解説

sai96i.hateblo.jp

年始早々の記事がまふまふ。わかりやすいアーティストなので執筆時間は2時間くらいで終わった記憶。まふまふは有名な割にニコ動に居座りすぎて作家的にな評価記事があまりないのでじゃあ書いてしまえというノリで出したのですが、需要はそんなにはなかったですね。先述の通りボカロを聴いてれば掴める流れにいる人なので。そこまでこった楽曲つくらないし。最近の話題に絡めるとなんとまぁ、めでたいのか紅白もきまりましたし。ただ他人のカバーで出場ってそりゃないよっていう気持ち。オリジナルで大量で良い曲があるだろうにと思う反面、それらの数字では紅白は出れないということの表れなのか。ともかくああ言った曲をお茶の間にお届けするのってどうなのとは思います。年末年始の時期とにかく家でダラダラしたい人たちがパッとつけたらネットアングラ曲が流れてたらどう考えてもお茶の間凍ると思うのですが、どう思います?

久石譲の音楽の魅力 ミニマル・クラシック音楽の視点で解説

sai96i.hateblo.jp

多分、当ブログ史上最も質、量ともに最高峰であると同時に久石譲をミニマル視点での解説や魅力などの部分ではGoogle検索で最上位なので客観的に見てもしっかりと評価をいただいている記事になります。ミニマル四天王についての記述がなかなか進まなかった記憶があります。執筆動機はあらゆる世代に知られている音楽家にも関わらずその音楽性を深く語っている人が一般ブログにはなかったことです。確かに総括して書くのは難しい。実際この記事もおおよそこんな感じという領域でしかないと思う。

(それでもかなり深く掘ってるはずだが)

ただ、誰でもがわかるラインというのがあるのもまた事実でそういったところを重点的に攻めいていった結果、思いもよらぬバランスが取れた。そんな記事です。

チラシの裏

sai96i.hateblo.jp

うっせぇわが流行ったからボカロがすごいというなぞ風潮に一言書いただけ。まさにチラ裏レベル。

高木正勝のピアノ音楽

sai96i.hateblo.jp

知識不足で満足いく形にはできなかったが、言いたい思いこそ書けた。いつか本格的に描きたいとは思っています。

VOWWOW音楽と人見元基の唯一無二性

sai96i.hateblo.jp

個人的な人見さん&vowwow論は一通り吐き出せたのでその意味で消化記事ではありますが、完全に当時の世代の人たち向け。絶対フォロワーは読まないし、挙げたアーティストの半分も聞いてないと思うし、そもそもVOWWOWにハマれない人の方が多いと思う。そんな中でも自分は人見元基の凄さを伝えたいという、非常に個人的な動機が強い。が、意外なことにこのブログはランキングTOP5の常連になっています。絶対これを読んでいる大半の読者は若者ではない。自分より2倍生きている人たちばかりだと思う。が、そのような方々に届いたと思うとなんだか嬉しい。

amazarashiと秋田ひろむ 歌詞性と楽曲を再考・解説

sai96i.hateblo.jp

執筆期間約1年。構成、企画を含めれば足掛け2年。とにかく歌詞性が高いから、音楽性がどうのっていうラインで進めることをあえて封じたので進まない。が、色々な考察ブログを見た結果。道筋ならぬ書き筋を見出せたのでそこからは早かったと思います。特に太宰治のラインをかけたことが大きいです。amazarashiの歌詞における流動性と太宰との共通性を指摘したのは多分当ブログが初めてなのではないか?。少なくともメインで上がっているブログにはない。そしてこの記事はamazarashiの考察系のワードでは2ページ前後にまであがっているので、これからはこの記事がスタンダードになっていくと信じたいです。ファンの人は読んで絶対損しないと断言できます。かけた時間の分の質はちゃんと入っています。

レイハラカミによる不思議な音楽

sai96i.hateblo.jp

書きたくなった衝動的な記事。知る人ぞしるアーティストだったので知って欲しいという意欲も当然あったが、レイ・ハラカミを知らないで長谷川白紙を聴いてるなんていう不届き者はそんなにはいないと思うから、まぁ通じるだろと思ったが全然通じない始末。ちょっとショックでした。たしかにこの記事自体大したことはないけど。それでももうちょいフォロワーの方たちには反応(レイ・ハラカミをとりあげることについて)あると思っていたため個人的に残念でした。

伊福部昭の特撮音楽に隠された作家性と純音楽

sai96i.hateblo.jp

これは個人的な伊福部昭のマイブームでその結実というか、特撮音楽の流れからクラシックの流れにつなげて書いた記事。日本人の耳には散々聴かされたゴジラのテーマの本質から伊福部昭の音楽生涯を絡めた結果面白い記事にはなったと思います。

レイ・ハラカミの記事以上に伸びなかったですが

まぁ今時特撮音楽を好んで聴くアニオタなんて0に等しいですし、興味なんてもつはずもないので当たり前なのですが。書いてる時は「これは伸びる」と思って書くわけで(心意気として)それが実らなかったのは残念で、武満徹大瀧詠一などの特集記事も一応草稿まで書き終えてはいたのですが伸びないと不安だったところ、この記事の反響がなかったことをきっかけに出すのをやめました。別にアクセスが欲しいから出すわけではないですが、そもそも話労力をかけても読まれなければ存在価値はないので。

DUNE/砂の惑星ヴィルヌーヴ映画

sai96i.hateblo.jp

映画好きの一面がでた非音楽記事。が、ヴィルヌーヴ映画の面白さは絶対伝わったはずだし、DUNEという小説の偉大性もちゃんと組んだ。このくらいは常識として知っておくべきというラインまではちゃんとカバーしているはず。この記事はそもそも音楽記事ではないので伸びなくても「そりゃそうだわ」とう感じだったのでそこまで気にはしていない。ただ欲を言えばこういうところにも興味を持って欲しいので一度目を通していただきたいです。一応映画ファンなので、今後拡散したい作品群があったら非音楽記事を出すかもしれないですがご容赦を。そっちはそっちで本気で書いたら面白くなるので

アニソン派 vol5 現地レポート

sai96i.hateblo.jp

ただの現地イベントレポートなので特に書くことはない。

音楽の女神:菅野よう子の音楽世界の魅力

sai96i.hateblo.jp

お待たせ、最新記事にして当ブログの分量の記録を大幅に更新した楽曲記事。実際には7万字のうち、5万字が自分担当なのですがそれでも半分以上は書いているのが我ながらどうかしてると思いながら、菅野よう子という巨人についてディティールの面から書いかくのであればそのくらいの文章量は必要なわけで。故に11月~出すまでの期間はずっと菅野楽曲とそれに付随する曲の繰り返し。おかげでSpotifyの履歴が大変なことになりました。特段学術的な記事ではないですが洋楽・クラシックの知識を存分に引用して菅野楽曲との違いを説明するという意味ではかなりレベルの高い記事になったと思います。正直な話菅野よう子は作家としては完全に引退気味にあって00年代ならともかく、10年代、ましてや20年代は第一前線という人ではないので(大事なイベント行事にはその偉大性が評価され担当していますが)読まれるかどうかという点で一抹の不安があったのですが、安定して伸びているので安心。

 

 

総括&雑談

今年はブログ記事数は少なくとも、質が安定し、量も長い(全体で文庫本一冊程度)というベストな形での記事を幾つも出せたので個人的には大満足。なにせ出した記事が色々な人に読まれているわけですから。定期的な更新を期待されている方には申し訳ないです。来年は多分もっと更新頻度が減る予感がする。が、ちゃんとした面白い記事は1つ以上だすつもりなのでそれらを楽しみに待っていただければと思います。

ほぼ更新がないと思うので、当ブログを読んでいる数少ない読者に向けて来年以降出したいと思っている(約束はできない)題材タイトルを仮ながらも発表しておきます。あんまりハードルを上げない感じでのんびり待っていただけると嬉しいです。

突発的にかけるものが出てきたらそっちを優先するのでこれ以外にも出す記事がある。

「お前そのアーティスト書けるのか?」っていう企画もあるのですがクオリティについては信じてくださいよ。「損した」レベルにはならないというのは保証します。あとまだ未確定ではありますが、中田ヤスタカ・小山田・P-model/YMOあたりは流れている血が似てたりするのでいい感じで統合した上で1本の記事になるか、三部作で一つの潮流というか記事として完成するスタイルを取る予定(これは無茶の一本統一はしない)

 

さて21年度もあと少しで終わってしまいます。今頃の時期にレコ大の広告をみるとため息が出ます。1年が年を追うごとに短くなっていくというのは誰もが中学生くらいから感じるあるあるだと感じるのですが、本当に「え、もう今年終わりですか?」みたいな感覚になります。それは自分がもうn歳っていうよりも君の名は。シンゴジラといったエンタメ作品がもう6年前になってしまうのかっていう感覚で。まどマギ10年はまぁそんなもんかって思えるのですが。22年は一体どういう年になるのか色々な意味で予測つきませんが、自分はとにかくシン・ウルトラマンアバター2の2本が公開予定なので、まずこのラインが楽しみだということ。と同時に3.11にthe batmanがまたリブートするのでそちらも期待して見に行こうかななんて考えてます。

 

音楽の方面ではsupercellのアルバムが出て欲しいのと米津氏がそろそろベストアルバムor6枚目のアルバムを出すのでその点に期待したいのと、その他二次元コンテンツ系の音楽と洋楽を積極的に摂取していきたいなと思っています。あとGyoson。

ちょうど書いてる時に新曲がきたので貼っときます。


www.youtube.com

Gyosonのセンスというか紡ぎ出すラインの音ってなんでしょうね。不思議なんですよ。間違いなく歴史に残るボカロpには違いないですが、これからの出方によってはGyosonとしてもちゃんと爪痕を残すレベルの楽曲を期待できるので知らない人は要チェック。

そのほかにも期待すべきアーティスト群たちの音源を聴いたりして言語化できたらここで紹介したいですね。今年の10選をみるにvtuber楽曲による名曲、名盤の可能性の振り幅が今後大きくなるなと感じているので、コンテンツそのものには全く興味がないですけど面白い曲を作ってくれるのであればそれに越したことはないので楽しみです。それこそryo(supercell)さんとかが出てきたら面白いのではないかと思ったり。redjuiceが絵師のvtuberもいるし。そこに提供すれば実質supercell&egoistと同じ構図になるし。IRySっていう名前のホロライブEN所属のキャラらしいです。

www.hololive.tv

正直EGOISTっていう半分vtuberみたいな要素を持ってるアーティストでしかもかなり有名なアニソンシンガーがいるから意識してないはずがないので一回きりでryo(supercell)プロデュースのアルバム出して欲しいですね。タクトop.は良かったし。

タクト

タクト

  • ryo (supercell), まふまふ & gaku
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

男デュエットでこのクラスの曲はもう信者補正なしでも素晴らしい


www.youtube.com

(最近mappaの勢いすごいですよね。丸山Pは偉大だ)

いわゆる男女の場合は簡単とは言わないが、声質の料理のしかた幅は男デュエットよりかは広いと思う。しかもボーカルにまふまふっていうこの異常なコラボなのにそれが全く気にならない。ここら辺はryo(supercell)の楽曲がまふまふ声でも聴けるメロディにしているからに違いなんですよ。まふまふ個人のオリジナル曲であの歌い方はまず聴いたことがない。詰まるところなんでも作れるryo(supercell)さんだからこそ、アルバムが欲しいんですよ。tiaが十代の時に一枚作れなかったのが本当に惜しい。ハートリアライズthe glory daysなどが収録されている+spcl的な曲が10代tia声で聴ける曲があるがたくさんあるアルバム曲って相当すごい作品になり得たと思いませんか

ハートリアライズ

ハートリアライズ

  • Tia
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
The Glory Days

The Glory Days

  • Tia
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

ピアノライン、楽曲の方向性など含め11~14年のryo(supercell)は神曲しか出してない。というか凡作なんて手で数えられる程度しか作ってないが。

ryo(supercell)さん愛が溢れ出したので一旦話を戻す。

トップクリエイターの曲に期待するのは当然なのですが、やっぱりまだデビューしていな&新人アーティストラインも積極的に発掘も面白いかなぁなんて。とにかく色々楽しみにしているエンタメがあるので、そういう意味では楽しめる年になりそうです。

年末の今、私はというとPokemon DP Sound Libraryで思う存分音楽を堪能しています。増田順一の凄さはもっと知られていい。

世間は相変わらずですが、一生懸命頑張りましょう。それではこれで

締めます。今年もありがとうございました。

菅野よう子の音楽の魅力と楽曲を解説

本記事は19,20年の開催に引き続き今年も開催された楽曲オタクAdvent Calendar2021

adventar.org

への寄稿記事になります。楽曲オタ話カレンダー企画が知らぬ間に3年目を迎え、しかも自分が皆勤参加なのに驚きます。

2019年度

sai96i.hateblo.jp

2020年度

sai96i.hateblo.jp

 

とにかく自分の場合はお題を決めてから書き始めるまでに時間を使う(その分まとまったら一気に書き上げられる)ので最終日に登録したのでその分いい記事は書けると思いきや、大乱闘スマッシュ音楽オタ話みたいな記事が24本が投稿された後自分がトリを迎えると思うと非常に緊張を強いられ、結果全然手が動かないという始末です。そんな中今回も色々と語っていこうとは思います。

 

今回は当ブログ初の試みとしてTwitterのフォロワーさんのλさんのお力添えをいただきました。あ、ちなみにタイトルもλさんに考えていただきました。

twitter.com

これまで一人で色々な音楽について独善的に語ってきたのですが、別の視点・視野をもった人との合作をしたほうが、より面白い記事になるのではないかと思いご協力いただきました。

(また、別の方を招いての共作記事も現在進行中.今後は複数での共作もちょくちょく入れていく予定。)

λさんを選ばせていただいた理由としては、今回の題材を軸にした時に私のフォロワーの中では一番熱い文章を書いていただけると思ったからです。逆に今回の企画には他の人では絶対に務まらないという考えでもあったので、ご協力をいただけていなかったらこの記事は公開されていませんでした。あらためてここで感謝を申し上げます。

もう一つ、いつもと違う作りにしているという意味ではインタビュー記事系の引用は極力抑えています。というよりこれは本編前の事前知識として知って欲しいのでちょろっと書くと、菅野よう子のインタビューってどれみても結局は「自分のいいと思う音を出しているだけ」という一文で済ませれるほど自分のルーツを語らない人なので参考にならなかったというのもあります。

(まぁ作るもの聴けばある程度把握できるからそんなに困りはしないんですけど )

元々音楽の素養を生かした才能を幼少期から見出しており、数々のコンクールで優勝しているという点で最初からそういうタイプという認識だったので、そりゃこれだけの巨匠になるよなぁ〜と思うのが必然でしょう。

f:id:sai96i:20211215232337p:plain

11歳の時に即興・自由曲部門で数名にしか与えられない川上賞を授与している

 

以下本編.

色々な方向に曲を出し(CM提供楽曲が500曲を超え※本人談では1000曲を超えているらしい)多すぎる傑作アニソンや、復興ソング「花は咲く」

などの代表作が普遍性を持ちながら愛され続け、影響を受ける作曲家が止まないという作曲家はそうそういません。恐らく、大雑把に言ってしまえば現在に至るまでのアニソン作家で菅野よう子の薫陶を1mmも受けていない人はまず存在しない。そして東京藝大という最高位の音大の作曲科で本格的に「作曲」というものを勉強し作曲家になった田中公平(ウィーアーの作曲家)などをもってして「天才」と言わしめるその力量は本当に稀有なものです。

ameblo.jp

今やアニソン界だけでなく大河ドラマおんな城主 直虎」、朝ドラの音楽「ごちそうさん」をも担当し、名実ともに日本を代表する音楽家

YUTARO

YUTARO

  • provided courtesy of iTunes

今回はそんなあまりにも大きい存在である菅野よう子について今一度、振り返ってみるという趣旨の記事です。オールジャンルの曲でSクラスの楽曲を創り続ける菅野楽曲について素人なりに迫ってみようと思います。ですが、構成としては

・ベスト楽曲

これだけは絶対に抑えておきたいおすすめ楽曲群(名曲)を紹介

菅野よう子

これまで発表されてきた名曲の数々より、アニメ音楽に焦点を合わせそれらの作品群を振り返り、魅力を紐解く&音源から考える菅野よう子が影響を受けたであろうアーティスト/音楽群の解説

坂本真綾プロデュース時代の作品

アニソンではなく、ポップスソング曲に於ける菅野楽曲の「らしさ」と4枚のアルバム群についての存在意義について。

・名盤

ベスト楽曲と菅野よう子論を踏まえた上で、「結論としてこのアルバムを聴いてほしい」という信念のもと選ばれた名盤を5枚ずつ紹介します。

 

全パートにλさん&rinoパートのそれぞれ論評を入れています。また共作ということもあってどっちの評が面白いかなんていう楽しみ方もできます。楽しみ方は人それぞれ。それではまず、ベスト楽曲の紹介に入りましょう。

まずは作品を聞いていただくところから始めましょう。

選りすぐりをλさんパートから発表します。

 

λさん選ベスト楽曲評

1.「Wo qui non coin」

作品:COWBOY BEBOP  歌唱:多田葵 作詞:Gabriela Robin 作曲:菅野よう子

WO QUI NON COIN

WO QUI NON COIN

  • 多田 葵
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

言わずと知れた代表作「COWBOY BEBOP」よりこの曲をセレクトしました。 「COWBOY BEBOP」は菅野よう子作品の中でも特に知名度も高く、音楽に普段触れない方でも「TANK!」は一度は聴いたことがあるのではないでしょうか。歌唱の多田葵さんは作中に登場するエド役の声優さんです。作中ではエドビバップ号から居なくなるときに、歌なしでごくわずか使用されていただけになります。「Wo qui non coin」という題名はハナモゲラ(初めて日本語を聞いた外国人の耳に聞こえる日本語の物真のこと)です。(※エドの声優さんが歌唱担当されており、エドの登場シーンで使用されていますが、エドが歌っている設定ではないと思われます。) 歌詞の始まりは「僕の子犬がいなくなった」とあり、タイトルも「Wo(ぼ) qui(く) non(の) coin(こいぬ)」と読むことが出来ます。選出理由としては、この切なさがとても美しいためです。チープなビートサウンドから始まりとても可愛らしいサウンドに思えますが、ボサノバの曲調を基調にやや無機質なフルートのような音色がどこか不安な気持ちを扇情します。そして、多田さんの優しい歌声が重なって、とても「美しい切なさ」が表現されていると思います。 メロディーの一部には一瞬、ブルーノート(歌詞の「ボクは乾いた涙で毎日暮らしている 早く帰ってきて」の「早く」の箇所、コードとメロディーがぶつかる箇所があまりにも気持ちがいい。天才的です…)が使われていたりと洒落っ気がこの曲の切なさのポイントにもなっています。よく聴くと右のスピーカーから犬のなつくような鳴き声が聴こえてきますので、是非聴いてみてください。トラック数の少なさが切なさを助長していますが、左から聴こえるフルートの音色のハーモニーの遷移だけ聴いても美しく、菅野よう子らしさが感じられます。 因みに、2021年11月19日より新作の実写版「COWBOY BEBOP」がNetflixで全世界独占配信開始していますので、こちらも是非。リニューアルした「TANK!」の他、新曲もたくさん聴くことが出来ます。Apple musicでは既にサントラも全曲フルサイズ聴くことも可能です。

2.「ZERO ゼロ」 

作品:アクエリオンEVOL 歌 - AKINO from bless4 作詞 - 岩里祐穂Gabriela Robin / 作・編曲 - 菅野よう子

ZERO ゼロ

ZERO ゼロ

  • AKINO from bless4
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

アクエリオンといえば、「創聖のアクエリオン」、「創聖のアクエリオン」といえば「菅野よう子」と言われる程に、「創聖のアクエリオン」は菅野よう子作品の中でも超代表作になります。が、今回はそのアクエリオンシリーズのよりアクエリオンEVOL 26話(のみ!)に使用されたこの曲をセレクトしました。 個人的意見ですが、アクエリオンという世界観を一言で言えば、エロスを美しくかっこよく甘美に作り上げた作品だと思います。歌唱曲はどれも激しく、どこか挑発的だったり蠱惑的な歌詞が他の作品ではないアクエリオンならではの最大の特長だと思います。その中でもこの「ZERO ゼロ」は、愛をシンプルに語った曲になります。4つ打ちで鳴り続けるバスドラムのキックはまさに高鳴る心臓の鼓動を象徴しています。アコギのコード引きの伸ばしのアタック感は愛について冒険する流離人をどこか彷彿させるほどに美しいです。そして、なんと言ってもこの曲の美しさは、「速いビートの中で動くゆったりとする流れ」です。BPM=163のキックの4つ打ちをベースとしながらも、サビで3拍目に鳴るスネアや順次進行するストリングスがアクエリオンらしい生命の神秘の流れ(=愛)を表現しているように思います。 全音符気味に鳴るコードの中で、タムやシンバルも激しく扇情的なドラムのフィルインが躍動しており、この対立が他の楽曲にはなかなか見られないこの曲ならではの非常に美しいポイントだと思います。

 

3.「オープニング~群雄決起~」 作品:信長の野望戦国群雄伝

1988年12月に発売された「光栄」のゲーム(現「コーエーテクモゲームス」)のサントラより選出しました。 生オケで非常に豪華なサウンド。なんと言ってもイントロでしょうか。 一気に広がる全オーケストラの響きは圧倒的に荘厳で、信長の野望というタイトルやゲームのジャケットにぴったりです。スネアのビートは行進する軍隊を想起しますし、ホルンの音色が出撃の力強さを感じさせます。 1988年の古い作品ですが、全く色褪せません。因みに、続く「時の調べ」もとても優しく切ない曲で、そこから作り出される緩急もまた美しいです。更に続く「怨狼の牙」も是非聴いてください。

 

4.「Merry Christmas without You」

作品:マクロスF(フロンティア) 

歌 - シェリル・ノーム starring May'n、ランカ・リー中島愛、frontier stars (アルト(中村悠一)、シェリル(遠藤綾)、ミシェル(神谷浩史)、クラン(豊口めぐみ)、ボビー(三宅健太)、モニカ(田中理恵)、ラム(福原香織)) 作詞 - 山田稔明

Merry Christmas without You

Merry Christmas without You

  • provided courtesy of iTunes

こちらも超代表曲「ライオン」で知られるマクロスF(フロンティア) から1曲。アルバムcosmic cuune (コズミックキューン)に収録されています。 マクロスFは劇場版も複数あり、非常にアルバム数が多いですが、収録アルバム「cosmic cuune」はクリスマスをコンセプトにしたアルバムになっています。シンセドラムなどシンセサウンドで始まるイントロにクリスマスに欠かせないスレイベルのビート。クリスマスへの優しい高揚感を感じます。 チューブラーベルなどパッドシンセなどクリスマスらしいサウンドも漏れなく入っていますが、全体的に生楽器ではなくシンセ系で支えられたサウンドに、後半はストリングスも加わり、クリスマスツリーに灯りが灯るように、壮大になっていきます。甘美なギターソロも聴き逃がせません。 本作品は、数あるマクロスFの曲の中でも、作中に登場する仲間たちも歌唱に登場するたった唯一の曲になります。どんどん転調する中で、各メンバーが登場し、最後にアルト(本作のヒーロー)が登場するのも重要な美しさのポイントです。更にクライマックスでは、メンバーが同じメロディーを重ねている姿はまさしく、同じひとつのクリスマスを祝福しているに違いありません。菅野よう子はこの1曲を通して、関係者全員のこのマクロスFという作品への愛を表現しているのだと思います。私はそれほどにこの曲は特別で素敵な曲だと思います。最後に登場し、モーダルに変化していくキラキラなベルサウンドは歌詞と相まって未来を表現しているのではないでしょうか。 また、最新作-『劇場短編マクロスF ~時の迷宮~』でマクロスFの「今」を感じる事ができますのでこちらも、併せておすすめします(8分ほどに及ぶスペクタキュラーな一作です)。

5.「Ride On Technology」 作品:『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX

Ride On Technology

Ride On Technology

  • provided courtesy of iTunes

この曲なんと、アニメ作中で使われていません。いわば、菅野よう子さんが攻殻機動隊という世界観のなかで、作りたくて作った曲かもしれません。作中で使われていないにも関わらずあまりにもクールなため、映像のみの方は是非、サントラを聴いてみてください。 この曲は、なんと言っても最高に「クール」。この一言に尽きます。ドライなトランペット+サックスと高まるビートから、Brecker Brothersの「Some Skunk Funk」を想起する方も多いでしょうか。

Some Skunk Funk

Some Skunk Funk

特にこの曲は、サウンドが素晴らしいです。イントロでは畝るような加工されたシンセベースサウンドが、無機質な感じを出しておりクールです。またずっとひたすらに刻まれるカッティングギターは最高にファンキーですし、佐野康夫さんのドラムの展開やドラムソロもとても気持ちがいいです。本作品の特徴としましては、生ドラムとエレクトリックなドラムンビートのハイブリッド。更によく聴くと、左右でエフェクト的に一部ビートが騒いでいるのも聴きどころです。 4分半の作品ですが、全体的にモーダルなサウンドをベースとしつつ、途中、リバーブ多めのサウンドになり場面展開したり、中間からtpとsaxの超絶技巧ソロ、佐野康夫さんに特徴的な終盤の盛り上がりに見られるライドなどが展開され、最後はベースが下降進行していくなど展開も含め、すべてがクールな作品になっています。

6.「Cloe」

作品:地球少女アルジュナ 作詞 - Gabriela Robin / 作曲・編曲 - 菅野よう子 / 歌 - 山本千夏

Cloe

Cloe

2001年に放送されたアニメで、環境問題を取り扱った作品。監督はマクロスシリーズで有名な河森正治さん。 この作品もどの曲も名曲ですが、中でも「Cloe」の優しさとそのメロディーの美しさは素晴らしいものだと思います。イントロの一瞬のフレーズは水にしずくが落ち、波紋が広がる姿を浮かべます。山本千夏さんが歌う少女の歌声は魔力を持っているように感じますし、「神秘的」という言葉がとても似合います。後半に加わり重なるストリングスも美しいです。他作品でもありますが、(サウンドはやや異なりますが)アイルランド音楽の「リバーダンス」を思い出します。また、アルバムを通した本作品は、環境問題というテーマに対し、民族打楽器などを使用しプリミティブなサウンドになっている点で、どこか後のアクエリオンに通じるところが伺えます。筆者の他のおすすめは「クローン」「エアロビ」「地球共鳴」です。是非、他の曲も試聴ください。

7.「gravity」 作品:WOLF'S RAIN

作詞 - troy / 作曲・編曲 - 菅野よう子 / 歌 - 坂本真綾 アニメ「WOLF'S RAIN」よりED曲

gravity

gravity

  • provided courtesy of iTunes

「gravity」を選曲しました。 この美しく切ないメロディーは、膨大な菅野よう子さんの名曲の中でも珠玉の一曲だと思います。本当に素晴らしい曲です。弦のイントロに始まり、ローカットされたバラードピアノが粛々となるこの数秒に、世界観と儚さが既に見事に表現されています。後半のよく聴くとホルンやクラリネット、フルートなども鳴っています。この曲の美しさの一つに3:23という時間の短さも魅力になっています。優しくもどんどん展開され、音が鳴る美しい時間が一瞬に感じられます。特にこの曲の外せない聴きどころは、後半のリタルダンドからのピアノだけの和音の箇所です。冒頭で登場したピアノの和音がここで再登場することで空白を作り、それからすぐに壮大な菅野よう子の十八番の重厚なストリングスが儚くも激情的なサウンドになっています。 余談ですが、「gravity」はsupercellで活動されている作曲家ryoさんが、ニコニコ動画で投稿した動画(初音ミク)にもなります。

www.nicovideo.jp

君の知らない物語」をはじめとするsupercellやデビュ〜咲かせや咲かせまでのEGOIST楽曲の総合プロデューサーとして超有名なryoさん

君の知らない物語

君の知らない物語

My Dearest (Album Mix)

My Dearest (Album Mix)

雨、キミを連れて

雨、キミを連れて

  • EGOIST
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
Departures 〜あなたにおくるアイの歌〜

Departures 〜あなたにおくるアイの歌〜

  • EGOIST
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
名前のない怪物

名前のない怪物

  • EGOIST
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
All Alone With You

All Alone With You

  • EGOIST
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

も少なからず菅野よう子フォロワーであり、数ある曲でも初の動画をこの曲で投稿したことを考えると、偉大な影響を与えている1曲だと思われます。

8.「ALFA and OMEGA」

作品:∀ガンダム 作詞 - Carla Vallet / 作曲 - 菅野よう子 / 編曲 - 菅野よう子 / 歌 - Carla Vallet

Alfa and Omega

Alfa and Omega

  • provided courtesy of iTunes

∀ガンダムは全体的にオーケストラサウンドがメインですが、本曲のような、エレクトロ系な曲も少なくありません。特にこの「ALFA and OMEGA」は、ミニマルなシンセフレーズを基盤に、Carla Valletのハスキーなボイスと、炸裂する佐野康夫さんのドラムが最高にクールです。この曲も「Ride On Technology」のように、アコースティックとエレクトロが融合したミクスチャーサウンドになっています。畝るベースも聴きどころです。

9.「Go Dark」 作品:DARKER THAN BLACK-黒の契約者 テーマ曲とも言える、「Go Dark」。

正式音源なし

tower.jp

収録内容no.1より試聴はできます。

COWBOY BEBOP」のサウンドが好きな方は本作品もハマるかも知れません。端切れの良いホーンセクション、後半のサックスソロ、荒々しいドラムや特にハイハットが特徴です。本作品のサントラはボサノバやラテンだったりと、豪華絢爛とはまた異なる、シンプルなクールさが魅力です。中でもジャズオルガンとサックスの使用が多く、キーになる楽器になっています。

 

10.「Final vision

作品:劇場版アニメーション「エスカフローネ

Final Vision

Final Vision

  • provided courtesy of iTunes

たった、1分30秒の曲なのですが、圧倒的なオーケストラサウンド、重厚なストリングスに平伏さざるを得ないほどまでの迫力が魅力です。この曲を聴くと、音楽への畏怖であったり、もはや人間の知の無力さのようなものさえ感じます。とても短い曲ですが、数あるオーケストラサウンドの中でもこのダイナミクスは聴いていてとても気持ちがいいです。前半の荘厳さと後半のコーラスの対比がとても美しく、まさにクライマックスにふさわしい1曲です。

 

rino選 ベスト楽曲 10曲

1.「player」

Player (with Heartsdales)

Player (with Heartsdales)

  • provided courtesy of iTunes

本作は攻殻機動隊stand alone complex 劇場版 Solid state society(sss)のテーマ曲。。歌唱はOrigaが担当。origaさんは攻殻でそれぞれメインテーマを3曲

(innner universe,rise,player)

Inner Universe

Inner Universe

Rise

Rise

歌っているので自分はこれらをoriga三部作と称しています。正直いって、どれも良いのです。派が分かれるだけの一貫した魅力がそれぞれの楽曲にはある。それを踏まえた上でなぜplayerなのか。。inner universemystical(神秘的)でありriseはScalability(拡張性)にそれぞれクールさが残る楽曲

(ことriseはjazzanova的な音楽だから当たり前といえばそうなのだが.)

