まふまふというミュージシャンがネットでは散々界話題性になるのに反して、アーティストとして総括的に言及される記事はあまり見かけません。であれば書いてしまえというノリと勢いで書きました。私自身熱狂的なファンではありませんが、彼の楽曲性などはある程度は書けると思い取り上げました。また、あらゆる方向性から読み解く手前、当記事では公式では明示されていない別名義の曲も"まふまふ楽曲"という括りとします。表記は全て敬称略です。ご注意ください。
では本編に移ります。
アルバム編
まずは過去のアルバムのおさらいをします。
夢色シグナル
カバーが多い中、AM 5:00,AM4:00、Pm10:00 そしてdaybreakがオリジナル曲として収録されています。AM4:00からして実はまふまふ節が感じられる。daybreakはボカロ楽曲とアニソンの組み合わせみたいな感じがしますね。初々しいです。
刹那色シンドローム
早くも仇返しシンドロームを作ってるところに早熟さを感じますね。そしてこの頃からまふまふの最大の武器であろう"和風楽曲"の第一声ともいうべき「夢花火」の収録。ラストエフェクトのはその後ベルセルクに繋がるプロトタイプ。
はい、にわかさらしました( ^ω ^)ラスノさん作曲ですね。
ラストリーフはひたすらドラムばちばちの楽曲。意欲に溢れてくるのが伝わってきつつも、尖りがある良いアルバムですね。
闇色ナイトパレード
全二作に比べて、オリジナルで固めてきたある種の集大成。クリスマスナイトパレードや戯曲、空を駆け下りて等クオリティの高い作品が収録されています。そのせいか
- プラスティック
music & lyrics : Last Note. - ハーテッド・ドール
music & lyrics : ユジー
などの所謂提供曲が霞んでしまっている。ラスノやユジーの作曲能力が低いのではなく、ここまで作風が固まってしまうと場違い感が否めないという意味。この時期のまふまふならフルオリジナルでっと思ってしまう。この時期になると安心して聴けるレベルには作曲力がついてますね。そして色濃く影響を受けている楽曲性も現れている。空を駆け下りては、じんの作曲を明らかに意識しているし。そして
今作にも収録されているまふまふの切り札といってもいい林檎花火とソーダの海。本作の中では群を抜いて「らしさ」が出ています。
筆者はこの三枚は初期三部作と捉えています。つまりはペーペーから初めた人間が数年を経て、ようやく一人前になったという流れを汲むという意味では有意義な作品群だからです。ただ、音源を入手困難というのが唯一の難儀ですね。
明日色ワールドエンド
色々あって出した本作は、まふまふの作家性・エッセンス、楽曲バリエーションの高さ等全てにおいて最高傑作というか作家としてのこれ以上ないほど味がある作品です。
輪廻転生からの掴みで立ち入り禁止で、まふまふワールドを提示して、その次にファンタジックな楽曲を二曲挟み、皆さん大好き「夢のまた夢」。そしてギターのメロディが響く罰ゲーム、EDMに挑戦するぞという志が垣間見えるフューリー。若干イントロにダサさというか、楽器バランスが崩れつつもBメロからサビの勢いはthe まふまふと言ったところ。唯一のポップスらしさを残した"恋と微炭酸ソーダ" 本作ではこれが一番バランスが取れている楽曲です。あなたが嫌い僕も嫌いなどと、書いていた人が路線を変えて曲を作るとこうも真逆な楽曲になるのかと驚いた記憶があります。
神楽色アーティファクト
前作に比べると楽曲にまとまりがない上に、曲数は多いものの当たり曲が少ない。
各楽曲ごとの感想は以下の前・後編をご覧ください。
作家性について
ATRとして
2016年から同じく歌い手の"そらる"と組み、ツインボーカルユニット「After the rain」というグループ名でもメジャーアルバムを出しています。
