今の時代「バンド音楽」ではなく、「一種の記号化された音源」を主流に音楽を創り始めるというのが多い。絶賛セールスを飛ばしているYOASOBIの夜に駆けるが大ヒットしているのをみると、本当にそういう時代性の真っ只中にいるのだと再感。そしてこの記号化された音源と感じる正体こそ、最近の音楽にありがちな「お洒落感」につながっていました。この条件で考えつく先、、つまりはlo-fi hiphopである。lo-fi hiphopは10年代から注目されたジャンル系統なので、あんまり耳にしない人が多いと思う。当然nujabes等の音楽を信奉している異端者なら「時代がやっとおいついた」と心の中で自慢しているであろう。
YOASOBIとlofiについてはかなりの数言及されていると思っていたのですが、Twitterでは思いの外ツイートされていなかった。そもそも解釈を間違えてる可能性もありますが、意外でした。ただ、やっぱりイージーリスニングの文脈というか、極端に電子化された音源と言う意味で波を組んでいると思える。lofi×ボカロ的な。余談にはなりますが、なぜ今の時代に夜に駆けると言う楽曲がここまでヒットしたのかがあまりわからない。時代が選んだと言うにはあまりに特異点的存在に思えます。
・lofiとは何か?
では、lo-fi hiphopとは具体的にどのような音楽を指しているのか?ヨレタにビートを刻みつつ、オルガンでメロディを味付けするインストルメンタル。若干ジャズっぽさがありますよね 洋楽でいうmoon childの高揚感とでも言いましょういわゆるチルい音楽とも言われますが、これはエモいと同じ(emotion)でchillという英単語から来ていますね。ただ、本来のchillで捉えると以下の意味になるので
実際にはこっちの意味の方が強いと思います。重箱の隅をつつくようなことをいいますとチルい は厳密にはchill outのことを指します。
moon childの音楽は 公式チャンネルにアルバム1枚分上がっているので、気になったら是非(´・ω・`)ノ
こういった背景アニメーションの動画をここ2,3年 YOUTUBEでみたことがある人は多いと思います。実際の動画(24h 配信)はこちら
いわゆる、アニメGIFを背景に音楽を垂れ流しするといった趣旨のライブ放送です。
LOFIの流行りのきっかけはこういったアニメーションのgifに作業用bgm的な音楽を流す空間性にあります。その背景を踏まえると、ずと真夜などの、いわゆる「夜系」アーティストの方向性との調和も少し関わってくるところがあるのかなっと思ったり。
youtubeのライブ形式を生かして、垂れ流しにアニメイラストをつけるという手法がここ数年で台頭し、一気にlo-fiが有名になったとお考えください。
(その点でいえばNightCoreと近しいところがあります)
・NightCoreについて簡素説明
原曲のテンポとピッチを変えるremix手法。この手の動画、萌えキャラ一枚絵を背景にtubeに転がっているケースが多い。ニコニコ的にいうと、ピッチ変更したら〇〇になったシリーズです。が、しかし基本的に二次創作に属するコンテンツです。ただNightCoreがオタク臭い感じ何するのに対して、lofi hip hopは誰もが気軽に流せる音楽(というより、既存楽曲のremixではなく、一つの形を元にあらゆる作曲家が作品を出せるため)であったせいか、今ではChilled cowやChillhop Musicなどといった専門チャンネルがyoutubeにあります。是非そちらをチェックしてみてください↑の動画はChilledcow チャンネルのものです。どちらも24時間延々、lo-fi hiphopが流れているのが特徴です。
以下おすすめチャンネルリンク
ヒップホップカルチャーがサンプリング(原曲を自己流アレンジ)によって確立されたように、それらの延長線上として、よりシンプルな音楽と日本ならではの絵を加えることによって、ジャンルとしてさらに深く分化していったということです。ミクスチャーの最新版という見方もできます。一枚絵と音楽の組み合わせは昔からありますが、それらが永遠に流れる作業用ch.として人気が出てlo-fiというジャンルの確立とイメージの定着に繋がったと考えると面白いものですし、何よりchilledcowなどのチャンネルをいち早く立ち上げたのが外国人というのも思慮に入れる一つの要素になりうると思います。
