本記事は19,20年の開催に引き続き今年も開催された楽曲オタクAdvent Calendar2021
への寄稿記事になります。楽曲オタ話カレンダー企画が知らぬ間に3年目を迎え、しかも自分が皆勤参加なのに驚きます。
2019年度
2020年度
とにかく自分の場合はお題を決めてから書き始めるまでに時間を使う(その分まとまったら一気に書き上げられる)ので最終日に登録したのでその分いい記事は書けると思いきや、大乱闘スマッシュ音楽オタ話みたいな記事が24本が投稿された後自分がトリを迎えると思うと非常に緊張を強いられ、結果全然手が動かないという始末です。そんな中今回も色々と語っていこうとは思います。
今回は当ブログ初の試みとしてTwitterのフォロワーさんのλさんのお力添えをいただきました。あ、ちなみにタイトルもλさんに考えていただきました。
これまで一人で色々な音楽について独善的に語ってきたのですが、別の視点・視野をもった人との合作をしたほうが、より面白い記事になるのではないかと思いご協力いただきました。
(また、別の方を招いての共作記事も現在進行中.今後は複数での共作もちょくちょく入れていく予定。)
λさんを選ばせていただいた理由としては、今回の題材を軸にした時に私のフォロワーの中では一番熱い文章を書いていただけると思ったからです。逆に今回の企画には他の人では絶対に務まらないという考えでもあったので、ご協力をいただけていなかったらこの記事は公開されていませんでした。あらためてここで感謝を申し上げます。
もう一つ、いつもと違う作りにしているという意味ではインタビュー記事系の引用は極力抑えています。というよりこれは本編前の事前知識として知って欲しいのでちょろっと書くと、菅野よう子のインタビューってどれみても結局は「自分のいいと思う音を出しているだけ」という一文で済ませれるほど自分のルーツを語らない人なので参考にならなかったというのもあります。
(まぁ作るもの聴けばある程度把握できるからそんなに困りはしないんですけど )
元々音楽の素養を生かした才能を幼少期から見出しており、数々のコンクールで優勝しているという点で最初からそういうタイプという認識だったので、そりゃこれだけの巨匠になるよなぁ〜と思うのが必然でしょう。
以下本編.
色々な方向に曲を出し(CM提供楽曲が500曲を超え※本人談では1000曲を超えているらしい)多すぎる傑作アニソンや、復興ソング「花は咲く」
などの代表作が普遍性を持ちながら愛され続け、影響を受ける作曲家が止まないという作曲家はそうそういません。恐らく、大雑把に言ってしまえば現在に至るまでのアニソン作家で菅野よう子の薫陶を1mmも受けていない人はまず存在しない。そして東京藝大という最高位の音大の作曲科で本格的に「作曲」というものを勉強し作曲家になった田中公平(ウィーアーの作曲家)などをもってして「天才」と言わしめるその力量は本当に稀有なものです。
今やアニソン界だけでなく大河ドラマ「おんな城主 直虎」、朝ドラの音楽「ごちそうさん」をも担当し、名実ともに日本を代表する音楽家。
今回はそんなあまりにも大きい存在である菅野よう子について今一度、振り返ってみるという趣旨の記事です。オールジャンルの曲でSクラスの楽曲を創り続ける菅野楽曲について素人なりに迫ってみようと思います。ですが、構成としては
・ベスト楽曲
これだけは絶対に抑えておきたいおすすめ楽曲群(名曲)を紹介
・菅野よう子論
これまで発表されてきた名曲の数々より、アニメ音楽に焦点を合わせそれらの作品群を振り返り、魅力を紐解く&音源から考える菅野よう子が影響を受けたであろうアーティスト/音楽群の解説
・坂本真綾プロデュース時代の作品
アニソンではなく、ポップスソング曲に於ける菅野楽曲の「らしさ」と4枚のアルバム群についての存在意義について。
・名盤
ベスト楽曲と菅野よう子論を踏まえた上で、「結論としてこのアルバムを聴いてほしい」という信念のもと選ばれた名盤を5枚ずつ紹介します。
全パートにλさん&rinoパートのそれぞれ論評を入れています。また共作ということもあってどっちの評が面白いかなんていう楽しみ方もできます。楽しみ方は人それぞれ。それではまず、ベスト楽曲の紹介に入りましょう。
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菅野よう子ベスト楽曲
まずは作品を聞いていただくところから始めましょう。
選りすぐりをλさんパートから発表します。
λさん選ベスト楽曲評
1.「Wo qui non coin」
作品:COWBOY BEBOP 歌唱:多田葵 作詞:Gabriela Robin 作曲:菅野よう子
言わずと知れた代表作「COWBOY BEBOP」よりこの曲をセレクトしました。 「COWBOY BEBOP」は菅野よう子作品の中でも特に知名度も高く、音楽に普段触れない方でも「TANK!」は一度は聴いたことがあるのではないでしょうか。歌唱の多田葵さんは作中に登場するエド役の声優さんです。作中ではエドがビバップ号から居なくなるときに、歌なしでごくわずか使用されていただけになります。「Wo qui non coin」という題名はハナモゲラ(初めて日本語を聞いた外国人の耳に聞こえる日本語の物真のこと)です。(※エドの声優さんが歌唱担当されており、エドの登場シーンで使用されていますが、エドが歌っている設定ではないと思われます。) 歌詞の始まりは「僕の子犬がいなくなった」とあり、タイトルも「Wo(ぼ) qui(く) non(の) coin(こいぬ)」と読むことが出来ます。選出理由としては、この切なさがとても美しいためです。チープなビートサウンドから始まりとても可愛らしいサウンドに思えますが、ボサノバの曲調を基調にやや無機質なフルートのような音色がどこか不安な気持ちを扇情します。そして、多田さんの優しい歌声が重なって、とても「美しい切なさ」が表現されていると思います。 メロディーの一部には一瞬、ブルーノート(歌詞の「ボクは乾いた涙で毎日暮らしている 早く帰ってきて」の「早く」の箇所、コードとメロディーがぶつかる箇所があまりにも気持ちがいい。天才的です…)が使われていたりと洒落っ気がこの曲の切なさのポイントにもなっています。よく聴くと右のスピーカーから犬のなつくような鳴き声が聴こえてきますので、是非聴いてみてください。トラック数の少なさが切なさを助長していますが、左から聴こえるフルートの音色のハーモニーの遷移だけ聴いても美しく、菅野よう子らしさが感じられます。 因みに、2021年11月19日より新作の実写版「COWBOY BEBOP」がNetflixで全世界独占配信開始していますので、こちらも是非。リニューアルした「TANK!」の他、新曲もたくさん聴くことが出来ます。Apple musicでは既にサントラも全曲フルサイズ聴くことも可能です。
2.「ZERO ゼロ」
作品:アクエリオンEVOL 歌 - AKINO from bless4 作詞 - 岩里祐穂、Gabriela Robin / 作・編曲 - 菅野よう子
アクエリオンといえば、「創聖のアクエリオン」、「創聖のアクエリオン」といえば「菅野よう子」と言われる程に、「創聖のアクエリオン」は菅野よう子作品の中でも超代表作になります。が、今回はそのアクエリオンシリーズのよりアクエリオンEVOL 26話(のみ!)に使用されたこの曲をセレクトしました。 個人的意見ですが、アクエリオンという世界観を一言で言えば、エロスを美しくかっこよく甘美に作り上げた作品だと思います。歌唱曲はどれも激しく、どこか挑発的だったり蠱惑的な歌詞が他の作品ではないアクエリオンならではの最大の特長だと思います。その中でもこの「ZERO ゼロ」は、愛をシンプルに語った曲になります。4つ打ちで鳴り続けるバスドラムのキックはまさに高鳴る心臓の鼓動を象徴しています。アコギのコード引きの伸ばしのアタック感は愛について冒険する流離人をどこか彷彿させるほどに美しいです。そして、なんと言ってもこの曲の美しさは、「速いビートの中で動くゆったりとする流れ」です。BPM=163のキックの4つ打ちをベースとしながらも、サビで3拍目に鳴るスネアや順次進行するストリングスがアクエリオンらしい生命の神秘の流れ(=愛)を表現しているように思います。 全音符気味に鳴るコードの中で、タムやシンバルも激しく扇情的なドラムのフィルインが躍動しており、この対立が他の楽曲にはなかなか見られないこの曲ならではの非常に美しいポイントだと思います。
3.「オープニング~群雄決起~」 作品:信長の野望・戦国群雄伝
1988年12月に発売された「光栄」のゲーム(現「コーエーテクモゲームス」)のサントラより選出しました。 生オケで非常に豪華なサウンド。なんと言ってもイントロでしょうか。 一気に広がる全オーケストラの響きは圧倒的に荘厳で、信長の野望というタイトルやゲームのジャケットにぴったりです。スネアのビートは行進する軍隊を想起しますし、ホルンの音色が出撃の力強さを感じさせます。 1988年の古い作品ですが、全く色褪せません。因みに、続く「時の調べ」もとても優しく切ない曲で、そこから作り出される緩急もまた美しいです。更に続く「怨狼の牙」も是非聴いてください。