Bohemian Sunset

Bohemian Sunset

  • ジャザノヴァ
  • エレクトロニック
  • ¥153
  • provided courtesy of iTunes
Keep Falling

Keep Falling

  • Jazzanova, Ursula Rucker & Hawkeye Fanatic
  • エレクトロニック
  • ¥153
  • provided courtesy of iTunes

に対してplayerはstylishなのだ。前2曲はテンポ的にみてもローだし歌もどちらかというと低音が多い、それに対してこの曲は冒頭のラップからもうかっこいいし、サビまでにそこまでかからずに展開している。(オケとビートの融合もすごいし)そしてその後のメロディ転換が神がかり的。そこにorigaのちょっとした表現も入ることでカッコ良さが味として加わる。そして途中締めた後、再起動する感じ(2m47s~)この曲の中で最もかっこいいシークエンスがここからだ(3m6s〜49s)40秒近くにわたって繰り広げられる Heartsdales (日本人女性によるヒップホップユニットだから余計にこのラップ力はすごい.やっぱり幼少〜成長期の時代に海外で語学含めて浸透していると変わってきますね。本当の意味での帰国子女とでもいいますか)によるのラップを菅野楽曲で挿入するという神がかり的なかっこよさがある。

攻殻菅野楽曲の歌詞はORIGAの母国語であるロシア語と英語の混合系が多いためかっこよさに拍車がかかる

むしろここのフレーズだけで勝っていると言っても過言ではない。そして十分に満足させてからの自然な流れでのサビ展開。この曲のカロリーは3000kcalぐらいあると思います。冗談抜きで一日中これ聴いて過ごせるだけの力があるのだ。より高まった唯一無二性含めて(inner universe,riseもorigaならではだが)正真正銘菅野よう子×origaの最高傑作であると。

この曲を聴く度に当のoriga氏がご存命ではないのが悔やまれます。透き通った歌声は、菅野ビート系作品を表現するに最適なボーカリストでした。数多の歌手との組み合わせの中でも一番のコラボ(コンビ)だと思っていたので本当に悲しいです。


2.「ライオン」

ライオン

ライオン

  • provided courtesy of iTunes

多分、菅野よう子楽曲の中でも、もっともアニソン「らしさ」が顕著に出ている楽曲。そして知名度、売り上げも高い方。こういう記事でベスト楽曲をあげる場合、定番の曲は入れるのは逃げに思われるかもしれないが、より多くの人に受け入れられ、今やカラオケの人気ソングになるまでのある種市民権的なものを勝ち得たのは「名曲」である何よりの証拠だし、ベスト楽曲としてあげても誰もそれを疑わないだろう。何よりそれら差し置いて、単純に曲としてかっこいいのは言わずもがな。イントロのピアノの入り、落としてからのギターソロで、ボーカル入り。この感じは今のアニソン(っても14年の作品ですが)にも通底する型ですね。this gameとか

This game

This game

  • provided courtesy of iTunes

なんといってもサビの強度。「生き残りたい〜」のメロディは今でも力強く響きます。間奏パートのベースとピアノメロディの掛け合いも珍妙。そしてその後、「私眠らない」という助走をつけてからラスサビ、繰り返しの構成で流して、最後片方をオクターブ高く歌わせ、ギターのメロディで締める。一見すると定番のアニソンっぽくありながら、かなり込みいってる印象。2番終わり〜間奏前まで明るいのに対して間奏では悲壮感なメロディをだしながら、だんだんと明るくなっている。霧が晴れていくような感覚で大サビを「眠らない」の太い歌声で迎えるというこのどんどん料理していく感じは菅野よう子らしさとも言えますね。

 

3.「イヴの断片」

イヴの断片

イヴの断片

  • AKINO from bless4
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

ライオンと創聖のアクエリオンを融合したような楽曲。なにより歌詞タッチがもろ菅野楽曲という感じすごくツボ。あとかなり忙しい曲でもある。キャッチャーなメロディから始まり、そこから「千年求める」以降からライオン風になる。そしてBメロの意外なところを疲れる感じ。そしてサビできめにかかるのだが、「見つけて欲しい」「見ないで欲しい」「守って欲しい」の三段重ねで音をあげて1番を占めるところに痺れます。というよりもこの曲のキラー部分はここでしょう。メロディアスではあるが、この曲の声の右往左往する感じは一般人が歌うには厳しいだろうなっと思ったりしてるとアクエリオン的といえる間奏前後の流れでかなり変化球を投げてくるこの展開の読めなさ。「図々しさ〜」から「神話の端にしがみついて」あたりのフレーズでもジェットコースターのように動き回るのに全くもって自然に聴けるっていうのも実にすごいなと思います。色々詰め込みすぎだけどそれでどっちつかずになってないし、決めるところは決める。the アニソン的な音楽でありながら、その構造を好き勝手こねくり回したそんな楽曲だと思います。

 

4.「Christmas in the Silent Forest」

Christmas In The Silent Forest

Christmas In The Silent Forest

  • provided courtesy of iTunes

6mの大作なのに全く飽きない。これぞ菅野よう子パワーと言わんばかりの楽曲。アニソンをメインで聴いている人からすればマジで何食ったら(後で少し取り上げますが)こういう曲が書けるのかと思えてしまうほどの曲。しかもローテンポ。しかも、普通これイントロにもってくるかっていうほどダークネス。ゲーム音楽かと思ってしまうくらい、根本からメロディが目立たないような施しがされている。3m28sから若干違う曲にシフトしつつ3m45sから戻しをいれて4m13sからメロディ爆発。そして歌手が外人であることから発声が日本人が外来語を歌う時のそれとは明らかに違う(いい悪いではなく)外人の発声だからこそ成立する楽曲であると。イントロから思いも寄らないところにいってアウトローではちゃんと帰結するところがすげえなと思うばかり。

じゃあ何を食ったらこういう曲が書けるか。まぁそんなに難しいもの食べてない、というよりも寧ろ分かりやすいまである。まず第一前提としてこの曲は全体的に洋楽にアプローチが入っている。とりわけポーティスヘッドとか

Cowboys

Cowboys

  • ポーティスヘッド, ニック・イングマン & オーケストラ
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
Half Day Closing

Half Day Closing

  • ポーティスヘッド, ニック・イングマン & オーケストラ
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
All Mine

All Mine

  • ポーティスヘッド, ニック・イングマン & オーケストラ
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

massive attack の90年代後半のelectronica感(トリップホップと書くのが正しいのですが、当人たちがその呼称に違和感を感じているため、今ではアブストラクト・ヒップホップと形容されたります)とでもいいましょうか。 

Teardrop

Teardrop

Man Next Door

Man Next Door

  • provided courtesy of iTunes

トリップホップの始祖と呼ばれるアルバムBlue Linesもおすすめです。

Blue Lines - The Remixes

Blue Lines - The Remixes

あの時代の陰鬱さがある。まぁこの辺は当時の洋楽を聴いてれば絶対通ってる道ですし、菅野よう子がこの流れを知らないわけないので

(普通に洋楽名盤として名が高い名盤たちです)

いや、むしろ知らないと作れない曲をちゃんと作って、ある種「この音楽はトリップホップの流れを組んでますよ、皆さんわかってくださいね」みたいな曲を作っている。それが証拠にWhere Does This Ocean Go?

Where Does This Ocean Go?

Where Does This Ocean Go?

  • provided courtesy of iTunes

の音楽の方向性は完全にこのラインで。というのもトリップホップが生まれてすぐビョークが95年に出したpostというアルバム(これも超絶名盤)

でやった方向性がまさにトリップホップでその中のhyper balladeという曲

Hyper-Ballad

Hyper-Ballad

  • provided courtesy of iTunes

を真似ているという点から、仮に本人は意識的でなかったにせよ実は一本線で繋がっているのである。こういう蘊蓄抜きにしてもとりわけ音にこだわるオタク作曲家でmezaanineとポーティスヘッドを外す人はいないと思いますね。何回も書いてますが、ryo(supercell)さんですらこの2枚を自分の音楽を構成したアルバム10枚に入れているくらいですから、知らない人はもったいないです。多分この中で1枚選ぶならmezaanineになる。

 

5.「Moon (Gabriela robin)」

Moon

Moon

  • provided courtesy of iTunes

これは作曲から歌唱まで(別名義の表記になっているが)オール菅野よう子状態。この曲の何がすごいって、何一つキャッチャーな展開はないのに壮大性だけは耳に残るところ。この手のイントロから察するに着想はおおよさホルスト的な方向性,具体的な楽曲名をあげるとSomersetRhapsody(サマセット狂詩曲)

A Somerset Rhapsody, Op. 21 No. 2, H. 87

A Somerset Rhapsody, Op. 21 No. 2, H. 87

  • provided courtesy of iTunes

から持ってきた楽曲だとは思うが(宇宙系映像の音楽のネタ元の大半、いやほとんがホルスト組曲:惑星の想像力から抜け出せないほど、御大の曲はすごいし、特段、組曲:惑星の楽曲群は偉大であり強固な普遍性を持っている)、それをポップスとしてこのレベルに落とし込む力量にやられます。当然それは提供先の∀ガンダムとの世界観を合わせるためのオーダーだったりそういう「提供作品」にたいするローカライズだったのかもしれないが、結果的に菅野よう子楽曲として一つ大きな作品として成り立っている。ライオンや創聖といったキャッチャーな楽曲も作れれば、こういったクラシックをバックボーンにしたローテンポのポップスを成立させてしまうところに菅野よう子の凄みを感じます。そして何より特徴的なのが「歌詞の全てが造語である」という点。アニソンとしてここまで徹底している曲ってのも珍しいのではないかと思います。

傾向としてGabriela robinで出す曲は往々にして造語系の曲が多いように見える。一応造語を翻訳した日本語版も

月の繭

月の繭

  • provided courtesy of iTunes

あることにはあるのですが、この曲ばっかりは絶対MOON(Gabriela robin)で初めて成立する楽曲だと思う。なにより日本語の語感が曲調に全く合っていない。母音をここまではっきり出してしまうと曲とのマッチングに微妙なズレが出てくる。そもそもが日本ポップス的でないが故に合うはずがないんですよね。私感を強めに言えばこの曲を日本語で歌われたものを聴くと拒絶反応がでます。 

6.「預言者

預言者

預言者

  • provided courtesy of iTunes

めっちゃ久石譲な音源ばり。というよりこれこそ明らかなミニマルミュージック派生の楽曲。さしずめ擬態:久石譲とでもいいましょうか。特にイントロは。というよりも、ひたすらに繰り返しなんですよ。この曲は。だけどそこに味がそことなく漂ってくる感じがいいです。どっちかっていうとこの手の楽曲性が持つ繰り返し性はライヒ派生なのですが日本だと久石譲がそれを変換して曲に出ているので、まぁ久石っぽく感じるというわけです。ここら辺については久石譲特集でこれでもかというほど語ってます.

久石譲とミニマルの主題で書かれたブログでも相当クオリティは高いです。その証拠に「久石譲 ミニマル」で検索すると一番上に出てくるくらい読まれていますので未読の方は是非。

f:id:sai96i:20211219004730p:plain

sai96i.hateblo.jp

余談ですが、この楽曲の次のトラックのbefore bereakfastという音源

Before Breakfast

Before Breakfast

は柳川和樹的な楽器の感じがして一瞬「柳川劇伴か」と思ってしまうくらい、柳川楽曲の味を知っていれば楽しめる流れ

以下柳川和樹、初見用最強入門楽曲

Red Zone

Red Zone

Yellow Zone

Yellow Zone

  • provided courtesy of iTunes

なので皆さんもぜひ体験してみてください。これだけで1日潰せます。柳川和樹も相当なサウンドメロディを作る達人ですがそれは別の機会に回します。

 

7.「Song bird」

Songbird

Songbird

  • provided courtesy of iTunes

純粋なピアノメインのメロディアスなポップスソングとして聞き応えがあると思う。今の時代DAW発展により詰め込み型の曲なんかも当たり前になっているが、その意味で本作はバンドサウンド性が強い(リリースされた時代もある)2m30以降の展開はちょっとryo(supercell)っぽい感じがするのも個人的な聴きポイントの一つ。(順序は逆だけど) 

楽曲自体は変に凝っていないTHE アニメソングという曲です。ただ、歌詞の転換というか展開が絶妙である。サビにもっていくまでは自然な流れで、それでいて流動的。Aメロが28sまで続いて「溶け合って〜」でBメロに42sからサビで盛り上げて「伝えるためにあふれる気持ち」のフレーズ内で落としてまたイントロに戻って、繰り返しで間奏に入ると思いきや、もう一枠入れてそのあと間奏のタームにはいってあとはお決まりで締めていくのですが、アウトローではgravity同様ちょっと凝らしているところもこの曲がいいなと思えるポイントです。なんとなく変則的な感じを覚えるのは自分だけでしょうか.曲としては2m30sの前半とそれ以降とでメロディのタッチは同じだけど毛色が違ういうか、一旦終わっている。それが「怖いほど〜全てが生きている」までの助走間奏パートを挟んでからの間奏で「きらめく光が〜これも愛なのね、LALALA」とここでも歌詞を橋渡しにして大サビに突入という何周してんだこの曲っていう、言い換えればくどさになるところをそう感じさせない見事な一曲。ちなみにplayerも同じレイヤー構造です。やっぱりリスナーのことはちゃんと考えて作ってるなということがわかります。

 

8.「PINK MON SOON」

pink monsoon

pink monsoon

  • provided courtesy of iTunes

菅野よう子R&B楽曲。そして歌ってるのがmay`nという。元々ルーツがR&Bな人間が歌っているのでいい楽曲に歌手のバックボーン性が相まって見事に歌い上げている印象。個人的にそれだけの理由でベスト楽曲にあげてます。音域が元々低音だったmay`nは菅野よう子に出会って歌う曲に対して、に思い切って高音出せって言われたら出たっていうエピソードがあり、それが総合的(より幅広い高域がでるようになったMAY`NにR&Bを歌わせるという意味)に結実した曲がこの曲だと思っていいます。

私は元々低いキーで歌っていたので、まずハイトーンの楽曲を歌うことが大きな関門だったのです。このキーは出ないかもしれないってお話していたんですけど、菅野さんがどんどんどんどん自信をくれたというか。最初に歌った「射手座☆午後九時 Don't be late」も「絶対出るからまずは出してみな」って後押しされながら歌ううちに、自分でも知らなかったハイトーンがどんどん出てきて。「自分の実力は自分が一番よく知っている」なんて思っていたんですけど、菅野さんが「できるできる」って背中を押してくれたおかげでどんどん幅が広がって、知らなかった自分に出会えました。

 

9.「インフィニティ」

インフィニティ

インフィニティ

  • provided courtesy of iTunes

さて、この曲を聴いて色々な意味での伝説の第6回アニソングランプリ(歌い手GEROも第3回あたりに本名の金城名義で出場してたりして)で優勝を決めた岡本菜摘の酷い歌唱を思い出した人は同志ですね。最近活動休止しましたよね。まぁそんな小ネタはともかく、この曲はイントロからずっと掴みどころがないのがいいですね。まず弦楽器をどんとぶち込んですぐ耳障りのいい方向性にもってくる、そしてAメロからサビまで基本的に届きそうで届かない音運びが好きです。Bメロあたりのピアノも主張をそこまでしない形で抑えてそのほかの楽器もひたすら裏のリズム寄せに合わせているからこそ、ボーカルの声がここまで目立つというものです。ここまで歌い手の声が印象に残る形もアニソンとしては珍しい気がする。届きそうで届かない違和感も間奏の「消えることのない希望がこの手にあるから」ここの流れでそれまでの掴めない感じを一気に解決する感じ(ある種の爽快感)が最高です。

10.「butter sea」

Butter Sea

Butter Sea

Crime

Crime

  • スティナ・ノルデンシュテン
  • ポップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

この曲はスティナ・ノルデンシュテンというスウェーデン歌手の楽曲と聴き比べると面白く、前者は一つのメロディの型に当てはめて歌がある。歌に対してメロディはそこまで変わらない。ただミニマル的な解釈な音源が続くだけであるのに対して、butter seaはリバーブがかかったギターがひたすら裏で響きながら(そこにピアノを加えているのもポイントが高い)、歌声に合わせて、メロディの波形も合わせてくる。後半になるとギターがうってかわって打点的な形にシフトして歌声による味付けがたされつつも、メインの歌唱はひたすら進行していく。そして「え、これで終わり??」と思うほど意外(というか、あっけない)着地点で終わる。crimeの場合、こうはいかずに「はいはいそうお終わるのね、やっぱり」という感じで展開が見えていて見事なまでにそこに着地する。ある種ポップスとしては当たり前の作りになっている。が、私は変わった音源が好きなので意外性のある展開が好きで、本作は色々凝っていることもありbutter seaをベストに挙げました。

 

番外編として耳に効く(聴く)一曲を貼っておきます。ベーシストは必聴!!

Beast Beat

Beast Beat

  • provided courtesy of iTunes

 

 以上20曲を聴いていただいたところで次は菅野楽曲の効能、凄さと菅野よう子が影響を受けたアーティストや作劇方の解説をします。

 

菅野よう子論(λさんパート)

音楽という聴覚の娯楽を言葉で表現するのは非常に難しいのですが、菅野よう子さんの音楽の素晴らしさを何とか頑張って言葉でするならば、
1.「音色センス」
2.「圧倒的なストーリー性、構成美」
3.「幅広い音楽性」
が挙げられるのではないかと思います。
それぞれ解説してみます。

1.「音色センス」
特に素晴らしいのが、「サウンド」への感覚が素晴らしいと思います(これはミックスやマスタリングにも関わるので、エンジニアによる功績も大いにあると思いますが)。

先程、10選で1曲目に紹介した「Wo qui non coin」をより例により具体的に紐解いてみます。
イントロの数秒でチープなビートサウンドがループされており、この曲が全体的に「可愛らしい曲」であること、また、ややハイファイなギターが切なさを醸し出しています。もしこれが、単純なアコギで、ローもしっかり出てしまっていたら、この「少女が親しくしていた子犬を見失ってしまった」という世界観はすぐに壊れてしまいます。加えて、途中から入るやや無機質なフルートのような音色が、少女の悲しみを表現しています。これも生で艶やかに演奏されてしまっては、まったくもって世界観が壊れてしまいます。更に、フルートが入るところから、ボーカルもダブラーされており、呪文のような言葉の心地よさを自然に強調することに成功しています。サンプラードラム、ギター、フルート、ボーカル、(子犬の鳴き声エフェクトも!)どれをとっても、ただ適切な楽器を選ぶだけでなく、意味があるベストな「音色」を選び、重ねることで、1曲のなかの世界観が広く深いものになっている、それを見事に表現出来るのが、菅野よう子さんの素晴らしさの1つだと思います。

2.「圧倒的なストーリー性、構成美」

こちらも、7曲目に選曲しました「gravity」でより詳細に見てみましょう。

まずはじめに、フルート、ハープなどの音色が呼び水となり、チェロなどを主体とした重厚なサウンドが、この曲の世界観がなにか大きく優しいものに包まれているように感じます、しかし少しずつ音域が上がっていき、最後の和音がどこか悲しい音色になってしまいます。ここで、不安を表現しています。そして、「間」があります。聴けば聴くほどこの間が見事です。そこから始まる、たった片手で引けてしま4分音符の3音のマイナー和音。音色もどこか錆びれたような音色をしています。ここまでわずか30秒です。たったの30秒。この30秒の中に「優しさ→薄くなっていく空気→冷たく悲しい物語が始まる…」といったように儚い世界観が音で表現されています。すべて意味のある、美しい構成だと思います。1:18~は巡るように転調し、世界が一瞬変わり希望を表現しています(歌詞も「雨が霧に変われば、その向こうにはもうひとつの今日がある」という内容になっていますから、見事なリンクです)。そして、また元の世界(=調)に戻ります。続いて、この曲のタイトルでもある「gravity」という単語が、それまでリズムがあったメロディーと対比するように、ゆったりとした音価で「zero gravity」と決め台詞のように歌われています。そしてすぐに楽器が増え、重厚になっています。まるで、この「zero gravity」言葉が呪文のようになり、またひとつ世界が変わる役割を果たしているように聴こえます。更に言えば、ここでブルーノートが使われることで、一層「キーワード」を強調する形になっています。2:03~ではオンコードされることで「希望」を表現していますし、イントロのフレーズがここで再現されています。つまり、ここでまた冒頭の「希望」の表現が再登場しています。そして再度ピアノの和音が登場することで、温度が下がりますが、一気に重厚なストリングスが入り、景色が一瞬で変わります。不思議なのは、ここのメロディーAメロと同じなのです。
Aメロだと思って聴いていたフレーズが重厚な弦によって再現されることで真のサビとして再登場するこの美しさが魅力のひとつだと思います。続いて2:45~またイントロのフレーズが来て、最後は優しいハーモニーで温かく終わります。

0:00~イントロ=フルート、ハープ、ストリングスで「希望」の世界観を提示
0:22~Aメロでピアノのマイナーコードで一気に「哀愁」の世界観に
1:18~Bメロ=たった1度のみ登場する転調の連続で「もしもの世界」を表現
1:38~キーワード=タイトルでもある「gravity(zero gravity)」の登場
2:07~イントロの再登場=「希望」の再登場(イントロと同じフレーズ)
2:18~ピアノ再登場=「哀愁」の世界観の再登場
2:26~サビ=Aメロの再登場、曲全体で一番の盛り上がり
2:45~アウトロ=イントロの再登場で再び「希望」を表現

3:30もないこの1曲に、このように感情の起伏がきれいに盛り込まれており、ここまでのストーリー性と構成美を構築出来るのは本当に菅野よう子さんにしか出来ない至高の技だと思います。

もう1曲
「Light of love」も構成力が光る1曲ではないでしょうか。

Light of Love

Light of Love

  • provided courtesy of iTunes

不穏なイントロに始まり、低音の弦とピアノで構成され、休符も大きめなリズムが特徴的なAメロは特に印象的。更にピチカートが普段耳にしないとても不思議な世界観を作り上げています。楽器隊の組み合わせと表現力が菅野よう子らしい。全体的にモーダルな雰囲気もあり、神聖さが表現されています。そして、比較的すぐに登場するキメの「Light of love」のフレーズもここで音程が跳躍することで光が差すイメージを表現していることに驚きます。前半は暗い曲調ですが、5:00~からは優しいメロディーが始まり、これがテーマとなり編成を変え、最後まで続きます。最初は民族的なビートに支えられますが、次第にリズム隊は抜け、ストリングスのみの構成に。この何度も繰り返されるテーマが神々しさを表現しています。全体で8分の長編になっていますが、全く退屈を感じさせないストーリー性と構成力は匠の技ではないでしょうか。

3.「幅広い音楽性」
菅野よう子さんの音楽といえば、その多彩さです。特に生と電子の組み合わせ、つまりはミクスチャーのセンスは抜群ではないでしょうか。

歴史を辿れば、1990年代の「信長の野望」、「マクロスプラス」、「天空のエスカフローネ」では、既に楽器それぞれの理解と和声など、音楽の総合力が試されるオーケストレーション力を存分に発揮していました(マクロスプラスは1994年。31歳でイスラエルフィルハーモニー管弦楽団を従えて神サントラ作っちゃった菅野さん。この時点でものすごいのです…)。クラシカル色がメインではありますが、「MACROSS PLUS ORIGINAL SOUNDTRACK II」の「Idol Talk」にもあるように、エレクトリックで近未来的サウンドはこの頃から登場しています。

Idol Talk

Idol Talk

  • SHARON APPLE
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

続く「Jade」では民族楽器と口笛を基本に、ギターとジャズオルガンなどの構成。シャッフルビートでどこか剽軽なメロディーいう組み合わせで、既にミクスチャーの精神とその才能を発揮されております。

Jade

Jade

  • provided courtesy of iTunes

 

言わずと知れた「カウボーイビバップ」では「Tank!」を始め

Tank!

Tank!

「RUSH」「WHAT PLANET IS THIS?!」「Too Good Too Bad」「 Bad Dog No Biscuits」ビックバンドサウンドの魅力とその力強さを楽しむことが出来ます。

RUSH

RUSH

What planet is this?!

What planet is this?!

  • シートベルツ
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
TOO GOOD TOO BAD

TOO GOOD TOO BAD

BAD DOG NO BISCUITS

BAD DOG NO BISCUITS

  • provided courtesy of iTunes

 

一方で、「THE REAL MAN」ではサンプラーテイストでクールなサウンドが聴けますし、「SPACE LION」の民族楽器とシンセ、そして歌うサックスなどで奏でられる壮大さは、「カウボーイビバップ」の世界の美しさを表現しているようです。

THE REAL MAN

THE REAL MAN

  • シートベルツ
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
SPACE LION

SPACE LION

  • provided courtesy of iTunes

 

攻殻機動隊」では4打ち系を主体としながらも、ブルガリアンボイスや得意のストリングスも惜しみなく使用し、攻殻機動隊の「機械と人間」というなかで蠢く「静と動」を厳粛さを失うことなく、表現していました。特に佐野康夫さんの躍動的なドラムビートは荒々しくもタイトな最高にクールで、まさに生きる人間の呼吸の「動」として機能しており、その魅力が存分に発揮されていたと思います。「Rise」「Player」「Ride On Technology」などループ系ビートと生ドラムとの組み合わせも効果的でした。得意のストリングスやクラシカルサウンドも「Tempest」「To Tell The Truth」などで発揮されています。

Tempest

Tempest

To Tell The Truth

To Tell The Truth

  • provided courtesy of iTunes

 

そして、「洗練された下世話の時代」(※)を代表する「マクロスF」と「アクエリオン(シリーズ)」の登場。マクロスFでは「トライアングラー

トライアングラー

トライアングラー

  • provided courtesy of iTunes

や「ライオン」そして「星間飛行」という超名曲が世に放たれました。

星間飛行

星間飛行

  • provided courtesy of iTunes

シェリルのクール&セクシーサウンド=「禁断のエリクシア」「ユニバーサル・バニー」

禁断のエリクシア

禁断のエリクシア

ユニバーサル・バニー

ユニバーサル・バニー

  • provided courtesy of iTunes

特にマクロスFは名曲のオンパレード。どの曲もJpop、アニソンとしての枠組みで最高に美しい楽曲ばかりで、宝石が並ぶようでした。

アクエリオンもまた「創聖のアクエリオン」というこちらも超名曲を産みました。他にも「月光シンフォニア」では幻想的な世界を、また「イヴの断片」は非常に情熱的なソングで、総じてアクエリオンは人間の愛やエロスを最高にカッコよく表現していました。

月光シンフォニア

月光シンフォニア

  • AKINO & AIKI from bless4
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

に対し、ピュア&キュートなアイドルのランカでは「虹いろクマクマ」「放課後オーバーフロウ」など、二人の対比を楽曲で盛り上げていました。

虹いろ・クマクマ

虹いろ・クマクマ

放課後オーバーフロウ

放課後オーバーフロウ

  • provided courtesy of iTunes

 

近年では、「星と翼のパラドクス」(2018)ではこれまでに耳にしたことないサウンドや空気感を表現し、「Good Job!」(2018)では、4打ちをベースしながらも、どこか行進曲的なビートも組み込まれ、シンセサウンドで、アニメ放映からマクロスFらしい未来観へと私達をタイムスリップさせてくれる1曲です。

星と翼のパラドクス (feat. chelly)

星と翼のパラドクス (feat. chelly)

Good job!

Good job!

  • provided courtesy of iTunes

そして、奉祝曲 組曲 「Ray of Water」(2019)

組曲「Ray of Water」 第一楽章 海神

組曲「Ray of Water」 第一楽章 海神

  • 陸上自衛隊中部方面音楽隊, 柴田昌宜, 田口裕子 & 義村恒平
  • クラシック・クロスオーバー
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
組曲「Ray of Water」 第二楽章 虹の子ども

組曲「Ray of Water」 第二楽章 虹の子ども

  • 陸上自衛隊中部方面音楽隊, 柴田昌宜, マシュー・ロー, 田口裕子 & 義村恒平
  • クラシック・クロスオーバー
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
組曲「Ray of Water」 第三楽章 Journey to Harmony

組曲「Ray of Water」 第三楽章 Journey to Harmony

  • 陸上自衛隊中部方面音楽隊, 鶫 真衣, 柴田昌宜, マシュー・ロー, 田口裕子 & 義村恒平
  • クラシック・クロスオーバー
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

では、日本を代表する1曲として荘厳ながらも暖かなメロディーで、日本の美しさを表現されていたと思います。
最新の「時の迷宮」(2021)では、「星と翼のパラドクス」で使用されたらしき音色(1:30~,3:01~)も伺えます。

時の迷宮

時の迷宮

  • provided courtesy of iTunes

氏にとって流行の新しいサウンドかもしれません。加えて、これまでのマクロスFとは大きく異なるスネアの音色や、弦の質感も部分的にややエピック寄りなサウンドになっていたりと同じマクロスFでも新規性が伺えます。そして、8分にも及ぶ大曲ながらも、ミュージカル的なAメロ、キメの多いBメロ、2:30~のサビはリズム隊抜きを抜くというテクニックが見られます。そして、一聴しただけで耳に残る強烈なメロディーのキャッチーさ。かと思えば続く3:01~で落とし静寂を、続く3:14~タイトルでもある「時の迷宮」の「迷宮」を表現しています。そして、この楽曲の魅力のひとつである、3:26~からのストリングスを基調とした(木管やギターも鳴っています)Aメロは菅野よう子が最も得意とする領域で、その技が惜しみなく発揮されています。4:52~はミクスチャー的なサウンドになり、最後の華やかさまで心地よい展開の連続で駆け抜けていきます。6:09~はシェリルの「ダイアモンドクレバス」

ダイアモンド クレバス

ダイアモンド クレバス

  • provided courtesy of iTunes

が、7:22~のギターは代表曲「ライオン」のリズムをモチーフに援用するなど最後までマクロスFの世界観を凝縮した1曲になっています。
1.「音色センス」
2.「圧倒的なストーリー性、構成美」
3.「幅広い音楽性」
この全てを自由自在に操り、尚且新しいサウンドと音楽の発見、新しい音楽を聴く喜びを私達に与えてくれることが出来るのは、菅野よう子さんにしか出来ない技であり最大の魅力だと思います。


音楽はどうしても言葉では完全に換言出来ませんから、「兎に角聴いてくれ!」と懇願してしまいそうになります。それでも敢えて言うならば、「菅野よう子は現代(における)音楽の女神」だと言い表してみたいのです(※ここでいう現代音楽は歴史的な括りではなく、より具体的な商業音楽での世界を意味しているつもりです)。上記のように彼女の音楽はとても魅力に溢れ、世界中のプロの音楽家達にも親しまれ、音楽業界に与えた功績は「ライオン」や「創聖のアクエリオン」を始めとし、その影響力は絶大です。そんな彼女を少なくともファンである私は僭越ながらも、音を、音楽を自由自在に操る女神と表現したくなるのです。2021年は実写版カウボーイビバップもあり、また彼女の音楽を楽しめていることに感謝でいっぱいです。そして、月並みな表現ではありますが、これからどんな音楽が聴けるのか、私はとても楽しみです。

最後に一言、「菅野よう子は最高!」

※補足

菅野よう子作品を語る際に、作編曲家の田中公平先生が提示した指標があります。
1990年代は「センスの時代」
2005年頃までは「サウンドの時代」
それ以降は「洗練された下世話の時代」

これを作品に当てはめると、

「センスの時代」…マクロスプラス天空のエスカフローネ

田中公平先生はセンスの時代の作品を時の記憶、約束はいらない、奇跡の海、プラチナの四作品と指摘

時の記憶

時の記憶

  • SEIKA
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
約束はいらない

約束はいらない

奇跡の海

奇跡の海

プラチナ

プラチナ

サウンドの時代」=攻殻機動隊、WOLF'S RAIN
「洗練された下世話の時代」=マクロスFアクエリオンなどが該当します。

詳しくはこちら(第一回から読むといいです) 

 

 

菅野よう子論 影響を受けた音楽群とサンプリング手法の型取り(rino評)
ポップス菅野よう子としての側面を復習ったところで、次は型に注目して菅野よう子の音楽性を考えていこう。意外なことに菅野よう子の代表/有名曲の構造は分かりやすいほどに名曲を参考にしている節がある。

・まず聴いて欲しいのはこの楽曲
Pushing the sky(カウボーイ・ビッパップより)。

Pushing the sky

Pushing the sky

  • シートベルツ
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

さて、この音源を聴いて何を思うかは人それぞれだが、おそらく映画好きはこう感じるはずである。LUNATIC CALMのleave you far behindの変化球であると。

Leave You Far Behind

Leave You Far Behind

  • provided courtesy of iTunes

というより構造そのものを引用している。そしてleave you far behindがゴリゴリのベースのテクニカルな側面とエレクトロの方向性で超絶かっこいい曲になっているのに対して菅野よう子が作ったPushing the skyはギターソロがメインに置き換わっている。あっちがベースならこっちはギターだと言わんばかりに.全体的な楽器の運び方などを含め、音源的にはleave you far be hindの方が格段に優れているのだが、Pushing the skyも面白いところがある。それはベースのメロディを一部分に集約することで(1m33s〜1m42s)一番、2番のつなぎの役割として落とし込むことで、leave you~で総じて感じる「過度な音源の繰り返し感」というのがさして感じない。そしてその後ギターソロまで入れているからその意味ではこっちの曲のほうが楽器の音を入れ替わりのように楽しめる。そして全体的に楽器がそこまで主張してこない。そう言った点でからより多角的なアプローチをしているのは後者だと言える。なによりlunatic calmをサンプリングしようとするその姿勢が面白い。

 

・be human/ladies and gentlemen we are floating in space

be human

be human

  • Scott Matthew
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

では次にこの二曲を聴き比べてみよう。これは中々凄い。イントロで台詞を話してから話すところや、テンポはまぁ同じだし、まぁ引用の度合いが高い。がしかし、それで生まれたのがbe humanと考えるとやはり菅野よう子のサンプリングのやり方もうまい。一曲としてどっちのほうが「メロディアス」なのかを考えればおそらく、be humanを挙げる人が多いと思う。そのくらい、型自体は物真似であるのにもかかわらず、素晴らしい名曲が生まれている。これはいくつかあって、つまりスピリチュアライズドのladies~が、曲のアプローチそのものはうまいけど誰が聴いてもあからさまなカノン進行でしか曲が成立していないし、全体的にトーンが同じこともあいまって「くどさ」が前面に出てしまっている。かたやbe humanは機械音を定期的にはさみ、鉄筋で味付けをしてメロディはギターで奏でることで曲全体のバランスが終始保たれている。そしてなによりアウトローで悲哀な感じで終わっていくというのも菅野クオリティ。

※因みに、菅野よう子攻殻SACのサントラを作るにあたってスピリチュアライズドからのインスピレーションを受けている感じがします。

trip cityという作品では

trip city

trip city

  • Scott Matthew
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

come togetherと

electricityからの構造を引っ張ってきていることがわかる。

 

・COSMIC DARE(PRETTY WITH A PISTOL)/Overload(sugababes)

COSMIC DARE (PRETTY WITH A PISTOL)

COSMIC DARE (PRETTY WITH A PISTOL)

  • シートベルツ
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
Overload

Overload

さて、この場合はどうか、かなりの具合で引用が激しい。が、ここで感じるのは「曲としての凝り」の度合いはむしろ菅野よう子の方が固めている印象を持つ。後メロディ性で言えばCOSMIC DARE(PRETTY WITH A PISTOL)の方がキャッチャーの印象を持つ(というよりoverloadの方が洋楽性のある低音の気がする、その意味でここでいうキャッチャーさというのは日本人特有のものと考えることも可能)。そして間の使い方や、音のタッチなどの方面でいえば明らかに後者の方が富んでいる。ほぼ同じ構図を持つにもか関わらず展開の見せ方でちょっと違う曲になっているのが面白い。

 

・powder/the Desert music

Powder

Powder

  • シートベルツ
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
The Desert Music: First Movement (Fast)

The Desert Music: First Movement (Fast)

  • provided courtesy of iTunes

まぁこっちからの影響も考えられるが

The Desert Music: Fourth Movement (Moderate)

The Desert Music: Fourth Movement (Moderate)

  • provided courtesy of iTunes

じゃあ、さきほど出したアルジェナの作品以外で菅野よう子がおもいっきりミニマルをした曲ってなによって話ですがこれでしょう。ライヒは偉大ですね。久石的な音楽性を導き出しながら菅野よう子にも影響を与える幅の広さ。the desert musicは音がひたすら繰り返されますが、powderではそれに付随して女性の声が加わります。ライヒ音楽は統一性があり、そこに実験的なミニマリズムが加わることによってあの爽快な音楽性というのが顕在化するのですが、菅野よう子は統一性ではなく、音による親和性で曲を紡いでいった感じがする。あと強弱にそこまで拘っていない。ピアノのが凡な感じなのが少し気になる。こういう曲の場合、もう少しバリエーションがあってもいいとは思う。アニメの劇伴における調整なんだろうけど。まぁこの場合過度に音のバリエーションを増やすか、単一の凡な感じにするしか成立しえない曲なきもするので安牌をとったと考えるのが普通でしょう。

 

・thousand knives(千のナイフ)/Go Ri A Te

THOUSAND KNIVES

THOUSAND KNIVES

  • 坂本 龍一
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
Go Ri A Te

Go Ri A Te

  • provided courtesy of iTunes

マクロスの劇伴の「go ri ate」はある程度音楽に造詣があれば、教授の千のナイフのフォロワー楽曲であることが如実に表れている。というかまぁそのまんま。

(これがデビューってぶっ飛んでますよね、さすが坂本龍一)