やっぱり傑作はクロクレスト。ファンに反感を書いそうですけど、まふまふの作曲センスに一番油が乗っていたのは2016-17の間という考えを持ってしまう。それ以降に発表された作品の中にも傑作はあるものの、ずっと横ばいに停滞している感じがする。イザナワレなどにも代表曲はあるかもしれないが、アイスリープウェルなどに代表される音楽で魅せる圧倒的なキラーチューンがない。
次作にあたるイザナワレトラベラー
は新境地を開拓を感じられたが、その分一曲に対する完成度が半ばしかたない形で狭まってしまった(クロクレの時は影響を受けてきた作曲家の作風をまふまふなりに解釈しきったからこそ、統一性があった)のが残念だったがメリーバッドエンドのような
作風を見事に描き切ったことは本アルバム最大のファインプレー。ハローディストピアは、アンチクロックの応用系としてこういう手もあるかと思えただけ収穫はあった。
そして本アルバムの最大の問題点(と勝手に思っている)
イザナワレに収録されている楽曲群を通して力量をあげて、やっとの上で作り上げた集大成・完成系として締めを括るはずだった
は、佳作の域を出ていないと思う。というかこの曲は失敗作だと思う。尻すぼみ感が否めない。やるなら5,6m位の尺をとってもう二段階くらいレイアーがあった方が良かった。『四季折々に揺蕩いて』でも変にサビで敗者復活戦を意識したりと意図が見えてしまうところが乗れなかった。
推測になるがここでやりたかったことは夕刻、夢ト見紛ウまで時間がかかったと確信してる。
フルではないしにしろイザナワレよりかはまとまりを取り戻していた。ただ人生逆転の神業はタイトル負けしている。なぜ今になっても絶望性ヒーロー症候群的アプローチの楽曲を作ろうとするのかがいまいちわからない。アーティファクトでも自壊プログラムでなぞっていたし。
良い悪いの問題というよりかは、この路線なんかよりかっこいい曲はかけるはずなんだからそっちに踏み切ればいいのにっという感じです。
あと個人的に笑いポイントだったのがこの指止まれ
これって構成のやりかたが粉雪。
メジャーなところから引っ張ってきたなと感じましたw
ネットミュージシャンとしての特殊さ
これまでの流れではニコ動やyoutubeなどで数字を稼ぐ→注目される→メジャーへ移行
の流れが大半でしたが、意図したか否かはさておき、まふまふは注目される依頼を請けおっていても基本的に活動場所はネットシーンで、メジャーシーンへの移動は意図的に避けていると感じられます。そのため「一定の支持層がいる世界」で評価を受けるという安定したポジションにいます。このような例(つまりネットシーンが主戦場)はあまりないです。大体のユーザー(作家)は先述したようにメジャーで活動するのが大半でありそこで大活躍をするか、知らぬまに消える運命をたどるかかのどちらかのルートを歩んでいたからです。故に安全な場所で活動し続ける"まふまふ"はうまいと思うわけです。
影響を受けたであろう作曲家
ニコニコで活動する前に聴いていたアーティストも色々いると思いますが、それらはここでは記述しません。なぜならばリスナーの一人として聴くのと作曲家として意識して聴くのとでは、アウトプットの出力が違うからです。
では、それらを踏まえた上でまふまふが影響を受けたアーティストを筆者なりに考えてみました。
kemu(堀江晶太)/じん/トーマ/Neru/スズム/150P
大まかな骨格は上記のボカロPによって成り立っています。
※ゴーストライター事件の騒動でスズムは何も作っていないではないかという意見があるのは既知ですが、当記事では中立を図りjasrac(日本音楽著作権協会)のデータベースの著作者表記に従い、スズムが作曲したという体にします。
いずれの作家も2011-13の間にニコニコ動画で大ヒット曲と飛ばした人気ボカロP。そして時期的にまふまふは作曲歴2,3年という過渡期にあたります。
大体割合としては
このくらい。楽曲によって、色々差し替えたりしているといった感じです。
まずはNeruからのアプローチ。