4.「Merry Christmas without You」
作品:マクロスF(フロンティア)
歌 - シェリル・ノーム starring May'n、ランカ・リー=中島愛、frontier stars (アルト(中村悠一)、シェリル(遠藤綾)、ミシェル(神谷浩史)、クラン(豊口めぐみ)、ボビー(三宅健太)、モニカ(田中理恵)、ラム(福原香織)) 作詞 - 山田稔明
こちらも超代表曲「ライオン」で知られるマクロスF(フロンティア) から1曲。アルバムcosmic cuune (コズミックキューン)に収録されています。 マクロスFは劇場版も複数あり、非常にアルバム数が多いですが、収録アルバム「cosmic cuune」はクリスマスをコンセプトにしたアルバムになっています。シンセドラムなどシンセサウンドで始まるイントロにクリスマスに欠かせないスレイベルのビート。クリスマスへの優しい高揚感を感じます。 チューブラーベルなどパッドシンセなどクリスマスらしいサウンドも漏れなく入っていますが、全体的に生楽器ではなくシンセ系で支えられたサウンドに、後半はストリングスも加わり、クリスマスツリーに灯りが灯るように、壮大になっていきます。甘美なギターソロも聴き逃がせません。 本作品は、数あるマクロスFの曲の中でも、作中に登場する仲間たちも歌唱に登場するたった唯一の曲になります。どんどん転調する中で、各メンバーが登場し、最後にアルト(本作のヒーロー)が登場するのも重要な美しさのポイントです。更にクライマックスでは、メンバーが同じメロディーを重ねている姿はまさしく、同じひとつのクリスマスを祝福しているに違いありません。菅野よう子はこの1曲を通して、関係者全員のこのマクロスFという作品への愛を表現しているのだと思います。私はそれほどにこの曲は特別で素敵な曲だと思います。最後に登場し、モーダルに変化していくキラキラなベルサウンドは歌詞と相まって未来を表現しているのではないでしょうか。 また、最新作-『劇場短編マクロスF ~時の迷宮~』でマクロスFの「今」を感じる事ができますのでこちらも、併せておすすめします(8分ほどに及ぶスペクタキュラーな一作です)。
5.「Ride On Technology」 作品:『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』
この曲なんと、アニメ作中で使われていません。いわば、菅野よう子さんが攻殻機動隊という世界観のなかで、作りたくて作った曲かもしれません。作中で使われていないにも関わらずあまりにもクールなため、映像のみの方は是非、サントラを聴いてみてください。 この曲は、なんと言っても最高に「クール」。この一言に尽きます。ドライなトランペット+サックスと高まるビートから、Brecker Brothersの「Some Skunk Funk」を想起する方も多いでしょうか。
特にこの曲は、サウンドが素晴らしいです。イントロでは畝るような加工されたシンセベースサウンドが、無機質な感じを出しておりクールです。またずっとひたすらに刻まれるカッティングギターは最高にファンキーですし、佐野康夫さんのドラムの展開やドラムソロもとても気持ちがいいです。本作品の特徴としましては、生ドラムとエレクトリックなドラムンビートのハイブリッド。更によく聴くと、左右でエフェクト的に一部ビートが騒いでいるのも聴きどころです。 4分半の作品ですが、全体的にモーダルなサウンドをベースとしつつ、途中、リバーブ多めのサウンドになり場面展開したり、中間からtpとsaxの超絶技巧ソロ、佐野康夫さんに特徴的な終盤の盛り上がりに見られるライドなどが展開され、最後はベースが下降進行していくなど展開も含め、すべてがクールな作品になっています。
6.「Cloe」
作品:地球少女アルジュナ 作詞 - Gabriela Robin / 作曲・編曲 - 菅野よう子 / 歌 - 山本千夏
2001年に放送されたアニメで、環境問題を取り扱った作品。監督はマクロスシリーズで有名な河森正治さん。 この作品もどの曲も名曲ですが、中でも「Cloe」の優しさとそのメロディーの美しさは素晴らしいものだと思います。イントロの一瞬のフレーズは水にしずくが落ち、波紋が広がる姿を浮かべます。山本千夏さんが歌う少女の歌声は魔力を持っているように感じますし、「神秘的」という言葉がとても似合います。後半に加わり重なるストリングスも美しいです。他作品でもありますが、(サウンドはやや異なりますが)アイルランド音楽の「リバーダンス」を思い出します。また、アルバムを通した本作品は、環境問題というテーマに対し、民族打楽器などを使用しプリミティブなサウンドになっている点で、どこか後のアクエリオンに通じるところが伺えます。筆者の他のおすすめは「クローン」「エアロビ」「地球共鳴」です。是非、他の曲も試聴ください。
7.「gravity」 作品:WOLF'S RAIN
作詞 - troy / 作曲・編曲 - 菅野よう子 / 歌 - 坂本真綾 アニメ「WOLF'S RAIN」よりED曲
「gravity」を選曲しました。 この美しく切ないメロディーは、膨大な菅野よう子さんの名曲の中でも珠玉の一曲だと思います。本当に素晴らしい曲です。弦のイントロに始まり、ローカットされたバラードピアノが粛々となるこの数秒に、世界観と儚さが既に見事に表現されています。後半のよく聴くとホルンやクラリネット、フルートなども鳴っています。この曲の美しさの一つに3:23という時間の短さも魅力になっています。優しくもどんどん展開され、音が鳴る美しい時間が一瞬に感じられます。特にこの曲の外せない聴きどころは、後半のリタルダンドからのピアノだけの和音の箇所です。冒頭で登場したピアノの和音がここで再登場することで空白を作り、それからすぐに壮大な菅野よう子の十八番の重厚なストリングスが儚くも激情的なサウンドになっています。 余談ですが、「gravity」はsupercellで活動されている作曲家ryoさんが、ニコニコ動画で投稿した動画(初音ミク)にもなります。
「君の知らない物語」をはじめとするsupercellやデビュ〜咲かせや咲かせまでのEGOIST楽曲の総合プロデューサーとして超有名なryoさん
も少なからず菅野よう子フォロワーであり、数ある曲でも初の動画をこの曲で投稿したことを考えると、偉大な影響を与えている1曲だと思われます。
8.「ALFA and OMEGA」
作品:∀ガンダム 作詞 - Carla Vallet / 作曲 - 菅野よう子 / 編曲 - 菅野よう子 / 歌 - Carla Vallet
∀ガンダムは全体的にオーケストラサウンドがメインですが、本曲のような、エレクトロ系な曲も少なくありません。特にこの「ALFA and OMEGA」は、ミニマルなシンセフレーズを基盤に、Carla Valletのハスキーなボイスと、炸裂する佐野康夫さんのドラムが最高にクールです。この曲も「Ride On Technology」のように、アコースティックとエレクトロが融合したミクスチャーサウンドになっています。畝るベースも聴きどころです。
9.「Go Dark」 作品:DARKER THAN BLACK-黒の契約者 テーマ曲とも言える、「Go Dark」。
正式音源なし
収録内容no.1より試聴はできます。
「COWBOY BEBOP」のサウンドが好きな方は本作品もハマるかも知れません。端切れの良いホーンセクション、後半のサックスソロ、荒々しいドラムや特にハイハットが特徴です。本作品のサントラはボサノバやラテンだったりと、豪華絢爛とはまた異なる、シンプルなクールさが魅力です。中でもジャズオルガンとサックスの使用が多く、キーになる楽器になっています。
10.「Final vision」
作品:劇場版アニメーション「エスカフローネ」
たった、1分30秒の曲なのですが、圧倒的なオーケストラサウンド、重厚なストリングスに平伏さざるを得ないほどまでの迫力が魅力です。この曲を聴くと、音楽への畏怖であったり、もはや人間の知の無力さのようなものさえ感じます。とても短い曲ですが、数あるオーケストラサウンドの中でもこのダイナミクスは聴いていてとても気持ちがいいです。前半の荘厳さと後半のコーラスの対比がとても美しく、まさにクライマックスにふさわしい1曲です。
rino選 ベスト楽曲 10曲
1.「player」
本作は攻殻機動隊stand alone complex 劇場版 Solid state society(sss)のテーマ曲。。歌唱はOrigaが担当。origaさんは攻殻でそれぞれメインテーマを3曲
(innner universe,rise,player)
歌っているので自分はこれらをoriga三部作と称しています。正直いって、どれも良いのです。派が分かれるだけの一貫した魅力がそれぞれの楽曲にはある。それを踏まえた上でなぜplayerなのか。。inner universeはmystical(神秘的)でありriseはScalability(拡張性)にそれぞれクールさが残る楽曲
(ことriseはjazzanova的な音楽だから当たり前といえばそうなのだが.)