がしかし、ただ真似るだけでなく後半に鉄琴や、オルガンでメロディを組み込んでより聴きやすい作品にしていることが窺える。これまでの流れからしてもやっぱりバランスを重んじている。無機質で、ひたすら実験的な音源を積み上げていく教授の作品にたいして、菅野よう子のGo Ri A Teは型としての異質感は残しつつも、聴きやすさ(いわばローカライズ)を重視した作品にしている。

 

ここからは古典、つまりはクラシック音楽を参照している楽曲を紹介します。

・Final shore おお、再臨ありやと/ヴェルディ「Requiem」+ブラーナの「O Fortuna 」

Final shore ~ おお、再臨ありやと

Final shore ~ おお、再臨ありやと

怒りの日(続誦) 怒りの日

怒りの日(続誦) 怒りの日

「カルミナ・ブラーナ」 ~ おお、運命の女神よ

「カルミナ・ブラーナ」 ~ おお、運命の女神よ

(はい、ここで川井憲次につながる流れを決めたいが、あえて自重します)

もうね。こういうのは劇伴作家なら一回はやってみたいものだと思うんですよね。イントロの感じからヴェルディのレクイエム感はみなさん分かるでしょう。おお、再臨ありやと」副題までつけちゃって。というよりあの曲知ってればこの曲がいかに意識しているかなんて別に音楽に詳しくなくてもわかる。そのくらいクラシカルなあの感じというのは再現したくなる。世界で最も知られている曲を書いた映画音楽の巨星ジョンウィリアムズだってジョーズは完全にストラヴィンスキーであることは音楽知らない人でも誰でもパッとくるもんです。プリクエルSWの中でも見所の戦闘シーンで青鬼ならぬ赤鬼(ダースモール)戦で流れるduel of the fatesなんかもその流れかな。

運命の闘い

運命の闘い

  • シティ・オブ・プラハ・フィルハーモニック・オーケストラ & クラウチ・エンド・フェスティヴァル合唱団
  • サウンドトラック
  • ¥153
  • provided courtesy of iTunes

散々バラエティや映画音楽で使い回された曲。

ヴェルディの「レクイエム」とカルミナブラーナ「おお、運命の女神よ」は。壮大な楽曲を書こうとするとみんな大体この曲の二番煎じになる。だからこそ、これらの曲を意識した曲が作られても「潜在的に」刷り込まれすぎてパクリ云々とかではないんですよ。ジョンウィリアムズのクラシックオマージュっぷりはこの2つ記事にちらっと書いたので気になる人は是非。

sai96i.hateblo.jp

sai96i.hateblo.jp

その意味で菅野流の「壮大なクラシック」の立ち位置を示した楽曲がこれというのは凄く納得できる。見事な再現&換骨奪胎ぶりには驚かされます。一人の劇伴作家としてこれをやり切った時はさぞ楽しかっただろうなというのは想像に難くないです。クラシックのアプローチという意味で激推しの一曲です。個人的に面白いと思ったのはクラリネットですかね。一見陰に思えて案外主役を張っていると思います。

 

・blaze/交響曲5番第一楽章(ショスタコーヴィチ)

BLAZE

BLAZE

同じくクラシック引用シリーズでいうとこの曲も顕著。マーラーがアダージェット情緒的楽曲の最高位を締め、以降マーラーのフォロワーが溢れたようにであり、一本柱になっているのと同じように野太く、骨太で単純な旋律といえばショスコヴィなんですよ。系譜としてはまさにマーラーからのショスタコーヴィッチです。さてエスカフローネのblazeを聴いてみましょう。あからさまなショスタコーヴィッチの味を残していることがわかります。

 

・revenge/ボレロ(モーリスラヴェル

REVENGE

REVENGE

  • provided courtesy of iTunes

 

これも露骨なほどラヴェルボレロを参考にしていますね。前半はホルストの惑星組曲の木星みたいな感じがします。木星+bolero=revengeという。ただ後半もうちょい打楽器の音をあげてもよかったんじゃないかと思う。はと思ったんですけどエスカフローネのサントラ曲ってバックボーンがクラシックの曲が多くて菅野よう子版:クラシック音楽作品集みたいになってます。

 

high spirit/ワーグナーよりワルキューレの騎行

high spirit

high spirit

ワルキューレの騎行

ワルキューレの騎行

  • provided courtesy of iTunes

これはイントロが特に顕著なのですが、もろ意識していて聴くたびに笑ってしまう。

 

漆黒のカデンツア/ショパンノクターン 2番 変ホ長調 9-2

漆黒のカデンツア

漆黒のカデンツア

ノクターン 第2番 変ホ長調 Op.9-2

ノクターン 第2番 変ホ長調 Op.9-2

  • エヴァ・ポブウォツカ
  • クラシック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

もっというとこれにラフマニノフ味が入ってる。ロシア+ポーランドのピアノ作品の合わせ技っていう印象がこの曲にはありますね。同じくEVOLのアルバムからあからさまなクラシックオマージュが感じられるのがこれ

創聖カルナバル/ホルストより惑星組曲:火星

創聖カルナバル

創聖カルナバル

  • provided courtesy of iTunes

一瞬スターウォーズラインと思うかもしれないですが、実はホルスト

※最近ブログ上でずっとホルストの名前をだしていますが、宇宙・戦争系の壮大テーマはだいたい火星からというのはれっきとした事実なのでどうかご容赦を

というよりもSWの有名劇伴はホルストワーグナーコルンゴルトヴェルディがネタ元。ウィリアムズが凄いのはそれらを継承しつつ新しいサウンドで展開しているところ。それに比べたら然しもの菅野よう子のクラシックの使い方はすごく陳腐ではある.ただ、この曲もそこそこは変わっていて、つまりはイントロ/アウトローが火星という使い方。言ってみればそれだけの曲なのですが頑張ってSWと火星感を出そうとしている労力は伝わってくるので一聴の価値はあります。

・sora/ジムノペディ

Sora

Sora

  • シャンティ・スナイダー
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

まぁただのサティ病だよね。ジムノペディ。一体この曲がもたらす神秘性はなんなのでしょうか?そこにはひたすらに「繰り返し」であること意外に特出しているところはありません。いまでこそ涼宮ハルヒの消失に、ゲームぼくのなつやすみ2に使われ、それを除いてもサティの音楽性っというのはあまりに大きな大衆性を帯びましたが、サティは和声進行や対位法を無視したその作風から異端児と呼ばれていたことからもわかるように当時の音楽シーンにはあまりに独自性の強すぎる人であった。それはジムノペディをはじめとする諸作に現れている。とにかくなにもない、というより消えていった調号、そして拍子などどんどん削って、残った音楽があれなわけです。その意味で何もないんです。本質的には。がしかし、その無の音楽性が今では当たり前になっているのを見ると、サティのやったことは大成功なわけです。話を戻すために繋げるとこう言ったポップスにも使われているわけですから。まぁ見事なまでのサティの曲なので、あれがこれがという曲でもないですね。final shoreと同様、当たり前となった音楽をポップスに展開するという試みとしては中々いいと思う。というのも先述した通り、この曲はそのまま使われるケースもしくは劇伴として似たような楽曲が作られることの方が多いからだ(そしてそれは圧倒的に正しい)。誰もが知っている型を思わぬ形で展開する菅野よう子のセンスが光る一作です。

蛇足:音楽CDショップ屋にいくと端っこに「自律神経系ミュージック」だの「リスニング」などの一体これは何を指してるんだというコーナーがありますが、あれは思うにサティの作品の「何もない」の延長の先にあるものではないのかということを、これを書いててふと思いました。現代だとマックスリヒターの音楽がまさにそのコーナーにあったりするんですよね。なのであながち間違っていない(と思いたい)。

クラシックの話はこれくらいにして、ポップスにおける菅野よう子論に戻ります。

 

・Ask D.N.A/Where It's At(beck)

Ask DNA

Ask DNA

  • シートベルツ
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
Where It's At

Where It's At

  • provided courtesy of iTunes

これはイントロ部の引用型の例。でもこれは分かるな。BECKオルタナ性って本当かっこいいですもの。構造引用型では洋楽から引っ張ってくるケースが多い。

・ダニエル/ Will Not Forget You(Sarah McLachlanI)

ダニエル

ダニエル

I Will Not Forget You

I Will Not Forget You

一方で劇伴はやはり映画音楽ネタからが多い。

・space lion/love thema

SPACE LION

SPACE LION

Love Theme

Love Theme

  • provided courtesy of iTunes

ヴァンゲリスシンセサイザー畑出身のため、一音に対する解釈の幅が大きい。そしてこの曲ではサックスがメインとなってメロディを奏でているが大事なのは裏で鳴っているサウンドである。映画劇伴作家の中でも唯一無二性を誇るヴァンゲリスの音楽.だからこそ、真似るとすぐネタ元として上がってきます。多分散々言われていると思いますね。tears in rainという作品では「裏でなっているメロディ」の扱い方が特に秀逸である。そして展開。54s前後から盛り上がり、1m03s前後でまた上がる。とにかくシンセサイザーにおける音の性質をとことん極めた人だと思う。ではspace lionはどうか。まぁ意識していることに違いはない。が、サックスの音の扱い方をみるにPink Floydのus and themからの影響とも考えることができる。ß(vanfelisとプログレ、一見どう共通性あるのかと思うかも知れませんが、Pink Floydと同様五大プログレバンドと言われたイエスに加入に誘われたことがあることから分かる通りそのサウンド性はプログレにおける実験性に近いものがある.プログレについてはこちら

sai96i.hateblo.jp

※実際には加入しなかった。

(がしかし、してたらイエスも別の意味で凄いバンドになったんだろうなと夢想)

Roundabout

Roundabout

Us and Them

Us and Them

  • provided courtesy of iTunes

因みに菅野よう子はon the runというPink Floydの曲名まんまの作品を作っているから聴いてないはずない。

そもそもが全世界の売り上げでtop10に入るようなバンドなので音楽をやっていてPink Floydを聞いたことがない人っていうのもまぁ珍しいですが。

ちなみに、過去菅野楽曲で明らからにヴァンゲリスの曲が意識的に模倣された例はもう一曲あって、cm曲で「Exaelitus 」というのがあるのですが

うまいこと隠してますが、核となる部分を真似しているのでどうしてもこの曲を意識していることを感じる。

Blade Runner (End Titles)

Blade Runner (End Titles)

  • provided courtesy of iTunes

・Pot City/Dub Driving(アンジェロ・バダラメンティ)

 
POT CITY

POT CITY

これなんかも、ありがちなラインと思いきや、実はアンジェロからなんじゃないかなと思ったり。だってメロディの繊維が強いだけでほかは凄く意識している形に自分には聞こえるのですが、みなさんどうおもいますか?

・tank!/ get it on(chase)

Tank!

Tank!

Get It On

Get It On

  • Chase
  • ジャズ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

意外にもtank!もサンプリング的な作りなんですよね。とうかカウボーイ・ビパップとまでいうくらいだから、ビパップ系の音楽は相当数参考にしていると思う。

chaseのget it onのサビメロディがまさにそんな感じ。むしろget it onの拡張版としてのtank!と思うとより楽しめる気がします。まぁジャズって色々奥が深いから必ずしもこれがっていう断言はできませんが、意識していることは間違いなさそうです。ただし、これも菅野よう子の手にかかったことで圧倒的にかっこいいサウンドになったのも事実。某記事によるとtank!はアメリカの野球会場でも流れているそうで、カウボーイビパップ自体が海外人気が高いということもありそうですが、単にジャズ曲の一つとしてカウントされているなんてこともありそうですね。そしてビパップのOSTは基本的に作品の方向性からしてもジャズ音楽のオーダーが重要な要素になったはず。bad dog no biscuits/Midtown(Tom Waits)なんかがいい例でトム・ウェイツのMIDTOWNの音を重低音よりの方向、とりわけジョンバリーが編曲した(作曲じゃないよ)007のテーマ的

(007のメインテーマはモンティ・ノーマンが原曲・作曲者なので誤解ないように)

にアレンジをした曲になっている。

BAD DOG NO BISCUITS

BAD DOG NO BISCUITS

この曲も出だしは引用型である。

ELM/kiss from a rose(SEAL)

ELM

ELM

  • Pierre Bensusan
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
Kiss from a Rose

Kiss from a Rose

  • シール
  • R&B/ソウル
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

Clutch/3rd Quadrant(ケニーギャレット)

Clutch

Clutch

  • シートベルツ
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
3rd Quadrant

3rd Quadrant

  • ケニー・ギャレット
  • ジャズ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

これなんてサックスのラインを聞けばケニーギャレットってすぐわかる話で、この辺りのわかりやすさは多分監督からの指示だと思う。なんせビパップの名奏者マイルスデイヴィスとスィングジャズの巨匠デューク・エリントンの二人から認められた演奏力を持ち、すなわちスウィングジャズ(アンサンブル重視)・ビパップ(即興重視)の両刀型なわけで、それを知った上で聞くClutchはすぐに察しがつく。でもまぁそれを演奏してるシートベルツが一番すごいのかもなぁ、、

 

同じカウボーイビパップのジャズラインだとBlack Coffeeを聴く限り

Black Coffee

Black Coffee

  • シートベルツ
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

ブリジット・フォンティーヌの「ラジオのように」も参考にしている気がする。

COMME A LA RADIO

COMME A LA RADIO

  • provided courtesy of iTunes

ここまでくると本当に菅野よう子は監督指示にしたがって書いているとしか思えない。なぜなら菅野よう子はそんなにジャズに詳しくないっぽい発言をしているから。全体を通してカウボーイ・ビパップのOSTは元ネタジャズ楽曲がありきなきがしてならない。

 

さて、これまで+な事を書いたが、ここでちょっとマイナスな話を。

※好きな作家ゆえ本当はこういう話はしたくないのだけど、マンセー記事にはしたくないので

今まで挙げてきたように、菅野よう子楽曲は秀逸なメロディラインの前に、秀逸な楽曲の型取りが目立つ。故にやりすぎた事例をここで一つ紹介しよう。トルキアという楽曲がある。この曲は菅野ファン、並びに攻殻SACファンなら誰でも知るシリーズ屈指の人気楽曲。

トルキア

トルキア

  • provided courtesy of iTunes

では次に

Gárkit (Escape)

Gárkit (Escape)

  • provided courtesy of iTunes

サイバーバード/butter sea(Hooverphonic)

サイバーバード

サイバーバード

Battersea

Battersea

  • フーヴァーフォニック
  • ポップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

特にこれはかなり意図的だと思われる。

ride on technology/jungle-out(no jazz)

Ride On Technology

Ride On Technology

Jungle-Out

Jungle-Out

  • NoJazz
  • ジャズ
  •  
  • provided courtesy of iTunes

まぁもう一段階深い視点で考えればこのNo jazzのjungle outもネタ元はλさんご指摘の通りブレッカー・ブラザーズのsome skunk funkをよりテクニカルにしたものなのですが。

Some Skunk Funk

Some Skunk Funk

  • provided courtesy of iTunes

ここでいいたいのは、ride on~が参考元とほぼ変わらないということです。

mushroom huntig/let the good shine(DJ Food)※itunesないっぽいです

MUSHROOM HUNTING

MUSHROOM HUNTING

  • シートベルツ
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

Jazz Brakes Vol. 4

Jazz Brakes Vol. 4

Amazon

You make me cool/Blue Light, Red Light(ハリー・コニックjr.)

You make me cool

You make me cool

  • 古川昌義
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
Blue Light, Red Light (Someone's There)

Blue Light, Red Light (Someone's There)

  • ハリー・コニックJr.
  • ジャズ
  • ¥204
  • provided courtesy of iTunes

 

Words That We Couldn't Say/Shape Of My Hear(sting)

WORDS THAT WE COULDN'T SAY

WORDS THAT WE COULDN'T SAY

  • Steve Conte
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
シェイプ・オブ・マイ・ハート

シェイプ・オブ・マイ・ハート

  • スティング
  • ポップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

・cloud9/Une Heroine(Laurent Voulzy)

cloud 9

cloud 9

Une héroïne

Une héroïne

  • Laurent Voulzy
  • フレンチポップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

アイドリング/Axis Of Ignorance(Nils Petter Molvaer )

アイドリング

アイドリング

Axis of Ignorance

Axis of Ignorance

  • provided courtesy of iTunes

 

・want it all back/Zodiac Sign(Imperial Drag)

Want it all back

Want it all back

  • 山根麻衣
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
Zodiac Sign

Zodiac Sign

  • IMPERIAL DRAG
  • ポップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

scooters/mr.blue sky(Electric Light Orchestra)

Scooters

Scooters

の曲をそれぞれ組み合わせを聴いてみよう。このレベルになると流石にきついところがある。そりゃ全体の構図など総合的に俯瞰したら違うものにはなるけどそれは当たり前で、むしろそこすら同じであったらこれは悪質な模倣でしかない。創意工夫が一切合切感じられない。このように菅野よう子楽曲は「良い」曲がある反面、元ネタを露骨になぞってしまう傾向がある。(オーダーによるもの中もしれないが)

そしてそれは所謂「パクリ」というマイナスなイメージを引きずってしまう。その行為自体は否定しないが(文化の歴史は真似事でしか発展しないし)限度というものがある。今ではこんな真似は絶対にしないと思うが万能作家であれど、意図せぬ失敗をしているものである。当然トルキア,ride on technologyは一楽曲として素晴らしいし(サイバーバードは個人的には微妙)、だからこそ今なお色々な人に愛されている。その意味では「より良質にしあげている」し作曲家としては成功している。がしかし、そこに掛かってる菅野よう子的なアプローチの「発想」はゼロであることもまた事実である。

注)ま、こんなマイナスなところ書いたところで売り上げで表される数値に揺るぎはないわけで、ネットで何を書かれようがその数字そのものは揺らがず、CDメーカーの人間もそれを知っている。だからそれを知らない我々がどれだけ喚き立てようとも意味はない。がしかし、こういった意見もある程度の正当性をもつものであるため書いた。

 

小咄でフォローをすると、ロジャー・ジョセフ・マニング・ジュニアらがJellyfishというバンドで70年代を隆盛したパワーポップを90年代にBellybutton(1990)とSpiltMilk(1993)の2枚で一世を風靡したあと

Imperial Dragを結成。同名のアルバム「Imperial Drag」出したのですが

Imperial Drag

Imperial Drag

  • IMPERIAL DRAG
  • ポップ
  • ¥1833

これほどまでに完成度が高い作品なのにあまり知られない、いわゆる隠れた名盤になってしまった作品なんですね。故に、この隠れた名盤よりZodiac Signを当時96年に把握してそれを98年に反映するという姿勢そのものはかけねなしに評価していいと思います。ちなみにパワーロックのテイストをJ-popに変換したのがofficial髭男dismっていうことを覚えておくと、彼らのサウンドの一抹が垣間みえて大変面白いし、十分語りがいもあるのですが、それは別の話。いつかやります。

 

 

閑話休題

坂本真綾プロデュース作品について。

では次は坂本真綾プロデュース作品群について語っていこう。菅野よう子楽曲の作品群で外せないラインとして音楽作品として坂本真綾作品がある。97~2003年の間の作品をプロデュース。数枚のシングルとアルバム作品を4枚の作品を残しました。ここではそれらの収録曲よりどういう魅力があるのか、そして96-03年という時期に作ったという事実がその後どういう事象につながるかを語っていきます。

それではまずはλさんの坂本真綾楽曲の魅力についてです。

坂本真綾さんの初期4部作から観る菅野よう子らしさ

 初期作品の全体像ですが、ギターポップやソフトロックがベースとなりつつも、その楽曲ジャンルの幅広さは相当に広く、それもまたオールラウンダー菅野よう子さんの「プロデュース力」の賜物だと思います。菅野よう子は天才作曲家でもありますが、坂本真綾4部作通して「天才プロデューサー」でもあるということを改めて認識させられます。菅野よう子さんは坂本真綾さんというアーティストやマクロスFといった作品を「プロデュース」も素晴らしい偉大なお方です…(マクロスFの楽曲はすべて!菅野よう子さんプロデュースです!!!)。

また、ざっくりで恐縮ですが、アルバムのうち数曲はビートルズを参考にしているのでは?と感じる曲があります。他にも、この頃からもマクロスFアクエリオンに通じるサウンドを感じることが出来、菅野よう子サウンドを楽しむことが出来ると思います。近年の坂本真綾作品は一流ミュージシャンを複数起用したり、他にも「色彩」「逆光」「躍動」「独白」の2文字作品により楽曲間でブランドを築いていたりと新しい方向に進んでおり、(坂本真綾さんのブランドという一貫性はありつつも)初期とは大きく異なります。近年の作品はアニメとのタイアップが多く、配信が流通した時代のため、単品で個性が強い楽曲が多いのに対し、初期作品4作品はすべて菅野よう子プロデュースで、当時は配信も無いためアルバムベースでの作品となっており、このように様々な点で対称的です。

 

どの楽曲も単なるギター、ピアノ、ドラム、ボーカルの基本楽器で構成された楽曲ではなく、和声だったり、コードだったり、転調だったり、シンセの音色だったり、楽曲の構成だったりどれも「普通のJpop」に収まらない菅野よう子節がよく分かる、素晴らしい楽曲がたくさんありますので、是非お聴きくださいませ。

※冒頭の数字はトラックナンバーです。

1stアルバム「グレープフルーツ」

5.「ポケットを空にして」

ポケットを空にして

ポケットを空にして

  • provided courtesy of iTunes

マンドリンが活躍する1曲。スカのリズムがありながらも、全体的にゆったりとしたビート(キックが1拍目だけにくる感じ)、右から聴こえる小物の打楽器、アーコディオン、タンバリンなどが使用されており、マンドリントレモロ奏法も相乗効果で、楽器の小隊編成が面白い1曲です。それぞれが楽器を持ち寄って自然と音を奏でている姿まで想像出来てしまう、このサウンド構成力が本当に凄い…。いい音楽を作るも物凄いことなのに、それだけでなく、曲からその音楽の姿、イメージまで聴者に呼び起こさせるそういう楽曲になっているのは、本当に天才的と表現せざるを得ないです。

5.青い瞳(ドリアン)

青い瞳(REMIX)

青い瞳(REMIX)

  • provided courtesy of iTunes

菅野よう子作品を俯瞰したときに、この曲のような少女が一人で目を閉じながら祈りを捧げるように歌う姿が浮かび上がる楽曲は「Cloe」「VOICE」「時の調べ」「オムナ・マグニ」「アイモ」「 Early Bird 」など多数あり、モード(特にドリアンスケール)を使わせたら敵うものがいないのでは…というくらい菅野よう子さんの武器のひとつであることがよく分かる楽曲です。

VOICES

VOICES

オムナ マグニ

オムナ マグニ

アイモ

アイモ

  • provided courtesy of iTunes

(個人的に「少女祈祷曲」シリーズと呼んでいます。それくらい多く菅野よう子さんに特徴的)

8.「約束はいらない」

約束はいらない

約束はいらない

  • provided courtesy of iTunes

センスの時代の代表曲。低音でベースとして鳴り続けるピアノの使い方が奇抜だし、知らない間にめちゃくちゃ転調していたりと、当時から異彩を放っていたことがよく分かる楽曲。こんなに自然に転調してしまう(特にAメロ、Bメロといった節の中での転調)楽曲はそうそうないと思います…。(プラチナも相当するでしょう)サビがあまりにも美しくメッセージ性が強いので、何度も繰り返すという手法は他作品にも多いです。(落ちサビ、ラストサビ、更にサビと3回繰り返している)

2ndアルバム「DIVE」

2.「走る」

走る(Album Ver.)

走る(Album Ver.)

  • provided courtesy of iTunes

イントロの弦編曲から一瞬にしてキャッチーさとワクワク感がたまりません。イントロの長さも今ではちょっと考えがたいくらい長い(のも面白いです)。サビで一気に景色が変わる感じ、1番を基本、弦のみで構成し、ベースがない(入っても本当に少しだけ)という構成は彼女が大好きな手法です。サビに白玉で1音ずつ上昇するストリングスもあるある。スネアのクローズリムショットは前半から登場するものの、メインビートとして登場するのは2番のサビからという意外さ、この発想力が素晴らしい…。4:32~で一度落としてから4:47~のエンディングでひたすらストリングスがスケールで下降する動きと、白玉で1音ずつ上昇していく構成と、アウトロを作らず、フェードアウトで締めることで「走る」を表現しております。この構成力…天才的です。全体で5:34もあるのにこの構成力があることで、何一つ無駄なものはなく、必要な展開、構成になっているのが特徴です。とにかくこの曲は聴いてほしいイチオシです。

因みに、花澤香菜さんの「マラソン」という曲

マラソン

マラソン

  • provided courtesy of iTunes

BPM=170、この「走る」はBPM=168とかなり近い。更に視野を広げてみると花物語OP「the last day of my adolescence」

the last day of my adolescence

the last day of my adolescence

  • provided courtesy of iTunes

(作詞:meg rock 作編曲:ミト 歌唱:神原駿河(CV:沢城みゆき))のBPMは177。神原がスポーツ少女であることを考えればこの他と比較した時の高さも妙に納得がいく…。このBPM=170付近は、人間の「走る」という行為にピッタリのテンポなのかも…?非常に興味深いですねぇ。

3rdアルバム「ルーシー」
筆者の4部作の中での一押しです。今から丁度20年まえの作品ですが、毎年数回は自然と聴いてしまいます。超名作だと思います。4作品の中でもかなりとっつきやすいのではと思います。オススメです。 楽曲の時間が「Lucy」1:43、「アルカロイド」4:09、「Life is good」4:13の3曲を除きすべて5分超えしており、「坂本真綾菅野よう子の4部作の中では収録時間が59:17と一番長い作品です。菅野よう子得意の楽曲の展開のされかたがよく分かるアルバムではないでしょうか。

1.Lucy
フランス印象派を感じる。ゆったりで素朴なピアノと対称的にストリングスが艶やかに奏でられているのが美しい1曲。

Lucy

Lucy

  • provided courtesy of iTunes

2.マメシバ

マメシバ

マメシバ

  • provided courtesy of iTunes

ルーシーからのアタック感がしっかりあるギター鳴る、この流れが気持ちいい(この頃の曲はアルバムで聴く想定であることがよく分かる)。
曲中にツーファイブがいくつも組み込まれているのが美しい曲。
ストリングスはやっぱり1音ずつ順次上昇するし、分かりやすい菅野よう子らしさが詰まっている曲です。
4:00~のベースが8分で刻み、ドンドン展開していく感じも菅野よう子のお得意の手法です。全体で6:07!こちらも構成力が光る1曲です。

3.ストロボの空

ストロボの空

ストロボの空


Dメロの終わりが「ダイヤモンドクレバス」。笑っちゃいますね

ダイアモンド クレバス

ダイアモンド クレバス

(※「ダイヤモンドクレバス」の方が後の作品です!)

4.アルカロイド 

アルカロイド

アルカロイド

  • provided courtesy of iTunes

3連ベースでスキップしている感じなのは分かるとして、
サビ頭がAM7(ⅣM7)で始まって、次にDM7(#11)(⇢E調にないコード、転調)が来るのがもう天才…。
これによってより浮遊感が出るからすごい…。
この「気持ちよさの核」があるから、繰り返していても良いし、繰り返す「べき」なんですよね。本当に見事だなぁと感服します。

5.紅茶

紅茶

紅茶

  • provided courtesy of iTunes

R&B感もあるけども、ベースが頭でしか鳴らないという、大胆なリズムの空白が魅力だと思います。この手法はマクロスFの「射手座☆午後九時 Don't be late」にも通じます。

射手座☆午後九時Don't be late

射手座☆午後九時Don't be late

  • provided courtesy of iTunes

ベースなし(あるいは本当に部分的に必要なところしか鳴らない)が手法の1つとして使いこなしているのが凄いですね…。右でずっと鳴っているハープも8分を基本としつつも16分でフィルイン的に機能していたり、コード構成音の3or4を鳴らすのではなく、add9でバラけさせたり、その登場タイミングが巧(うま)すぎる…。左右でハイハットをバラけさせているのもスパイス的に機能していたり、どこを聴いても面白いです。

6.木登りと赤いスカート

木登りと赤いスカート

木登りと赤いスカート

  • provided courtesy of iTunes

ものすごくビートルズ感ありません…?この頃からギターが低音単音で鳴らしていて、菅野よう子らしさが垣間見える作品です。

7.Life is good

Life is good

Life is good

  • provided courtesy of iTunes

坂本真綾菅野よう子では、一般のJpopに近いかなり分かりやすい作品と思いきや、音楽的にはBメロ頭をE/Dのオンコードで始めたり(雰囲気がガラリと変わる効果がある)、キメの「life is good」でBmのままでもいいのに、そこからCまで進むことで引っ掛けたりとただの1曲に収まらない小技も光る楽曲になってます。

4thアルバム「少年アリス
2. ソラヲミロ

ソラヲミロ

ソラヲミロ

  • provided courtesy of iTunes

少なからずマクロスFサウンドに繋がっているところがある思います。
マクロスFのしか知らないという方はこの作品に触れ、サウンドの原点に触れてみてください。

3. スクラップ~別れの詩

スクラップ~別れの詩

スクラップ~別れの詩

  • provided courtesy of iTunes

筆者イチオシ。とにかくカッコいい。
Aメロでリズム感(刻む感じ)を作らず空白を作りだすことで、ドラムのフィルインが更に強烈な印象になるこの美しさ!(参考に「射手座☆午後九時 Don't be late」)他にも、ベースも2度の音程で動いていく感じが気持ちいい。
後半は同じフレーズを繰り返してしますが、この繰り返しがひたすらに続いていく感じ、ドラムとベースでドンドン熱情的にボルテージを上げていく感じ、アルバム間で言えば、この曲は前作の「走る」に対応している楽曲と捉えることも出来るのではないでしょうか。

7. ヒーロー

ヒーロー

ヒーロー

  • provided courtesy of iTunes

このサウンド感、広い意味で捉えたときに、のちのマクロスF「サイレントでなんかいられない」「モノクローム」「天使になっちゃった」にも繋がっているのかな、と。菅野よう子サウンドのひとつの原型が垣間見える作品です。
「ヒーロー」は長めの曲が多い菅野よう子作品の中でも3分を切る珍しく短めの曲。

8. 夜

夜

  • provided courtesy of iTunes

モーダルの中で自由に動かす感じはアクエリオン(特にOP曲)にも通じるところが感じられます。Lucyの「マメシバ」やDIVEの「走る」などにも見られるように、8分でベースが刻むのが(ただのベースの演奏ではなく)曲の核になっている作品が多く、初期のブームだったのかも知れません。

9 CALL TO ME

CALL TO ME

CALL TO ME

  • provided courtesy of iTunes

テンポが近く、英詩ということもありますが、サウンド感が特に「gravity」に近い。もしこの曲が菅野作品のアニメで使用されるなら「WOLF'S RAIN」かな、なんて想像してしまいます。Dメロの展開はビートルズっぽくもあり、やはり真綾作品はビートルズ感があるな、と作品を通して聴いたときに認識したことです。

10. 光あれ

光あれ

光あれ

  • provided courtesy of iTunes

強烈なサビで始まるイントロが天才だと思います…(あり得ないくらい気持ちいい)。
サビのリズムと跳躍が「光あれ」というタイトルを体現している。
これは、「light of love」にも通じる、気持ちの開放を音の跳躍で表現するという音楽の大事な要素で、それが気持ちよく表現されていると思います。繰り返しになりますが、この曲はとにかくサビが強く、リズムと跳躍の相乗効果が最高だと思います。フレーズが強いので、これをモチーフにドンドンドラムやベース、ギターの楽器隊で盛り上げる手法がすごく活きると思います。

11. ちびっこフォーク

ちびっこフォーク

ちびっこフォーク

  • provided courtesy of iTunes

コードのボイシングでぶつかる感じが非常に気持ちいい。
近年の2010年以降の曲よりもかなりしっかりダイナミクスレンジがあるように聴こえるし、バラ弾きのタイム感の効果などもあって、ギターの魅力を最大限に引き出している素晴らしい曲。

12. park amsterdam (the whole story)

park amsterdam(the whole story)

park amsterdam(the whole story)

  • provided courtesy of iTunes

ビートルズに感じるんですよね…。

14. おきてがみ

おきてがみ

おきてがみ

  • provided courtesy of iTunes

菅野よう子作品を聴いていると、このピアノのサウンドだけで菅野よう子サウンドだと分かります。コスモ石油でおなじみの「Seeds of Life」マクロスFsongbird」のピアノと同じサウンドです。ストリングスもそうですが、菅野よう子作品は楽器単体で聴いてもらしさがあるのも強みですね。

以上、坂本真綾さんの初期4部作から観る菅野よう子らしさでした。

 

・菅野楽曲史とJPOPとビートルズの流れから考える坂本真綾ポップスソング(rino評)

 

アニメで提供する劇伴音楽より大衆的な意味でのポップス性が出ているため、人によってはこのラインの曲が好みという人も多いと思います。菅野プロデュースの中から生まれた曲で言うとを代表する一曲がプラチナは外せないでしょう。

プラチナ

プラチナ

  • provided courtesy of iTunes

そのほかにも

ともだち

ともだち

  • provided courtesy of iTunes

このともだちはギターが聴きどころ。メロディが歌主体でそれらの効果音的な側面を担っている。常にちょっとした音の付け足しが入ってきてその音がチョイスがいい。でありながらそれまではキーボードや笛が主体だったのが最後のアウトローは締めに使うところが構成における妙だなと思います「大好きなともだち」までは色々な楽器がなっているので余計にスッと落ちる感じがこの曲の潔さみたいなものと繋がっている。あとこれは意識しているかどうかわからないがどことなくメロディがキャロルキングのYou've got a Friendを彷彿とさせている。

You've Got a Friend

You've Got a Friend

  • provided courtesy of iTunes

そのせい70年代の洋楽にありそうなポップス感がこの香りがどことなくする。

グレープフルーツより青い瞳

(remix版を貼ったのは坂本真綾作品のアルバムに入ってるver.にしたかったからでそこに拘り的な意図なし

青い瞳(REMIX)

青い瞳(REMIX)