全体を通して面白いのがリズムとメロディを極限までに突き詰めた楽曲が市民権をえたと言うことです。つまりジャズ音楽特有の場を和むようなメロディとミニマル音楽における繰り返しの要素、そしてミニマル音楽を一つの楽曲単位で壮大な楽曲を作り上げた久石譲の系譜を継ぐ音楽が一つの完成形を成しネット媒体を介して新しいジャンルとして受肉したことです。その前提でことを考えるとlo-fi音楽のオリジンといっていいのはエリックサティ爺さんと言う見立ても間違いではありません。おそらくはサティのジムノペディを聴く時に感じる包容力はlofiと言う姿に変わったとしても与える神秘性は全く色褪せていません。そう考えるとanomalieの音楽などは今こそ評価されてしかるべき
是非聴く耳を傾けてください
また、KENNEBECのデビューなどからこれからlofiはより熱くなっていくのではないかと勝手に思っています。少なくとも海外では。
次にどういったアーティストが確立したものかを言及します。
・lofi音楽における古典について
そしてlo-fi hipの先駆けとなったアーティストが二人います。nujabesとJ dillaです。
※ここで少し断っておきたいのですが、私自身nujabesを敬愛しすぎているせいで分量的にnujabesの記載が多くなります。
・nujabesの音楽について
nujabesはebajunの逆読みからとったアーティスト名。日本人です。
彼は単体としてのアルバムを二枚(Metaphorical MusicとModal Soul )出しました
そのほかにも
でのレコードを含める主要作品として
- FIRST COLLECTION HYDE OUT PRODUCTIONS
- metaphorical music
- modal soul
- 2nd Collection HYDEOUT PRODUCTIONS
- Luv (sic) Hexalogy
等があります。因みにインディペンデントレーベルとしてのhydeout productionの主宰もnujabesさんは担当されていました。21歳の時にレコード店を立ち上がるの行動力も凄い.村上春樹が大学時代にジャズバーを開店したのを思い出しました。
(そう言えば今年はどうなるんでしょうね。文学賞)普段は全曲のリンクを貼ることはしませんが、nujabesの音楽を堪能してほしいので今回は二枚とも、各曲貼ります。
試聴段階でサンプリングの巧さなどが身に染みる。特にeternal reflectionは一般人気も高く、たまにテレビでも流れることがありますね。eternal reflectionのサンプリング元はこの記事で言及していたので知りたい方はチェックしてください。あとヒップホップについては浅いので実際どうかはわかりませんが、一般的に想像されるハードコア的な文脈ではく、メロウソウルとジャズ系の引用で作品を発表していたというのは、先見性といえるのではないでしょうか。つまりジャズ的ベースに乾いたパンチの聴いたピアノなどの取り込み、そして多様な音楽性の引き出しの、それらの味付けとしてのドラムパターンなど我々が想うサンプリング音楽とは確実に一線を画すわけです。
事実そのような音楽性から派生したlofiは非常に大きくのリスナーが固定されているためハードコアではない道を開拓したのはでかいと思います。音楽性においてもやはりヒップホップの文脈を踏みつつも、ジャズ・ヴォサノヴァなどがバックボーンの中核をなしていることは疑いようが無いであることことがわかる。
その他に代表作の一つとしてLuv(sic)の楽曲群があります。本シリーズはラッパーのshingo02との共作で、part1-6まであり、3までがnujabesが直接関わっているもので5~grand Finale(part6)は遺された音源を元に作り上げた作品となっております。
幻の3作目
本作はnujabesが事故死の後にリリースされたアルバムであるが、通して聞けばやはりlo-fi的要素が散りばめられていることに気づくであろう。そしてMetaphorical MusicとModal Soul、それぞれ音楽性の意味ではジャズの影響が伺えると思います。nujabes自身メディアへの露出はインタビュー含めあまりないので全体像を捉えるにはあまりにも情報が少ないのでそういった意味では今現在も音楽性の意味では謎と言えますが、一部の媒体にjazz評を提供しており、そこで至高のジャズ10枚を上げています。