に対してplayerはstylishなのだ。前2曲はテンポ的にみてもローだし歌もどちらかというと低音が多い、それに対してこの曲は冒頭のラップからもうかっこいいし、サビまでにそこまでかからずに展開している。(オケとビートの融合もすごいし)そしてその後のメロディ転換が神がかり的。そこにorigaのちょっとした表現も入ることでカッコ良さが味として加わる。そして途中締めた後、再起動する感じ(2m47s~)この曲の中で最もかっこいいシークエンスがここからだ(3m6s〜49s)40秒近くにわたって繰り広げられる Heartsdales (日本人女性によるヒップホップユニットだから余計にこのラップ力はすごい.やっぱり幼少〜成長期の時代に海外で語学含めて浸透していると変わってきますね。本当の意味での帰国子女とでもいいますか)によるのラップを菅野楽曲で挿入するという神がかり的なかっこよさがある。
攻殻菅野楽曲の歌詞はORIGAの母国語であるロシア語と英語の混合系が多いためかっこよさに拍車がかかる
むしろここのフレーズだけで勝っていると言っても過言ではない。そして十分に満足させてからの自然な流れでのサビ展開。この曲のカロリーは3000kcalぐらいあると思います。冗談抜きで一日中これ聴いて過ごせるだけの力があるのだ。より高まった唯一無二性含めて(inner universe,riseもorigaならではだが)正真正銘菅野よう子×origaの最高傑作であると。
この曲を聴く度に当のoriga氏がご存命ではないのが悔やまれます。透き通った歌声は、菅野ビート系作品を表現するに最適なボーカリストでした。数多の歌手との組み合わせの中でも一番のコラボ(コンビ)だと思っていたので本当に悲しいです。
2.「ライオン」
多分、菅野よう子楽曲の中でも、もっともアニソン「らしさ」が顕著に出ている楽曲。そして知名度、売り上げも高い方。こういう記事でベスト楽曲をあげる場合、定番の曲は入れるのは逃げに思われるかもしれないが、より多くの人に受け入れられ、今やカラオケの人気ソングになるまでのある種市民権的なものを勝ち得たのは「名曲」である何よりの証拠だし、ベスト楽曲としてあげても誰もそれを疑わないだろう。何よりそれら差し置いて、単純に曲としてかっこいいのは言わずもがな。イントロのピアノの入り、落としてからのギターソロで、ボーカル入り。この感じは今のアニソン(っても14年の作品ですが)にも通底する型ですね。this gameとか
なんといってもサビの強度。「生き残りたい〜」のメロディは今でも力強く響きます。間奏パートのベースとピアノメロディの掛け合いも珍妙。そしてその後、「私眠らない」という助走をつけてからラスサビ、繰り返しの構成で流して、最後片方をオクターブ高く歌わせ、ギターのメロディで締める。一見すると定番のアニソンっぽくありながら、かなり込みいってる印象。2番終わり〜間奏前まで明るいのに対して間奏では悲壮感なメロディをだしながら、だんだんと明るくなっている。霧が晴れていくような感覚で大サビを「眠らない」の太い歌声で迎えるというこのどんどん料理していく感じは菅野よう子らしさとも言えますね。
3.「イヴの断片」
ライオンと創聖のアクエリオンを融合したような楽曲。なにより歌詞タッチがもろ菅野楽曲という感じすごくツボ。あとかなり忙しい曲でもある。キャッチャーなメロディから始まり、そこから「千年求める」以降からライオン風になる。そしてBメロの意外なところを疲れる感じ。そしてサビできめにかかるのだが、「見つけて欲しい」「見ないで欲しい」「守って欲しい」の三段重ねで音をあげて1番を占めるところに痺れます。というよりもこの曲のキラー部分はここでしょう。メロディアスではあるが、この曲の声の右往左往する感じは一般人が歌うには厳しいだろうなっと思ったりしてるとアクエリオン的といえる間奏前後の流れでかなり変化球を投げてくるこの展開の読めなさ。「図々しさ〜」から「神話の端にしがみついて」あたりのフレーズでもジェットコースターのように動き回るのに全くもって自然に聴けるっていうのも実にすごいなと思います。色々詰め込みすぎだけどそれでどっちつかずになってないし、決めるところは決める。the アニソン的な音楽でありながら、その構造を好き勝手こねくり回したそんな楽曲だと思います。
4.「Christmas in the Silent Forest」
6mの大作なのに全く飽きない。これぞ菅野よう子パワーと言わんばかりの楽曲。アニソンをメインで聴いている人からすればマジで何食ったら(後で少し取り上げますが)こういう曲が書けるのかと思えてしまうほどの曲。しかもローテンポ。しかも、普通これイントロにもってくるかっていうほどダークネス。ゲーム音楽かと思ってしまうくらい、根本からメロディが目立たないような施しがされている。3m28sから若干違う曲にシフトしつつ3m45sから戻しをいれて4m13sからメロディ爆発。そして歌手が外人であることから発声が日本人が外来語を歌う時のそれとは明らかに違う(いい悪いではなく)外人の発声だからこそ成立する楽曲であると。イントロから思いも寄らないところにいってアウトローではちゃんと帰結するところがすげえなと思うばかり。
じゃあ何を食ったらこういう曲が書けるか。まぁそんなに難しいもの食べてない、というよりも寧ろ分かりやすいまである。まず第一前提としてこの曲は全体的に洋楽にアプローチが入っている。とりわけポーティスヘッドとか
massive attack の90年代後半のelectronica感(トリップホップと書くのが正しいのですが、当人たちがその呼称に違和感を感じているため、今ではアブストラクト・ヒップホップと形容されたります)とでもいいましょうか。
トリップホップの始祖と呼ばれるアルバムBlue Linesもおすすめです。
あの時代の陰鬱さがある。まぁこの辺は当時の洋楽を聴いてれば絶対通ってる道ですし、菅野よう子がこの流れを知らないわけないので
(普通に洋楽名盤として名が高い名盤たちです)
いや、むしろ知らないと作れない曲をちゃんと作って、ある種「この音楽はトリップホップの流れを組んでますよ、皆さんわかってくださいね」みたいな曲を作っている。それが証拠にWhere Does This Ocean Go?