  • provided courtesy of iTunes

これは元はエスカフローネの挿入歌。ハープ、打楽器、オーケストラ系の楽器でのみで紡がれる楽曲。歌は単調、しかしこの音楽での聴きどころはむしろ曲にライドするタイプ。そしてアウトローである。最後の最後まで弦楽器が響いて終わる感じも素敵。アニメ挿入歌だから劇伴よりのポップスとも言えます。それがわかるのが1m50sからの弦楽器のメロディ。実際にどうかはさておき、中盤のあの感じはすごくドヴォルザーク味がするのですが、それっぽい言及がないので私の思い違いでしょうか。潜在的に出てる可能性はあると思う。あとこれは致し方ないことなんだけど鍵盤ハーモニカと弦を使われるとどうしてもニーノロータが(というよりイタリア風)ちらつく。少なくともこういう入れ方は普通のポップスではあまりしない。(というより入れる余地がない)

 

それでは次にアルバム作品について各トラックについてはλさんが書いてくださったので4枚のアルバムで線を書くように全体を俯瞰して考えてみる。

グレープフルーツ

Grapefruit

Grapefruit

グレープフルーツはデビュー作ということもあり、模索の面が感じられる。あと坂本の声がまだ17歳の未成熟なところもあって、全体的二曲に対してあどけなさが残っているそれが逆に混じりっ気のない醇乎な歌声として機能しています。全体的にアニメソングが好きな人には向かないタイプの曲が多いというのが流石菅野よう子。そしてなによりも青い瞳などのお得意楽曲も含まれているため、語るには外せないアルバムではあります。

余談

λさんが少女祈祷曲と評した曲の中で挙げた作品群ではvoiceが個人的に好きなのですが、以前某番組でElements gardenの上松氏がどこか異世界の民謡的であり、ノスタルジーとコメントしていましたが、「祈祷曲を歌っている」少女というフレーズの方がわかりやすいなと思った次第です。

DIVE

Dive

Dive

さて、diveはどうか。これも良作ばかりなのだ。i.d. 走る、そして表題作にdiveこの三作品だけとっても素晴らしい。まず一番分かりやすいのでいくとI.D.これは多分皆さんもパッとくるでしょう。イマジンのイントロであると(ピアノの音もそれなりに加工してるし)

イマジン

イマジン

まぁなんだ。とりあえずイントロでこれを真似しとけばウケるだろっていう奴ですね。この手法で世界的にセールスを成したバンドで言うとオアシスがそうかな。まぁこのバンドは90年代における「The Beatles」なんて呼ばれてますからね。

Don`t Look back in anger

Don't Look Back In Anger

Don't Look Back In Anger

  • オアシス
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

(今年はこの曲が別の意味で流行りましたね。なにでとは敢えて書きませんが。)

ちょっと脱線しますけどイエスタデイという映画は「ビートルズのいない世界線」に売れないシンガーが飛ぶっていう側から見たら、なろうもびっくりなあらすじなのですが

当然なろうの9割を占める石みたいな作品群よりちゃんと考えられていて面白いのですが

(劇中にはコカコーラ、ハリーポッターもない世界なので見方のフレームワークを広げた上で解釈するのであれば「既存の人気コンテンツがない世界」に飛ばされて、そこにビートルズも含まれていたと言うべきでしょうか。)

ともかく、その世界線に飛んでから主人公が慌てて色々な検索ワードをかけるのですが、その時にオアシスは出てこないのです。他にも色々出てこない単語があるのですがちゃんとした意味で「ビートルズ」なしに存在しないバンドという意味合いのもと意識的い出されていたのがoasisだったので鑑賞したときうなってしまいました。いやまぁ、その道に詳しい人からすれば当たり前だとは思うのですが。ちなみにローリングストーンズは出てたのですが、こっちも危ういだろと突っ込んだのは私だけでしょうか。

そう言うネタもそうですが、単に一本の映画として面白いですしビートルズが存在しない世界線だからこそできる展開をラストにもってきてて、これはちょっと意外だったけど、感動できた。ぜひご鑑賞ください。お茶の間で見ても問題ない家族向けですし、映画ファンが見たら「このアーティスト写真ってあの監督の写真の作品を意識してるだろwww」という小ネタも満載ですのでおすすめの逸品です。ちなみに本作の監督のダニー・ボイル作品だとトレインスポッティングとかが有名です。

これもまた名作の一つなので押さえておきましょう。

イエスタデイ (字幕版)

イエスタデイ (字幕版)

  • ヒメーシュ・パテル
Amazon

脱線が過ぎたので戻ります。

 

なんというべきかDIVEは声優2作目にしてはコーラスやストリングスなどあり得ないくらい豪華だし、ベース・ドラム・ギターのプレイヤーはなんと外人どころかマスタリングがテッド・ジェンセン(Lucyにも関わってます)ですよ。Talking HeadsThe Rolling Stones などの大物アーティストの楽曲にも関わったことのある大物が関わっています。なので、決して声優アルバムだからと言って色眼鏡で馬鹿にはできない度でいうと本作は化物です。最高のポップスアルバムです。

以下リンクを押せばテッド・ジェンセンが手がけたディスコグラフィーが出ます。

こういう人たちが関わっているため名盤が生まれるのは必然といえばそうなんですが。

sterling-sound.com

本作での推し楽曲はやはり「走る」ですかね。なんかリズムラインにアーハのtake on meを感じられて

Take On Me

Take On Me

  • a-ha
  • ポップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

この方向性の曲を坂本真綾が歌っているっていのは凄く合うなぁと。しかもイントロがあの弦楽器のメロディというところに痺れます。しかもだんだんと調和していつの間にかギターのポップメロディに落とし込んでいるというバランスの調合さがたまらないです。あと歌詞を橋渡しっていうのはここでも感じられます。

 

Lucy

Lucy

Lucy

挑戦作という意味ではLUCYであり、それが意外にも、いや必然的なのかもしれない。見事に楽曲の幅を広げた名盤になった。何といっても全力ハズレがないという奇跡のトラック群云々以上にやりたいことが明確に見える。ここら辺からビートルズの匂いがし始めるのです。life is goodやアルカロイドなんかもろに。

アルカロイド

アルカロイド

アルカロイド

  • provided courtesy of iTunes

この曲の構造はThe BeatlesのBeing for the Benefit of Mr. Kiteからの影響がまずある。

そういった菅野よう子曲の変遷を一番肌身で感じられるのが本作。

同時にやはり時代の流れの影響も受けていて、それが顕著なのが「Tシャツ」。さて、2000年代初頭でこのイントロ特にピアノラインが全体を纏うこの感覚。そう、この曲の冒頭〜の構造やギターの鳴らし方は椎名林檎のギブスそのものである。

ギブス

ギブス

  • provided courtesy of iTunes

(まさか2年連続でこの曲を貼ることになるとは思わなかったが、この曲は時代を超越するレベルの名曲だから真似したくなるし、そのくらい普遍性を獲得している)

亀田誠治のアレンジの力を菅野よう子がこういう形でポップスにするというのは非常に面白い点である。タイプの違う音楽プロデューサーではあるが、同時にやっぱり流行りの曲も当然意識していることが分かります。マストアルバムです。

少年アリス

Shounen Alice

Shounen Alice

驚きより熟した意味での完成度の意味合いなら本作が一番の傑作である.少年アリスは集大成の意味合いではそれ相応の楽曲群がある。それまでのアルバム群との対比で表現するとデビューは良盤程度にとどまっているのに対して、以降は全部名盤。それも毛色の違った。diveは坂本真綾が菅野楽曲とのマッチング性、菅野よう子の作曲家としての力量が明確に出ているのがlucy 。だから単純な曲のアプローチの面で考えるとLucyが坂本真綾×菅野よう子作品としては最高傑作と言ってもいい。そしてこの2作を経て「少年アリス」という作品という流れだからこそ光あれ、coll meoutなどを聴くとそれまでの作品と比べて歌唱の安定さが格段に違うし、尚且つ感動できるクオリティ以上の曲が収録されている。(もちろん菅野楽曲のクオリティが上がっていることも関係している)

なにより本作が2003年で、以降菅野楽曲の流れを考えると丁度バランスのいいポップス作品になっている。λさんがCALL TO MEでgravityとの類似性を挙げていたが、まさにそこで。のちの名曲のプロトタイプ(あるいは下地)を作ってしかもそれを23歳の坂本真綾に歌わせた。そういった絶妙な軌跡が重なったアルバムである。

言い方は悪いが、40を超えた坂本真綾が今、菅野楽曲を歌ってもこういう作品群の強度にはなり得ない。

そしてこのアルバム全体にちらつく色々な意味でのThe Beatlesの音楽味(というよりもジョンレノン的な音楽のアプローチなのかなぁ)。また、λさんがビートルズっぽいと言う感想だけ残したアルバム:少年アリスの収録楽曲のpark amsterdam (the whole story)は、それこそ後期ビートルズ、とりわけsgt.やホワイトアルバムに代表される作品の影響を感じます。

こういう感じのタッチの曲や

ブラックバード

ブラックバード

あとこの曲で一番近いThe Beatles作品でこの感じが出ているのはacross the universe

Across the Universe

Across the Universe

(一般的な音楽ファンには馴染みのない楽曲だと思いますが、これを持ってくる菅野よう子のセンス!!)

ですね。とりわけ少年アリスの楽曲群は下降気味のギターや曲調がパッと変わる時の仕草等が全体的「ビートルズやりたいだけ」という印象を受けます。もちろんこれは良い意味で功を奏しているからこそ今聴いてもまったく色褪せない楽曲群になっているわけで。その意味でビートルズの構造を使いながら、菅野よう子特有のコードの妙やセンスが煌めいている。しかし一方で、同じくビートルズからのアプローチを邦楽に持ち込んだ小林武史という邦楽の巨星プロデューサーの作品を生み出すセンスには一歩及ばずと言った印象も感じる。つまるところSexy Sadieからグライドを生み出すほどのアプローチ力はない。

Sexy Sadie

Sexy Sadie

グライド

グライド

  • provided courtesy of iTunes

小林武史の洋楽→邦楽の変換力は多分日本一で、スティングの使い方ですら菅野よう子が凡になってしまうほどなのだ。だから比べてしまうのがこの場合おこがましいのですけど。

stingよりEnglish man in new york 

www.youtube.com

 

Tomorrow never knows

Tomorrow never knows

  • provided courtesy of iTunes

( そしてタイトルがビートルズからの引用でもあるっていう料理が上手い小林御大)

まぁ比較ははさておき、とにかく上には上がいるがそれでもビートルズを咀嚼して、再解釈した作品としては秀逸な作品であることには違いない。

 

ではこれらの事を踏まえると何が見えてくるか、菅野よう子楽曲の素晴らしさはコード、展開などに魅力的なのは勿論密接に関係しているが、それ以上にそれまでに出てきた映画の劇伴(坂本龍一からヴァンゲリス、lunatic calm,イエス等)や多角的な方向での洋楽の多様さなどを丁寧になぞった上で日本のポップスに置き換える(とにかくアプローチとインプットの幅を広げ続け、咀嚼して自己流に整える)ことによる意外性や不意を打たれた感覚がするのである。じゃあ誰もがそれをこなせるかと言ったら別問題で、詰まるところ菅野よう子の最大の才能は既存曲の構造を忠実に再現することなのである(全てがこれに該当するわけではないが)。それなのに「菅野楽曲」として聴けてしまうところが氏の「凄さ」なのだと思う。

 

  • 名盤

さて、おすすめ楽曲+菅野よう子論を語ったところで「じゃあ何聴けばいいんだよ?」「色々なアルバム曲から引っ張ってるけど、全部聴く時間ない」「結局どのアルバムがいいの?」「菅野よう子入門はなんですか?」など色々な方がいると思うので、総合的に考えた名盤をここで発表したいと思います。

 

λさん選出名盤5枚

1.劇場版マクロスF サヨナラノツバサ netabare album the end of triangle

マクロスFの曲はどれも大好きなのですが、今回はこちらのアルバムをセレクトしました。初心者向けで1枚ということであれば、VOCAL COLLECTION 娘たま♀

が選ばれやすいのですが、このアルバムも最高の1枚です。

特にボーカル曲をピックアップし、ご紹介したいと思います。

1曲目、「禁断のエリクシア」

禁断のエリクシア

禁断のエリクシア

  • provided courtesy of iTunes

強烈なイントロ。マクロスFでも最高峰にセクシーな楽曲です。化学的、サイケデリック感でありシェリルの蠱惑的で妖艶な様がシンセで見事に表現されています。モーダルなAメロから始まり、転調する後半。サビに4分で半音で動き続けるシンセがこれまた怪しい。サビの後半にストリングスのホールトーンも加勢し、とても盛り上がります。
特に、佐野康夫さんの阿修羅のように炸裂するドラムは本当に聞いていて気持ちよく、まさしく「浴びるドラム」です。一般的なJPOPでは8ビートなど基本のビートがあり、どうしても単調になりがちですが、佐野さんのドラムは毎回ところどころ変化があり、この微妙な変化やフィルインがとてもハイセンスです。アップテンポなこともあり特にドラムが光る曲ではないでしょうか。2:04~の一瞬止まるフレーズ、2:15~のハイハットとキックの裏2発からのクラッシュシンバルもクール。3:13~の静寂からのフィルインが炸裂すると思いきや、3:15~で一瞬空白が作られており、この数秒も最高にクールです。そして続くドラムソロは3拍と2拍が混在しており、まさに化学反応が起こっていることをビートで表現されているように聴こえます。
最後には、4:43~ではライドが刻まれつつも、左手で更に刻まれるハイハットのアクセントがカッコよく、楽曲の温度は更にヒートアップします。この楽曲が当初8分でタイトに刻まれていたのに対し、最後に16分で刻まれることで盛り上がりと構成美が演出されています。他にも、1番のAメロからモーダルに暴れるベースやBメロの右へ振り切られていくシンセのパン、2番Aメロでベースがほぼ抜けてしまうのも空虚感が醸し出します。4:00~ではギターのピッキングクラッチが左右でリバーブされていたりと、エフェクトも一層この楽曲を盛り上げている点も聞き逃がせません。

3曲目「虹いろ・クマクマ」

虹いろ・クマクマ

虹いろ・クマクマ

  • provided courtesy of iTunes

ハイファイサウンドの行進ビートから始まり、なんといってもランカの「リラメルララメルランルララン」の呪文のワクワク感がたまりません。6/8拍子は面白いリズムが作成しやすいことが特徴の一つですが、Bメロの「何を」「怖れ」でリズムを提示しつつ「何を」「隠し」で倍の速度で加速してから、「胸の鍵」の(「のかぎ」の箇所で)6/8の付点4分音符の4つ割りのリズムが本当に天才的だと思います。音の高低だけでなく、リズムの伸縮性と緩急により、このサビに向かうBメロのフレーズは最高に光る楽曲ではないでしょうか。この曲を聴けば、いつだって雄大に広がる空に向かって両手を広げているランカが浮かび上がります。イントロで鳴っていた「ド#ララミララ」がサビの決めの「乙女心勇気出して」にも転用されており、この曲のキーになっているのも構成美のひとつでしょう。3:34~Dメロのピアノにも使用されており、「リラメルララメルランルララン」の言葉としての呪文とは対称的に、この6音が「音としての呪文」になっていると思います。このフレーズは最後のアウトロにも使用されていますから、特に重要なファクターになっています。
サビに全音符で流れるストリングスも加わり、音楽が幸せに満ちている、明るい未来を感じさせる、そんな1曲です。

4曲目「恋はドッグファイト(FIRST LIVE inアトランティスドーム)」

マクロスFはクールな曲や可愛らしい曲だけなく、このようにちょっと変わり種の楽曲も多数あります。ランカの歌い方も、ライオンなどの曲よりもポップな声色で歌われているのも聴きどころだと思います。電波的なエフェクトや発射音なども多様されており、面白い楽曲になっています。


6曲目「星間飛行(LIVE inアルカトラズ)」

観衆の声が入っていたり、ランカの掛け声が入っていたりと、アニメ後期OPよりも盛り上がりに富んだアレンジになっています。構成的にもギターの音の動きがよく分かるアレンジになっており、ユニゾンしたりと正しくライブらしい演出になっています(一方でストリングスが控えめ)。そして、後半は転調するアレンジもこの曲ならでは。最後のドラムフィルインなんて正しくライブバージョンらしいです。

単純に星間飛行をLIVEバージョンにするのではなく、アレンジを通して更に面白いものにしている点が、菅野よう子のスーパーなアレンジ力のひとつだと思います。

7曲目「Get it on~光速クライmax」

Get it on ~光速クライmax

Get it on ~光速クライmax

  • provided courtesy of iTunes

BPM=205のハイテンポビートは、まさしく光速を体現しております。
この曲の魅力は、なんと言ってもAメロからBメロを介さずすぐにサビに行くこの展開の気持ちよさではないでしょうか。もたもたしてる場合じゃない!今すぐ楽しんじゃえ!という感じ。先述した、菅野よう子の魅力である構成力に繋がるところであります。また、この曲はマクロスF曲の中でもハーモニーが通常の楽曲のハーモニーより強めに出ており、このトップボーカルに負けることなく遠慮しないハーモニーが同時に力強く鳴っているところが耳にとても心地よい楽曲です。サビのB♭から動く「E♭9」で、ちゃんとテンションが用いられている点が、抜け目のないというか、どこを聴いても美しいなと思います。内声の「レ→レ♭→ド」の動きも美しい。よく聴くとBPM=205の16分でシンセが高速で小刻みに鳴っているところも面白いです。止まることを知らずに動き続けるベースも魅力的。1:23~で無線の会話やエンジン音も一瞬あったりとエフェクトにも富んだ作品で、2分音符でスケール的に鳴る高音シンセも歌詞にある星を表現しているようで、どこまでも見事な楽曲だなぁ、と感服するばかりです。

10曲目「放課後オーバーフロー」

放課後オーバーフロウ

放課後オーバーフロウ

  • provided courtesy of iTunes

マイナーから始まるイントロとその後のメジャーとの対比が美しい楽曲です。Bメロの特徴的なリズムや、3:16~8分音符のアクセントとそれと絡み呼応するドラムソロも聴きどころです。リハモや2番Bメロで「君を」のリズムのパターンが変化する点など、飽きさせない工夫もされています。
全体的にギターが低音で鳴るフレーズも多く、この手法はマクロスFでもそれはもう非常によく使われている手法で、この曲も違わず使用されている点も、マクロスFの楽曲の1つであることを示しています。

12曲目「娘々FINAL ATTACK フロンティア グレイテスト☆ヒッツ!  ノーザンクロス~虹いろ・クマクマ~ライオン~ユニバーサルバニー~オベリスク愛・おぼえていますか

名の通り、長さ、構成力ともに最強の楽曲の1つです。

ストリングスを基調とした「ノーザンクロス」に始まり、名曲が続々展開されていきます。続く「虹色・クマクマ」ではシェリルも加わっています。
更に、ライオンはベースが細かく刻まれていたり、テンポも通常よりもアップしており勢いがついています。一度ライオンに戻りますが、あの有名なフレーズも聴こえてきます。4:44~では「愛・おぼえていますか」のフレーズは聞き逃がせません。
ユニバーサルバニーへのつなぎへの転調が、単純な転調というより「転調!転調!!転調!!!」の転調の嵐でこれでもかというくらい転調しているのが気持ちがいいです。続くランカもハモっています。サビ直前の「泣いてた天使がほら悪魔」をランカが歌っている箇所など、ランカファンにとってたまらないと思います。メドレーならではの醍醐味です。続く「オベリスク」は「劇場版 マクロスF ~イツワリノウタヒメ~ ユニバーサル・バニー」に収録されている代表楽曲でアルバムを越えてこちらでもそのアレンジver.を聴くことが出来ます。メドレーですが、アレンジにも富んだ、菅野よう子のストーリー構成力が光る1曲です。


余談ですが、この楽曲は7:30もあるロングナンバーなのですが、更に長い「娘々スペシャルサービスメドレー(特盛)」もあります(構成は大きく異なります)。物足りない方はそちらも是非。

13曲目「サヨナラノツバサ」~the end of triangle~

難易度最高ランクの楽曲。映画の代表曲ポジションです。
モーダルなAメロ、どこかプログレッシブなBメロのミニマルなリズム、サビの単純な8ビートではなく、部分的に8分が後ろに移動しているビートも最高にクールです。全体的に、フラムが多様され、スネアもハイピッチ、特にタムも他の楽曲よりハイピッチまで聴こえるのがこの楽曲の躍動感にも繋がっています。ドラムの推しポイントとしては、4:08~のドラム16分の最高にクールなフィルインは必聴です。4:55~からは「放課後オーバーフロウ」のDメロを絡めています。このような、「他楽曲のモチーフの援用」はマクロスFで非常に多様されている手法です。

14曲目
「ホシキラ」

ホシキラ

ホシキラ

  • provided courtesy of iTunes

激しい楽曲が多い本アルバムの中で、癒やしになる「ホシキラ」。
Bメロの転調の技がとても自然で、プロすぎて真似できません。1番はストリングスとピアノを主体し、2:09~から入るドラムが一層盛り上げます。シンプルながらも、力強いサビは一度聴けば忘れられません。イントロのメロディーがアウトロにも使われている美しい構成です。

15曲目「dシュディスタb」

dシュディスタb

dシュディスタb

  • provided courtesy of iTunes

イチオシの楽曲です。多幸感に溢れる本当に本当に最高の1曲です。
歓声に始まるイントロ、4つ打ちのキック、16分のシンセでライブの世界観の枠組みが出来ています。サビ頭には右スピーカーから発射音が聴こえ、後半頭には左から聴こえている遊び心も忘れずに。

7曲目「Get it on~光速クライmax」

Get it on ~光速クライmax

Get it on ~光速クライmax

  • provided courtesy of iTunes

でも挙げたように、積極的に観客の歓声を使用することで、ライブ感を自然とリスナーに溶け込ませている点がマクロスFの楽曲の素晴らしさの一つです。特にこの曲は3:58~に入るシェリルとセリフが特徴です。そしてなんと言っても、この曲を語るに欠かせないポイントのひとつは、4:35~の最後のラスサビだけコードがB→D♯7になるところです。それまではB→Baugであったことに対する、この対比が本当に美しい!このコードが鳴ることで「ラスサビ感」が、今で言う「エモさ」が一瞬でパッと現れる技はまさに天才だと思います。 

17曲目「ダイアモンド クレバス ~ thank you , Frontier」

ダイアモンド クレバス ~ thank you , Frontier

ダイアモンド クレバス ~ thank you , Frontier

  • provided courtesy of iTunes

重厚なストリングスで奏でられるダイヤモンドクレバスです。
通常曲に対し、一切ドラムなどのビートがないアレンジになっている点も聴きどころです。最後にこの楽曲がくることにより、アルバム全体をしっとり仕上げるナンバーになっています。以上楽曲の推しポイント語りでした。
マクロスFのアルバムと言えば、「VOCAL COLLECTION 娘たま♀」

は王道of王道ですが、この「劇場版マクロスF サヨナラノツバサ netabare album the end of triangle」も本当に名曲揃いで、洗練された下世話の時代を最高に楽しめますので、是非ご試聴ください!!

 

2.Napple Tale 妖精図鑑(itunesでリンクがなかったのでamazonリンクです)

ドリームキャスト用ゲーム『Napple Tale』のサウンドトラックなのですが、
生楽器で録音されておりかなり豪華です。「はとどけい」から始まる不思議な世界観は、他には聴いたことのないものだと思います。フランス音楽的な印象もある本アルバムは、ゲームをやっていなくても十分に楽しめる名盤で、ラウンジミュージックとしてもおすすめです。坂本真綾さんが好きで「しっぽのうた」は知っているという方は、それが主題歌にもなっている是このサントラも是非聴いていただきたいです。

楽曲のおすすめは、木管を基調にした「Chocolate forest」、マーチでコミカルな「Jumping Cracker」、コミカルなピアノが面白い「たのしいさんすう 」の3曲です。「Jumping Cracker」クシコス・ポストを彷彿とさせますし、「 Skipper」は「ゴリウォーグのケークウォーク」をとてもうまく利用していると思います。このアルバムと対を為す「Napple Tale 怪獣図鑑」もおすすめです。

 

3.アニメ「坂道のアポロン」オリジナル・サウンドトラック

ジャズを通して描かれる人間模様が美しいアニメ「坂道のアポロン」。
とっつきにくい印象があるジャズの入門としても、自然と楽しめるもってこい名盤です。演奏は松永貴志(ピアノ)、類家心平(トランペット)、石若駿(ドラム)などが参加されています。おすすめは、軽快なナンバー「Blowin' The Blues Away」

Blowin' The Blues Away

Blowin' The Blues Away

  • provided courtesy of iTunes

ホールトーンスケールが印象的な「YURIKA」

YURIKA

YURIKA

  • provided courtesy of iTunes

ネコのようなピアノかわいらしい「Jazz For Button」のメロディーラインは妖精図鑑にもありそうで、菅野よう子らしさを感じられると思います。

Jazz For Button

Jazz For Button

  • provided courtesy of iTunes

中でもイチオシはアルバムの中でもかなり激しめのホットなナンバー「Four」です。

Four

Four

  • provided courtesy of iTunes

ジャズは歴史が深く、源流をたどる楽しみもありますが、まずはそんな堅苦しさを一切忘れて楽しんでいただきたいです。

4.COWBOY BEBOP Knockin'on heaven's door O.S.T. FUTURE BLUES

劇場版「カウボーイビバップ 天国の扉」のサントラになります。
「24hour OPEN」から始まる本アルバム、楽しい遊園地かと思えば、銃声と悲鳴が聴こえるこの狂気さ、アルバムの始まりとしては最高にクレイジーでキャッチー…この時点で最高だと思います。

1.「Clucth」

Clutch

Clutch

  • シートベルツ
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

高速ジャズナンバーながらもストリングスが絡んだりとサントラとして光るで1:57~のキメが最高にクールです。

 

 

2.「Yo Pumpkin Head」…映画の重要シーンで流れるナンバー。チューバのマーチ感をベースにコミカルに仕上がっています。印象的なバッキングのフレーズは、Royal Crown Revue の「Hey Pachuco」から引用してたら面白いなぁ…と想像する筆者です。

Yo pumpkin head

Yo pumpkin head

  • シートベルツ
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

3.「What Planet Is This?!」…この曲は外せないでしょう。アニメ版サントラが強化されており、ドラムソロが倍の長さになっていたり、途中にスカのパートが入ったり、アジテーター的な声が入っていたり、最後のアウトロも異なります。

What planet is this?!

What planet is this?!

  • シートベルツ
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

4.「7minutes」…この曲は「攻殻機動隊」で流れていてもおかしくないのでは…?と思います。こういうコンテンツを跨いで感じられる菅野よう子サウンドはとても興味深く、特に本楽曲は菅野よう子が多いに得意とするサウンド、構成だと思います。

7minutes

7minutes

  • シートベルツ
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

5.「アクエリオンEVOL」 LOVE @ New Dimension

神of神アルバムです。個人的にはジャケからして最高に官能的で美しいです。
アクエリオン楽曲の後期作品が集められており、OPの「君の神話~アクエリオン第二章」を筆頭に

君の神話~アクエリオン第二章 (with bless4)

君の神話~アクエリオン第二章 (with bless4)

「Go Tight!」「パラドキシカルZOO」も聴ける珠玉揃いのアルバムです。

 

Go Tight!

Go Tight!

パラドキシカルZOO (with bless4)

パラドキシカルZOO (with bless4)

おすすめは、牧野由依さんのボーカルが素晴らしいED曲「オムナ マグニ」

オムナ マグニ

オムナ マグニ

  • provided courtesy of iTunes

宗教的でハーモニーがとても美しいに「月光シンフォニア

月光シンフォニア

月光シンフォニア

  • AKINO & AIKI from bless4
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

アクエリオン楽曲の中では愛をストレート表現しつつも切なさが光る「ZERO ゼロ」

ZERO ゼロ

ZERO ゼロ

  • AKINO from bless4
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

以上がおすすめアルバム5選になります。

 

rino選出名盤5枚

1.アルジュナ into the another world

異質なアルバム。マクロス攻殻でもない「ここだけ」でしかない音楽が沢山詰まっている。趣向性の富み具合ではおそらく1番凄い作品であると言い切れる。λさんが評した少女祈祷曲でいえばearly bird やcloeなどがこの作品には収録されている。

Early Bird

Early Bird

  • provided courtesy of iTunes

gabriela robin名義の楽曲も沢山収録されています。λさんが田中公平さんの評を引き合いにだしていたセンスの時代/サウンドの時代/洗練された下世話の時代の中ではちょうどセンスとサウンドの間に発表された作品ということもあり、如何様にも楽しめる。特菅野楽曲ならでは意味では。そんな1作です。

 

2.MACROSS FRONTIER   COSMIC CUUNE

たった8曲。それだけしか入ってないのに楽曲の密度が爆発している。ベストでも推したsong birdやリーベ ~幻の光などとにかくピアノメインのポップスが多い。λさんがベストに挙げたMerry Christmas without Youもこの作品に収録されています。そのほかにも

R&B調に見事なボーカルのデュエット性を成立させた一曲。may`nの歌唱先述のようにルーツでもあるからこそ歌いこなしている感じがあります。とあるフレーズを聴けばはそれがわかると思います。絶対に残るフレーズです(後半部分です)

タブレット

タブレット

そしてお気楽&アップテンポの傑作「サイレントでなんかいられない」といった

歌詞との融和性がとてつもない一曲が収録されており、ハズレなしといっても過言ではない作品です。

3.攻殻機動隊 S.A.C SOLID STATE SOCIETY O.S.T

菅野よう子origaのコンビによる最高傑作playerなどが収録。エレクトロ、テクノ、ロックなど、一曲一曲にテクニカルな技術が詰まってる。音が成熟して迷いがない.攻殻のサントラの中でも作品としてのSSSがppv(ペイパービュー)でスカパーで公開されたのが2006年(劇場版として映画で流れたのは2011年)というのから分かる通り、sac一期(2002)、sac 2nd gig (2004)のOSTを経ての本作なので、サウンド攻殻集大成として聴くこともできる。(攻殻サントラは総じて名盤なのでどれが一番かというのは聞き手の好みがでる)菅野よう子サウンドの時代の幕引きであり洗練された下世話の時代の開幕前夜に作られたので個人的には一番聞き応えがある時期の作品だと思います。

4.残響のテロル オリジナル・サウンドトラック

近年のアルバムのなかではこれが一強。まず本作を構成するトラックの6割がピアノがメインの楽曲が多いことが一つ。その中にvonみたいな曲もあれば、Waltのようなライヒよりメロディを主軸とした澄み切った展開とそれを補助するオーケストレーションで二重に楽しめる楽曲

walt

walt

  • provided courtesy of iTunes

攻殻ostで鍛え上げたビート、エレクトロニカな楽曲veatなどあらゆる音楽を経て辿り着いた境地としてこの作品を考えた時にある種の集大成といっても過言ではないほどサウンド、トラックの面でもに統一感があり最後blessで締めるのが最高ですね。音作りの面でも機材の進化などを含め成長を感じられる一作。絶対に外せません。一推しはnc17です。

veat

veat

nc17

nc17

bless (feat. Arnór Dan)

bless (feat. Arnór Dan)

  • provided courtesy of iTunes

5.wolf`s rain

Wolf's Rain

Wolf's Rain

アーティスのアルバムで明らかにディスコグラフィーの中でこれは異質みたいな作品ってあるじゃないですか。菅野よう子の数ある提供作品の中でそれに当たるのがこれだと思っていて、メジャーではないが、そこにはめざましい作品群が収録されている。gravityをはじめ、ラクエンではピアノ(清々しいまでのドビュッシーライン)とオーケストラの兼ね合い

ラクエン

ラクエン

leaving on red hillはボサノヴァ風味なギターにリズミカルなドラムのタッチを融合した作品だし

leaving on Red hill

leaving on Red hill

  • provided courtesy of iTunes

ギターソロがかっこいいsilver river,sold your soulなど多種多様です。

silver river

silver river

sold your soul

sold your soul

しかしこの作品そういう所を除いてもぶっ飛んでいる。なぜならブラジルを代表するボサノヴァのカリスマプレイヤーであるジョイスがいて、track3, 4, 8, 10, 16, 19にはパンデイロの名手マルコス・スザーノ(日本ではGANGA ZUMBAのパーカスで有名ですね)

GANGA ZUMBA

GANGA ZUMBA

足跡のない道

足跡のない道

track3, 4, 8, 10, 16, 19のコーラスにはBoca Livreの存在。アニメのサントラに「お願いします」程度で持って来れるアーティストではないんですよ。プレイヤーをボサノヴァサルサ系の陣形で固めていることから作品の傾向はブラジル音楽+クラシック+ポップス(添える程度の坂本真綾)という感じですかね。アニメのサントラ以上の「何か」がこのアルバムにあり、それがあるからこそ名盤として今なお聴くに耐えるものになっています。

※因みにwolf`s rainのOSTは2もあり、こちらも一聴の価値があります。

m(´・ω・`)m←かわいい

ここの5枚にビパップOST入ってないじゃん、にわか乙と思われそうなので弁明しておくと凄く迷ったけど、よくよく考えてみればサントラの完成度といいますか、あれらを名盤たらしめているの菅野よう子以上にそれを見事なまでに再現する演者:シートベルツという集団が凄いからというのがある。そしてジャズである以上楽曲なんてのは似たり寄ったりになるのは必然のため、菅野よう子だからこそ!!という意味での采配はそこまで大きいものではないと感じたため省きました。ちなみにジャズとか漁りたい人はメジャーなものよりもそれこそ「ビパップ」というジャンルの音楽から漁っていた方が面白さがあると思うので興味のある人はそういう方向性で考えてみてはどうでしょうか

フィル・ウッズ演奏のaireginとかは演奏そのものに技巧が顕著にわかって楽しいですよ

Airegin

Airegin

  • provided courtesy of iTunes

同様の理由でエスカフローネOST3も除外しました。名盤に変わりないが菅野よう子性が薄い(白状するとエスカフローネの方は当初5枚の内の1枚に入れていました.)