①John Coltrane『My Favorite Things』
②Miles Davis『Kind Of Blue』
③Kenny Burrell『Guitar Forms』
④Herbie Hancock『Speak Like A Child』
⑤Pharoah Sanders『Journey To The One』
⑥Keith Jarrett『The Melody At Night, With You』
⑦Lars Jansson Trio『Window Towards Being』
⑧Omar Sosa『Promise』
⑨Robert Glasper『In My Element』
⑩Toshiko Akiyoshi『Sumi-e』
安定というか、「ジャズ おすすめ 名盤」なんて検索すれば必ずランクインするような作品ばかりのならびですね。1,2,6のアーティストは知らない人の方が少ない気もします。 そう考えるとnujabesもしっかり音楽史の文脈を踏んだ人なんだなと思えます。
ほかにも判明しているサンプリング 元として
- FRIENDS OF DISTINCTION -When A Little Love Began To Die
- Pharoah Sanders – Save Our Children
- Miles Davis – Joshua
- Luiz Bonfa – The Shade of the Mango Tree
- Kip Hanrahan – Make Love 2
- Pat Metheny&Lyle Mays – September Fifteenth
- Gigi Masin – Clouds
- Baden Powell – Deixa
- Yusef Lateef – Love Theme From Spartacus
- TERRY CALLIER – ORDINARY JOE
- 巨勢典子(こせのりこ) – I Miss You
- Gypsy – Gypsy Queen Part Two
- VELVET – BET YOU IF YOU ASK AROUND
- JOHN HICKS – AFTER ,THE MORNING
- Chet Baker – What’ll I Do
- Larry Ridley – Feelin’ Blue
- などががあります。
これらの楽曲をnujabesがどの曲に該当するかはこちらのブログで確認してください。1overf-noise.com
こちらのブログを参照してください。
散々語り尽くされているアーティストなので私がここで書いても何番煎じですかっていう感じですが、それなりに彼の凄さを書かせていただくと最近の時評でいうのであれば2年前(2018年)のspotifyで 日本人で聴かれたアーティスト3位を記録
1,2位が現役バンドであるのに対して、死後、未だに聴かれているというのはやはり音楽性に普遍的なものがあるのは当然ですが、それ以上に冒頭に載せたデータからわかるように18年からlofihiphopという言葉が派生したことと、同年のランキングでnujabesが盛り上がったのを考えると、ジャンルの元祖様へのご挨拶的な意味合いもあるのでしょう。ただ、リスナー層の面ではアメリカ、イギリス、カナダ、フランス そして日本という並びから国単位での人気度が日本<海外であるということが日本アーティストとしては非常に珍しいことだと思います。
Nujabesのリスナーは、アメリカ、イギリス、カナダ、フランス、日本の順に多く、ブラジルやメキシコなどの中南米でも多く聴かれている。
※以下の記事より引用
そしてサムライチャンプルーへの楽曲提供を行っており、これらが海外で放映された時中身はもちろんのこと、当然音楽もオンエアされますが、そこでnujabesの存在を知った人が多く、その中から日本アニメの日常風景画とnujabes的音楽の組み合わせなどを考えた人がchilled nowなどを開設していることに繋がったりとおもったり。
samurai champloo music record departure
- アーティスト:TVサントラ,MINMI,Nujabes Feat.Shing02
- 発売日: 2004/06/23
- メディア: CD
次にJ DIllaについて