の音楽の方向性は完全にこのラインで。というのもトリップホップが生まれてすぐビョークが95年に出したpostというアルバム(これも超絶名盤)
でやった方向性がまさにトリップホップでその中のhyper balladeという曲
を真似ているという点から、仮に本人は意識的でなかったにせよ実は一本線で繋がっているのである。こういう蘊蓄抜きにしてもとりわけ音にこだわるオタク作曲家でmezaanineとポーティスヘッドを外す人はいないと思いますね。何回も書いてますが、ryo(supercell)さんですらこの2枚を自分の音楽を構成したアルバム10枚に入れているくらいですから、知らない人はもったいないです。多分この中で1枚選ぶならmezaanineになる。
5.「Moon (Gabriela robin)」
これは作曲から歌唱まで(別名義の表記になっているが)オール菅野よう子状態。この曲の何がすごいって、何一つキャッチャーな展開はないのに壮大性だけは耳に残るところ。この手のイントロから察するに着想はおおよさホルスト的な方向性,具体的な楽曲名をあげるとSomersetRhapsody(サマセット狂詩曲)
から持ってきた楽曲だとは思うが(宇宙系映像の音楽のネタ元の大半、いやほとんがホルストの組曲:惑星の想像力から抜け出せないほど、御大の曲はすごいし、特段、組曲:惑星の楽曲群は偉大であり強固な普遍性を持っている)、それをポップスとしてこのレベルに落とし込む力量にやられます。当然それは提供先の∀ガンダムとの世界観を合わせるためのオーダーだったりそういう「提供作品」にたいするローカライズだったのかもしれないが、結果的に菅野よう子楽曲として一つ大きな作品として成り立っている。ライオンや創聖といったキャッチャーな楽曲も作れれば、こういったクラシックをバックボーンにしたローテンポのポップスを成立させてしまうところに菅野よう子の凄みを感じます。そして何より特徴的なのが「歌詞の全てが造語である」という点。アニソンとしてここまで徹底している曲ってのも珍しいのではないかと思います。
傾向としてGabriela robinで出す曲は往々にして造語系の曲が多いように見える。一応造語を翻訳した日本語版も
あることにはあるのですが、この曲ばっかりは絶対MOON(Gabriela robin)で初めて成立する楽曲だと思う。なにより日本語の語感が曲調に全く合っていない。母音をここまではっきり出してしまうと曲とのマッチングに微妙なズレが出てくる。そもそもが日本ポップス的でないが故に合うはずがないんですよね。私感を強めに言えばこの曲を日本語で歌われたものを聴くと拒絶反応がでます。
6.「預言者」
めっちゃ久石譲な音源ばり。というよりこれこそ明らかなミニマルミュージック派生の楽曲。さしずめ擬態:久石譲とでもいいましょうか。特にイントロは。というよりも、ひたすらに繰り返しなんですよ。この曲は。だけどそこに味がそことなく漂ってくる感じがいいです。どっちかっていうとこの手の楽曲性が持つ繰り返し性はライヒ派生なのですが日本だと久石譲がそれを変換して曲に出ているので、まぁ久石っぽく感じるというわけです。ここら辺については久石譲特集でこれでもかというほど語ってます.
久石譲とミニマルの主題で書かれたブログでも相当クオリティは高いです。その証拠に「久石譲 ミニマル」で検索すると一番上に出てくるくらい読まれていますので未読の方は是非。
余談ですが、この楽曲の次のトラックのbefore bereakfastという音源
は柳川和樹的な楽器の感じがして一瞬「柳川劇伴か」と思ってしまうくらい、柳川楽曲の味を知っていれば楽しめる流れ
以下柳川和樹、初見用最強入門楽曲
なので皆さんもぜひ体験してみてください。これだけで1日潰せます。柳川和樹も相当なサウンドメロディを作る達人ですがそれは別の機会に回します。
7.「Song bird」
純粋なピアノメインのメロディアスなポップスソングとして聞き応えがあると思う。今の時代DAW発展により詰め込み型の曲なんかも当たり前になっているが、その意味で本作はバンドサウンド性が強い(リリースされた時代もある)2m30以降の展開はちょっとryo(supercell)っぽい感じがするのも個人的な聴きポイントの一つ。(順序は逆だけど)
楽曲自体は変に凝っていないTHE アニメソングという曲です。ただ、歌詞の転換というか展開が絶妙である。サビにもっていくまでは自然な流れで、それでいて流動的。Aメロが28sまで続いて「溶け合って〜」でBメロに42sからサビで盛り上げて「伝えるためにあふれる気持ち」のフレーズ内で落としてまたイントロに戻って、繰り返しで間奏に入ると思いきや、もう一枠入れてそのあと間奏のタームにはいってあとはお決まりで締めていくのですが、アウトローではgravity同様ちょっと凝らしているところもこの曲がいいなと思えるポイントです。なんとなく変則的な感じを覚えるのは自分だけでしょうか.曲としては2m30sの前半とそれ以降とでメロディのタッチは同じだけど毛色が違ういうか、一旦終わっている。それが「怖いほど〜全てが生きている」までの助走間奏パートを挟んでからの間奏で「きらめく光が〜これも愛なのね、LALALA」とここでも歌詞を橋渡しにして大サビに突入という何周してんだこの曲っていう、言い換えればくどさになるところをそう感じさせない見事な一曲。ちなみにplayerも同じレイヤー構造です。やっぱりリスナーのことはちゃんと考えて作ってるなということがわかります。
8.「PINK MON SOON」
菅野よう子R&B楽曲。そして歌ってるのがmay`nという。元々ルーツがR&Bな人間が歌っているのでいい楽曲に歌手のバックボーン性が相まって見事に歌い上げている印象。個人的にそれだけの理由でベスト楽曲にあげてます。音域が元々低音だったmay`nは菅野よう子に出会って歌う曲に対して、に思い切って高音出せって言われたら出たっていうエピソードがあり、それが総合的(より幅広い高域がでるようになったMAY`NにR&Bを歌わせるという意味)に結実した曲がこの曲だと思っていいます。
私は元々低いキーで歌っていたので、まずハイトーンの楽曲を歌うことが大きな関門だったのです。このキーは出ないかもしれないってお話していたんですけど、菅野さんがどんどんどんどん自信をくれたというか。最初に歌った「射手座☆午後九時 Don't be late」も「絶対出るからまずは出してみな」って後押しされながら歌ううちに、自分でも知らなかったハイトーンがどんどん出てきて。「自分の実力は自分が一番よく知っている」なんて思っていたんですけど、菅野さんが「できるできる」って背中を押してくれたおかげでどんどん幅が広がって、知らなかった自分に出会えました。
9.「インフィニティ」
さて、この曲を聴いて色々な意味での伝説の第6回アニソングランプリ(歌い手GEROも第3回あたりに本名の金城名義で出場してたりして)で優勝を決めた岡本菜摘の酷い歌唱を思い出した人は同志ですね。最近活動休止しましたよね。まぁそんな小ネタはともかく、この曲はイントロからずっと掴みどころがないのがいいですね。まず弦楽器をどんとぶち込んですぐ耳障りのいい方向性にもってくる、そしてAメロからサビまで基本的に届きそうで届かない音運びが好きです。Bメロあたりのピアノも主張をそこまでしない形で抑えてそのほかの楽器もひたすら裏のリズム寄せに合わせているからこそ、ボーカルの声がここまで目立つというものです。ここまで歌い手の声が印象に残る形もアニソンとしては珍しい気がする。届きそうで届かない違和感も間奏の「消えることのない希望がこの手にあるから」ここの流れでそれまでの掴めない感じを一気に解決する感じ(ある種の爽快感)が最高です。
10.「butter sea」
この曲はスティナ・ノルデンシュテンというスウェーデン歌手の楽曲と聴き比べると面白く、前者は一つのメロディの型に当てはめて歌がある。歌に対してメロディはそこまで変わらない。ただミニマル的な解釈な音源が続くだけであるのに対して、butter seaはリバーブがかかったギターがひたすら裏で響きながら(そこにピアノを加えているのもポイントが高い)、歌声に合わせて、メロディの波形も合わせてくる。後半になるとギターがうってかわって打点的な形にシフトして歌声による味付けがたされつつも、メインの歌唱はひたすら進行していく。そして「え、これで終わり??」と思うほど意外(というか、あっけない)着地点で終わる。crimeの場合、こうはいかずに「はいはいそうお終わるのね、やっぱり」という感じで展開が見えていて見事なまでにそこに着地する。ある種ポップスとしては当たり前の作りになっている。が、私は変わった音源が好きなので意外性のある展開が好きで、本作は色々凝っていることもありbutter seaをベストに挙げました。
番外編として耳に効く(聴く)一曲を貼っておきます。ベーシストは必聴!!