 

 

エピローグ的なおまけ

上菅野よう子特集でした。

本記事をもって、今年の更新はおしまいです。(振り返り記事は出すかも知れないが)

今年の下半期はこの2本しか

sai96i.hateblo.jp

sai96i.hateblo.jp

書いてなくて、しかも片方が映画記事という体たらく。いや、紹介記事としては中々纏まっている記事だとは思いますが、生憎フォロワーは音楽リスナーばっかりで映画記事はあまり見てくれませんでした。伊福部昭の記事も相当時間をかけた割には伸び悩んだので(相当凹みました)、この後書く予定だった武満徹大瀧詠一の特集回もとりやめ全くどうしたものかと。昨年は推しアーティストに逃げてなんとかなりましたけど。

※おかげさまでこの記事も公開してから1年足らずで主要検索ワードの検索順位的にEGOIST関連の個人ブログ内で一番読まれる記事になりました。

f:id:sai96i:20211219004952p:plain

自分でも定期的に読んでます。ただ、なぜ概要欄の文章がマイナスなところなのか() 

sai96i.hateblo.jp

流石にryo(supercell)さんネタを2年連続も、きついなぁというのは馬鹿な私でもわかるわけで。アドベントカレンダーの主題である「今年の楽曲10選」をやってもいいが、単曲10枚紹介したところで、自分は面白い文章はかけないことは19年の時に証明されたので

sai96i.hateblo.jp

甘えで現在の世間の人気のアーティストを取り上げるってのも、悪くないが、絶対悪戦苦闘するのは目に見えているし、ありふれたアーティスト記事を出すのも性に合わない。というか書く気にならない。(NHKがYOASOBIを激推しするあの感じ)

昨年、本来かきたかった「音楽の文化的多様性と総人口クリエイター社会」とかをリライトするのもありではあるが、なんとなく違うなと思い

sai96i.hateblo.jp

ここは一発、クリスマスカレンダーだしスペシャルな記事にしたかったので大物作家の菅野よう子に決めた次第です。読者の方々が楽しめたかどうかはさておき、λさんと私は全力で取り組んだ次第ですのであとは皆さんがこの記事から菅野よう子楽曲を一曲でも汲み取って、そしてその凄み、偉大性に浸ってくれれば本望です。

これだけ曲数あるのだからプレイリストつけろと思う方もいるかもしれませんが個々で全部一曲一曲を洗い直し尚且つ自分の中で咀嚼して初めて効能、曲と曲の流れを理解するのであって、あらかじめ何も考えないで聴けるわかりやすいまとめリストがあるとそれ以上のものを汲み取れなくなる可能性があるのあえて作りませんでした。

当ブログ初の試みとなる共作記事がまさかのアドカレで、菅野よう子で、どうかなと思っていたのですが杞憂で、どころか自分の浅学が露呈してる始末の完成度と強度を提供してくださったλさんには本当に感謝です。あとは読み手の皆様がこれらを読んだ後それぞれが自分なりの菅野よう子楽曲について、考えていただければ最高です。

 

 

以下、当ブログの常連&21年産ベスト楽曲10選が読みたい人向けの

一応そういう流れの企画カレンダーなのでちゃんと、21年にリリースされた楽曲の中で私のベストをここで紹介します。単品で出してもどうせ伸びないのでおまけ的な流れで発表します。

 

1.what if?:orchestra, choir and piano   作曲:鷺巣詩郎

what if?: orchestra, choir and piano

what if?: orchestra, choir and piano

  • provided courtesy of iTunes

この一曲。今年はこれが強すぎた。ポップス、劇伴等ジャンルを問わず大量に聴いてはいたが残ったのはこれだけ。それくらい音の強度、構成、メロディあらゆる面で桁違い。鷺巣詩郎の神髄ここにあり。元々オーケストレーション楽曲とコーラスの兼ね合いを作らせたら日本一かっこいい曲をかける作曲家であり、それが今までのエヴァ作品では短い劇伴に止まっていた節があるが、最後の最後で集大成みたいな楽曲を書いてきた(草案としてかなり前からあった楽曲らしいが)。やっぱりこの曲のすごいところはピアノの扱い方。入れるところを巧妙に調整しているし、アルペジオ、オクターブで奏でるメロディ、サビで追いかけるような荘厳さ。ジャンルによって曲の作り方というのは変わるが、そういう前提が吹っ飛んでしまうほど終始美しいこの楽曲を21年度 NO.1とします。エヴァという作品の補正と思われるかもしれませんが、それはタイアップ系全てに言えることで。とにかくこの曲はいいし、使われるシンエヴァのシーンも素晴らしい。本当にエヴァンゲリオンが終わるんだなぁっていう考え深い気持ちになりましたよ。全然世代じゃないですけど()。

そのうち鷺巣詩郎も特集しないとなぁと思っています。この人について言及された記事があまりに少ないから。それはあまりにもったいないし、多分求められているラインではあるから。

 

2.エドシーラン/shivers

Shivers

Shivers

  • エド・シーラン
  • ポップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

なんというのかなぁ。安定感がありますよね。リズミカルでそこに透き通るような声が入るから耳にスッと入る感じしていい。元々

you need me, I Don` t need you

You Need Me, I Don't Need You

You Need Me, I Don't Need You

  • エド・シーラン
  • シンガーソングライター
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

みたいな楽曲を成立させてしまうところがエドシーランの凄味の一つなのですがshiversはそういったキテレツな感じの曲調ではなく、むしろ正当な感じの楽曲なんですけど一つ一つが丁寧に作られている感じするんですよね。それがツボでした。

 

3.easy on me/アデル

Easy On Me

Easy On Me

  • アデル
  • ポップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

月並みで申し訳ないが、アデルって本当外さないよなぁってただそれだけの理由で選出。ただ、グローバルのストリーミングでここまで人気を保ち続けてるのは怪物として言いようがない。入門アデルは007skyfallよりskyfall

Skyfall

Skyfall

  • アデル
  • ポップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

4.デヴィッドゲッタ/alive again

Alive Again

Alive Again

  • provided courtesy of iTunes

ゲッタはGuetta Blasterというアルバムを聴いて以降、面白えなぁと感じていて

The World Is Mine

The World Is Mine

  • provided courtesy of iTunes

そのあとなんとなく追ってはいたんですけどまさかここにきて傑作を出してくるとは思わなかった。なんていうのかな、鳴ってる音の調整具合が私にとっては抜群でそうそう聴きたいエレクトロニックってこんな感じという感覚を久しぶりに味わえた珍作です。

 

5.エンターテイナー 作曲:堀江晶太&じん

エンターテイナー

エンターテイナー

  • provided courtesy of iTunes

アニソン派でも推されてましたけど

sai96i.hateblo.jp

とにかくじんと堀江両者の混ざり具合がいい。なんといっても複数人以上の男女のボーカルの掛け合いの曲をこの二人が作るとこうなるのか感があってそこにすごく納得した。それぞれ擬態しあったと、じんさんはラジオをで語っていたが私が思うに大枠はじんさんだと予想。見分ける時は歌詞と歌わせ方の二点で判断。例えば「同じ今日に立つ君と約束〜」のフレーズなんてのはじんさんが歌っているフレーズそのものでしたし、「ひとりぼっちが〜」という歌詞はじんさんのテーマみたいなところがあるじゃないですか。堀江さんは2番以降のフレーズ集約型がもろにpenguin researchでしたね。「もうげんなりムード〜」の件はそれこそ生田が歌っても違和感ゼロな感じで良かったです。

 

6.光る地図/長谷川白紙

光る地図

光る地図

  • provided courtesy of iTunes

最高に狂っている これ作ったやつ誰だよどうせあいつだろうと思ったらまぁ的中。

長谷部白紙

18年の時に注目し,19年のベストにちゃんと入れておいて良かったと心底思いました。

sai96i.hateblo.jp

9.長谷川白紙作曲-妾薄命

妾薄命 - 長谷川白紙

妾薄命、、なんというか平沢進と同じような匂いがして、なかなかカオスな曲を作るので入れました。

現役音大生ということで、すごく将来を期待出る気がします。かなり異質です。

sai96i.hateblo.jp

・エアにに/長谷川白紙

長谷川白紙が頭のおかしい音楽を作っていることは処女作を聴けばわかります。

昨年のベストに彼の曲を入れておいて良かったと心から思えるほど最高のアルバムでした。

既存概念の破壊といってもいいめちゃくちゃな曲が入っています。

ごちゃまぜでカオスな世界の中には長谷川さんの声が入ってくるという

系統としては平沢進に近いものがあります。

No.3の「怖いところ」は明るさやファンタジックな音楽など様々な側面が出ている曲で、初めて聴いたときは

なんだこれっと声に出してしまったほどです。

「砂漠で」などの電子音楽をメインに歌が進行していくのもメロディの激しさとの絡めあいが綺麗で

不思議と耳に入ってきやすいタイプの音楽です。

「悪魔」という曲はひたすら効果音で構成されているような楽曲でハチ楽曲に近い因子を感じしました。

散々ぶっ壊れた曲を出しておいてラストトラックの「ニュートラル」では普通のピアノをメインに進むという

ギャップがまたいいですね.2m20s-31sからの展開好き。

あとvtuberとか全く興味ないのですが、このアルバムの組み合わせからわかるように分かってるやつが推しアーティストに曲を依頼して、結果的に名盤が生まれる(そのくらい月の兎はヴァーチャルの夢を見るは傑作です。タイトルは言わずもがなディックオマージュっていうのも世界観を崩してなくていいですね)という現象は以降も継続してほしいです。脱線はさておき、この長谷川白紙、超絶凄い作曲家にここ2年でなったのだなぁと実感。別に顔出しとかそういう「どうでもいいところ」はさておき、誇張抜きにデジタル音楽界の特異ポジションにいると思う。レイハラカミやimoutoidなどを通って、今の音源でテクニカルな楽曲を作る(しかも音大の人間だから理論が通っている) っていう人材はそうそう生まれないので、以降もちゃんと投資対象の作曲家として応援していこうと思います。

7.タクト 作曲:ryo(supercell)

タクト

タクト

  • ryo (supercell), まふまふ & gaku
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

ryo(supercell) さん信者だからとか、推し作家だからというよりも、心底出す曲が良いのです。とくにこの曲はまふまふの起用が話題を呼びましたが、まふまふ個人の楽曲では到底しないタイプの発声(これはタクトのような曲がまふまふ楽曲にはないから)だからこそ、ボーカリストまふまふの魅力がより広がっているし、gakuとの親和性も高レベル。最近はデュエット形式にこだわっているのか、#Loveが男女のいってみればディズニー的な楽曲でしたが

#Love (feat. Ann & Gaku)

#Love (feat. Ann & Gaku)

  • provided courtesy of iTunes

本作は男二人のデュエット。(だからこそまふまふが選ばれたという解釈もできますが)それなのに曲として全然ぶれていない、その上それぞれの声の持つ利点をこれでもかというほどに生かしている。高音が得意のまふまふをあえてオク下に運ぶくだりとか、その他にもまふまふのボーカル表現もいい後半の「夢と呼ぶには馬鹿みたいで」の(馬鹿みたい)の母音aaiaiの発音が凄かった。とにかくフレーズは見事すぎました。だてに10年歌ってないなと。何よりも曲がいいのはご存知の通り。ピアノの音作りからサビの爆発する感じとか、既存作品で言うとmy dearestとかeverlasting guilty crownの合わせ技な感じがします。ただ、楽器全体の運びは罪の名前たっちともいえますね。作曲:ryo(supercell)のクレジットの信用度がよりあがりました。

8.キミエモーション作曲:kamome sano

キミエモーション

キミエモーション

  • Marpril
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

アニソン派でもkz(livetune) さん激推しの一曲。その前からヤッベェ曲だなとおもってはいたんですけど、改めて聴き直すとやっぱぶっ飛んでるなぁと。歌詞と楽曲の混ぜ方もそうだし、ベースやキックの音の繊細さ、1m50sくらいのラップもこれだけ流動的に尚且つ、自然と耳に入ってくるのは中々ないと思う。その後の楽器遊びも実に富んでいる。どうやらこのmarprilというのはvtuberの連中らしく、そこには一切興味ないのですが、音楽リスナーにこういう曲を提供してくれる一点においては評価してもいいですね

9.A Minor Astronomical Event

A Minor Astronomical Event

A Minor Astronomical Event

  • Jóhann Jóhannsson, Yair Elazar Glotman, ヒドゥル・グドナドッティル, Robert Aiki Aubrey Lowe & Colin Stetson
  • クラシック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

このクレジットの並びを見ると悲しくなる。なぜかってこの曲を作ったヨハンヨハンソンは現世にもういないからだ。最新の新規特集で考えたのも実はこのヨハンソンで、つまりは北欧出身のアーティストはいかしにてこのような作風を手に入れたか。という点を掘るつもりだったのです。そして亡くなった後に彼の遺作とも言えるアルバム「last and firstman」これは哲学家であり作家オラフステープルドンの代表作「最初にして最後の人類」(これを読みたい人はいまちくまで売られてるステープルドン(のちのsfイメージソースをたった数作でやり尽くした巨人.いわゆる壮大な宇宙を扱った作品のネタ下は全部ステープルドンからだし、フリーマンダイソンがお馴染みダイソン球という概念を提唱するにあたり、スターメイカーという作品の影響を受けている。ちなみに、最初にして〜を正規価格で読みたい人は今すぐ復刊されたスターメイカーを買って再販運動につなげましょう。公式も検討する感じになっているので)を映像化したもののOSTでその世界を見事に表現している音楽ばかりなのですが、この曲は中でも群を抜いている。微妙に変わる音の調整、女性コーラスの入れ方強弱。どれを取っても映画的ではあるのですが、奥深さが尋常ではないのです。深淵とでもいいましょうか。それにひたすら浸かるだけで音楽の表現幅を思い知らされると思います。

 

10.No way(どんぐりず)

NO WAY

NO WAY

  • どんぐりず
  • ダンス
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

多分、読み手でどんぐりずを知ってる人はいないのでは?それほど今マイナーだけどいい曲を書くアーティストという立ち位置にいる。MVは不可思議なものが多いのですが反面、作る曲はどれも独創性に満ち溢れていて、かっこいいんですよね。これが収録さているのは6曲epなのですが、全部いいです。とくにジレンマなんかはボーカルの声の良さを知るには最適だし、このアーティストがやりたい方向性というのが如実にあらわれている一作になっています。今のうちに注目しておくといいかもしれませんよ。

 

 

おまけのおまけ

熱心にここまで読んでくださる方向けにエピローグ的なメイキング裏話を書くと、元々はなまおじさんの企画(2021楽曲カレンダー)より前から出そうとは思っていた題目で一年以上前から取り組んでいたものなのです。

sai96i.hateblo.jp

3.菅野よう子 女流音楽作家

こちらは今のところ4部構成となっております。手掛けた楽曲数が1000を超えるためです。色々書きやすそうと思い、書き始めたものの全然そんなことなく、むしろ一行埋めるだけで一ヶ月終わったとかそういうレベル。なんとか乗り越えて一般に出したいです

読んでわかる通り本来は4部作(5000字×4=2万)にわけて出すのがちょうどいい思っていた記事です.知り合いから5000字~1万字クラスは長すぎて読まれないから分けろというアドバイスを受けて「それもそうだよなぁ」という反省をこめて4部作ととりあえず打ち出してはいたのです。ただ、分作で書き出すと全然進まないで結局9000字書いてやっと一段落という作業が何回か続いた結果「分作は無理」と思い直して、

(というよりも記事を分けると、移動する時間で読み手の集中力がある程度落ちるから自分からすれば、一本にまとめて書いた方が、仮に全体を把握して読むのに1時間かかったとしても、その時間こそが圧倒的に有意義である。無駄な工程をしなくてすむ。)

じゃあ一本記事にするかというタイミングで12月になってカレンダー企画が出てしまって、ここに合わせて出してしまおう(イベントだから字数が多くても許されるだろうという甘い考えの元)という気合が入り、そこにλさんのお力添えをいただけたこともあって今こうして世に放たれているわけです。まさか全体で6万字近い記事になるとは流石に思いませんでしたが。参考までにこれまでの最近の長編記事の字数はを編集モードで調べたら

伊福部昭特集=14597字

・秋田ひろむ(amazarashi)特集=20175字

久石譲特集=16211字

・まふまふ特集=8960字

(この記事で21年度に編集字数は約10万字以上に上るので文庫本一冊分になります)

(コンセプトは地球大進化かなって思いレベルであらゆる音楽を包括した結果です。)

※知らない人は是非見てくださいね。

なので今回も雑談パート含めてそれくらいかなとおもったら結果的に倍以上で驚きました。今回は全体うち2万字がλさんによる提供文章なので実質5万字です。デジタルタトゥーとしてこれから残っていく分には申し分ない字数なのかな。ちょうど今日はクリスマスですし、これを読んでいる皆さんは恐らく自宅で趣味やインターネットサーフィンに勤しむ人ばかりだと思うので(他ならぬ自分がそう)いい暇つぶし記事としても有効活用できます。自分の書きごたえはどうかといえばこれだけ書いても正直物足りない。白状すると当初は10万字を超えていたのだが、自分が語りたいことがあり過ぎて文章が止まらなくなり期限に出せなくなるため、短縮版にしました。それほど菅野よう子は曲数が多い&一曲ずつが精緻でありながら分かりやすい構造で作られているからこそ探り甲斐があるのだ。「期待して読んだけど時間の無駄だったわw」と感じたのであればそれは自分の文章パートが面白くないということで総合的な意味での力量不足です。がしかし今の自分にはこれが精一杯なのでどうかあまり厳しくしないでいただきたいです。

 

ではそろそろこの辺で。ここまで一スクロールも飛ばさずに読んでくれたあなたに感謝です。それではまた来年(出す時間があれば)の記事でお会いしましょう。それでは良い年末をお過ごしください。 

happy holidays!

アニソン派 vol5 現地レポート

f:id:sai96i:20211205124122p:plain


12月4日の深夜0時間(だから実質5日です)〜4時というかなり変則的な時間割のアニソン派に行ってきました。配信のアーカイブあるし、別に書かなくてもいいかなと思ったのですが、現地からみた視点という観点に立って文字起こしするのも一興ということで開始〜終了まで終始メモった内容を色々脚色しつつ(登壇者が実況NGとした話もある)レポートとして書いていきたいと思います。途中から敬称略になってます。

 

 

 

席順的には60番ラストで大勢でなかなか見辛いところではあったが、メモをとるスペースが欲しかったので、個人的に当たり番でした。後ろから参加者を一望でき、いわゆる推しTシャツをきてる人も見受けられました。会場にはアニソン大好き人間が集結しており、ロフトプラスワンに入る前からツイッターのエンカウントで盛り上がっていました。私はというとロフトプラスワンという会場にいくこと自体に憧れを感じていたので、アニソン派が始まる前から「ここがロフトプラスワンか」と心の中で興奮していました。

 

f:id:sai96i:20211209211039j:plain

最後尾からみた視点。Twitter有名人が沢山いました。

 

0時になり田淵さんの挨拶で開幕。最初にアニソン派を通して伝えたい三箇条的なもの

1.アニソンシーンのキュレーションをすることでより良い作品を探す、シーンの向上化

2.クリエイターのコアな話、認知向上を目指す。

3.二次元コンテンツの作品群全てOK (要するにキャラソンからカップリングまで包括)

 

その次に全体のプログラム幕のおおまかな構成が発表されました。

第一部:田中秀和独立よりMONACAを振り返る

第二部:コロナによってもたらされた被害の告白

第三部:人狼は最高である

正直、この時点で第三部に暗澹たる思いを抱いていたのですが不安は的中してしまい、完全にアニソンは関係ない、心底どうでもいい雑話を延々を聞かされ(金取った観客相手にこれを話そうとセレクトした人間の企画力の無さに絶望)、苦痛でしかなかったので第三部についてのメモははなからとらなかったので第三部については、後半で語られたのアニソン話について書きます。

 

第一部

おすすめアニソン(定期報告会)その1

1.ここで息をして (作曲eill)

ここで息をして

ここで息をして

  • eill
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

渡辺翔

・アニソンっぽくない。メロディがいい

華余子

・声がいい、作曲者のeillさんは15歳から作曲している。今後頭角を表す

2.Act10 ~dear my characters~ (作曲:川崎智哉)

Act 10 ~Dear My Characters~

Act 10 ~Dear My Characters~

  • provided courtesy of iTunes

田淵お薦め。

3.熾火(作曲:楠木ともり

熾火

熾火

  • 楠木 ともり
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

楠木ともりは声優アーティストの中でもかなりロックシンガー的な素質がある。普通ならもう少し可愛くアプローチをしてもいいのに、それをやらない。ジャケのセンスがいい。やしきん曰く「ライバルシンガーソングライター」。華余子も一推し。良い意味で大衆性を会得したのでこれから注目の人。

 

4.ワゴン( 作曲:渡辺翔)

ワゴン

ワゴン

  • provided courtesy of iTunes

渡辺

ヒトリエの楽器隊を添えた理由としては、プレイヤーとして素晴らしいから。ゆーまおさんは最近引っ張りだこ。

5.カリスマ一週間(作曲:OHTORA・New K)

カリスマ1週間

カリスマ1週間

  • 七人のカリスマ/カリスマ
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

田淵:同じメロディがないから気持ち悪い、元がロシア民謡の一週間

一週間

一週間

  • Vladimir Minin & The State Moscow Chamber Choir
  • クラシック
  • ¥153
  • provided courtesy of iTunes

華余子:どっからきたコンテンツなのか、パンチがすごい。

(ここで一旦定期報告会終える)

MONACAっていい会社だよな特集

ここで田中秀和広川恵一(monaca)両名が登場。

田淵:独立してみてどうか?また、MONACA所属時と今とで変わった点は何か?

田中秀和:大々的に取り上げてもらえて嬉しいです。monacaに所属している時は楽曲を作ることに専念できた。スタジオのブッキングなどはmoanacaがやってくれていたが今はそういうところを含めて自分でやるようになった。

広川:スタジオの恩恵は感じる。

田淵:やしきんはmonacaを受けて通らなかった人だけどどういう印象か?

やしきん:ちょっとしたアカデミズムを感じる曲が多い。事務所の一貫性みたいなものも感じる。

田淵:スマイルカンパニーが作家事務所だとしたら、monacaはアニソンを引っ張る人事務所という印象。Elements Gardenと対比するとポップス/おしゃれ的なものを感じる。

 

monacaは作曲家のいろはを教えてくれる

元々は神前 暁フォロワー

田中秀和:当時流行っていたミクシィ神前暁さんと繋がっており、メッセージでデモを送ったら「会わないか?」と言われて入社

広川:自分は面接、書類(音源)履歴書を通して入社。

最初は神前 暁のアシスタントを行った

広川:打ち込み、ファイルの整理、掃除、スタジオの整理等

田中:スタジオアシスタント(プロツールの操作),入って一週間で現場に行くようになった。作曲家としてのありかたを叩き込まれた。毎日怒られた。

田淵:やしきんはfmf所属だけど、現場には連れて行ってもらえたのか?

やしきん:自分が担当した楽曲でないと現場には入れなかった。

田淵:田代さんはどのようにして学んでいったのか?

田代:とにかく現場を踏む。昔は自主的に見学に行ったことがある。

田淵:怒られて辛いとか、そういった気持ちにはならなかったのか?

広川・田中:怒られるというより、どちらかというと指摘、注意の類だった。分からなくて当然だからひたすらくらいついた。

 

monacaっていい会社だよな特集

monacaは未来の人材にも期待ができる。

瀬尾祥太郎、オリバーグッド、井上慶太などの後続も非常に活躍が期待される。

田中秀和井上慶太は広川さんに近いタイプ

広川:自分たちにはなかったサウンド性を持っているからそこがいい

広川:オリバーグッドは日本にはないサウンドの切れ味がある。

田中秀和:元々トラックメイカー出身。日本サブカルに興味を示し独学でここまできた人。

 

ここまででMONACA特集終了。

 

第二部

おすすめアニソン定期報告会 その2

1.ミス・コンダクタ(作曲:ツミキ)

ミス・コンダクタ

ミス・コンダクタ

  • provided courtesy of iTunes

田淵:ボカロpのコンペだが、ボカロPがアーティストに提供することについてはどう思うか?

やしきん:今や不思議ではない。昔はVOCALOIDだからこその利点(ピッチ、声域の正確さ、高速歌詞)が人間に変わるとネックになっていたが、今の新人声優はボーカロイド楽曲を通っている人たち(たくさん歌っている)だから今やそういうのもないからこういう曲を人間が歌っても成立する。

 

2.トアルトワ(作曲:taku inoue)

トアルトワ (feat. Taku Inoue)

トアルトワ (feat. Taku Inoue)

  • 電音部,TAKU INOUE,東雲和音 (CV:天音みほ)
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

田中秀和推薦。昔からtaku inoue 楽曲が好き。年々進化しているからすごいと思う。

 

3.CHAMPION GIRL(作曲 Giga)

CHAMPION GIRL

CHAMPION GIRL

  • 電音部,Giga,鳳凰火凛 (CV: 健屋花那)
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

最近の人は声域に指定がないからすごいと思う。

 

School boy (ピーナッツくん)

School Boy (feat. もちひよこ)

School Boy (feat. もちひよこ)

  • ピーナッツくん
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

広川推薦.ピーナッツくんは動画もつくる多才な人。この曲はヒップホップ色が強い。

 

4.Stellar Stellar(作曲:taku inoue)

Stellar Stellar

Stellar Stellar

  • 星街すいせい
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

音の暴力のみたいな曲。

 

5.Dark seeks light(作曲:ケンカイヨシ)

Dark seeks light

Dark seeks light

  • ニノミヤユイ
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

田中秀和推薦.

田中秀和:自分との作り方の違いが出てる。作り方のアプローチが独特で、本人もそう

ロックのフィールドもあって面白い。トラックメイカーがアカデミズムに走ると「全部なる!!」

 

 

第二部:コロナによってもたらされた被害の告白

このシークエンスでtom h@ckとkz(livetune)、そしてリスアニ編集長が登壇

リスナー質問

tom h@ckさん宛の質問

Qこれまでに買った機材で一番高いのはなんですか? 

A.tom h@ck クロック(多分クロックジェネレーターだと思われる)で300万円

 

kz(livetune)さん宛の質問

Qマニプレーターって何?DJとの違いは?

A.マニュプレーター...あまり馴染みはない。

ex)ライブでギターリストの音数を調整するのがマニュプレーター

DJは最近機材の進化によりマスターテンポによりリズム調整が楽になった。

昔は手動で行っていた。

 

本編

・tom h@ck

コロナ流行により海外ライブができないのが色んな面で辛かった

2022年はできるように進めていきたい。

大変な時期だからこそ、自分が関わってるチームが一丸となっている

作曲、編曲など何を出しても数字が下がっている。コロナによりシェア率が上がるかと思っていたがそれほどでもなかった。

ex)コロナ前は100万再生をとっていたところが70万再生になっていた

一方で、印税の面だとあんまり変わっていない

登壇前までamazon prime配信のオリジナルリアリティ番組のバチェラー見てたから、そのことで頭いっぱい

 

kz(livetune)さんのお話は凄く面白かったのですが、大半が実況NGだった気がするのでざっくりまとめるとコロナによるシフトライブはつまらないということを延々語られていました。

 

リスアニ編集長の馬嶋 亮さんは、現場だからこそのお話が沢山あり、これも面白かったのですが、多分このシークエンスも実況NGだった気がするので大幅に要約するとコロナで中止になったイベントの損失が大きかった。JLODliveがなければもっと悲惨だった。ということを話されていました。

JLODlive | コンテンツグローバル需要創出促進事業費補助金

 

ここで第二部終了。第三部は冒頭にもかきましたが、しょうもない人狼話が延々続く地獄みたいな数十分だったので割愛。以下、そこからのレポート

 

おすすめアニソン定期報告会 その3

1.エンターテイナー 作曲:堀江晶太&じん

エンターテイナー

エンターテイナー

  • provided courtesy of iTunes

これが流れた時正直驚いた。少しマイナーな方向性の楽曲ばかりだったので、ここにきてまさかのじん堀江コンビ楽曲が来るとは思わなかった。

kz(livetune)さんおすすめ楽曲

歌詞が内情的(内へと向かっている)のが多いのに、本楽曲はそれが一切ない。

タイトルのエンターテイナーの流れでvtuberに対しての印象の話になり、そこでの例えも実に面白かった。アニメ分野でやる→バックストーリーというのに対してvtuberというのは一生やっている日常アニメという解釈。新しい解釈というよりかは、エンドレスエイトとかBD的な感覚からもってきたのかなと思ったり。

エンドレスエイト

涼宮ハルヒシリーズのエピソードの一つで(涼宮ハルヒの暴走に収録)8月17日~8月31日の2週間が延々繰り返されるというお話。アニメ版では8週間真面目にやってしまったせいで同じ内容(作画の小ネタなどを除いて)が2ヶ月繰り返されるという有名なやつですね

※BD (ビューティフルドリーマー

アニメ界で特に名のしれた監督の一人押井守出世作。毎日文化祭前夜が繰り返されることに違和感を覚えた主人公たちがそこから抜け出そうとするという当時としてはびっくりな内容で今なお語り継がれる名作。メタフィクション胡蝶の夢的なタッチをストーリーに組み込みエンドクレジットまで楽しめるという、今で言うとインセプションのラストと入った方がわかりやすいのかな。あと今ではお馴染みのループ物としても画期的だっと思われる。(原作のうる星とは作風が真逆すぎて原作者と原作の世界が好きな人にはすこぶる評判が悪いが、数ある劇場作の中で作品として残っているのはBDなので、まぁ好みの問題ですわな。私は大好きです。)

閑話休題

 

この曲についてやしきんは男女の掛け合いがはいった組曲は難しいのによくやってると評し、vtuberにかけて「インターネット上のエンターテイナー」なんてうまい感じでコメントを締めてました。

 

2.キミエモーション

キミエモーション

キミエモーション

  • Marpril
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

future bassでアニソンの流れを組んでる。バランスがすごすぎる。ポップス感がないとだめなkz(livetune)さんにとって本作は「マジですごい、ちゃんと聴いたほうがいい」と太鼓判を押されてました。

 

3.ODD TAXI 作曲:スカートとPUNPEE

ODDTAXI

ODDTAXI

  • スカートとPUNPEE
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

リスアニの編集長が激推し。今年楽曲ベストとまでった本作はサムライチャンプルーのあの感じと言っており、ここで私は「nujabesのことだー」と一人心の中で叫んでたのですが、周りは無反応が多く(この定期報告会でも上がる時とそうでないときの落差がすごかった。)おいおい、マジかよここにいる連中はnujabes履修してないのかとちょっと驚きました。まぁ知ってたのかもしれませんが、反応薄でちょっと悲しかったです。

入門用nujabes楽曲

reflection eternal

reflection eternal

  • Nujabes
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
Modal Soul (feat. Uyama Hiroto)

Modal Soul (feat. Uyama Hiroto)

  • Nujabes
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
Luv (sic)

Luv (sic)

  • Nujabes
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

サムライチャンプルーの音源元になった作品でいうとこれ

Other Side of Phase

Other Side of Phase

  • Nujabes
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

サムライチャンプルーではこうなる。

battlecry

battlecry

  • provided courtesy of iTunes

これだけでもnujabesがいかにすごい人だったかは肌身で感じられるでしょう。

nujabesの音楽がどれくらい強度を持っているかっていう話はこちらの記事まで

sai96i.hateblo.jp

閑話休題

 

4.パラレルモーション 作曲:小島英也

パラレルモーション

パラレルモーション

  • provided courtesy of iTunes

kz(livetune)さんおすすめ楽曲。作家性が全く変わらない。アニソン、Jpopはタイアップを受けてから楽曲を作ることが多いためアーティストの色がなくなることが多いけどこの人がそれが全くない。

冗談抜きに小島英也はここ10、20年の中での天才

とまでkz(livetune)さんが真面目に語ってたのが印象的です。

 

5.つらみ現在進行形 作曲:櫻澤ヒカル

つらみ現在進行形

つらみ現在進行形

  • provided courtesy of iTunes

飛び入り参加の白戸佑輔さんおすすめの楽曲。フライングドッグにしかできない組み合わせの楽曲。(ちなみに白戸さんは本作のタイアップ作品であるマクロスにはまった理由が菅野よう子の劇伴とちゃんと発言しててやっぱり女王はすげーなと思いました)

以降、飛び入りで中山まさと、篠崎あやとが登壇

中山まさと

劇伴やるのはしばらく使ってない時の水道の蛇口を捻ってるような感じになる。出し切ってもうダメだっとなった時に進むので、まずは出し切らないと次に進まない。

劇伴作家の辛みとして毎回作る時になって「これ終わったら実家に帰ろう」と思うとのことですが、全部終わった時には忘れてて、以下ループらしいです。

・篠崎あやと

おねがいマッスルはまさか1億(再生回数が)いくとはおもわなかった。800再生で御の字くらいだと思ってた。受けないだろうみたいな楽曲が爆受けすることがあるという流れで田代さんが「ハレ晴レユカイ」もそうであったとおっしゃってました。

 

ここら辺でアニソン派としてのイベントが時間を迎えて終了して配信組も聞いてない現地のみのアフタートークの時間が40分くらい続いたのですが、中身はそんなに面白い話でもないし、NGがかかっていたきがするので紹介は伏せておきます。

以上がアニソン派の現地レポートでした。登壇者の発言はなるべくそのままで書きました。参加してみて思ったのは面白いけど物足りないという感じ。特に人狼の話で時間を無駄にした気がして、あの時間をもっとアニソンについての談義にしてほしかったと思います。チケ代1万円のうち、7000円くらいはNG部分含め回収できましたが3000円分くらいは未回収という印象。vol6.も今、スケジュール調整中(田淵発言)とのことなので、次回に期待したいと思います。

個人的に面白い話をしてくれたのはkz(livetune)、渡辺翔田中秀和tom-h@ck、リスアニ編集長馬嶋 亮の5名でそれ以外は別に、、っという感じがした。tom-h@ckさんは会社の社長ということもあってそこ目線での話が格段に面白かった。kz(livetune)さんはNG部分の話がとにかく素晴らしかったのと、意見一つ一つが丁寧で凄く好感を持てたし現場ならではの意見を聞けたという点では馬嶋 亮さんもよかった。

まぁそんな感じです。ちょっと宣伝すると次回は楽曲オタクアドベントカレンダー記事ですです。当ブログ初の試みをしかけていたりと、とにかくアドベントカレンダーに相応しい記事を絶賛執筆中なので心して待てという感じかな。では25日を待て。