彼はnujabesほどお洒落ではなく、むしろ若干ロックバンドが入っている元来我々が感じるヒップホップ的な楽曲が多いです。
donutsは日本で言う意欲作的な側面が感じます。
J DILLAのdonutsは31曲収録されているインストアルバム。つまり曲としてではなく、音作りの細部にまで目配りがし易いと言う意味でセンスとエッセンスが詰まっているそういった意味で意欲作のわけです。特にstop、mash、glazed、thunder、U-Loveあたりが個人的に好きなトラックです。one for ghostなんかは歌い方と楽曲が調和していくタイプでこれもまた面白い。
Two can winは歌が主体となっているトラックでありながら、やはり歌声すら「楽器の一つ」として統合している感じが聴いていて気持ちの良いものでした。
Don`t cryなんかは、このままフル尺で聴いてみたいと思えるほどヒップホップの楽曲として秀でていると思いました。最後のwelcome to the showなんかは基本ビートがメインでそれこそ後のlofiの遺伝子を感じる一曲になっています。
私感ではあるもののJ Dillaの最高傑作はwelcome 2 detroitであることは恐らくほとんどの人が納得するのではないでしょうか。Welcome 2 Detroitはイントロダクションのトラックとして最後に3,2,1 ah-と入れてくる感じであったり,the clapperでは表題に恥じないクラップを基本調として進む楽曲ですが、途中から浮き彫りになるベースラインの絶妙な挿入の仕方などのリズミックの聴こえの良さなどが素晴らしいですね。rico suave bossa novaは、割と単純な楽器で音もさほど加工していないところがこのアルバムの中で新鮮味があり、同時にだんだんとピアノ意図的にずれていく感じもやはり JDILLAの凄さの一つなのかなと思ったり feat.phat katで私が好きなのはとにかくビートの音なんですよね。陰鬱な音に包容されている感じがたまりません。Give it upが本作の中で一番のお気に入りです。ボイパ、ピアノ、ベースの全てが調和して遊んでいる感じが良いです。ラストトラックのone は終わると思いきや、終わらない構成が妙でやっぱり唸りました。
Donutsを一通り聴いたのち、本作を聴くとやっぱり進化形のアルバムだとも思います。JDILLAのすべてが詰まっている真の一枚といっても過言ではありませんし、リズムのミニマル性であったり、数秒のメロディにあらゆる要素を集約させているところでは本作もlo-fiにばっちり当てはまります。本来であればこれからのミュージシャン、言わばlo-fiを主戦にやっていく方達の紹介もしたかったのですが、今回の主題はあくまでもlo-fiまでの歴史と銘打ったものなのでもっと詳しく知りたい方は是非 lo-fi hiphopというジャンルを冒険してください。確立して2年目の今であればほかジャンルに比べてそこまで多くの作品はリリースされていないでしょうし、漁り易いと思います。今回の記事を通して1mmでも良さが伝われば幸いです。
あとがき&いいわけ
本当は最近聴く機会が多いharunoというアーティストについて特集するはずが、ルーツ元を辿る段階でlo-fiに急遽変わったのでうまく適応した記事を完成させられるかが心配でしたがなんとか書き上げることができました。よっぽどlo-fiに興味がある人しか、この記事は読まないだろうと思い、その文読んだ時間を損わせないようにあらゆるジャンルと私の浅い見識を積み込んだしだいです。本当であればそもそもhiphopとは?という段階から始めたかったのですが、それには少なくとも3ヶ月を要すると思ったので今回はあくまでlofiとしてのhiphopという意味で紐解きました。あんまり込み入って書いても仕方ないので、たまにはこの程度の簡易的な記事もいいかなと思っています。そりゃもっと体系的な範囲で書いた方が面白いですけどね。名前は出しませんでしたけどpete・rockの存在とか諸々。ただ今回はこれで終わりです。また機会があれば書きます。
(交通事故で急逝されてしまいましたが損失がデカすぎる方だなと思いました)
引用サイト意外の参照元としてこちらのサイトが非常に参考になりました。
今回はいつも以上に引用が多かったですが、この記事もサンプリングをもとに仕上げた一つの記事だと思って目を瞑ってもらいたいです。
( ^ω^)・・・