以上20曲を聴いていただいたところで次は菅野楽曲の効能、凄さと菅野よう子が影響を受けたアーティストや作劇方の解説をします。
菅野よう子論(λさんパート)
音楽という聴覚の娯楽を言葉で表現するのは非常に難しいのですが、菅野よう子さんの音楽の素晴らしさを何とか頑張って言葉でするならば、
1.「音色センス」
2.「圧倒的なストーリー性、構成美」
3.「幅広い音楽性」
が挙げられるのではないかと思います。
それぞれ解説してみます。
1.「音色センス」
特に素晴らしいのが、「サウンド」への感覚が素晴らしいと思います(これはミックスやマスタリングにも関わるので、エンジニアによる功績も大いにあると思いますが)。
先程、10選で1曲目に紹介した「Wo qui non coin」をより例により具体的に紐解いてみます。
イントロの数秒でチープなビートサウンドがループされており、この曲が全体的に「可愛らしい曲」であること、また、ややハイファイなギターが切なさを醸し出しています。もしこれが、単純なアコギで、ローもしっかり出てしまっていたら、この「少女が親しくしていた子犬を見失ってしまった」という世界観はすぐに壊れてしまいます。加えて、途中から入るやや無機質なフルートのような音色が、少女の悲しみを表現しています。これも生で艶やかに演奏されてしまっては、まったくもって世界観が壊れてしまいます。更に、フルートが入るところから、ボーカルもダブラーされており、呪文のような言葉の心地よさを自然に強調することに成功しています。サンプラードラム、ギター、フルート、ボーカル、(子犬の鳴き声エフェクトも!)どれをとっても、ただ適切な楽器を選ぶだけでなく、意味があるベストな「音色」を選び、重ねることで、1曲のなかの世界観が広く深いものになっている、それを見事に表現出来るのが、菅野よう子さんの素晴らしさの1つだと思います。
2.「圧倒的なストーリー性、構成美」
こちらも、7曲目に選曲しました「gravity」でより詳細に見てみましょう。
まずはじめに、フルート、ハープなどの音色が呼び水となり、チェロなどを主体とした重厚なサウンドが、この曲の世界観がなにか大きく優しいものに包まれているように感じます、しかし少しずつ音域が上がっていき、最後の和音がどこか悲しい音色になってしまいます。ここで、不安を表現しています。そして、「間」があります。聴けば聴くほどこの間が見事です。そこから始まる、たった片手で引けてしま4分音符の3音のマイナー和音。音色もどこか錆びれたような音色をしています。ここまでわずか30秒です。たったの30秒。この30秒の中に「優しさ→薄くなっていく空気→冷たく悲しい物語が始まる…」といったように儚い世界観が音で表現されています。すべて意味のある、美しい構成だと思います。1:18~は巡るように転調し、世界が一瞬変わり希望を表現しています(歌詞も「雨が霧に変われば、その向こうにはもうひとつの今日がある」という内容になっていますから、見事なリンクです)。そして、また元の世界(=調)に戻ります。続いて、この曲のタイトルでもある「gravity」という単語が、それまでリズムがあったメロディーと対比するように、ゆったりとした音価で「zero gravity」と決め台詞のように歌われています。そしてすぐに楽器が増え、重厚になっています。まるで、この「zero gravity」言葉が呪文のようになり、またひとつ世界が変わる役割を果たしているように聴こえます。更に言えば、ここでブルーノートが使われることで、一層「キーワード」を強調する形になっています。2:03~ではオンコードされることで「希望」を表現していますし、イントロのフレーズがここで再現されています。つまり、ここでまた冒頭の「希望」の表現が再登場しています。そして再度ピアノの和音が登場することで、温度が下がりますが、一気に重厚なストリングスが入り、景色が一瞬で変わります。不思議なのは、ここのメロディーAメロと同じなのです。
Aメロだと思って聴いていたフレーズが重厚な弦によって再現されることで真のサビとして再登場するこの美しさが魅力のひとつだと思います。続いて2:45~またイントロのフレーズが来て、最後は優しいハーモニーで温かく終わります。
0:00~イントロ=フルート、ハープ、ストリングスで「希望」の世界観を提示
0:22~Aメロでピアノのマイナーコードで一気に「哀愁」の世界観に
1:18~Bメロ=たった1度のみ登場する転調の連続で「もしもの世界」を表現
1:38~キーワード=タイトルでもある「gravity(zero gravity)」の登場
2:07~イントロの再登場=「希望」の再登場(イントロと同じフレーズ)
2:18~ピアノ再登場=「哀愁」の世界観の再登場
2:26~サビ=Aメロの再登場、曲全体で一番の盛り上がり
2:45~アウトロ=イントロの再登場で再び「希望」を表現
3:30もないこの1曲に、このように感情の起伏がきれいに盛り込まれており、ここまでのストーリー性と構成美を構築出来るのは本当に菅野よう子さんにしか出来ない至高の技だと思います。
もう1曲
「Light of love」も構成力が光る1曲ではないでしょうか。
不穏なイントロに始まり、低音の弦とピアノで構成され、休符も大きめなリズムが特徴的なAメロは特に印象的。更にピチカートが普段耳にしないとても不思議な世界観を作り上げています。楽器隊の組み合わせと表現力が菅野よう子らしい。全体的にモーダルな雰囲気もあり、神聖さが表現されています。そして、比較的すぐに登場するキメの「Light of love」のフレーズもここで音程が跳躍することで光が差すイメージを表現していることに驚きます。前半は暗い曲調ですが、5:00~からは優しいメロディーが始まり、これがテーマとなり編成を変え、最後まで続きます。最初は民族的なビートに支えられますが、次第にリズム隊は抜け、ストリングスのみの構成に。この何度も繰り返されるテーマが神々しさを表現しています。全体で8分の長編になっていますが、全く退屈を感じさせないストーリー性と構成力は匠の技ではないでしょうか。
3.「幅広い音楽性」
菅野よう子さんの音楽といえば、その多彩さです。特に生と電子の組み合わせ、つまりはミクスチャーのセンスは抜群ではないでしょうか。
歴史を辿れば、1990年代の「信長の野望」、「マクロスプラス」、「天空のエスカフローネ」では、既に楽器それぞれの理解と和声など、音楽の総合力が試されるオーケストレーション力を存分に発揮していました(マクロスプラスは1994年。31歳でイスラエル・フィルハーモニー管弦楽団を従えて神サントラ作っちゃった菅野さん。この時点でものすごいのです…)。クラシカル色がメインではありますが、「MACROSS PLUS ORIGINAL SOUNDTRACK II」の「Idol Talk」にもあるように、エレクトリックで近未来的サウンドはこの頃から登場しています。
続く「Jade」では民族楽器と口笛を基本に、ギターとジャズオルガンなどの構成。シャッフルビートでどこか剽軽なメロディーいう組み合わせで、既にミクスチャーの精神とその才能を発揮されております。
言わずと知れた「カウボーイビバップ」では「Tank!」を始め
「RUSH」「WHAT PLANET IS THIS?!」「Too Good Too Bad」「 Bad Dog No Biscuits」ビックバンドサウンドの魅力とその力強さを楽しむことが出来ます。
一方で、「THE REAL MAN」ではサンプラーテイストでクールなサウンドが聴けますし、「SPACE LION」の民族楽器とシンセ、そして歌うサックスなどで奏でられる壮大さは、「カウボーイビバップ」の世界の美しさを表現しているようです。
「攻殻機動隊」では4打ち系を主体としながらも、ブルガリアンボイスや得意のストリングスも惜しみなく使用し、攻殻機動隊の「機械と人間」というなかで蠢く「静と動」を厳粛さを失うことなく、表現していました。特に佐野康夫さんの躍動的なドラムビートは荒々しくもタイトな最高にクールで、まさに生きる人間の呼吸の「動」として機能しており、その魅力が存分に発揮されていたと思います。「Rise」「Player」「Ride On Technology」などループ系ビートと生ドラムとの組み合わせも効果的でした。得意のストリングスやクラシカルサウンドも「Tempest」「To Tell The Truth」などで発揮されています。
そして、「洗練された下世話の時代」(※)を代表する「マクロスF」と「アクエリオン(シリーズ)」の登場。マクロスFでは「トライアングラー」
や「ライオン」そして「星間飛行」という超名曲が世に放たれました。
シェリルのクール&セクシーサウンド=「禁断のエリクシア」「ユニバーサル・バニー」
特にマクロスFは名曲のオンパレード。どの曲もJpop、アニソンとしての枠組みで最高に美しい楽曲ばかりで、宝石が並ぶようでした。
アクエリオンもまた「創聖のアクエリオン」というこちらも超名曲を産みました。他にも「月光シンフォニア」では幻想的な世界を、また「イヴの断片」は非常に情熱的なソングで、総じてアクエリオンは人間の愛やエロスを最高にカッコよく表現していました。
