高木正勝さんの音楽を知っている人はどのくらいいるだろうか。ピアノで自然的アプローチや流動感のある楽曲を作らせたら右に出る人は一人もいないと思うほどピアノ音楽を作るのが上手いと私は評価しています。聴いている間は高木ワールドに没入してしまう。こんなにも作家性というか、音の繊細さや残響音で魅了してくる音楽作家は稀有だと思います。
最近ではサントリーのcmでも聴くようになりました。かつて久石さんが担当されていた枠なので個人的に盛り上がる。
細田守監督作品の劇伴を担当されることが多く、そちらでご存知の方もいらっしゃるようですが曲が作品より有名になってるんじゃないかと思うくらい素晴らしい。
それが顕著なのがおおかみ子供の雨と雪。この映画のOSTは是非とも全通すべきです。
その中でも一番のおすすめ「きときと」収録されています。
ということで、まず最初に聴いて欲しいのがこれ
多分高木さんの音楽の中で最も知名度がある楽曲。大半の人は聴いたことがある(ヨーグリーナのcmにも起用)と思うし、この曲に感銘を受けたと思う。イントロのピアノを駆け出しからグリッサンドの合図で様々な楽器が跳んで一つに交わっていき、弦がメロディを奏でつつ、ピアノが土台になって進む爽快さ。そしてまた最初にもどり、今度は大々的に強弱をつけてから堂々のサビをを迎える。サビになってもまるで音が遊んでいるような展開がありつつ、その後アウトローとしてピアノで締めるこの自然さ。音が遊んでいるように聴こえる感じが堪らなく興奮します。とにかく芯はピアノなのに吹奏楽的なアプローチ込み楽曲が展開される様といったら感動を超えますよ。
個人的に高木さんが創り出す音楽の最高傑作だと思っているのが当楽曲。熱風=サハラ砂漠=ghibliと、元々のジブリの意味を指す単語です。当楽曲は「夢と狂気の王国」というジブリドキュメンタリーで使用された楽曲(個人的にこの事実だけ泣ける)
内容は宮崎&高畑御大がそれぞれ「風立ちぬ」と「かぐや姫の物語」の制作過程を覗いた内容なのですが、この楽曲が流れるシーンとても感動的です。やっぱり高木さんファンだと「ジブリ×高木正勝」を望んでしまうわけですよ。絶対に合うからどこかのタイミングでやって欲しいと懇願していたときにドキュメンタリーではあるもののジブリ関係の映画に起用された時の喜びはいまでも忘れられない。
せせらぎのような音からだんだんと上がっていき、一回ためてから爆発するっていうのはまさに高木正勝スタイルなんですが、跳躍含めて音から景色が想像できるくらい秀逸なんですよね。自然を体感させるような音楽が高木さんの音楽性といってもいいくらいとにかく音が体に入ってくるんですよ。そこに流動性や躍動感が加わり、でも控えめな構成で作られているところがまた唸る。1m50sから溜めてからの急な低音下降からのアップメロディっていうのもギャップ泣きですね。2m40s前後のちょっとした味付けも好き。一聴の価値あり。
I am water
こちらも水を表現する音楽性で言えばラヴェルの
よくよく聴けばそこまで音幅が広いわけではないのに、ピンポイントでツボを押してくる感じがこの曲には顕著に出ています。後半から躍動していくおなじみの展開含めて抽象度が高い楽曲。
tubeの公式垢にてライブ版も公開されているので是非。
アルバム作品として秀逸なのはこの二枚
特にYMENEは作家性というか、エッセンスが詰まっている作品として一聴すべき作品です。「ああ ラヴェルだ/ドビュッシーだ」って聴けば誰でも分かるくらい丁重な感じで音に意味が込められてるし、その点を抜きにしてもやはり心象、風景的なところに心をもっていかせる"音楽性"もある。本質がつまっているとでもいべきか。
ペダルの使い方が絶妙(ラストあたり)。そして弾いている音の感覚が強弱のつけかたによって曲に活かされている感じであったり、(おそらく)下地で生ピアノを挿入しているのも違いがわかっていいですね。3m24s前後のオクターブで鳴らしてくるところもいい。何パターンかあるので、それぞれ聴き比べてみるのも一興です。
他にもいろいろお勧めする作品はありますが(端的に言えば全作品聴けってなります)キリがないので以下、セレクト楽曲を貼っておきますので興味のある方は是非聴いてください。
いつもより薄めですが、今回はここで終わりです。
私の三文記事で高木さんのピアノ音楽の良さが少しでも伝われば幸いです。いつも1万字くらい書いているので個人的にも物足りなさはありますが(本当は印象派音楽作家との比較とか込の考察記事にしたかった)かといっても毎回1万字だと読み手も辛いと思い、今回は3000字程度に抑えてみました。