作風からまふまふの精神的メンター的な役割をしているのがNeruになってる。恐らく作曲家としての指標の一人ではあると思う。色々お気に入りは本人の中であるだろうけれど、ここ最近のサウンドを考えればNeru楽曲の中でまふまふサウンドに影響を与えているのは多分捨て子のステラ。その後のまふインストに結構流用されている。
Neru & z'5 - 捨て子のステラ(Abandoned Stella) feat. Kagamine Rin
1m17s〜なんてもろに影響がある(いい意味)
150Pからのアプローチ
より二曲。
まふまふは在来ヒーローズみたく、とにかくサウンドの詰め込み型の曲が多いですがそれらはここらへんのスタンスを引き継いでいるのではないと。また、
におけるイントロは間違いなく
のイントロを踏襲している。
トーマからのアプローチはもう全体的というか、惜しげも無く作風をリスペクト。
まふまふのトーマへの評価はハチ同様なので、作曲家としても尊敬してる。
トーマさんとハチさんは天才だと思う。。。
— まふまふ@こたつでみかん (@uni_mafumafu) 2011年10月22日
トーマさんの曲ほんと好き
— まふまふ@こたつでみかん (@uni_mafumafu) 2012年11月7日
本当にヤバイ ほんとうにトーマさんの曲好き
— まふまふ@こたつでみかん (@uni_mafumafu) 2012年12月20日
多分当時からの思いを、力量を蓄えて数年経てアンソロジー的な感じで出したのが
と捉えるのが普通ですね。
それこそ戯曲もバビロンに代表される楽曲フォロワーでしたし
スズムからは時計の音を入れるといった効果音の側面が強いですね。あとは
こちらの楽曲のタイトルなどはその後まふまふは似たような感じのものをつける傾向があります。
この作品の変化球を投げたりしてますね<自壊プログラム、人生逆転の神業。
というかバリエーションの一つになってる。
そのほかにも
イグジズタンスなんか輪廻転生のサビで大いに影響がある。
これ指摘してる人ツイッターにほとんどいない
輪廻転生はスズムのイグジスタンスに強く影響を受けた楽曲
— rino (@rino_spcl) 2018年8月3日
kemuのフォロワーというのは数え切れないほど出ましたが、まふまふも相当かぶれていると思います。近づけた音源は少ないものの、kemu的サウンドを取り込まなければ今の音楽性は成り立っていないと思います。影響を受けたのは恐らく地球最後
あたりかな〜
これらを踏まえた上で、まふまふ楽曲の時代ごとのターニングポイント的作品を2曲。
まずはベルセルク
やはりこの楽曲でまふまふは作曲家としてフォロワーとしての領域を脱した。そのくらい"作曲:まふまふ"というクレジットに納得のいくものであった。ちなみにこの楽曲の対になるのは 恋と微炭酸ソーダ かなと思ったり。あとこの曲は所々じんっぽいのも個人的にツボです。
桜花ニ月夜ト袖シグレ
この曲以前以降の線引きはある。ツインボーカルで構成しつつ楽曲の質はそれまでのものとは一線を画すものがありますね。
今のところこの二曲が、作曲家まふまふが作ってきた中で特異的なポジションにある楽曲です。三曲目をそろそろ出して欲しいと思うばかりです。
一人者タイプではない作家
こういってはファンの方々に反感を買われるかもしれませんが所謂カリスマ作曲家タイプではないです。ここでいうカリスマ作曲家というのは分かりやすい例だと菅野よう子や神前 暁(monaca)田中秀和(monaca)、ryo(supercell)、田淵智也、梶浦由記、堀江晶太、など、発表してきた楽曲に大勢のフォロワー・楽曲的な絶対評価がつくようなタイプの作家という意味です。つまりは楽曲のレベルは高くとも「まふまふ楽曲」が後世の作家に与える影響というのはないからです。最近の言葉に倣うのであればインフルエンサーにはなれない作家と断言します。ある観点では唯一無二性と取ることもできますが、あらゆるフォロワーを生み出してる作家に比べると作家としてはやはり格が落ちる(少なくとも私にとっては)