に対し、ピュア&キュートなアイドルのランカでは「虹いろクマクマ」「放課後オーバーフロウ」など、二人の対比を楽曲で盛り上げていました。
近年では、「星と翼のパラドクス」(2018)ではこれまでに耳にしたことないサウンドや空気感を表現し、「Good Job!」(2018)では、4打ちをベースしながらも、どこか行進曲的なビートも組み込まれ、シンセサウンドで、アニメ放映からマクロスFらしい未来観へと私達をタイムスリップさせてくれる1曲です。
そして、奉祝曲 組曲 「Ray of Water」(2019)
では、日本を代表する1曲として荘厳ながらも暖かなメロディーで、日本の美しさを表現されていたと思います。
最新の「時の迷宮」(2021)では、「星と翼のパラドクス」で使用されたらしき音色(1:30~,3:01~)も伺えます。
氏にとって流行の新しいサウンドかもしれません。加えて、これまでのマクロスFとは大きく異なるスネアの音色や、弦の質感も部分的にややエピック寄りなサウンドになっていたりと同じマクロスFでも新規性が伺えます。そして、8分にも及ぶ大曲ながらも、ミュージカル的なAメロ、キメの多いBメロ、2:30~のサビはリズム隊抜きを抜くというテクニックが見られます。そして、一聴しただけで耳に残る強烈なメロディーのキャッチーさ。かと思えば続く3:01~で落とし静寂を、続く3:14~タイトルでもある「時の迷宮」の「迷宮」を表現しています。そして、この楽曲の魅力のひとつである、3:26~からのストリングスを基調とした(木管やギターも鳴っています)Aメロは菅野よう子が最も得意とする領域で、その技が惜しみなく発揮されています。4:52~はミクスチャー的なサウンドになり、最後の華やかさまで心地よい展開の連続で駆け抜けていきます。6:09~はシェリルの「ダイアモンドクレバス」
が、7:22~のギターは代表曲「ライオン」のリズムをモチーフに援用するなど最後までマクロスFの世界観を凝縮した1曲になっています。
1.「音色センス」
2.「圧倒的なストーリー性、構成美」
3.「幅広い音楽性」
この全てを自由自在に操り、尚且新しいサウンドと音楽の発見、新しい音楽を聴く喜びを私達に与えてくれることが出来るのは、菅野よう子さんにしか出来ない技であり最大の魅力だと思います。
音楽はどうしても言葉では完全に換言出来ませんから、「兎に角聴いてくれ!」と懇願してしまいそうになります。それでも敢えて言うならば、「菅野よう子は現代(における)音楽の女神」だと言い表してみたいのです(※ここでいう現代音楽は歴史的な括りではなく、より具体的な商業音楽での世界を意味しているつもりです)。上記のように彼女の音楽はとても魅力に溢れ、世界中のプロの音楽家達にも親しまれ、音楽業界に与えた功績は「ライオン」や「創聖のアクエリオン」を始めとし、その影響力は絶大です。そんな彼女を少なくともファンである私は僭越ながらも、音を、音楽を自由自在に操る女神と表現したくなるのです。2021年は実写版カウボーイビバップもあり、また彼女の音楽を楽しめていることに感謝でいっぱいです。そして、月並みな表現ではありますが、これからどんな音楽が聴けるのか、私はとても楽しみです。
最後に一言、「菅野よう子は最高!」
※補足
菅野よう子作品を語る際に、作編曲家の田中公平先生が提示した指標があります。
1990年代は「センスの時代」
2005年頃までは「サウンドの時代」
それ以降は「洗練された下世話の時代」
これを作品に当てはめると、
「センスの時代」…マクロスプラス、天空のエスカフローネ
田中公平先生はセンスの時代の作品を時の記憶、約束はいらない、奇跡の海、プラチナの四作品と指摘
「サウンドの時代」=攻殻機動隊、WOLF'S RAIN
「洗練された下世話の時代」=マクロスF、アクエリオンなどが該当します。
詳しくはこちら(第一回から読むといいです)
・菅野よう子論 影響を受けた音楽群とサンプリング手法の型取り(rino評)
ポップス菅野よう子としての側面を復習ったところで、次は型に注目して菅野よう子の音楽性を考えていこう。意外なことに菅野よう子の代表/有名曲の構造は分かりやすいほどに名曲を参考にしている節がある。
・まず聴いて欲しいのはこの楽曲
Pushing the sky(カウボーイ・ビッパップより)。
さて、この音源を聴いて何を思うかは人それぞれだが、おそらく映画好きはこう感じるはずである。LUNATIC CALMのleave you far behindの変化球であると。
というより構造そのものを引用している。そしてleave you far behindがゴリゴリのベースのテクニカルな側面とエレクトロの方向性で超絶かっこいい曲になっているのに対して菅野よう子が作ったPushing the skyはギターソロがメインに置き換わっている。あっちがベースならこっちはギターだと言わんばかりに.全体的な楽器の運び方などを含め、音源的にはleave you far be hindの方が格段に優れているのだが、Pushing the skyも面白いところがある。それはベースのメロディを一部分に集約することで(1m33s〜1m42s)一番、2番のつなぎの役割として落とし込むことで、leave you~で総じて感じる「過度な音源の繰り返し感」というのがさして感じない。そしてその後ギターソロまで入れているからその意味ではこっちの曲のほうが楽器の音を入れ替わりのように楽しめる。そして全体的に楽器がそこまで主張してこない。そう言った点でからより多角的なアプローチをしているのは後者だと言える。なによりlunatic calmをサンプリングしようとするその姿勢が面白い。
・be human/ladies and gentlemen we are floating in space
では次にこの二曲を聴き比べてみよう。これは中々凄い。イントロで台詞を話してから話すところや、テンポはまぁ同じだし、まぁ引用の度合いが高い。がしかし、それで生まれたのがbe humanと考えるとやはり菅野よう子のサンプリングのやり方もうまい。一曲としてどっちのほうが「メロディアス」なのかを考えればおそらく、be humanを挙げる人が多いと思う。そのくらい、型自体は物真似であるのにもかかわらず、素晴らしい名曲が生まれている。これはいくつかあって、つまりスピリチュアライズドのladies~が、曲のアプローチそのものはうまいけど誰が聴いてもあからさまなカノン進行でしか曲が成立していないし、全体的にトーンが同じこともあいまって「くどさ」が前面に出てしまっている。かたやbe humanは機械音を定期的にはさみ、鉄筋で味付けをしてメロディはギターで奏でることで曲全体のバランスが終始保たれている。そしてなによりアウトローで悲哀な感じで終わっていくというのも菅野クオリティ。
※因みに、菅野よう子は攻殻SACのサントラを作るにあたってスピリチュアライズドからのインスピレーションを受けている感じがします。
trip cityという作品では
come togetherと
electricityからの構造を引っ張ってきていることがわかる。
・COSMIC DARE(PRETTY WITH A PISTOL)/Overload(sugababes)
さて、この場合はどうか、かなりの具合で引用が激しい。が、ここで感じるのは「曲としての凝り」の度合いはむしろ菅野よう子の方が固めている印象を持つ。後メロディ性で言えばCOSMIC DARE(PRETTY WITH A PISTOL)の方がキャッチャーの印象を持つ(というよりoverloadの方が洋楽性のある低音の気がする、その意味でここでいうキャッチャーさというのは日本人特有のものと考えることも可能)。そして間の使い方や、音のタッチなどの方面でいえば明らかに後者の方が富んでいる。ほぼ同じ構図を持つにもか関わらず展開の見せ方でちょっと違う曲になっているのが面白い。
・powder/the Desert music
まぁこっちからの影響も考えられるが
じゃあ、さきほど出したアルジェナの作品以外で菅野よう子がおもいっきりミニマルをした曲ってなによって話ですがこれでしょう。ライヒは偉大ですね。久石的な音楽性を導き出しながら菅野よう子にも影響を与える幅の広さ。the desert musicは音がひたすら繰り返されますが、powderではそれに付随して女性の声が加わります。ライヒ音楽は統一性があり、そこに実験的なミニマリズムが加わることによってあの爽快な音楽性というのが顕在化するのですが、菅野よう子は統一性ではなく、音による親和性で曲を紡いでいった感じがする。あと強弱にそこまで拘っていない。ピアノのが凡な感じなのが少し気になる。こういう曲の場合、もう少しバリエーションがあってもいいとは思う。アニメの劇伴における調整なんだろうけど。まぁこの場合過度に音のバリエーションを増やすか、単一の凡な感じにするしか成立しえない曲なきもするので安牌をとったと考えるのが普通でしょう。
・thousand knives(千のナイフ)/Go Ri A Te
マクロスの劇伴の「go ri ate」はある程度音楽に造詣があれば、教授の千のナイフのフォロワー楽曲であることが如実に表れている。というかまぁそのまんま。