DUNE/砂の惑星とヴィルヌーヴ映画

久しぶりのデジタルタトゥー記事。現実に追われすぎて、時間を全くとれなかったのでかなり間隔をあけました。いつも通り音楽について書きたかったのですがネタを組み込みきれずに、時事ネタに逃げようとおもいまして、DUNE (デューン)映画化に合わせてそれらにまつわる今更話でも書くかということで、普段音楽について独断と偏見が入り混じった記事を書いてますが、今回は映画と小説の話をします。なので音楽の記事以外興味ないという方はブラウザバックを。

では早速本題にいきましょう。

 

世界単位で「砂の惑星」といえば間違いなくフランク・ハーバートSF小説DUNEをさします。日本で本を読まない(もしくは)SFの基礎教養がない10-30代くらいの人は「砂の惑星」ときいたら脊髄反射で「米津(ハチ楽曲)さんの曲名だ!!」といった感じのをイメージアップをすると思います。SFファンとしてはここまで清々しい検索汚染もないよなぁっと感じますが、作り手の言い訳もあるでしょうし、なにより既存有名タイトルをそのまま楽曲名にするのは恋と秒熱の時からそうですし、「恋と秒熱」なんてタイトルでも宮沢賢治を「銀河鉄道の夜」「注文の多い料理店」くらいしか知らない人は同じように気づかず、パプリカも間違いなく意識して狙っていますが、世の大半は今 敏監督も知らなければ、筒井康隆の本も「時をかける少女」くらいで「パプリカ」という小説も知らないだろうし、ましてやそれがアニメ化されてるなんて情報はアングラな人間しか知りませんから。そういったことをわかった上で狙ってやる作り手の巧妙さが身に染みるだけなので一旦置いておいて。

 

 

そもそもなぜ60年代のSF小説が今更映像化なんだと思われる方もいると思うので前提知識としてそこからお話をします。映像化の話は70年代からあり、先陣をきったのがアレハンドロホドロフスキー。彼の説明は色々ややこしいので省くが、世に言う「カルト監督」と思っていただければいい。そこで集めたメンバーは後に伝説的といってもいい功績を残す人ばかり。画家のサルバードル・ダリ、BD (バンド・デシネ フランスにおける漫画形態の総称)の巨匠メビウス(宮崎駿大友克洋鳥山明などの巨人の絵柄に影響を与えたイラストレーターであり数々の名作SFのデザインを担当)、やミックジャガー、オーソンウェルズ(市民ケーンの監督)、ダンオバノン(エイリアンの脚本やSW EP4のコンピュータグラフィックなどを担当)、HRギーガー(エイリアンというかビックチャップをデザインした人)

f:id:sai96i:20211014222321j:plain

クリスフォス音楽一向にピンクフロイドやマグマなど今やその界隈では知らぬ人はいない巨人たちがこの企画に参加していました。ここら辺については解説をなどを読むよりかは実際に本人から語られているドキュメンタリー映画ホドロフスキーのdune」をご覧ください。(多分今もアマプラにある。dune云々を抜いても元気が出る映画です。)

 

しかし予算の工面、上映時間十二時間、ダリのわがまま出演料等に加えホドロフスキーがメジャー性のある映画監督でなかったことからこの企画は頓挫。のちにこれらをディノデラウレンティスPにより、デヴィッドリンチに周り、映画化をしますが、これもリンチの持つ「作家性」的なものとの齟齬により失敗作となりました。(ベクトルが違うだけでリンチ監督は非常に優れたクリエイターであり映像を楽しむという点では面白く一件の価値はありますが)。リンチ作品のおすすめは

ブルーベルベット/マルホランドドライブ/ワイルドアットハート

その後もテレビシリーズなどで映像化を見込まれていましたが、出来上がった物を観客側が満足することはありませんでした。そのくらい原作のイメージが長大であるからです。

 

さて、今回監督を担当するのは、今の映画界ではトップを走る一人であり作品の打率も高いドゥニ・ヴィルヌーヴ

f:id:sai96i:20211014222500j:plain

ドゥニ・ヴィルヌーヴ

カナダ出身(ここ重要)ということもあり、コテコテの米国映画的なもの(単にこういうものと言いきれるほど映画は見ていないが、冒頭5分見ただけでオチまでわかってしまうタイプの映画だとお考えください)を取るタイプの映画監督ではないというのがまず押さえておきたいところ。彼のフィルモグラフィー(監督作数的には寡作の分類)の中でも注目すべき作品はarrival、sicario、blade runner2049、prisonersの四作。それ以前の作品も注目すべきですが(複製された男、静かなる叫び)今回はあえて外します。

f:id:sai96i:20211011215337p:plain

 

まず最初にあげたarrival(邦題はメッセージ) 、これはテッド・チャンというsf作家が書いた短~中編小説「あなたの人生の物語」を原作に敷いた映像化なのですが、ファーストコンタクトものとして非常に優れた映像表現を描きながら最後にはちゃんとした意味でのヒューマンドラマで締めてくるという傑作。異星人の言語を解析するという、ファーストコンタクトものとしては荒っぽくないタイプの作品(ID4=インデペンデンスデイだったりエイリアンだったり、人気のファーストコンタクト物は大体荒っぽい)です。

その点本作に近いハリウッド映画はスティーヴン・スピルバーグ未知との遭遇

本作の中でも映像の驚きと言えるのが時制がない異星人の言語表現の視覚化です。表音文字(あいうえお)や表意文字(漢字などに代表される一文字で意味を成す言語)とも違う表義文字を見事な演出とともに映像化しているし、これは押井守新海誠樋口真嗣などの映像クリエイターも見事と太鼓判を推している。

f:id:sai96i:20210916185424j:plain

f:id:sai96i:20210916185429j:plain

劇中でヘプタポッドと呼ばれる異星人の言語

原作と比べると改編などもあり、そこにイライラをもち「許せん!!」と感想を持つ人も一定数いますが、ある種それは原作映画の宿命のようなものであり(つまりは原作は器であり、そこに何を盛るかは作り手による)この映画に至っては結果的に良質なものが出来上がっているため問題はないと私は思う。というよりチャンの原作を映像化するのであればこのくらい改変せねば映像化にならん。それはともかく、この作品を観ればsf映画を撮る素養というのが備わっていることがわかる。


www.youtube.com

第二にsicario (邦題=ボーダーライン)、この作品は映画脚本家によるオリジナル作品。麻薬カルテルとそれを取り締まる警官という、少し映画をみていたらよくある題材(というよりありふれたパターンの一つ)の映画であるが、この作品でもヴィルヌーヴの映像は目を見張るものがある。第一に銃撃戦。銃撃戦というとHEATのような白昼堂々打ち合うといったイメージを持つ方もいると思いますが、本作は物語の流れというのも関係していますが、車の渋滞の中で演出されるものです。シュチュエーションとしては地味だと思われがちですが、いざ見てみれば緊張感が溢れること間違いなし。この作品で描かれるフィクションでありながらもどこかリアルに感じられるほど演出など見応えたっぷりです。


www.youtube.com


www.youtube.com

 

prisoners(プリズナーズ

これは、簡単にストーリーは単純(要約すると大体こういうと言う意味)で子供を誘拐された親(ヒュー・ジャックマンが演じてます)が怒りにまみれて犯人を狂気ともとれるような行動を取り、それをギレンホール演じる有能刑事が色々カバーするといったお話。ちょこちょこ脚本に違和感を感じることもありますが、それを許せるだけのオチとその描写の仕方がやっぱり秀逸。見た人なら「わかる」といっていただけると思うが、貶すつもりはない上で書きますが、例えば最近ヒットした韓国映画「パラサイト」のラストで息子が父親宛に書いた手紙を読んでどうこうの展開。あそこは非常に観客に「わかりやすく」説明的であり、私なんかは蛇足的であると感じてしまう。もっと省略的でいいのに。その点プリズナーズはラストは少なくとも「余計な」説明をいれてこない。観客に「説明」ではなく「非カタルシス」的な描写で監督の演出の巧みさが感じられる作品です。


www.youtube.com

 

Blade runner 2049(邦題=ブレードランナー2049)

本作は1982年公開のリドリースコット監督の映画ブレードランナーの続編。何も知らない人であれば「過去のsf映画の続編なんてSWでもやってるじゃん」と思ってしまう人もいますが、ことブレードランナーという映画はカルト映画でありながら、ブレラン以降の「sfで近未来」的なイメージソースの元祖といって差し支えない作品。つまりは続編ものなんてはなから必要性がないのである。そういった、もはや伝説的な作品の続編というのは、海外の映画監督であれば、普通は担当しようとは思わないはず(どう作っても必ず賛否になるし、ブレードランナーというタイトルを背負った続編なんて誰であれ荷が重いと感じるから)その続編をヴィルヌーヴが撮った結果、前作を超えた云々というのは土台無理な話なのでさておき、「続編」としてのできはファンであれば誰もが納得するクオリティ。やれ、上映時間が長いだの(たしか内容に対してスクリーンタイムが3h近かいのはきついが)、つまらないだのと、否定的な意見も多いが、こればっかりは見て判断していただきたい。


www.youtube.com

そして、優れた監督、作品には優れたスタッフがいるのも事実。映像的なところですとsicarioとprisoners,blade runner2049の3作品はロジャー・ディーキンスという超一流の撮影監督(フィルモグラフィー的には007のスカイフォールが一番有名なのかなぁ)が携わっていることもあってより映像に拍車がかかってます。特にsicarioは銃撃・アクションが多めの作品なのでそこ点も楽しめる一つになってます。

音楽にはヨハンヨハンソンという作家との絶妙というかこれ以上ない組み合わせで数作(arrival,sicario,prisoners)担当。中でもarrivalはそれを象徴する作品だと感じます。

 

Heptapod B

Heptapod B

  • provided courtesy of iTunes
Kangaru

Kangaru

  • provided courtesy of iTunes
Sapir- Whorf

Sapir- Whorf

  • provided courtesy of iTunes
Decyphering

Decyphering

  • provided courtesy of iTunes

SF作品にアイスランドという地域性からでた鍵盤演者という点が普通の劇伴と「変わっている」ところ。重量感、民族音楽的であり、メロディラインはつかみどころがないほど多角的。芸術とエンタメを見事に包括するドゥニ監督には本当に最高のパートナー「だった」と思います。なぜ過去形なのか。それは既に亡くなっているからだ。48歳という若さで。彼が優れた音楽家であったというのはもちろん、後続の音楽作家を育成し成功している。これは2019年の映画「JOKER」でアカデミー賞作曲賞を受賞した劇伴作家ヒドゥル・グドナドッティルが、彼の門下生であったことからもよくわかる。

Arthur Comes to Sophie

Arthur Comes to Sophie

  • ヒドゥル・グドナドッティル
  • サウンドトラック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
Looking for Answers

Looking for Answers

  • ヒドゥル・グドナドッティル
  • サウンドトラック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
Bathroom Dance

Bathroom Dance

  • ヒドゥル・グドナドッティル
  • サウンドトラック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

弦楽器ラインに影響を垣間見えますね。

閑古休題

挙げた四作品ともに、ヒューマドラマ(もっというと親と子供)と強い母性を描くことがこれまでのフィルモグラフィーからみて取れることです。故にここで好き嫌いが監督でもあったりしますね。

 

arrivalやbladerunner2049等のsf映画を物の見事に傑作に押し上げたドゥニ・ヴィルヌーヴが次に撮る作品、それこそがDuneである。先述した「ヴィルヌーヴがdune」を監督する。だけだと映画に詳しくない人が「はいそうですか」で終わってしまうので一度足並みを揃えるために彼のフィルモグラフィーについて簡易的ではあるが説明をした。ここまで真剣に読んでいただけたのであればこの監督が如何に優れたクリエイターであるかは理解いただけたであろう。先ほど書いたようにDUNEという小説は映像化が難しい。で、そのことをよく分かった上でドゥニ監督が取った方法は2部作にするというもの。それも今回の1作目だけで2時間半とかなり尺を取って。つまりは5時間分相当を使って第一部「DUNE/砂の惑星」を作る。ということは1作目があたらないと次回作はないわけで、これまた「DUNE映像化失敗」となってしまう。そのためにも皆さん映画館でDUNEを観てください。砂漠の救世主をベースに三作目をつくるという噂も出てますつまりは三部作の可能性も持ち合わせているわけなのでやっぱりいい作品は劇場で観ましょう。

 

では次にDUNEという小説について

簡素なあらすじ

はるか未来、思考機械の反乱後、自らの肉体精神性を拡張した文明を築いて、その中にアラキスという砂に覆われた惑星があり、そこにアトレイデス家が移住してくることから話は始まり、未来を視えるポールの苦難や、父親レトの死を始めハルコルネン家・大公家連合などの権謀術数、原住民のフレーメンと呼ばれる部族勢力などがとりまく各公家たちによる混沌と裏切りに満ちた一大叙事詩(の冒頭第一部)

いうまでもなくこういった小説は貴種流離譚という一種の型にハマっているので当然ポールは最後帝座に座につきます。続編以降はそれを破壊して行きますけどそれはさておき、第一部という括りという意味では「なんだ典型的なヒーローもの」と感じてしまいますが、作品のディティールの描写に富んでおり、用語、航空機などのガジェット、戦闘描写など兎角読者が夢中になってしまう要素ばかりです。そのせいか現在早川から出ている上中下の下巻の後ろ数ページは用語や公家の設定などが書かれている附録が掲載されています。

 

さきほど一大叙事詩冒頭第一部と書きましたが、砂の惑星以降続編が刊行されており砂漠の救世主、砂漠の子供たち、砂漠の神皇帝、砂漠の異端者、砂丘の大聖堂と続きます。おそらくクライマックスに突入していたことに違いないという所で著者のハーバートが亡くなってしまったため作品全体としては未完になってしまったことが本シリーズの唯一の痛い所。しかしながら第一部「砂の惑星」だけで完成されている物語であり、十分楽しめるので続編云々は気になる人だけが追えば良いという感じです。

新訳で上中下巻で「砂の惑星」は出てますので是非読んでください。

f:id:sai96i:20211014232134j:plain

DUNE series



さて、ここからはそんなDUNEシリーズが後続の作品群にどのような影響を与えたか映画化に合わせて、duneの影響力についての記事が出回っていますが、末節骨レベル(つまりは小手先)にしか触れられておらず、非常にもどかしいので中手骨ぐらいには深めに書きます。

www.oricon.co.jp

こういった文言の記事が大量に上がっているのにもかかわらず、具体的な指摘がひとつもないのは「上っ面だけだなぁ」と感じます。大体アバターに影響を与えた小説というのであれば、ルグィンの「世界の合言葉は森」の方がプロット等そのまま踏襲してるレベルで影響を受けているのだから、dune云々いう前にそういったところをまず書こうよと思いますが、まぁ書き手にそこまでの教養がないのでしょう。

 

「DUNE」はその後の(洋の東西を問わず)サブカルチャーに莫大な影響力を与えました(今更書くことでもありませんが)DUNEの小説の要素を翻訳した有名な映画作品といえばスターウォーズ

  • ジェダイのフォース-ヴォイスというべネゲセリットが使う超能力
  • タトゥイーン等のイメージ-惑星アラキス(砂の惑星
  • 重要な役割を持つ双子(レイアとルーク)-(ガニマとレト2世)or(ポールとアリア)
  • 構造のディティール-ジョセフキャンベルの神話云々とは別に話におけるキャラの役割(主人公が敵によって堕落し、それらを子供にあたる双子が復讐を遂げる)

そして日本では言わずと知れた巨匠宮崎駿監督の漫画&トップクラフト制作の映画作品「風の谷ナウシカ」では

  • 主人公が救世主的役割を担うということ
  • 王蟲という巨大な虫-惑星アラキスに棲むサウンドウォームという巨大な砂虫

(まぁこれはモスラが元になっているという考えもできる。なぜなら初代モスラの原作になった「発光妖精とモスラ」を書いた3人の作者内、一人が堀田善衛宮崎駿さんが尊敬する著者であるから.)

堀田善衛さんがナウシカを見た時、王蟲のシーンで笑っていたという証言も残っています。

www.ghibli.jp

原稿を書いていただくにあたって、僕たちがどんなことをやっているか知っていただこうということで『風の谷のナウシカ』をご覧になってもらおうと、当時都内にあった堀田家のマンションにビデオデッキとソフトを持ち込ませていただきました。堀田さんも『モスラ』の原作をやられたりしていますから、きっと楽しんでいただけるんじゃないかと思っていました。堀田さんはその時、片方の目が不自由で、もしかしたら途中で疲れてしまって全編見られないかもしれないと奥様からは申し渡されていましたが、最後まで興味深そうに見てくださいました。その時に非常に印象に残っているのは、王蟲が登場すると、抑えた声で楽しそうにクックックと笑っていらしたことです。

あと慌てたのは、ナウシカ王蟲の大群に跳ね飛ばされたところで、映画が終わりと思われた堀田さんが「うむ、おもしろかった」と言って席を立たれようとしたことですね。立たれようとする堀田さんに「まだ、続きがありますから」と言って最後まで見ていただいたら、「ああ、生き返るのか」とおっしゃったことをよく覚えています。

 

そのほかにも、弱い推測ではあるが

  • ドルクの政教一致な点やナムリスやミラルバなど超常の力を持っているところが非常にベネゲセリット的

メランジによって人間がミュータント化したメンタート(数学能力が以上に高いコンピュータ人間)がいる宇宙協会などといったディティールに魅了されたのかなぁと思ったり。

  • DUNEに出てくる乗り物オーニソプター(ギリシャ語で鳥(オーニ)+翼(Thopter)=羽ばたき飛行機=鳥のように持続的に羽ばたく航空機)の否定型として天空の城ラピュタの虫型のフラップター(はばたくの意味をもつflap+Thopter=フラップター)が描かれているのも明らかであり、それを証明するものとして宮崎駿イメージボード集にこのような記載があります。

f:id:sai96i:20211010235453p:plain

宮崎駿イメージボード集より

とまぁこのように、日本が誇る当代随一のクリエイターも色々文句を言いながら(宮崎駿御大らしいですね)影響を受けています。

 

そしてもう一つ、現代の最も優れたエンタメ作品として氷と炎の歌というファンタジー小説があり、つい数年前最終回を迎えてまだ記憶に新しいゲームオブスローンズ。

f:id:sai96i:20211014223739p:plain

https://warnerbros.co.jp/tv/gameofthrones/ より画像引用

意外と指摘されていないですが、本作もduneの影響は見受けられます。

ブランの未来/過去が見える能力 三つ目鴉→ポールの能力の転換

アリア→ポールの妹で同名アリア

王の楯であり総帥という伝説の騎士サー・ダンカン・ザ・トール→ダンカンアイダホ

ジョン・スノウ→冬の狂風以降、原作でどう料理するかは不明だが、結果的に選ばれしものであったという点などが非常にポール的。

そのほかにも代理決闘などの要素などにdune的だなと感じるところがあります。そしてこれらは絶対に意図的であることがわかる。なぜならば作者のG.R.R.マーティンはSF作家であり、SF分野内でも「サンドキングズ」や「ライアへの賛歌」などでヒューゴ賞などを受賞している実力作家でもあるからだ。個人的にはワイルドカードシリーズが大好きですね。(日本では途中までしか訳されていないのが残念なところだが)

 

もちろん氷と炎の歌シリーズも読んでますが(GAME OF THRONESは原作者の監修付きとはいえ、お話が原作を追い越してるので、作者が書くゲースロの結末を読みたいなと思ったり、だから早く第6章:冬の狂風を出して欲しいのだがそれはまた別の話)

※ドラマであれだけの面白さを持ってしても、原作の方が面白い。

f:id:sai96i:20211014233515p:plain

表紙も素晴らしい/鈴木康士

こういった、古典の名作小説に影響をうけて作られたものが映像的に出て、数十年後原典のあの小説が!!というパターンは多い(ジョン・カーターとか、エンダーのゲームとか)が、ことごとく名作小説→名作映画の変換は失敗している。だが、そんな中今回の映像化は一流の監督、キャスト、スタッフを備えているので、今回でダメなら金輪際無理と言っていいでしょう。


www.youtube.com


www.youtube.com

予告編を見るに非常に期待が持てると私は感じている。

 

さて、dune話を延々したわけだが、まとめるとdune見ろ&読め。ということになる。

本国(つまりアメリカ)ではSF情報誌「ローカス」で12年ごとに行われる読者のオールタイム・ベスト投票で1位を取り続けるという、偉業を成している。つまり本作が出てからSFにおける総合的な物語のクオリティとして(極端な話)DUNEほど変わらぬ評価されている作品というのはあまりないということである。そんな小説であるが故にDUNEに影響〜云々言い出したらキリがない(特に小説内や映画、ゲームには莫大な影響力)。そのため有名な作品に限定して紹介した。そういった歴史というか、流れを知っていれば今どき砂の惑星ときいて「あ、ボカロ曲だ」と反応してしまうのは少々視野が狭いように思える。まぁ別にいいんだけど。がしかし、少なくとも大元を理解した上でその末端の末端にボカロ楽曲があるという認識をしたほうが色々エンタメの世界が見れるし、楽しいと感じます。

少々歯切れが悪いが、この辺で今回は終わり。次の記事(があれば)で

2021/10/15

伊福部昭の特撮音楽に隠された作家性と純音楽

・前置き

日本には劇音楽における巨匠がたくさんいます。スタジオジブリの劇伴で有名な久石譲

sai96i.hateblo.jp

戦場のメリークリスマスなどで知られ、アカデミー音楽賞を日本人で唯一受賞するなど国際的に評価された坂本龍一

 (19年に書いた拙い記事を一応貼っておきます。そのうちリメイク記事だします)

sai96i.hateblo.jp

ストラヴィンスキーに魅入られるほどの異才:武満徹など、誰もが名前と楽曲を一度は聴いたことがある名作家たちです。伊福部昭もその一人。ハリウッド・ウォーク・オブ・フェイムに足跡と名前を刻むまでに有名になったゴジラのメインテーマを作曲したことで知られています。その一方、特撮映画音楽家としての評価が定着しているがために、広義の意味での作曲家としては評価されにくいというのも事実。なので今回はそういった風潮・思い込み・誤った認識に対して、実は見事なまでに音楽の文脈、学問に沿った存在であり、日本を代表する「作曲家」であるということを読んでいる方々の意識をアップデートさせたいため、経歴と楽曲における仕組み・構造を解説するという、いつもより凝った構成になっています。

 

f:id:sai96i:20210704154119j:plain

今年の生誕日にGoogleにも載りました。

以下本編↓

 

伊福部昭の作曲家の略歴

ペトルーシュカ春の祭典

きっかけで13歳から作曲を始め、そこから経験を積んで1932年に北海道帝国大学農学部林学実科(現・北海道大学)へと入学。そこで文武会管弦楽部へ入り、早坂文雄三浦淳史などと結託し、第一バイオリンの主席奏者を担当。34年には新音楽連盟を結成。ストラヴィンスキー ,ラヴェル,サティ,ルイス・グリュンベルク,アルフレード・カゼッラ,マニュエルドファリャなどの海外作家の紹介するという活動。その一環で演奏をすることがあったらしいのだが、Vin 伊福部、piano 早坂文雄でサティの右や左に見えるもの〜眼鏡無しで

右や左に見えるもの(眼鏡なしで) 1. 偽善のコラール

右や左に見えるもの(眼鏡なしで) 1. 偽善のコラール

  • provided courtesy of iTunes
右や左に見えるもの(眼鏡なしで) 2. 手探ぐりのフーガ

右や左に見えるもの(眼鏡なしで) 2. 手探ぐりのフーガ

  • provided courtesy of iTunes

を奏でるという、今考えるととんでもない組み合わせの演奏もあったとか

(一応説明を入れると早坂文雄黒澤明の7人の侍や羅生門といった代表作の音楽を担当)
三浦淳史については、伊福部昭は自分を作曲家になる入口となった存在と評しているのでやはり熱い関係と言えるでしょう。

 

35年、日本狂詩曲を作曲。 

日本狂詩曲: I. 夜曲

日本狂詩曲: I. 夜曲

  • provided courtesy of iTunes
日本狂詩曲: II. 祭

日本狂詩曲: II. 祭

  • provided courtesy of iTunes

それをチェレプニン賞に応募(日本人を対象としたものだが)すると。ここで当時無名であった伊福部昭が一等に入賞。1936年アメリカボストンでセビツキーの指揮、ボストンピープルス交響楽団の演奏によって初演される勢いで国際的評価を獲得。その後チェレプニンの元でピアノの指導を受け、方向性を認められます。チェレプニンは伊福部の才能に惚れまくっていたらしく、当時両親に直談判してプロへの道にと進めたそうです。
1937年 アイヌ文化に慣れしたんだ素養とノスタルジアを詰め込み土俗的三連画を作曲。38年にピアノ組曲ヴェネツィア国際現代音楽祭に入選。

ここまでの経歴だけで単なる音楽作家ではないということがお分かりになったと思います。41年ピアノと管弦楽のための協奏風交響曲を発表。そして、その後に発表されたヴァイオリンと管弦楽のための協奏風狂詩曲

ヴァイオリンと管弦楽のための協奏風狂詩曲(1948/71) 第1楽章:アダージョ~アレグロ

ヴァイオリンと管弦楽のための協奏風狂詩曲(1948/71) 第1楽章:アダージョ~アレグロ

  • provided courtesy of iTunes

ヴァイオリンと管弦楽のための協奏風狂詩曲などと改題されたりしています。この楽曲の第1楽章のtutti(fff(フォルティッシッシモ),10~110db内の音の総和)=全奏のシークエンス「ゴジラメインテーマ」でお馴染みのメロディが流れることから(詳しいことは後述しますが)われわれがしっているゴジラのメインテーマはなにも「ゴジラ」だからああ言う音楽というわけでもないのです。そしてこの組み立てがラヴェルの協奏曲の楽曲性に近いと(後半で詳しく後述します)いうことなのです。

捉え方によっては単なる使い回しともいますが() 実際社長と女店員(1948)で既に使われているし。

 

終戦後プロの音楽作家として身を立てることを決意(意外なことに伊福部が専業作曲家になったのは戦後なんです)し、その後銀嶺の花で初映画音楽デビュー、以降300本強の映画に音楽提供をし、数々の名曲を生み出したことは言うまでもないです。 今の人からしたら「東宝怪獣映画の音楽の人」という印象になってしまうのはしかたないのですが、その音楽性はそれ以前に「作家性」としてあったものと言えます。

 

そんな伊福部が映画音楽を作るときに提唱していたものがいくつかあります。

伊福部は映画音楽効用四原則
・正攻法な音付と対位法
・時空間の設定
・画そのものが発してくる音楽的換起
・ドラマ・シークエンスの確立
映画音楽にできることはこの4つしかないと言います。これに関してもう少し説明を加えると

 

・状況の設定

西部劇音楽はエンリオモリコーネ、SWはジョンウィリアムズ、ターミネーターのテーマ「デデンデンデデン」のような音で映像を想起。

・エンファシス

「はい、ここで泣くところですよ〜」と言わんばかりの気分の増幅させる方法

・シークエンスの明確化

A,B異なる場面でも同一の音楽を流すことによって生み出される感動、怖さ、恐ろしさもの。

・フォトジェニー(音と映像の融合体)

久石譲宮崎駿/押井守川井憲次/今敏平沢進/細田守高木正勝/庵野秀明鷺巣詩郎に代表されるアニメ作品によくある。これに関しては

「映画は音楽や効果音、ドラマツルギーを並べても意味はない。それぞれが機能し、時間的に並び立ったときにこそはじめて総合芸術として成立する。画面にはでていないが、どうしても表現したいものを音楽で伝える。」という一文に集約されている。

こういった映画音楽とは何か?ということを経験と知識をもとに理論立てて説明できる人だからこそゴジラ映画に適合する効能音楽を作り得たのだと感じます。

1940年から50年代の伊福部は日本舞踏会を担った代表的舞踊家と組み、目覚ましい活動を展開し、プロメテの火をはじめとする舞踏楽曲を発表.

中でも日本の太鼓"鹿踊り"とプロメテの火が有名ですね。前者は全体を通して音にしろリズムにしろ日本的であり、後者は音はやっぱり文化的だが全体を包んでいるのがオーケストラタッチといった感じ。

 

舞踊音楽《日本の太鼓

舞踊音楽《日本の太鼓"鹿踊り"》 前奏曲

  • provided courtesy of iTunes

 

面白いことに伊福部作品の中でももっとも「伊福部節」を意識せずに聴ける作品だと思う。タプカーラにしろ、リトミカ・オスティナータにしろどこか「伊福部作品のいつものやつね。」といった既聴感はあまりなく、それこそ純音楽としての楽しめる作品である。 その後伊福部昭が追及し続けた先にあった音楽執拗に反復する律動。リトミカオスティナータ(1961年)。

ピアノとオーケストラのための「リトミカ・オスティナータ」(1961)

ピアノとオーケストラのための「リトミカ・オスティナータ」(1961)

  • provided courtesy of iTunes

22mにも及ぶ大作。あらゆる楽器が縦横無尽に動き回って音を密集させる中、ピアノは打楽器と言わんばかりの激しさを感じさせるほど音楽空間に張りめぐらす。音の強度が迫り来る伊福部昭の音楽観が惜しげもなく表われている一作。オスティナータがしつこいほど多用されている。そもそもタイトルが「執拗に反復する律動」を指すのでこれだけでもいかにカロリーが高い楽曲は察していただけるであろう。

 

シンフォニアタプカーラ(Sinfonia Tapkaara)
1954年 伊福部昭はタプカーラ交響曲を発表。かつてチェレプニンに「バラキレフだって30年かかった。お前も次はシンフォニーと思うが、そのテクニックではまだ無理があるからもっと勉強してから挑戦」と言われていたが、それが遂に成熟したといえる。伊福部昭の音楽の特徴としてリズム重視とオスティナート(後のミニマルにつながるっていうのは久石譲回で書きました)のふたつがあると思いますが、それが存分に出ている作品である。
op.1番 Allegro    op.2番 Adagio    op.3番Vivace  

※一応わからない人に説明しておくとopはopus=作品という意味です。

シンフォニア・タプカーラ 第2楽章 Adagio

シンフォニア・タプカーラ 第2楽章 Adagio

  • provided courtesy of iTunes
シンフォニア・タプカーラ 第3楽章 Vivace

シンフォニア・タプカーラ 第3楽章 Vivace

  • provided courtesy of iTunes

冒頭の音運びをのちに孫の伊福部達さんが緊急地震速報で人の耳に残る様式として採用。それらを用いて現在の速報音が作られました。なぜ冒頭の音運びが採用されたのか?それは和音に緊張を与える技法(テンションノート)が採用されていたから.

