ホルストの木星は小学校の音楽で習うほど今では定番な楽曲となりました。しかし同時にこうも思います。「なぜ他の惑星音楽が知られていないのか?」その疑問の私感アンサー は後半に書きますが、世間体で知られていないのが勿体ないほどに全体を通して聴く組曲『惑星』の迫力であったり、楽曲に散りばめられたあらゆる要素は素晴らしいものです。今回の記事は全体としての惑星シリーズの魅力を中心に書いていきます。
火星-戦争をもたらすもの
人生ベスト10楽曲を聴かれたら絶対入れる1曲.カッコよさのロマンが常に躍動している楽曲。一貫して持続する強烈なリズム(4分の5拍子)が与える曲の迫力さというのをボレロの15年前にやってのけた凄さ、そしてこの曲が第一次世界大戦前というのも、「戦争をもたらすもの」という点で予見的。そして、一度聴けば中毒にもなるこのテンポ、そして楽器が示す暗黒さなどのちのスターウォーズにおけるダースベイダーのテーマに見事受け継がれていく(4m17sあたり顕著)、そしてそのまた数年後にジェームズキャメロン(タイタニック・アバターの監督)の出世作になるターミネーターの脚本を執筆する時にこの音楽を流しており、のちにT2(ターミネーター2)のテーマで有名なデデンデンデデンにつながったことはほぼ間違いない。クリエイター(とくにsfジャンル)に影響を与えやすい楽曲でありながら、今でも通じる普遍性があります。
金星-平和をもたらすもの
イントロのホルンの使い方からthe star warsという感じがしませんか?。穏やかでありながら流動的なメロディを奏でる弦楽器とそれを支えるクラ(クラリネット)のローテンポ感が特徴的です。あとスラーを多様してつなぎ目があまりないようにしてます。それらが盛り上がって4m28sで躍動するところは心が浄化されます。そしてその後のvinソロがまた哀愁的であり、印象的ですね。組曲:惑星の中でも一番聴きやすいタイプの楽曲です。後半のクラからはじまって管楽器、そして弦楽器と包容していく感じが、マーラーのアダージェット的とも言えますね。終盤フルートと鉄琴の兼ね合いで締めるのがロマンチックだと思います。
水星-翼ある使者
テンポがあらゆるところで変容していき、あらゆる楽器が踊るようにそれぞれソロがある構成がこの曲の特徴ですね。そして聴いていくうちに一つにリズムを何度も慣らしていく、この作品でも一回爆発ながれは金星と似てますね。とにかく楽器の主張が激しい映画ですね。翼ある使者達が舞妓する絵面を私は想起しました。4mと惑星シリーズを通した最短の楽曲ですが、質の高さ目立つ曲でもありますね。
木星-快楽をもたらすもの
さて、おそらく一番有名な木星。しかし、火星・金星・水星を聴いた後の木星は正直なところインパクトにかけると思います。というのも、上記3曲の展開にしっくりくる部分が多く、尚且つテーマをしっかりと再現できている反面、木星はイントロと有名なメロディにいくまでになんとなくつっかえる感じが個人的にします。また、こうすればいいのになという意味で、冒頭の感じで進めばいいものを壮大なテーマ曲っぽく曲の方向性を変えたような気がします。聴き手側のテンションとして冒頭から2m55sまでと、それ以降とでは全くの音楽と受け取る人が多いのではないでしょうか。私が馴染めないのはその違和感を何度聴いても消せないからです。それぞれの要素はいいのに上手く噛み合ってない感じがする。今ではあまり好きではない楽曲です(というか小中の授業で流れる時は毎回サビしか流さないのはなんなんでしょうかね )
土星-老年をもたらすもの
多分一番クラシックの流れにそう楽曲が土星だと思う。なぜならば楽曲のバランスがこの曲だけ偏りがそこまでみられないからだ。ホルンがスッと入っていく感じであったりパーカスが微かに支えて、そこからトロンボーンベースにホルンが主張してくる感じはよくあるし、総合的な金管の主張のあとに弦楽器が流動的に流れて合流して上下に音楽が奏でられていていく構成はそこまで気を衒ってないように思える。フルートとクラも暗鬱さに徹っするとおもいきや、3m47-4m06s付近で明暗を交互に表現して、ペットの重低音がはいってきて、どんどん上がってペットで頂点を極めるこの感じはやっぱりどこかホルストの作家性というものがにじみ出ている気がする。そしてある程度激しい曲調が続いたのち6m00前後から弦楽器が下地となって、ハープが主張して、フルートの明るい側面がしばらく続いて、しだいにハープと絡み合い弦楽器がまたここで合流してくる手際もまぁ見事そして、最後にだんだんと楽器がフェードアウトして弦で締めるっていのがいいですよね。ロマンチックな楽曲です。
天王星-魔術師
音楽の調子や色が
海王星-神秘をもたらすもの
本当しつこいようで申し訳ないですけどスターウォーズに流用してもバレないレベルでスペースオペラ音楽として成立するこのクオリティの高さ。若干ファンタジーっぽさもあって気持ちがいいです。ヴァイオリンを主旋律にして、影にクラリネットを置くことでここまで神秘性をだせるのかとおもうくらい作曲術が上手いと思います。この曲でもやはり味付けとしての鉄琴の音の幅広さがわかりますね。
総評的なアレ
1914-1916年の間に作曲されたものが、今聴いても古さを感じない普遍性と後世に与えた質的影響が凄まじい。1900年という我々が想像する「クラシック」最後の時代にストヴィンスキーおじさんという化物が創生したの二大楽曲火の鳥(1910)春の祭典(1913)の登場により以前以後という境目ができるのだが、ホルストはまさに以後の第一世代と言えるであろう。そして、現代における最高の劇伴作家、ハリウッド映画を体現した巨匠ジョン・ウィリアムズ(SW・ET・ジュラシックパーク・ジョーズ・ハリーポッター)の人気楽曲の半分以上がこの二大作家のミームを引き継いでいるとみて間違いないということですな。
今回はSF的な側面と、リズムで楽曲を魅せたホルストについてを語ってみました。
次はストラヴィンスキーについての考察記事を書きます。テーマとしては破壊と衝動です。そちらが公開された際に併用してこの記事を読んでいただけると、音楽がより楽しめると思いますのでどうかよろしくお願いします。ではまた次の記事で