(これがデビューってぶっ飛んでますよね、さすが坂本龍一)
がしかし、ただ真似るだけでなく後半に鉄琴や、オルガンでメロディを組み込んでより聴きやすい作品にしていることが窺える。これまでの流れからしてもやっぱりバランスを重んじている。無機質で、ひたすら実験的な音源を積み上げていく教授の作品にたいして、菅野よう子のGo Ri A Teは型としての異質感は残しつつも、聴きやすさ(いわばローカライズ)を重視した作品にしている。
ここからは古典、つまりはクラシック音楽を参照している楽曲を紹介します。
・Final shore おお、再臨ありやと/ヴェルディ「Requiem」+ブラーナの「O Fortuna 」
(はい、ここで川井憲次につながる流れを決めたいが、あえて自重します)
もうね。こういうのは劇伴作家なら一回はやってみたいものだと思うんですよね。イントロの感じからヴェルディのレクイエム感はみなさん分かるでしょう。「おお、再臨ありやと」副題までつけちゃって。というよりあの曲知ってればこの曲がいかに意識しているかなんて別に音楽に詳しくなくてもわかる。そのくらいクラシカルなあの感じというのは再現したくなる。世界で最も知られている曲を書いた映画音楽の巨星ジョンウィリアムズだってジョーズは完全にストラヴィンスキーであることは音楽知らない人でも誰でもパッとくるもんです。プリクエルSWの中でも見所の戦闘シーンで青鬼ならぬ赤鬼(ダースモール)戦で流れるduel of the fatesなんかもその流れかな。
散々バラエティや映画音楽で使い回された曲。
ヴェルディの「レクイエム」とカルミナブラーナ「おお、運命の女神よ」は。壮大な楽曲を書こうとするとみんな大体この曲の二番煎じになる。だからこそ、これらの曲を意識した曲が作られても「潜在的に」刷り込まれすぎてパクリ云々とかではないんですよ。ジョンウィリアムズのクラシックオマージュっぷりはこの2つ記事にちらっと書いたので気になる人は是非。
その意味で菅野流の「壮大なクラシック」の立ち位置を示した楽曲がこれというのは凄く納得できる。見事な再現&換骨奪胎ぶりには驚かされます。一人の劇伴作家としてこれをやり切った時はさぞ楽しかっただろうなというのは想像に難くないです。クラシックのアプローチという意味で激推しの一曲です。個人的に面白いと思ったのはクラリネットですかね。一見陰に思えて案外主役を張っていると思います。
同じくクラシック引用シリーズでいうとこの曲も顕著。マーラーがアダージェット情緒的楽曲の最高位を締め、以降マーラーのフォロワーが溢れたようにであり、一本柱になっているのと同じように野太く、骨太で単純な旋律といえばショスコヴィなんですよ。系譜としてはまさにマーラーからのショスタコーヴィッチです。さてエスカフローネのblazeを聴いてみましょう。あからさまなショスタコーヴィッチの味を残していることがわかります。
これも露骨なほどラヴェルのボレロを参考にしていますね。前半はホルストの惑星組曲の木星みたいな感じがします。木星+bolero=revengeという。ただ後半もうちょい打楽器の音をあげてもよかったんじゃないかと思う。はと思ったんですけどエスカフローネのサントラ曲ってバックボーンがクラシックの曲が多くて菅野よう子版:クラシック音楽作品集みたいになってます。
これはイントロが特に顕著なのですが、もろ意識していて聴くたびに笑ってしまう。
漆黒のカデンツア/ショパンノクターン 2番 変ホ長調 9-2
もっというとこれにラフマニノフ味が入ってる。ロシア+ポーランドのピアノ作品の合わせ技っていう印象がこの曲にはありますね。同じくEVOLのアルバムからあからさまなクラシックオマージュが感じられるのがこれ
一瞬スターウォーズラインと思うかもしれないですが、実はホルスト。
※最近ブログ上でずっとホルストの名前をだしていますが、宇宙・戦争系の壮大テーマはだいたい火星からというのはれっきとした事実なのでどうかご容赦を
というよりもSWの有名劇伴はホルストとワーグナーとコルンゴルトとヴェルディがネタ元。ウィリアムズが凄いのはそれらを継承しつつ新しいサウンドで展開しているところ。それに比べたら然しもの菅野よう子のクラシックの使い方はすごく陳腐ではある.ただ、この曲もそこそこは変わっていて、つまりはイントロ/アウトローが火星という使い方。言ってみればそれだけの曲なのですが頑張ってSWと火星感を出そうとしている労力は伝わってくるので一聴の価値はあります。
・sora/ジムノペディ
まぁただのサティ病だよね。ジムノペディ。一体この曲がもたらす神秘性はなんなのでしょうか?そこにはひたすらに「繰り返し」であること意外に特出しているところはありません。いまでこそ涼宮ハルヒの消失に、ゲームぼくのなつやすみ2に使われ、それを除いてもサティの音楽性っというのはあまりに大きな大衆性を帯びましたが、サティは和声進行や対位法を無視したその作風から異端児と呼ばれていたことからもわかるように当時の音楽シーンにはあまりに独自性の強すぎる人であった。それはジムノペディをはじめとする諸作に現れている。とにかくなにもない、というより消えていった調号、そして拍子などどんどん削って、残った音楽があれなわけです。その意味で何もないんです。本質的には。がしかし、その無の音楽性が今では当たり前になっているのを見ると、サティのやったことは大成功なわけです。話を戻すために繋げるとこう言ったポップスにも使われているわけですから。まぁ見事なまでのサティの曲なので、あれがこれがという曲でもないですね。final shoreと同様、当たり前となった音楽をポップスに展開するという試みとしては中々いいと思う。というのも先述した通り、この曲はそのまま使われるケースもしくは劇伴として似たような楽曲が作られることの方が多いからだ(そしてそれは圧倒的に正しい)。誰もが知っている型を思わぬ形で展開する菅野よう子のセンスが光る一作です。
蛇足:音楽CDショップ屋にいくと端っこに「自律神経系ミュージック」だの「リスニング」などの一体これは何を指してるんだというコーナーがありますが、あれは思うにサティの作品の「何もない」の延長の先にあるものではないのかということを、これを書いててふと思いました。現代だとマックスリヒターの音楽がまさにそのコーナーにあったりするんですよね。なのであながち間違っていない(と思いたい)。
クラシックの話はこれくらいにして、ポップスにおける菅野よう子論に戻ります。
・Ask D.N.A/Where It's At(beck)
これはイントロ部の引用型の例。でもこれは分かるな。BECKのオルタナ性って本当かっこいいですもの。構造引用型では洋楽から引っ張ってくるケースが多い。
・ダニエル/ Will Not Forget You(Sarah McLachlanI)
一方で劇伴はやはり映画音楽ネタからが多い。
・space lion/love thema
ヴァンゲリスはシンセサイザー畑出身のため、一音に対する解釈の幅が大きい。そしてこの曲ではサックスがメインとなってメロディを奏でているが大事なのは裏で鳴っているサウンドである。映画劇伴作家の中でも唯一無二性を誇るヴァンゲリスの音楽.だからこそ、真似るとすぐネタ元として上がってきます。多分散々言われていると思いますね。tears in rainという作品では「裏でなっているメロディ」の扱い方が特に秀逸である。そして展開。54s前後から盛り上がり、1m03s前後でまた上がる。とにかくシンセサイザーにおける音の性質をとことん極めた人だと思う。ではspace lionはどうか。まぁ意識していることに違いはない。が、サックスの音の扱い方をみるにPink Floydのus and themからの影響とも考えることができる。ß(vanfelisとプログレ、一見どう共通性あるのかと思うかも知れませんが、Pink Floydと同様五大プログレバンドと言われたイエスに加入に誘われたことがあることから分かる通りそのサウンド性はプログレにおける実験性に近いものがある.プログレについてはこちら
※実際には加入しなかった。
(がしかし、してたらイエスも別の意味で凄いバンドになったんだろうなと夢想)
因みに菅野よう子はon the runというPink Floydの曲名まんまの作品を作っているから聴いてないはずない。
そもそもが全世界の売り上げでtop10に入るようなバンドなので音楽をやっていてPink Floydを聞いたことがない人っていうのもまぁ珍しいですが。
ちなみに、過去菅野楽曲で明らからにヴァンゲリスの曲が意識的に模倣された例はもう一曲あって、cm曲で「Exaelitus 」というのがあるのですが
うまいこと隠してますが、核となる部分を真似しているのでどうしてもこの曲を意識していることを感じる。
・Pot City/Dub Driving(アンジェロ・バダラメンティ)
これなんかも、ありがちなラインと思いきや、実はアンジェロからなんじゃないかなと思ったり。だってメロディの繊維が強いだけでほかは凄く意識している形に自分には聞こえるのですが、みなさんどうおもいますか?