Cmajor7thに9th♯を足した音C7th(9th♯)とか、

C→C7th→C7th(9th♯)の順で流れる(はず)

で詳しいことはさておき、ここで緊急地震速報の音は先の映像音楽の四原則のうちどれに当てはまるのかを考えてみると。いくらテレビで呑気な番組、バラエティーが放映されていても緊急地震速報の音が流れた瞬間に不安感が煽られる。よってシークエンスの明確化。伊福部昭が提唱した概念を伊福部達は活かしきれているっていうのがいいですよね。効果は皆さんご存知の通り、あの音楽の裏側にはあらゆる理詰めが遺伝子レベルで詰まっているということです。

 

 1,2番の落ち着き具合に比べ(二番もなかなか流動的でありながらメロディアス繰り返しが聴きどころです)、3番はまさに伊福部昭の真骨頂。音楽の三大要素である律動、メロディ、旋律が見事な成り立っている究極系。終盤のピッコロのいじめ具合には笑いが止まらない。まさに一種の完成形、最高傑作。音楽的色彩、律動反復、全ての伊福部音楽に根底する音楽が凝縮。ゴジラと同時期に発表されたこともあり、54年が伊福部昭の音楽人生における絶頂期と考えてもよい。純音楽である「Sinfonia Tapkaara 」と映画音楽「ゴジラ」を発表できるところに、作家としての二面性の両方で結果を出したといえます。私がタプカーラの三部作を聴いて「これはすごい」と思った一つにオーケストラというか、管弦楽曲の形態の在り方として最大の特徴である音の変動と強弱の変化というものを理解して作られているという点があります。音の変動と強弱の変化が象徴的な楽曲といえば、モーリス・ラヴェルのbolero(1928年)や、ホルストの惑星組曲「火星」(1916年),ストラヴィンスキー春の祭典(1912年)といった新古典音楽主義以後であることがわかります。

旧来の親友である三浦淳史氏はシンフォニアタプカーラについてこのようにコメント

 

f:id:sai96i:20210704120117j:plain

シンフォニアタプカーラは日本組曲や日本狂詩曲で青春を燃焼した作曲家が、中年の入口で示した円熟の作品である

この一文を三浦氏が書いてるあたり「音楽人生における絶頂期」という感想は間違っていない。

 

そのほかにも交響曲としては怪獣映画の多くを彩った映画スコアを伊福部昭自身が編んだSF交響ファンタジーなるものを1983年に発表。

編曲の組み合わせはこのようになっています。

 

SF交響ファンタジー第1番

ゴジラの動機
間奏部
ゴジラ」タイトル・テーマ
キングコング対ゴジラ」タイトル・テーマ
宇宙大戦争」夜曲
フランケンシュタイン対地底怪獣」バラゴンの恐怖
 「三大怪獣 地球最大の決戦
 「宇宙大戦争」タイトル・テーマ
怪獣総進撃」マーチ
宇宙大戦争」戦争シーン
「奇厳城の冒険」タイトル・テーマ
 「三大怪獣 地球最大の決戦キングギドラのテーマ
SF交響ファンタジー第2番

キングコングゴジラ」格闘音楽

モスラゴジラ」聖なる泉
 「大怪獣バラン」タイトル・テーマ
三大怪獣 地球最大の決戦」山岳音楽
 「キングコングの逆襲」逃走音楽
キングコングの逆襲」エレメントX
「サンダ 対 ガイラ」自衛隊マーチ
「空の大怪獣ラドン」飛行音楽
「サンダ 対 ガイラ」自衛隊マーチ
SF交響ファンタジー第3番

怪獣総進撃」タイトル・テーマ
キングコングの逆襲」メカニコングのテーマ
キングコングの逆襲」愛のテーマ
 「海底軍艦」テーマ
 「キングコングゴジラキングコングの輸送
キングコング 対 コジラ」格闘音楽
海底軍艦」マーチ
地球防衛軍」マーチ

この楽曲はsf東宝怪獣映画で手掛けた音楽+αをつなぎ合わせているものだが、特撮音楽という先入観なしで聴いても曲調、メロディすべてが伊福部の音楽で紡がれているのでこれでもかというほどに伊福部節が堪能できる楽曲です。とっつきやすさ、入門楽曲としては最適です。

 

ここまで読んでいただければ分かるように伊福部昭本人からすれば初代ゴジラ(1954)はあくまで請負った仕事の一つでしかない。しかしゴジラとい映画その後日本を代表するコンテンツになってしまったが故にどうしても「ゴジラの作曲家」というようなある種のレッテル貼りされてしまった作曲家というわけです。独学で学び国際的に「音楽で」評価されたという意味で伊福部昭という存在は非常に大きいし、その偉大さをゴジラのメインテーマだけで留めるにはあまりにももったいない。

 

では次に、そのゴジラの音楽におけるあれこれに移ります。

ゴジラ音楽についての諸々

ゴジラメインテーマの元ネタとして挙がる一曲にラヴェルのピアノ楽曲があります。

モーリス・ラヴェルのピアノ協奏曲3楽章prestro 

であることは上述の流れで汲み取れる。(ある程度のクラシックの素養がある方はすでに気づいているかもしれませんが)、脱線しますが、この曲もストラヴィンスキーホルストっぽいのがまた音楽ファン的にはツボだったりしますよね。やっぱり1910年代に作られた春祭が後世に与えた影響がでかすぎるなと。

ストラヴィンスキーの特集記事はもう少しお待ちを、、、 

sai96i.hateblo.jp

そんなストラヴィンスキーの音楽を聴いた伊福部昭が「これが音楽たりえるなら俺でもかける」と、豪語したことは有名です。そしてこれを曲解してゴジラのメインテーマ=ストラヴィンスキーという形で語る人がいます。が、これは私が思うにこれはあくまでも作曲家としての動機付けの役割の一つにすぎないのであって、ゴジラのテーマ」

メインタイトル(M2+M1)

メインタイトル(M2+M1)

  • provided courtesy of iTunes

に直結した文脈の中で考えるのは半歩ずれてると思ってます。音楽性がストラヴィンスキーの系譜というのは間違っていない。が、ことゴジラのメインテーマに関してはラヴェルとの共通性を出さないことには始まらない。というより、ストラヴィンスキーに影響を受けたラヴェルに影響を受けたという言い方にしないと文脈に合わない。極端すぎる。ようするにこれは

「現在のポップスは全てビートルズが〜」

「全ての音楽はバッハありき」

「漫画家は手塚治虫影響を必ず受ける(映画の撮影技法を漫画に持ち込んだと言う点で我々が想起する漫画を描こうとした時点で手塚の真似になるっていう意味)」

「ファンタジーものを書くと必ずトールキン指輪物語のモノマネになる」

「ファンタジーの発想もとは全てケルト

「物語の大本の元ネタは聖書だ」

「ミステリーのキャラクター造形元祖はポーのデュパンとその相棒の役割をもつ事件の記述者「私」」

※コアなミステリーファンの人は「おいおい、実在した人物で世界初の曰く付きの探偵フランソワ・ヴィドッグが原点だろ にわか乙」っていうツッコミを喰らいそうだから先手をうっておく。

 

といった「そりゃそうだけど、生まれる時代的に受けざるをえないじゃん」レベルの話をしたってなんら話は進まない。もっと明確に補助線を引くべきであって、それを今回に倣えて「ストラヴィンスキーに影響を受けたっていうのを伊福部昭楽曲」で語るのであれば怪獣大戦争のテーマを挙げるべきである。

怪獣大戦争マーチ(M23)

怪獣大戦争マーチ(M23)

  • provided courtesy of iTunes

最近の人にわかりやすく例えるとシンゴジラ無人在来線爆弾の時に流れる音楽と書いた方がわかりやすいかな

試聴だと途中からなのでわかりにくいですが「冒頭」のメロディは怪獣大戦争のテーマに流用されています。伊福部流の編曲が施されてるだけで。

パストラール

パストラール

  • provided courtesy of iTunes

 「ストラヴィンスキーの楽曲性」は確かに切っても切れないくれいの影響がありますが、それ自体は別に伊福部昭だけでなくジョンウィリアムズもそう

 

 この複合和音がもたらす破壊力を限りなくそのまま再現したであろう(まぁなんで春の祭典をチョイスしたのかにも裏話はあるのですが)ジョーズのテーマ

Main Title / First Victim

Main Title / First Victim

  • provided courtesy of iTunes

その他ジョンウィリアムズの作家性の一部についてはこの記事を参照してください

凄い脱線になるのですが、スターウォーズのメインテーマって知られざる作曲家コルンゴルトの嵐の青春からの引用ってことに気づきました。

 

メイン・タイトル (エピソード IV:新たなる希望)

メイン・タイトル (エピソード IV:新たなる希望)

  • ジョン・ウィリアムス作品集
  • サウンドトラック
  • ¥153
  • provided courtesy of iTunes
King's Row

King's Row

  • provided courtesy of iTunes

 そもそもこのタイプの曲は全部ワーグナーワルキューレの変化球なので引用云々だなんだっていうより、ワーグナーの音楽性がそういう繋がりで生きているっていうのはこれまた面白いなと思うばかりです。ニーベルングの指環スターウォーズの作品構造も同じというのは知られたことですが、音楽性もかなりワーグナーが元になってるという印象ですね。思い返せばもともとフォースのテーマのあの感じは

魔の炎の音楽の13:00~のメロディからとったものだし

 閑話休題
 ホルストもそうだしラヴェルや、その他数多の作曲家がそう。ただ、それを全体にかかったような風潮や言い草は大袈裟である。少なくとも=で語ってしまうのは。あくまで影響を受けた作家のうちの一人である。ましてや特定の作家に対して当てる言葉ではないというのが正しい認識であろう。

話を元に戻します。ゴジラテーマにおける技法に関してですが、いくつか列挙しますとあまり知られてませんがメインテーマは音の進行にフリギア旋法が用いられています。

  • フリギア旋法...Eを起点としてた音階(E F G A B C D E) ミファソラシドレミ

有名な作劇のネタはゴジラのメインテーマでは旋律に旋律を重ねるやりかたであるオスティナート技法が採用されています。金管楽器群の音が重なってメロディが繰り返されるというあのラインにはそういった施しもある。そのほかもゴジラの鳴き声なども伊福部昭によるもの。「哺乳類はどうやっても哺乳類、鳥類はどこまでいっても鳥類。そこでコントラバスの弦の横振動を使うことにした。弓の代わりに松脂を塗ったなめし革の手袋で縦に引っ張る。すると振動しながら張力が変化し、複雑な音になる。」この思考回路というか適材適所に音の引き出しをピンポイントで出せるところが頭のいい人だなぁと感じます。

 

また余談になりますが、以前ストラヴィンスキーの音楽性に伊福部を絡めた番組がありましたがなんとも言い難いレベル。いや、ストラヴィンスキーの音楽という意味での特集性はあったのですが、伊福部昭をダシにする必要性というのがあったかといえば全くなかったわけで(映像シーン20秒くらいという短さ)。洋楽を惜しげもなくパクリ切った米津楽曲Orion,Loserのプロデュースでお馴染みの

www.nhk.or.jp

蔦谷さんをゲストに招いてという形でしたが外れでしたね。単に時間が足りない&そこまでの需要がない&単にそこまで詳しくないってだけかもしれませんが。

(ただしストラヴィンスキー とジミヘンのpurple hazeと絡めていたところは面白かった)

 閑話休題 

つまり、「伊福部昭ストラヴィンスキーの影響でゴジラ音楽を〜」と言い切ってしまうのも早計である。

単にストラヴィンンスキーに影響を受けたのではなくそこからさまざまな作家を経て伊福部昭にたどり着くと。そうでなければ、ゴジラのメインテーマがもつ音楽性は説明できない。ではどういった潮流なのか、浅知恵ながら順序立てていくと少なくともこの流れだと推測する。

 

ニコライ・リムスキー=コルサコフ

アレクサンドル・チェレプニン、ストラヴィンスキー 

マヌエル・デ・ファリャ

伊福部昭

 

コルサコフはいわゆる芸術音楽に貢献したロシア五人組の一人でもありますね。
ミリイ・バラキレフ 

A Farewell to Saint Petersburg: No. 10, The Skylark

A Farewell to Saint Petersburg: No. 10, The Skylark

  • Julian Jacobson
  • クラシック
  • ¥153
  • provided courtesy of iTunes
Islamey, Op. 18

Islamey, Op. 18

  • Alexander Paley
  • クラシック
  • ¥153
  • provided courtesy of iTunes

ツェーザリ・キュイ

意外に作品が知られていないのがツェーザリ・キュイ。ヴァイオリンとピアノの組み合わせば抜群に上手く、なおかつ情緒的な楽曲ばかりなのでぜひチェックしてください。

 

www.youtube.com
モデスト・ムソルグスキー

説明いらないと思いますが、一応書いておくと展覧会の絵の作曲家


www.youtube.com

まぁ今回の場合こっちを紹介した方がはやいか

交響詩《はげ山の一夜》

交響詩《はげ山の一夜》

  • provided courtesy of iTunes

余談ですが、このサムネの指揮者アンドレア・バッティストーニのシリーズは全部いいので気になる人とかクラシック好きな人は通してみてはいかがでしょうか

columbia.jp


アレクサンドル・ボロディン

ボロディンもかなり有名な大家ですので説明不要かと思いますが、イーゴリ公を作曲した方です。


www.youtube.com


ニコライ・リムスキー=コルサコフ

 この人も超有名ですね。シェエラザードで。

リムスキー=コルサコフ:シェエラザード Op. 35 - I. The Sea and Sinbad's Ship

リムスキー=コルサコフ:シェエラザード Op. 35 - I. The Sea and Sinbad's Ship

  • provided courtesy of iTunes

そしてこの異常なまでのロシア作曲家の流れを見ればわかる通り楽曲的な意味合いはもちろん、伊福部がアイヌの文化性に影響を受けたと言う点含め非常に興味深いですね。

ストラヴィンスキー以降に台頭したマヌエル・デ・ファリャという作家についても少しだけ触れましょう。恋は魔術師や三角帽子などが有名です。ラヴェルストラヴィンスキー ときて伊福部昭の音楽を構成する最後のラストピースがファリャ。

www.youtube.com 

バレエ音楽「三角帽子」/1.序奏

バレエ音楽「三角帽子」/1.序奏

  • provided courtesy of iTunes
バレエ音楽「三角帽子」/3.行進

バレエ音楽「三角帽子」/3.行進

  • provided courtesy of iTunes

 それぞれの楽曲を聴けば、民族音楽や印象的音楽の潮流をどこかしらに感じられる。ドビュッシーとは生前親友ということもあり、そういったことからもやはり影響はあると考える。その後発表する歌劇「ペドロの親方と人形芝居」「クラヴサン協奏曲」

歌劇「ペドロの親方と人形芝居」: Scene 1. Entrada de Carlo Magno

歌劇「ペドロの親方と人形芝居」: Scene 1. Entrada de Carlo Magno

  • Jennifer Zetlan, Perspectives Ensemble & Angel Gil-Ordonez
  • クラシック
  • ¥153
  • provided courtesy of iTunes
歌劇「ペドロの親方と人形芝居」: Scene 1. La Corte de Carlo Magno

歌劇「ペドロの親方と人形芝居」: Scene 1. La Corte de Carlo Magno

  • Jennifer Zetlan, Perspectives Ensemble & Angel Gil-Ordonez
  • クラシック
  • ¥153
  • provided courtesy of iTunes
歌劇「ペドロの親方と人形芝居」: Scene 3. El suplicio del moro

歌劇「ペドロの親方と人形芝居」: Scene 3. El suplicio del moro

  • Jennifer Zetlan, Perspectives Ensemble & Angel Gil-Ordonez
  • クラシック
  • ¥153
  • provided courtesy of iTunes

になると「はいはい、春祭、春祭」っていうほどに露骨なストラヴィンスキー寄りの楽曲になったりします。ただこの二曲でファリャの功績、、というかアプローチのやり方で面白いのはチェンバロをメインに持ってきてメロディを奏でるという、考えてみればあんまりやってない手法だなぁと浅学の自分でも唸りました。これらのことから分かるようにつまりファリャは新古典音楽主義以後の作曲家の先鋒であり、印象派を取り入れている点などを考えると、ドビュッシーを系統していた伊福部昭はファリャも通っていると考えるのが自然である。

 

余談ですがファリャ氏はよほどドビュッシーが好きだったのか

ドビュッシーの墓に捧げる賛歌

ドビュッシー墓碑銘のための賛歌 G.56

ドビュッシー墓碑銘のための賛歌 G.56

  • Jerome Ducharme
  • クラシック
  • ¥153
  • provided courtesy of iTunes

ドビュッシーグラナダの夕べ

版画/2.グラナダの夕べ

版画/2.グラナダの夕べ

  • provided courtesy of iTunes

をオマージュするのが、クリエイター魂を感じさせてくれて作品としてはもちろんクリエイターとしてもいいですね。

 

 

音楽活動以外にも、教育者としても有名で東京音楽学校(現在の藝大)で講師を担当したことでも知られており、門下生(弟子)には芥川也寸志、奥村一、黛敏郎、石井眞木、原田甫、眞鍋理一郎など、のちの大家となるような存在に教鞭を取っていたという点も興味深いです。教育者としての伊福部昭については今回の主題に外れるので本来の意味で割愛します。

 

以上伊福部昭の音楽作家としての紹介でした。いかがだったでしょうか?書き手としてはまだまだ伝えきれてないところはある(今回紹介したのは代表曲に過ぎないため、もっと語り口は他あるが)のですが、最低限の範囲はカバーできたのでよしとします。本流の作曲家として評価されないのは時代の流れもあったのかなと書いていて感じました。

 

わかりやすい映画音楽(作家)と管弦楽の関係性やクラシック音楽からの文脈など、今回紹介した作曲家群は小中高で習う音楽知識(若干延長部分がある)が大半だったのでそれらの延長上のものとして読めると思うのでとっつきやすい内容だったと思います。

 

本記事を読んで伊福部昭を「ゴジラ映画の人」ではなく、「弦楽器、オーケストラや舞曲などが本流の人」であるという認識に変われば幸いです。相変わらず長い記事になりましたが、いつものことなのでご愛嬌ということにしてください。 

 

 

 

最後に伊福部昭が音楽活動をする中でさまざまな名言

(もしかしたら誰かの引用の可能性もあるけど)

を残しているので紹介します。

  • ブラームスは第一交響曲を24年かかってかきあげた。バラキレフは32年かかった。真の創作とは生が長いものである
  • 音楽は音楽以外の何者も表現しない
  • 優れた音楽は必ず平明で理解しやすい
  • すべての芸術はその民族の特殊性を通し、共通の人間性に到達
  • 作者が自己の感性に忠実であれば必然的に伝統の意識から遁れることはできない
  • 文化と伝統の裏付けのない芸術は誕生しえない」
  • 作曲はその人感覚が大事。音楽理論、常識は大切だけど、感性を遵守することで自分にしか書けない音楽が生み出せる。
  • 真にグローバルたらんとすれば真にローカルであることだ

個人的にした二つがお気に入り。

 みなさん今後の糧にしてください(投げやり)。

 

謝辞&参考文献について

日本の音楽家を知るシリーズ 伊福部昭

日本の音楽家を知るシリーズ 伊福部昭

  • 作者:小林 淳
  • ヤマハミュージックエンタテイメントホールディングス
Amazon

略歴とゴジラに関する音のhow toや伊福部昭の音楽人生が精緻に書かれている「伊福部昭の映画音楽」から引用いたしました。刊行当時から愛読している日本の音楽家を知るシリーズより伊福部昭編も相当読み込みました。この場を借りて著者の小林淳さんに感謝いたします。ありがとうございました。この記事で作曲家:伊福部昭に興味を持った方はぜひ上二つの書籍を読んでください。奥行きが広がります。三冊目からは緊急地震速報ゴジラ音楽関係性、そしてシンフォニアタプカーラの3章がのイントロが元になってる点を引用いたしました。「ゴジラ音楽と〜」は伊福部云々を抜きにしても本として楽しい一冊なので目を通しておくといいです。

 
  

それではまた次(があれば)の記事で。

 

 

 

レイ・ハラカミによる不思議な音楽

長谷川白紙について延々考えていたんですが、何処か既聴感があるなと思いつつ年間ベストに入れて活躍を期待しているところなんですが

sai96i.hateblo.jp

sai96i.hateblo.jp

 最近、その感覚がわかってきまして「ああ、音楽表現がレイ・ハラカミで、それをポップス化したものなんだ」というところに着地しました。レイ・ハラカミ 彼の名を聞いたことがある人は少ないと思う。悲しいことに40歳でこの世を去っているからだ。imoutoidにしろ

sai96i.hateblo.jp

レイハラカミにしろマイナーな世界で独自の世界を紡ぎ出せる鬼才に限って亡くなってるのは寂しいですよね。

しかし彼が残した音楽作品はどれも一品級である。Unrest/Opa*q/Red Curb/lustなど傑作ばかり。そんな彼の音楽の良さを一つでも伝えられたらなという趣旨の記事です。

Unrest

Unrest

Red Curb

Red Curb

わすれもの

わすれもの

opa*q

opa*q

[lust]

[lust]

 

エレクトロニカというジャンルにおいて(そこまで詳しくないが)明らかに異質な音楽性を提供している。音の動きと、加工の仕方や、楽曲における展開、無機質さ、リバーヴの奥行きなどが耳にスッと入って「聴ける」。柔らかなメロディラインに沿った音楽を作っているが不思議なもので果たしてメロディなのかと思うくらい不安の余韻が引き出される音調など全てが「掴めない」作品ばかり。例えば

Cape

Cape

  • レイ ハラカミ
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
2 Creams

2 Creams

  • レイ ハラカミ
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
Pass

Pass

  • レイ ハラカミ
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

などの楽曲群を聴けばわかるが「こういう楽曲です」と形容するのが難しいことがわかる。passぐらいならギリギリといったところか。

初期のアルバム『Unrest』はテクノの味付けが感じられます。

Vice Versa

Vice Versa

  • レイ ハラカミ
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
Unrest

Unrest

  • レイ ハラカミ
  • エレクトロニック
  •  
  • provided courtesy of iTunes
Objective Contents

Objective Contents

  • レイ ハラカミ
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 この中では表題作にあたるUnrestがお気に入りです。飛び飛びな音使いにに余韻がついてる感じや奥深くで繰り返しなってるちょっと不気味なメロディ (といっていいのかはわからんが)の調合性がマッチしている。Objective Contentsは実験的だなぁと思える作風が好きです。bioscopeやcode

Bioscope

Bioscope

  • レイ ハラカミ
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
Code

Code

  • レイ ハラカミ
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

みたく最初のノリで最後まで突き進まない。合間合間に横道に逸れるけど最後は、、っていうのがObjective Contentsのいいところ.

after bonusはレイハラカミ作品の中でも掴み所がある作品なので、より一般向きです。

After Bonus

After Bonus

  • レイ ハラカミ
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

一つの音がアラウンドな動きをするという音楽ではなかなか見られないvも聴き心地、応え共に満点です。

Wreck

Wreck

  • レイ ハラカミ
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

次点トラックのrhoはwreckの進化系という流れできけるのでセットで流しましょう

Rho

Rho

  • レイ ハラカミ
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

二作目の『Opa*q』はアンビエントなどわかりやすい作風も盛り込まれておりますがそれ以上にジャズとプログレっぽいなと感じられる作品です。その意味で1stからジャズ的アプローチを踏んでいるのかもしれない。

Poof

Poof

  • レイ ハラカミ
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
Double Flat

Double Flat

  • レイ ハラカミ
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
Schw Schw

Schw Schw

  • レイ ハラカミ
  • エレクトロニック
  •  
  • provided courtesy of iTunes

 本作の中で一番レイハラカミしてる楽曲は

Chromatic Cliff

Chromatic Cliff

  • レイ ハラカミ
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 になるのかなぁ。

 

一番評価が高いと目されている3rd作品:red curb。評判に違わず1,2作目よりも世界観が安定しつつ攻めている楽曲が多いです。

Red Curb

Red Curb

 

 

The Backstroke

The Backstroke

  • レイ ハラカミ
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

  track2からこれ

The Backstroke

The Backstroke

  • レイ ハラカミ
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 複雑な音の重なり、不協的だが聴けてしまうという、一貫した捉え所のなさ等初期作から進化してることがわかります。wreckの究極系と言えるcapeなども収録されている。打点的な音運び含め脳に刺激的な作品です。

Cape

Cape

  • レイ ハラカミ
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 かと思えばwrestのようなビートの刻みがメインな楽曲をある。メロディの余韻とリズムが象徴です。中盤でうねうねと逸れていく感じも絶妙で、聴いてる側が唸ってしまうくらいよくできてる。

Wrest

Wrest

  • レイ ハラカミ
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 うって変わった楽曲。Remain

Remain

Remain

  • レイ ハラカミ
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 こんなかんじという例えを出すのであればnujabesのreflection eternalに近いのかな。

reflection eternal

reflection eternal

  • Nujabes
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 ローテンポでメロディアスという定番な組み合わせですが相変わらず味付けとしての音はレイハラカミ節が決まってます。

 

 ・Trace of red curb decicated from rei harakami

このアルバムはリアレンジと別の作家によりリミックスと新曲、という配列です。 

remixではput off and otherが一推し。

Put Off and Other (Remixed By Matsuo Ohno Assisted By Yasuto Yura)

Put Off and Other (Remixed By Matsuo Ohno Assisted By Yasuto Yura)

  • レイ ハラカミ
  • エレクトロニック
  •  
  • provided courtesy of iTunes

大野 松雄さんという音響技師(テレビ版アトム時代の人)が担当されているのですが圧巻のクオリティです。

新曲とでいうとこちら

Led Curve Again

Led Curve Again

  • レイ ハラカミ
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
Lobe

Lobe

  • レイ ハラカミ
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 だんだんとメジャー的なサウンドになってきます。比較するわけではないがimoutoid的な音楽らしさが出てきます。 特にled curveに関してはこのくらい主張が強いとジャズだ〜っと思い切って言えるくらい正直さがあります。二曲に通ずるのは意図的な意味でディレイ的な歪みが入り混じって、だんだんと晴れていくところですかね。

 

 ・lust

[lust]

[lust]

 分かりやすさ、聴きやすさの総合値で言えばlustが一番です。なので入門としてこれからがいいと思います。

Joy

Joy

  • レイ ハラカミ
  • エレクトロニック
  •  
  • provided courtesy of iTunes
lust

lust

  • レイ ハラカミ
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 とポップさ溢れる曲が続き次点で上二つを足したような楽曲 Grief&lossへ

Grief & Loss

Grief & Loss

  • レイ ハラカミ
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
Owari No Kisetsu

Owari No Kisetsu

  • レイ ハラカミ
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

と続きます。owarinokisetuは言わずと知れた細野晴臣の楽曲のカバーでなんとレイハラカミさんが歌っています。 正直歌はメインではないです。ただ、レイハラカミにかかると原曲がこんなにも変わるのかというギャップ、ビフォーアフターに息を呑みます。あとサカナクション味が感じられるので「山口一郎もフォロワーなんだなぁ」という発見もできます。

 

after joyになると強烈なサウンドの踏み込み型でくるのでシンコペーション的とでもいいましょうか。一度に耳に入ってくる情報量が多いです。

After Joy

After Joy

  • レイ ハラカミ
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

 Last night

Last Night

Last Night

  • レイ ハラカミ
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

はギターの加工音(?)が主体のサウンドでミニマル要素が強い作品です。パーカスの音付でメロディ+になっている点がいいなと感じます。

 

approach 

Approach

Approach

  • レイ ハラカミ
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

はEDM調が強いといのが第一印象。こんなにもわかりやすくていいのかと思ってしまうくらいに。その意味ではlustの中では凡作ですね。

 ラストを飾るFirst period

First Period

First Period

  • レイ ハラカミ
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 も結構なミニマルで飽きるが。 が最後の一音で評価が180度変わってしまった。意表を突かれるとはこのこと。

 

事実上の遺作となったアルバム「わすれもの」

わすれもの

わすれもの

原点にかえって自由に作っている感じがしてたまらない作品群です。

一曲面のにじぞうから 

にじぞう

にじぞう

  • レイ ハラカミ
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
あるテーマ

あるテーマ

  • レイ ハラカミ
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 など、このわけのわからなさこそレイハラカミ音楽であると再認識できる作品になっています。と同時におむかえ

おむかえ

おむかえ

  • レイ ハラカミ
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 では技巧的な面を見えてきます。

 最終楽曲

さようなら

さようなら

  • レイ ハラカミ
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 では愛のロマンス的ギター

愛のロマンス

愛のロマンス

  • ドナルド・ウィノースキー
  • クラシック
  • ¥153
  • provided courtesy of iTunes

 の軸に好き勝手エレクトロニカルにしているところがたまらないです。

 

 

以上、レイハラカミの音楽について自分なりに書いてみましたがいつも以上に抽象化が激しいです。が、どのくらい変わった音楽を作って、それらを後続の長谷川白紙などが受け継いで行ったかというのを読み解くには、役に立てるくらいには魅力を伝えられたと思いますので後は読み手のみなさんが個々で噛み砕いてください。

 

あと記事を書いてみて思ったんですが、今回出てくる作曲家は皆将来を渇望・期待されながら不運にも夭折・急逝された人しかいないのが泣けてきますよね。日本人でもここまですごい音楽を作れる人たちがいるんだぞっていう代表みたいな人材です。Nujabes、レイハラカミ、imoutoid彼らが生きてる世界線では一体、どういう音楽が作られていたのかと夢想するだけで悲しさばかりがでますね。では次の記事で会いましょう。

amazarashiと秋田ひろむ 歌詞・楽曲の魅力を再考・解説

書くぞっと思いつつ中々完成まで持っていくことが難しかったamazarashiの特集回。

最初はamazarashiのアルバムレビューを書くつもりでしたが考えていくうちに長い記事になりました。アルバムレビューの範囲は初期〜ボイコットまでを範囲とします。

 

 

絶望からの再出発から

アーティスト,というよりミュージシャンはみんなそうである。と言われればそれまでだが、秋田ひろむは東京のメジャーデビューを目指し、上京をしていた時期があった。ファンの中では有名だが、その昔chameleon life(調べればいろいろ出ます)というバンドで作曲兼コーラスという立ち位置で、レーベルからも声がかかったが、いろいろあってしかし都落ち。そこからの再出発し、数々の姿形を変えて(star issue とか,あまざらしとか)それらを経てやっとamazarashiということはまずは踏まえておきたい。だからこそ歌う詩に含蓄がでるというものである。なんだかんだ失敗続きでも20代で成功しているようなパターンではない。アニソンだと大石昌石が近いと思う。サウンドスケジュールで一部では評価されたが、大いなる爪痕を残せなく、ひたむきに夢をおった先にジャパリパークととんとん拍子のスターというようなあの感じ。


歌詞から読み解くバックボーン・テーマ性

歌詞を見ながら聴きたい曲が、今いくつあるだろう

少なくともワンルーム叙事詩前後でこれを提唱していることから、秋田ひろむは音楽よりも歌詞に重きを置いている作家であることは自明である。編曲の大多数を出羽さんが担当されていることからも、やはり楽曲の妙というか、こだわりは一任している印象を受ける。

 

ざっくりではあるが秋田ひろむが書く詩から以下のように分析できる。

【主に参照しているであろう作家】

中原中也/別離、サーカス、我が生活

太宰治/桜桃、駆込み訴え

寺山修司/寺山修司の幸福論・書を捨てよ町へ出よう・あゝ荒野

小林多喜二/蟹工船

宮沢賢治 /銀河鉄道の夜・よだか

どの著者も言わずもがなという大家です。

 

 ・中原中也

さよなら、さよなら!
  あなたはそんなにパラソルを振る
  僕にはあんまりまぶしいのです
  あなたはそんなにパラソルを振る

別離(青空文庫)より引用

amazarashi少年少女より

さよなら さよなら
せめて笑いながら手を振った 

この歌詞に通ずるところがあります。

他にも

幾時代かがありまして
  茶色い戦争ありました

幾時代かがありまして
  冬は疾風吹きました

幾時代かがありまして
  今夜此処ここでの殷盛さか
    今夜此処での一と殷盛り

山羊の歌より「サーカス」(青空文庫)より引用

 amazarashiのナガルナガルより

幾時代かがありまして 悲しいことが起こりました
もう 知らない振りはできないよ 僕らは知ってしまったから

あからさますぎて、こちらは誰もが気づいたと思いますが、まぁこういったところに中原中也からの影響があります。

 

小林多喜二

小林多喜二蟹工船プロレタリア文学であることと秋田ひろむの基本的歌詞性の本質が弱者救済であるというのは偶然ではない。その昔「あまざらし 闇の中 〜ゆきてかへらぬ〜」という楽曲が蟹工船のトリビュート楽曲を無名時代(というよりあまざらし時代)に公募の中から見事に発掘されていたりするしここは絶対に抑えている。

 割と近いことを↓のインタビューで感じました。

news.yahoo.co.jp

秋田)

この歌詞は、自分が選ばれなかった少年だとしたら、社会から見放された人間だったら、自分は自殺するタイプだと思っているんです。同じように、他人に怒りを向ける人もいると思うんですよ。ナイフを持った少年はまさにそうした状況を描いているんですが、やはり自分の報われない状況を描いたんだと思います。強烈にもがいているというか、amazarashiの曲はラストに小さな希望を入れています。曲を書いているなかで、答えは見えないですけど自分なりの希望が欲しいと思っているんですよ。最後の歌詞で、自分なりの希望を見つけることができた、完成だ、という作り方をしていて。それだけに、一番自分の苦しい部分を描いています。

 

 

宮沢賢治

アーティスト全般にイメージソースを与え続ける宮沢賢治からの影響はスターライトやよだかの星などの楽曲から言うまでもなく。メジャー版スターライトはそれこそアレンジが効いていていい曲なのは間違いないのですが、ギターとピアノだけの音源もシンプルでありながら、力強く歌う秋田ひろむの声が聴けていいものです。(比べるとアレンジで変わったところや歌い方に差異がみれて面白いです)

スターライト

スターライト

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
よだかの星

よだかの星

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥153
  • provided courtesy of iTunes

 

 ・太宰治

太宰治からは「言葉の切迫性」という点に尽きると思います。それは人間失格を読んで衝撃をうける「言葉のマジック」と呼ばれている物ではなく、読み手にあまりにも正直な「俺がいいたいこと」が文章になった時の流動感のことを指します。amazarashiの歌詞の迫力はこういったところの影響が強いと感じます。具体例を2つあげます。

申し上げます。申し上げます。旦那さま。あの人は、ひどい。酷い。はい。いやな奴です。悪い人です。ああ。我慢ならない。生かして置けねえ。

駆込み訴え(青空文庫)より引用

死のうと思っていた。ことしの正月、よそから着物を一反もらった。お年玉としてである。着物の布地は麻であった。鼠色のこまかい縞目しまめが織りこめられていた。これは夏に着る着物であろう。夏まで生きていようと思った。

 晩年の「葉」(青空文庫)より引用

上記の例からわかるように言葉、詩の勢いというものにamazarashiの歌詞と通ずる側面であることが分かる。太宰治からの影響元は、中原中也宮沢賢治に比べてより具体的な言及がないのが意外ですが、歌詞全体を考えた時に一番意識しているのは実は太宰治だということが考察できます。

 

そのほかにも読み取れる部分があるが、寺山修司からの影響はかなり強い。

分かりやすいものの一つとして夜の一部始終という楽曲で「寺山の詩集」と書いてしまうくらいの正直さがある秋田ひろむ。それがもっと顕著になったのが 「たられば」という近年の作品の歌詞の構造。ありがちの型といえばそれまでだが、寺山修司を敬愛しているという事実から思うに「幸福が遠すぎたなら」という詩からの引用と考えるのが適正であろう。


www.youtube.com

 

幸福が遠すぎたら/寺山修二 

さよならだけが 人生ならば
また来る春は 何だろう
はるかなはるかな 地の果てに
咲いている 野の百合 何だろう

さよならだけが 人生ならば
めぐり会う日は 何だろう
やさしいやさしい 夕焼と
ふたりの愛は 何だろう

さよならだけが 人生ならば
建てた我が家 なんだろう
さみしいさみしい 平原に
ともす灯りは 何だろう

さよならだけが 人生ならば
人生なんか いりません

その他にも

アノミー

寺山修司の『アダムとイヴ、私の犯罪学』がモチーフになって出来た曲です。1966年の作品なのですが、それが今を舞台にしたらどうなるだろうと考えてたのがきっかけです。普段ニュースを見て感じるような不安感だとか、そういうものの根っこにあるものを知りたいと思って歌にしました」

natalie.mu

というような作品モチーフまでしてしまいます。

──絵画や映画、小説など、音楽以外で影響を受けたものはありますか?