別名義から読み解く楽曲性
神様、僕は気づいてしまった
ご存知、バンドとして活動している名義が神僕になります。当ブログでも何度かピックアップしました。
神僕の考察や、1stアルバムの感想などは以下の記事を参照してください。
個人アーティストは大抵昔バンドをやっていたけれども、色々あって解散したというのがありますが、まふまふも例に漏れずと行ったところ。しかしニコ動での活躍であらゆる人脈を手に入れ、それらを思う存分奮っている。そんな感じがします。ここでの活動はNeruの作曲が多く、その意味でNeru×まふまふという人気の組み合わせが名義と形を変えて、聴けるという点においても重要。
ここでは作曲が東野へいとがメインで、まふまふが作ることはすくないですが、そんな中、どこのだれかで作った楽曲が匿名と天罰有かれしと願う、宣戦布告あたり。
三曲ともゴリゴリのギターロックな曲。宣戦布告は、ベルセルクの変化球です。
2017年8月4日
東野 そういう部分が“ハッピーだけどハッピーじゃない”って感じの曲に出てるんだと思います。メリーバッドエンド的というか。
一部の層には今更と言われてしまいそうですが、神僕のメンバーの一人東野へいとが
この発言をした後にまふまふが曲を作り上げるという事実を踏まえると、やはり東野へいとは、、っていうことですね。
藤咲真冬
ここの名義では所謂「本質」的な楽曲を手掛けていることが多いです。なんと言っても
2015年に出た曲ですが、その後の楽曲のエッセンスが詰まったベルセルク以来の一つの到達点。 歌っているのは声優ですが、脳内再生でまふまふの声が聴こえてくるレベル。なんならセルフカバーしてほしいまである。これのセルフカバーは出すべき。絶対に出せないけど、覚悟決めて歌ってみたでだしたら面白い。
残桜
まふまふが特異な和風的アプローチ楽曲。サビのメロディと裏でなってるピアノラインの混ざり合いや、間奏からの爆発型の構成はここでも使われています。
初恋日記
冒頭が主にスズムのmanifest的。
上記した5人の中でもピアノの扱い方だけはかなりスズムに比重があります。時間が短いため、その後あまり大きな展開がないので、この曲に至ってはイントロとアウトローの場所だけ聴けばいい。
星降り少女と魔法の夜
楽曲的には平凡です。要素だけでいえば、じんっぽさが所々あるところ。そもそもアイドリズムへ提供した曲は1,2分なので、あまり大きな楽曲にできないという点で、曲としてのクオリティが下がっているのも仕方ないといえば仕方ない。
あの空に先があるなら
公式音源が消えていたので転載動画です。
超絶kemuとまふまふ節の融合系ですよね。これは隠れた名作といって然るべきでしょう。なぜこの手の楽曲ソロでやってくれないのか()。
まぁこの手の楽曲はあまりにも堀江晶太(penguin research)の領域なのでそれらに比べるとまだまだと感じますが、別名義にせよこういう曲を出してくれたことは感謝すべきですね。
小指姫
小指姫/コピンク*feat.ピンキーリング 収録アルバム『コピンクス!メロディーズ3〜memento〜』 試聴・音楽ダウンロード 【mysound】
この曲も光るものがない。言い方を変えれば平凡。
琴吹すず
冷静とモフモフの国境線
the キャラソンなんですけれども、Bメロからサビにかけて隠し切れない「まふまふ節」がここでも炸裂してます。正直曲としては非常に単調ですが、ものがものなのでしかたないです。
すいーと・すきっぷ・すてっぷ
正直形容しがたない曲なんですけれども、体裁としては眠れる森のシンデレラと言ったところ。大きな作家性みたいなところはあまり見られず、冷静とモフモフの国境線と同じく、まぁキャラソンだよね的な認識でいい。
以上、筆者の妄想と推測と邪推が入り混じるまふまふ楽曲の魅力でした。