寺山修司太宰治。自意識過剰な人間だったので、やり場のない自意識の置き場を教えてもらった気がします」

同インタビュー記事でこのように話しているところ見ると秋田ひろむの中では 大枠としては太宰で、歌詞のチョイス、楽曲世界観が寺山からの引用という構造が私の結論。

 そしてこれらの世界観を尾崎豊的な歌唱をで歌うからこそ語りのポエトリーが余計に機能する。

 

 

 

次に音楽的アプローチ・エッセンスで考えてみよう

よく言われるのはブルーハーツですが、ポエトリー要素と言う点ではTHA BLUE HERBからの影響を公言しています。

www.cinra.net

秋田:あんまり詳しくはないんですけど、THA BLUE HERBとかRHYMESTERとか好きです。最近小林勝行さんの“108 bars”という曲を聴いて衝撃を受けました。

 

古いsf映画という楽曲で

古いSF映画

古いSF映画

  • amazarashi
  • ポップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

映画を参照する節は(この曲の場合ブレードランナー(定番な元ネタなんですがね))

未来世紀日本などを発表したところからの影響だろう。

未来世紀日本

未来世紀日本

  • provided courtesy of iTunes

music.apple.com

言ってしまえばアーティストはみんなディストピアを意識した楽曲をつくりがちで、この曲もただそれだけなんですが(オーウェルの「1984」とか、ハクスリーの「素晴らしき新世界」、ザミャーチンの「われら」などのイメージソースを必ず元になってるのはお約束)組み合わせというか、料理のしかたが上手い。ラ・ジュテ(1962年の仏映画)っぽくもあるし、士郎正宗攻殻機動隊木城ゆきと銃夢などが主題としているテーマ性をしっかりと組んでいる。タイトルはテリー ギリアム監督作品『未来世紀ブラジル』(原題:brazil)のもじりだし。ゲッチィングのE2-E4を組み込むところとか巧妙すぎる。マニュエル・ゲッチングのE2-E4はシーケンス、ミニマル、トランスなどあらゆるギミックが詰め込まれた傑作なので是非聴いてください。

E2-E4

E2-E4

 

 と、今聴いてもこのくらいの感想が出るくらいには、未来世紀日本の影響というのは当時の人からすればとんでもなかったであろう。他にもhiphopアーティストからの影響を受けていることが公言されているが、悲しいことに書き手の私があまり詳しくないジャンルなので割愛。

 

 

・ポストロック的なアプローチを考える

聴けばわかると思うが、65daysofstaticのradio protectorの序盤のドラムリズムは

Radio Protector

Radio Protector

  • provided courtesy of iTunes

amazarashiの季節は〜に通じる。

季節は次々死んでいく

季節は次々死んでいく

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

明日には大人になる君へ

明日には大人になる君へ

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 まぁこっちの方がわかりやすいかな。

さて、ここでポストロックがいかなるジャンルかを考えてみようと思う(というより足並みを揃える) 。無駄な説明をしないために考えるな感じろスタイルでいくつか音源を列挙する。

まず一番分かりやすい(メジャーなバンドという意味で)toeがあがる。

past and language

past and language

  • toe
  • ロック
  • ¥153
  • provided courtesy of iTunes

シガーロスもこの手のジャンルでは非常に有名。

サンプルの試聴でもわかると思うが、ミニマルと通じる繰り返しが多用されている。そこに音を加工したりツイストしたする。そういう音楽という認識で一旦大丈夫。過度なまでの繰り返しがオスティナート、というのは久石特集でのべた。

sai96i.hateblo.jp

ここでポストロックを繰り返し音楽という区分で考えると

オスティナート>ミニマル(音の繰り返し)=ポストロック(音の音色、強弱)

ちなみにポストロックに変則的な音楽を加えるとGhosts And Vodkaとか、nuitoのunutellaなどのマスロックに繋がったりする。

sai96i.hateblo.jp

というのが、大枠の認識として捉えるのが一番分かりやすいのではないか。

そこにはヴェルヴェットアンダーグラウンドの名盤というか神盤(1967)

 

Sunday Morning

Sunday Morning

  • provided courtesy of iTunes
Femme Fatale

Femme Fatale

  • provided courtesy of iTunes
Heroin

Heroin

  • provided courtesy of iTunes

 から始まる歴史があるが、それを語るのはまた今度。

(脱線の話題の方が文章に圧が入ってしまうのはゆるして) 

 

余談だが、65daysofstatic→季節は〜のくだりの指摘が既に Night-capさんによって先をこされてしまった。悔しい。

night-cap.net

これが秋田ひろむの「こだわり」をもって出羽さんが編集しているのか、はたまた出羽さんの趣味なのかはわからないが、amazarashiとして出している音源としてはポストロックバンドの影響を受けていると言える。

 

 ここ数年でamazarashiはメジャーになったことでamazarashiの歌詞を論文の題材にしたものがあり、そこで歌詞から頻繁に使われる用語を解析した表があった。

f:id:sai96i:20210504164122p:plain

http://www.osaka-kyoiku.ac.jp/~kokugo/nonami/2020soturon/sakaura.pdf

引用元:amazarashi 秋田ひろむの歌詞における表現特性(P9)

これを出現回数値が近い単語で分けると

(人、言う、生きる)  100回以上

(今、笑う、死ぬ、世界、見る)80〜99回

(夢、夜、泣く、言葉、歌)70~79回

(自分、無い、歌う、今日、思う、明日、人生)60~69回

(終わる、涙、全部、一つ、消える、知る)50~59回

(過去、忘れる、風、分かる、心、僕、手、街、空、未来)40~49回

(全て、できる、綺麗、続く、信じる、呼ぶ、嘘、愛、夏、変わる、悲しみ

人間、顔)35回~39回

 

こうしてみると、対義語などが目立つ。生きると死ぬ、笑うと泣く、過去と未来

全部と一つ、今日と明日など これらは「絶望を歌いつつ、それでも」が単語単位として現れていると考える。また、一見出現回数の多さに目が行きがちだが、40-69回に出てくる単語の方がamazarashi味を感じるのは、80~100以上が大枠として言いたいテーマに対して、ディティールを表現する用語だからと推測する。

 

 

 アルバム群レビュー

ではこういった作風・作家性を踏まえた上でアルバムを紹介します。

mini album

光、再考

f:id:sai96i:20210424222026j:plain

1.光、再考
2.少年少女
3.真っ白な世界
4.隅田川

5.ドブネズミ
6.未来づくり

「神様なんてとうの昔に阿佐ヶ谷のボロアパートで首吊った」

という歌詞から漂う異質感の光、再考もあれば、少年少女などのamazarashi史観を通しても屈指の名曲が収録。物語性というより読ませる歌詞構成、単語の秀逸さが光っている。冒頭が

「彼女はきっと戻らない」 

からはじまり

「思い出なんて消えてしまえ」

 

まででの歌詞に深みを(安っぽい言い回しだが)感じることができるのだと思う。隅田川star issueの時代からある楽曲で、そっちで歌っている方が、荒々しさがあるが、あまざらしでの歌唱では、尖さえないものの、語尾の発音などがしっかりしてる分、曲として聴きやすい。全曲ハズレなし。

 

0.6(0.と同じ内容)

amazarashi 0.6

amazarashi 0.6

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥1071

1.光、再考

2.つじつま合わせに生まれた僕等

3.ムカデ

4.よだかの星

5.少年少女

6.初雪

 

やはり初期は名曲揃い、既出の楽曲以外でも「つじつま合わせに生まれた僕等」が収録されている。最近はハンターハンターにも流用されるくらいには有名ですね。それくらいメジャーな曲です。初雪では、ピアノが雪を表現しながら、秋田ひろむの一生懸命うたってるけど、途中で声が裏返る、声帯の拙さが聴ける一曲もある。

 ムカデはいいですよね。東京喰種を書いた石田スイはこの曲絶対好きだろうし、これを通して季節は次々〜をオファーしたまであると考える。

後年

神様僕はわかってしまった

 の歌詞は、神様、僕は気づいてしまった。とちょっとペンキで上乗りされた形で、某バンド名として意味を成してきます。他のアーティストがバンド名につかってしまうくらいの文章を書いてしまう秋田さんは偉大ですね。


爆弾の作り方

爆弾の作り方

爆弾の作り方

  • amazarashi
  • ポップ
  • ¥1528

1.夏を待っていました

2.無題

3.爆弾の作り方

4.夏、消息不明

5.隅田川

6.カルマ

 

秋田ひろむの作曲絶頂期すげーっと感じる一枚。爆弾の作り方と、夏を待っていました

無題が3連発とかいう奇跡。

爆弾の作り方

爆弾の作り方

  • amazarashi
  • ポップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

中でも爆弾の作り方は、タイトルもそうですし

「薄弱なアイデンティティ

「虚無的なイデオロギー

 

などの厨二っぽさがありながらどこか意味ありげな感じの歌詞がいいですね。この曲はテンポと歌詞が連動している感じが耳に良く、何度でも聴きたくなる楽曲ですね。

夏を待っていました

夏を待っていました

夏を待っていました

  • amazarashi
  • ポップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

は、物語調を意識しすぎた感じがして好みではないのですが、編曲の好き度でいえば上位にきます。

無題

無題

無題

  • amazarashi
  • ポップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 は、一度成り上がるものの、描きたいことを描いたら、人が潮を引くように去ったという歌詞が抜群だなと。歌詞上では最後に彼女も戻りますし。

 


ワンルーム叙事詩

ワンルーム叙事詩

ワンルーム叙事詩

  • amazarashi
  • J-Pop
  • ¥1785

1.奇跡

2.クリスマス

3.ポルノ映画の看板の下で

4.ポエジー

5.ワンルーム叙事詩

6.コンビニ傘

7.真っ白な世界

 

まだまだだぜ、と秋田ひろむがさらなる高みの作曲力で作られたミニマルバム。もうここ前後だけで完結してもいいのではないかと思うほど。ミニアルバムながら、歌詞の魅力が十二分に詰まった傑作です。

 

 

冒頭から

奇跡

奇跡

奇跡

  • amazarashi
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 展開、歌詞の壮大さ、どれをとってもいい。「それをいちいち悔やんだって〜」から始まる、宇宙まで展開する。3m36sからの助走リズムからの盛り上げ方。初期楽曲の中ではつじつま合わせに匹敵するポップソング。ピアノのアップテンポさと、ドラムのリズミカルな要素がここ付近から強めというか、顕著に出てて面白いです。

 

 

クリスマス 

クリスマス

クリスマス

  • amazarashi
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

イントロは「the クリスマス song」っぽいですよね。この曲はエッセンス性という意味では意味のあると思います。「小さいものでも、重なれば大きくなる」 というのはありきたりではありますが、その後言い回しを変えてamazarashiの歌詞に出てくる感じがします。その他に

「ミサイルが飛ぶ」

「汚れた僕が汚した世界」

 

といった言葉選びがamazarashiというか、この頃の秋田ひろむだなと感じられます。

 

ポエジー

ポエジー

ポエジー

  • amazarashi
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

amazarashiのポエトリー楽曲。今も、時たま出しますが、この頃のポエトリー楽曲は秋田ひろむの牙剥き出しの歌唱で言葉の鋭さが聴けるのでいいですよ。

 

ワンルーム叙事詩

ワンルーム叙事詩

  • amazarashi
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

冒頭から

「全部嫌になったからこの部屋に火をつけた」

 

からのサビで

「燃えろ 燃えろ〜」

 の下りと

「サイレンの音でふと我に帰った、帰るべき我があることに驚いた」

 

など、ワンフレーズの強度がamazarashi楽曲の中でもかなりのもの。

 

 

 


アノミー

アノミー - EP

アノミー - EP

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥1528

1.アノミー

2.さくら

3理想の花

4ピアノ泥棒

5.おもろうてやがて悲しき東口

6.この街で生きている

 

アノミー


www.youtube.com

 

「そんなら この神経過敏な愛で 救えた命があったか?」

 

「神様なんて信じない 教科書なんて信じない 歴史なんて燃えないゴミだ 道徳なんて便所の紙だ」

などの歌詞から分かるように、暴力性が強い。ykbxさんのアニメーション動画との協和性がいい。

 

さくら 

さくら

さくら

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

アノミーとは打って変わって柔らかな楽曲であるものの、、タイトルとは裏腹に書いてある内容が暗い。

「僕らの旅を青春なんて名付けて過去にすんな」

 

という歌詞がお気に入りですね。

曲的にも、奇跡と同様、最後に盛り上げる構成がうまい、僕は歌う 歌うっというのが切迫感があっていいですね。 

 


ねぇママ、あなたの言う通り

ねえママ あなたの言うとおり

ねえママ あなたの言うとおり

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥1630

1.風に流離い

2.ジュブナイル

3.春待ち

4.性善説

5.ミサイル

6.僕は盗む

7.パーフェクトライフ

 

まぁこの中でなら、性善説でしょう。

性善説

性善説

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

全体の風景をマクロ的な視点で語るっていう意味ではつじつま合わせのリメイクというか、同種、同じ匂いがします。

「僕は僕を保つのに精一杯で、そのくせ誰かの肩にもたれていた」

 

の一文の凄さ。人間の悪性を、詩に落とし込んでいるのは秋田ひろむだからこそ表現しえたものだと思います。

 

ジュブナイル

ジュブナイル

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 ジュブナイル=少年少女。というのは今更書くことでもないが、まぁ、それにしてはあまりにも本質をつきつつも、それでもやっていけっという冷や水応援歌みたいな曲。

「どうせ誰も助けてくれない それを分かって始めたんだろう」 

 

この文は、刺さる人にはかなりダメージを与えるのではないでしょうか?

 

 


あんたへ

あんたへ

あんたへ

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥1528

1.まえがき

2.あんたへ

3.匿名希望

4.冷凍睡眠

5.ドブネズミ

6.終わりで始まり

7.あとがき

 

あんたへ

あんたへ

あんたへ

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 人生の失敗=積木で遊ぶ子供という言い回しからとれるように、定番ともとれる応援歌なんですが、挫折から立て直した秋田ひろむが言うとなんだか説得力を感じたり。次作のミニアルバムが虚無病と考えると、あんたへまでがフェーズ1(2010-13)と考えられる。

秋田:“あんたへ”を自分自身がひさびさに聴いて、すごい励まされた感じがして、これはちゃんとアルバムに入れたいなと思ったのが最初です。そこから考え始めて、アルバム全体で何か伝えるということをできないかなと思いました。“あんたへ”自体は自分に向けて作った歌だったんですが、今の僕だったら外に向かって歌えるんじゃないかと思いました。

本来、自分宛に書いた楽曲を他者に発信する側に立つくらいには自信がついたと考えていいでしょう

 

虚無病

虚無病 - EP

虚無病 - EP

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥1222

 1. 僕が死のうと思ったのは

2. 星々の葬列

3. 明日には大人になる君へ

4. 虚無病

5. メーデーメーデー

 

まぁ16年にもなるとamazarashiもメジャー街頭に出てきた頃なので、初期に比べると微妙な曲が増えたなという時期ですが、その中でも明日には大人になる君へと、メーデーメーデー、なにより提供でありながら「僕が死のうとおもったのは」をだせる勢いはいいですね。作家性が強い秋田ひろむが他の歌手に曲を提供するとここまで鬱屈したタイトルになるんだとおもったりしました。

 提供先

 

僕が死のうと思ったのは

僕が死のうと思ったのは

  • 中島 美嘉
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 セルフカバー

僕が死のうと思ったのは

僕が死のうと思ったのは

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 やっぱりシンガーソングライターの提供曲は作曲者の歌声じゃないと満足できないケースが多いですね。決して中島美嘉の声がダメというわけではなく、その人の声で成立している世界観を醸し出してるアーティストが提供する曲はどれも本人が歌ってないから物足りなさを感じずにいられない。最近だと菅田が米津楽曲をうたうくらい違和感がある。

 

この時のインタビューの発言をみるに、初期のテーマからは脱却したからこそ、14.15年くらいからamazarashiは新しいフェーズに入ったというのは間違ってないと考える。

ーー初期の歌詞には、自殺を連想させるものが多く見受けられました。しかし最近では、人生を肯定するような曲が増えてきたように思います。これはどうしてでしょうか?
死にたいとは思わなくなりました。amazarashiの初期にあった「自分を肯定する」というテーマはもう達成したと思います。

meetia.net

 

Album

 

千年幸福論

千年幸福論

千年幸福論

  • amazarashi
  • ポップ
  • ¥2139

 1. デスゲーム

2. 空っぽの空に潰される

3. 古いSF映画

4. 渋谷の果てに地平線

5. 夜の歌

6. 逃避行

7. 千年幸福論

8. 遺書

9. 美しき思い出

10. 14歳

11. 冬が来る前に

12. 未来づくり

 

初期テイストが詰まった作品。黎明作品でありながら、佳作以上傑作未満の作品だと考える。カルピス原液はあるが、もう少しレベルの高いところへ行っていたら傑作と言えた。が、原液の濃度さでいえばダントツなので、そこに酔えるひとはこのアルバムを「好き」という評価をしていると思います。4.7.9がおすすめです。

 

 ラブソング

ラブソング

ラブソング

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥2139

1. ラブソング

2. ナガルナガル

3. セビロニハナ

4. ナモナキヒト

5. ハレルヤ

6. アイスクリーム

7. アポロジー

8. カラス

9. ハルルソラ

10. 祈り

アーティスト、楽曲名をカタカナにしがち症候群に罹患している作品。嫌いじゃないけどあたり曲はないと思う。ラブソング、ナモナキヒトだけはamazarashiだからこそ作れる楽曲だと思いますが、つじつまなどと同レベルかといえば、そこまでではない。

 

夕日信仰ヒガシズム

夕日信仰ヒガシズム

夕日信仰ヒガシズム

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥2139

 

 1.ヒガシズム

2.スターライト

3.もう一度

4.夜の一部始終

5. 穴を掘っている

6. 雨男

7. 後期衝動

8. ヨクト

9. 街の灯を結ぶ

10. 生活感

11. ひろ

12. それはまた別のお話 

 

傑作。名盤といって差し支えがない。第一にあたり曲が多すぎる。12曲中、少なくとも6曲はあたり(スターライト、もう一度、穴を掘っている、雨男、ヨクト、ひろ)

スターライト

スターライト

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
もう一度

もう一度

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
穴を掘っている

穴を掘っている

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
雨男

雨男

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
ヨクト

ヨクト

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
ひろ

ひろ

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

スターライトはどん底時代に、自分を鼓舞するために作られた楽曲。「涙は、通り過ぎる駅だ」という一節からもその感じはわかると思います。

──光を感じさせるサウンドとメッセージが光る「スターライト」。amazarashiとしては比較的ストレートに聴き手を鼓舞してくれる楽曲はどんな思いで紡ぎだされたのでしょう?

これはアマチュア時代からあった曲で、作った当時は半分引きこもりのどん底でした。先も見えない生活の中で、自分を鼓舞する為に作ったんだと思います。

銀河鉄道の夜をイメージソースにしながらも、amazarashiの世界になっているところがいいですね。曲の明るさ、ポップさなど込みでamazarashi入門の一曲には最適です。


www.youtube.com

 

 

雨男はブルーハーツ通のamazarashiが「未来は僕らの手の中 」を歌詞に入れるとこの感動や、ずぶ濡れになりながらも前に進むことを強く歌った点など全てにおいて秋田ひろむだからこそ作詞できた歌詞。「雨曝しだが、それでも」というそもそものコンセプトに直に向き合った作品なので別格です。

──個人的にすごく胸に響いたのが「雨男」でした。鬱々とした日々を過ごしながらも、わずかな光を手繰り寄せるように生きていく――そんなリアルなメッセージはamazarashiの真骨頂のような気がします。こういった楽曲は変わらずあふれてくるものですか?

amazarashiらしい曲というか、amazarashiが得意な形の曲だと思います。二番の友達との件とかは実際にあった事で、そういう心を動かされる瞬間があるうちは、こういう曲を作り続ける事が出来ると思います。

ひろ、では19歳で亡くなった友人へのレクイエムとして捧げられてますが

「何度も挫けそうになった事 実際 挫けてしまった事」

 

という自身の挫折の告白歌詞や、対比的な構造の意味では一番、二番で

「それが悲しい お前はまだ19歳のまま」

 

と締めているのに対して最後に

「僕は歌うよ 変わらずに19歳のまま」

 

で結びとなるのがいいですよね。

 

初期のミニアルバムから千年幸福論までがフェーズ1ならヒガシズムから2に入った感じがします。

 


世界収束二一一六

世界収束二一一六

世界収束二一一六

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥2139

1. タクシードライバー

2. 多数決

3. 季節は次々死んでいく

4. 分岐

5. 百年経ったら

6. ライフイズビューティフル

7. 吐きそうだ

8. しらふ

9. スピードと摩擦

10. エンディングテーマ

11. 花は誰かの死体に咲く

12. 収束 

 

タクシードライバー、多数決、季節は次々死んでいく、ライフイズビューティフル

しらふ、エンディングテーマ、花は誰かの死体に咲く、吐きそうだなどの名曲連発

 

タクシードライバーは風景が想像しやすい絶妙なタイトルと歌詞。冒頭の効果音で運転手の話声をいれることによって、曲の世界観をよりわかりやすく提示している。センスがあるなーと思う一作。

タクシードライバー

タクシードライバー

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

 

多数決

多数決

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 タイトルの2116(リリースから100年後)年からわかるようにアルバムのコンセプトは100年後の未来に何を選択するかということだが、それが色濃く反映された楽曲。

 

ライフイズビューティフル

ライフイズビューティフル

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

秋田ひろむの歌手としての責任というか覚悟というか一生を書き出しながら、世の非情を表した一曲。色々あるけど人生は美しいという帰結をするのはamazarashiだからこそ。

 

 

スピードと摩擦

スピードと摩擦

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 これは、先述したヒップホップを聴いてるのが活きた曲かなと。

歌詞は命題があって結論があるというよりは、ひたすらに情景描写と心理描写を叩き付けていく、極めて衝動的なものだと感じます。最初に浮かんだイメージを、どのように膨らませていきましたか?

 

この曲は外枠ありきで考えていて、ずっと韻を踏む、言葉数の区切りもずっと同じ…みたいな感じで、詩の定型を始めに考えて、そこから歌詞とメロディーを考えました。長めの川柳みたいなイメージです。言葉の単調な繰り返しの中から“スピードと摩擦”というテーマを思い付きました。疾走してるんだけど、どこか危ういような、それは人の生き方にも通じるような気がしたので、それをテーマに作りました。

okmusic.jp

 

花は誰かの死体に咲く

花は誰かの死体に咲く

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 つじつま合わせの

「その上に花が咲くなら それだけで報われる世界」 

を主軸に描いた楽曲。

人類が誕生し約七百万年 今日までに死んだ人の全ての遺体が
土に埋まってんなら 君が生きてる町も 世界中どこだって誰かの墓場なんだ

抱きしめたあの人も 向かい風の嘲笑も 讃えられる事なかった君の勝利も
一つ残らず土に還るのだ 花は誰かの死体に咲く

綺麗でもなんでもねえ 命が今日も笑えば
人の傲慢の肯定 逃れられぬ命を 逃げるように生きてよ
笑い合えたこの日々も 失くした日の痛みも なんとか死にきれそうなこんな人生も
一つ残らず土に還るのだ 花は誰かの死体に咲く

 ある種の死生観 が語られている(詰まっている)曲であり、収束がこの次のトラックにあることから、しっかりと線をつなげていることがわかります。

 以上のことから、このアルバムはurakさがあるamazarashiの世界観と共存している感じがたまらなくして大好きです。だからこそ

前作に劣らずの傑作。私はヒガシズムと本作「収束」どっちかが最高傑作と思っているのですが、なかなか決めきれない。

 

ちなみに同業者はこのように評価しています。

多分ここで激論になっていたというのは各楽曲が一つに統合していく構成のことを指しているのであろう。

 

全体的にバランスがいいヒガシズム と、ダークな楽曲で統一された「収束」どっちをとるかで変わる。

music.fanplus.co.jp

 


地方都市のメメントモリ

地方都市のメメント・モリ

地方都市のメメント・モリ

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥2139

1. ワードプロセッサ

2. 空洞空洞

3. フィロソフィー

4. 水槽

5. 空に歌えば

6. ハルキオンザロード

7. 悲しみ一つも残さないで

8. バケモノ

9. リタ

10. たられば

11. 命にふさわしい

12. ぼくら対せかい

 

本作からフェーズ3だと思ってる。ヒガシズム、収束 と傑作続きであったのに対して、平均的なアルバムと感じる。全体的に軽い。ヒガシズム、収束であったような引き込まれる重量感サウンドもない。全体的に毒素が抜けた感じで個人的にあまりのれない。

たられば、命にふさわしい、フィロソフィーの3曲意外、ぱっとしない。

たられば

たられば

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
命にふさわしい

命にふさわしい

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
フィロソフィー

フィロソフィー

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

空洞空洞は歌詞の切り口はさすがだがもう一歩欲しい。リタは微妙。

この曲調なら数え歌の音源のほうが格段に優れてる。

空洞空洞

空洞空洞

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
リタ

リタ

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
数え歌

数え歌

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 水槽は、ポストロックらしさが出てる曲という解釈もできるけど、そんな楽しみ方ができるのはそう言う文脈を知ってる人だけだし。その意味ではあんまり面白くない曲。

amazarashi文脈でいえば夏、消息不明の流れか。

夏、消息不明

夏、消息不明

  • amazarashi
  • ポップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

空に歌えば 

空に歌えば

空に歌えば

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

なんてヒロアカの主題歌だからこそのアップテンポ&王道な形がある(ローカライズがうまいとも言えるが)だけなのでamazarashiだからこその曲にはなってない。(そもそもヒロアカの主題歌がamazarashiってどういうチョイスだと思うけど)途中のポエトリーはファン的にはいいけど初見の人は「なにこれ」ってなるだろうし、秋田ひろむ意外が歌ったら絶対合わないやつ。

そう言う意味で商業楽曲としてどっちつかずで振り切れてない。

natalie.mu

 

バケモノ

バケモノ

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 語尾をずらした箇所をするとradの有心論に聞こえてくるのは良いんだか悪いんだが。

 

 
ボイコット

ボイコット

ボイコット

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥2139

  

1. 拒否オロジー

2. とどめを刺して

3. 夕立旅立ち

4. 帰ってこいよ

5. さよならごっこ

6. 月曜日

7. アルカホール

8. マスクチルドレン

9. 抒情死

10. 死んでるみたいに眠ってる

11. リビングデッド

12. 独白

13. 未来になれなかったあの夜に (long edit)

14. そういう人になりたいぜ

 

評価が難しい。なんというか、黒すぎ(暗すぎではなく)なんですよね。初期amazarashiの荒っぽさでもなく、中期テーマの完成されたコンセプトに沿った統一性も感じられなない。月曜日、さよならごっこ、独白だけはいいですけど。

 

月曜日

月曜日

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
さよならごっこ

さよならごっこ

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
独白

独白

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

夕立旅立ちとか、amazarashiがこれまで作ってきた楽曲というよりかはbumpとかが出すような曲調だし。この曲を、他の曲の面々(曲調)があるなかでいれるのはちょっと違和感を感じる。

「帰ってこいよ」には極めて純粋な故郷へのノスタルジーを感じます。ついでに言えば、「夕立旅立ち」にも同じ匂いを感じます。故郷から離れたい、帰りたい、愛する、嫌う、そうした感情は交互にやって来る気もしますが、今の秋田さんはどの位置にいると思いますか?

僕はもう地元の青森で暮らし出して長いので、地元を離れて頑張る人を見守る「帰ってこいよ」のほうが今の気持ちに近いです。「夕立旅立ち」は故郷を離れる若者の歌で、上京する時の昔の僕の気持ちが色濃いです。故郷に関しては、僕の中で消せないテーマです。

であるのであれば、拒絶がテーマの「ボイコット」には合わないんじゃないと思ったりします。 

 

未来になれなかったあの夜に

未来になれなかったあの夜に (Long Edit.)

未来になれなかったあの夜に (Long Edit.)

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 も、タイトルからして直接的すぎる。秋田ひろむなら「未来になれなかったあの夜に」をもう少し別の言葉で包んで欲しかったと言う印象。

 

独白

独白

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 キラーチューンならぬ、キラーリリックというべきか、それほどまでに秋田ひろむの主張が詰まっている。最たるところは

言葉は積み重なる 人間を形作る 私が私自身を説き伏せてきたように

一行では無理でも十万行ならどうか
一日では無理でも十年を経たならどうか

これはメッセージボトル(ベスト盤)発売の時に

全ての曲に対して強い思い入れがある為、収録曲に関してはとても悩みました。結果、今後歌い続けるであろう曲たちを選びました。
未だamazarashiと出会ってない人の為の一枚、というふうに考えております。

「メッセージボトル」というタイトルは、アマチュア時代に始めて主催したイベントのタイトルです。
その時の僕らの歌は宛のない手紙であり、願いであり、SOSでした。

あの日漕ぎ出した僕らの歌の漂着地点が、今のリスナーです。
そしてここから、今日からの船出の無事を祈って、未だ見ぬ人に出会えるよう願いを込めて「メッセージボトル」

どうか誰かに見つけてもらえますように。

秋田ひろむ氏のコメントより引用
www.amazarashi.com

この過程のことを指していると考えられる。

 

が独白に関しては曲の評価とは別にライブ演出があったにせよ

独白(検閲済み)

独白(検閲済み)

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

こんなゴミ見たいな音源をシングルで売ったあとでアルバムで出されてもなと思ってしまう側面もある。。やり方が汚い。曲・歌詞がすごくいいから余計に。デタッチメント的にこれはこれでいいとはさすがに割り切れない。

 

死んでるみたいに眠ってる

死んでるみたいに眠ってる

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 法律を破りたい いい人なんか報われない
ホールデンとかディーン・モリアーティ 車を盗んで逃げ出したい

 この文学読んでます感の歌詞が笑いを弾きますよね。

ホールデンといえばホールデン・コールフィールド(ライ麦畑でつかまえて)しかない。

相変わらず、サリンジャーライ麦を好むアーティストの多さよw。

 

ライ麦ビートルズのジョンレノンも好きだった。そして彼を暗殺した犯人がホールデンに影響された人物というは皮肉だ。

ディーンモリアーティはジャック・ケルアック路上の小説の主人公だろ。で路上の新訳はオンザロード(ハルキオンザロードを彷彿とさせる) 

 

オン・ザ・ロード (河出文庫)

オン・ザ・ロード (河出文庫)

 

 

ハルキオンザロード

ハルキオンザロード

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

路上はいわゆるヒッピー族に愛された書。要はカウンターカルチャーなわけだ。

自由奔放にアメリカを横断する主人公と悪友が社会から外れた生き方をするけど結末は主人公がディーンを見捨てて終わるという、アメリカンニューシネマ的。

アメリカンニューシネマとは、簡素にいうと、若者の反抗を描いた作品。

社会なんてしらねー 俺は自由にいきるぜやっふー→最後死ぬ

ていうのが、ざっくりとした特徴。

明日に向かって撃て俺たちに明日はないイージーライダーなどが代表作品。

路上はイージーライダーに近いかな。どれも名作なのでみてください。すると大体ニューシネマの型がわかります。

ビート・ジェネレーション(米文学の運動みたいなもの,ビートたけしのビートはここから)首魁、というか経典とでも言うべきか。アメリカでは非常に影響力があり、ボブディランもその中の一人。そんな彼も今ではノーベル受賞者(16年に文学賞を受賞) ってところが時代を感じますよね。

 ポエトリーリーディングという小説音読する文化もここらへんから始まっている。そしてこれがamazarashiと通じてないはずがない。

色々書いてしまったが、歌詞からこの流れの匂いを感じずにはいられないので書きました。それだけでもこの楽曲歌詞に意味はある。

 

 

 

 

 

 

以上、amazarashi考察&総括記事でした。いつもなら楽曲の側面から切り崩せるのですが今回に限って歌詞性が強いため、その根元を辿ってという作業をするのが大変でした。

(書き直しの回数では言えばダントツ)いままでのamazarashiの考察記事は数多あれど大半が「太宰治寺山修司に影響を受けている」とか「宮沢賢治中原中也などの世界観を落とし込んでいる」といった表層の部分しか書いていなく、それらを読んでいる自分としては「ディティールの面でいくらか書きようがあるだろ」ということで、 書いてみました。音楽的方向では先取りブログが一つあったのが悔しかったのですが、持論をなんとか展開できたのでよしとします。以下、気になる人だけ読んでください。

 

 

 

 

Neruzarashiについて(本編おまけ)

最後にneruzarashiについてほんの少しだけ

NeruというボカロPがいるが、彼の世界観の構築要素の8割はamazarashiからの影響ということで間違えないが、ボカロを通して発表したことで新しい可能性を提示したという点ではやはり評価されるべきだと思う一方。(wowakaがnumber girlのスタイルやzazen boysの半透明少女関係、テスラは泣かないのパルモアをボカロでリブートした結果新しい潮流が生まれたように)

透明少女

透明少女

  • provided courtesy of iTunes
パルモア

パルモア

  • テスラは泣かない。
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes


www.youtube.com

 

 


www.youtube.com

誰もがわかる影響を「頑なに」公言しないのはもったいないというか、しょうもないプライドにこだわっていると思う。マンウィズの曲を真似た時も割り切って「影響を受けました」と言ってしまえば罵詈雑言もある程度治ったものの変なポエムを投稿するだけであった。挙句、内容、楽曲性の差異はあれど、神様、僕は気づいてしまった。なんてコピーバンドをやってしまうくらい(ディスというより、覆面、垂れ幕ライブなど含めamazarashiフォロワーという意味)好きなわけだ。

だからこそ、「神様、僕はわかってしまった」からの引用を散々指摘されるのは、分かりきってるのだから予防線として言っときゃいいのにとも思う。断っておきたいが、別にパクリがだめとは言ってない。

パクる行為そのものはあらゆるクリエイターがやっていることだからむしろするべきで非難することではない。それは 

sai96i.hateblo.jp

 記事である程度書いた。再教育(oath signからのパクリ)にしろ、かなしみに溺れる(夏を待っていました)にしろ、あそこまでの曲を既存の曲をパクるだけで作れるのも才能の一つであることに違いはないし実際にニコ動でもかなりの支持を集めた。ただ、そこにリスペクトってものがあって然るべきという話。実際、Neruは過去にamazarashiのツイートをしていた(画像がみつからないのが個人的に残念)のにもかかわらずツイ消しで逃げたわけだし。

 

 自分が言いたのは

 これくらい潔くなければ(とはいいつつwowakaも発表当時はわりと危ない感じではありましたが自分の音楽に自信をもてるようになったからこそのこのツイートがあるはず)

 

これはamazarashiのファンである補正込みの意見として読んでいただきたいが、秋田ひろむがamazarashiで発表した世界観というのは、ボカロPも参考にしてしまうくらい大きいのではないかと思う。先述の通り、Neruは間違いなくそうだし、カンザキイオリもそうだし

e-talentbank.co.jp

この楽曲は、ファーストアルバム「白紙」のリード曲として制作しました。

音楽を通して経験した苦悩をそのまま表現した曲になっています。

自分は amazarashi というアーティストが好きで、高校生ぐらいの時に作っていた過去の曲は、そのamazarashi さんを真似た曲ばかり作っていました。

 

まふまふもneruのフィルターを通して結構受けてんじゃねーの(少なくとも聴いてるだろうな)と思う。まぁまふまふは方向性としてはamazarashiに影響を受けたNeru(というよりamazarashi的厭世的な世界観をボカロに落とし込んだ音楽性)にほれたたちだと思うので間接だが。まぁ、少なからず後世のアーティストへ(主にネット世代に)影響を与えているよって言う話でした。

 

6枚目のアルバムレビューも公開しています。一読のほどよろしくお願いいたします。

 

sai96i.hateblo.jp