・tank!/ get it on(chase)
意外にもtank!もサンプリング的な作りなんですよね。とうかカウボーイ・ビパップとまでいうくらいだから、ビパップ系の音楽は相当数参考にしていると思う。
chaseのget it onのサビメロディがまさにそんな感じ。むしろget it onの拡張版としてのtank!と思うとより楽しめる気がします。まぁジャズって色々奥が深いから必ずしもこれがっていう断言はできませんが、意識していることは間違いなさそうです。ただし、これも菅野よう子の手にかかったことで圧倒的にかっこいいサウンドになったのも事実。某記事によるとtank!はアメリカの野球会場でも流れているそうで、カウボーイビパップ自体が海外人気が高いということもありそうですが、単にジャズ曲の一つとしてカウントされているなんてこともありそうですね。そしてビパップのOSTは基本的に作品の方向性からしてもジャズ音楽のオーダーが重要な要素になったはず。bad dog no biscuits/Midtown(Tom Waits)なんかがいい例でトム・ウェイツのMIDTOWNの音を重低音よりの方向、とりわけジョンバリーが編曲した(作曲じゃないよ)007のテーマ的
(007のメインテーマはモンティ・ノーマンが原曲・作曲者なので誤解ないように)
にアレンジをした曲になっている。
この曲も出だしは引用型である。
ELM/kiss from a rose(SEAL)
Clutch/3rd Quadrant(ケニーギャレット)
これなんてサックスのラインを聞けばケニーギャレットってすぐわかる話で、この辺りのわかりやすさは多分監督からの指示だと思う。なんせビパップの名奏者マイルスデイヴィスとスィングジャズの巨匠デューク・エリントンの二人から認められた演奏力を持ち、すなわちスウィングジャズ(アンサンブル重視)・ビパップ(即興重視)の両刀型なわけで、それを知った上で聞くClutchはすぐに察しがつく。でもまぁそれを演奏してるシートベルツが一番すごいのかもなぁ、、
同じカウボーイビパップのジャズラインだとBlack Coffeeを聴く限り
ブリジット・フォンティーヌの「ラジオのように」も参考にしている気がする。
ここまでくると本当に菅野よう子は監督指示にしたがって書いているとしか思えない。なぜなら菅野よう子はそんなにジャズに詳しくないっぽい発言をしているから。全体を通してカウボーイ・ビパップのOSTは元ネタジャズ楽曲がありきなきがしてならない。
さて、これまで+な事を書いたが、ここでちょっとマイナスな話を。
※好きな作家ゆえ本当はこういう話はしたくないのだけど、マンセー記事にはしたくないので
今まで挙げてきたように、菅野よう子楽曲は秀逸なメロディラインの前に、秀逸な楽曲の型取りが目立つ。故にやりすぎた事例をここで一つ紹介しよう。トルキアという楽曲がある。この曲は菅野ファン、並びに攻殻SACファンなら誰でも知るシリーズ屈指の人気楽曲。
では次に
サイバーバード/butter sea(Hooverphonic)
特にこれはかなり意図的だと思われる。
ride on technology/jungle-out(no jazz)
まぁもう一段階深い視点で考えればこのNo jazzのjungle outもネタ元はλさんご指摘の通りブレッカー・ブラザーズのsome skunk funkをよりテクニカルにしたものなのですが。
ここでいいたいのは、ride on~が参考元とほぼ変わらないということです。
mushroom huntig/let the good shine(DJ Food)※itunesないっぽいです
You make me cool/Blue Light, Red Light(ハリー・コニックjr.)
Words That We Couldn't Say/Shape Of My Hear(sting)
・cloud9/Une Heroine(Laurent Voulzy)
アイドリング/Axis Of Ignorance(Nils Petter Molvaer )
・want it all back/Zodiac Sign(Imperial Drag)
scooters/mr.blue sky(Electric Light Orchestra)
の曲をそれぞれ組み合わせを聴いてみよう。このレベルになると流石にきついところがある。そりゃ全体の構図など総合的に俯瞰したら違うものにはなるけどそれは当たり前で、むしろそこすら同じであったらこれは悪質な模倣でしかない。創意工夫が一切合切感じられない。このように菅野よう子楽曲は「良い」曲がある反面、元ネタを露骨になぞってしまう傾向がある。(オーダーによるもの中もしれないが)
そしてそれは所謂「パクリ」というマイナスなイメージを引きずってしまう。その行為自体は否定しないが(文化の歴史は真似事でしか発展しないし)限度というものがある。今ではこんな真似は絶対にしないと思うが万能作家であれど、意図せぬ失敗をしているものである。当然トルキア,ride on technologyは一楽曲として素晴らしいし(サイバーバードは個人的には微妙)、だからこそ今なお色々な人に愛されている。その意味では「より良質にしあげている」し作曲家としては成功している。がしかし、そこに掛かってる菅野よう子的なアプローチの「発想」はゼロであることもまた事実である。
注)ま、こんなマイナスなところ書いたところで売り上げで表される数値に揺るぎはないわけで、ネットで何を書かれようがその数字そのものは揺らがず、CDメーカーの人間もそれを知っている。だからそれを知らない我々がどれだけ喚き立てようとも意味はない。がしかし、こういった意見もある程度の正当性をもつものであるため書いた。
小咄でフォローをすると、ロジャー・ジョセフ・マニング・ジュニアらがJellyfishというバンドで70年代を隆盛したパワーポップを90年代にBellybutton(1990)とSpiltMilk(1993)の2枚で一世を風靡したあと
Imperial Dragを結成。同名のアルバム「Imperial Drag」出したのですが
これほどまでに完成度が高い作品なのにあまり知られない、いわゆる隠れた名盤になってしまった作品なんですね。故に、この隠れた名盤よりZodiac Signを当時96年に把握してそれを98年に反映するという姿勢そのものはかけねなしに評価していいと思います。ちなみにパワーロックのテイストをJ-popに変換したのがofficial髭男dismっていうことを覚えておくと、彼らのサウンドの一抹が垣間みえて大変面白いし、十分語りがいもあるのですが、それは別の話。いつかやります。
・坂本真綾プロデュース作品について。
では次は坂本真綾プロデュース作品群について語っていこう。菅野よう子楽曲の作品群で外せないラインとして音楽作品として坂本真綾作品がある。97~2003年の間の作品をプロデュース。数枚のシングルとアルバム作品を4枚の作品を残しました。ここではそれらの収録曲よりどういう魅力があるのか、そして96-03年という時期に作ったという事実がその後どういう事象につながるかを語っていきます。
それではまずはλさんの坂本真綾楽曲の魅力についてです。
初期作品の全体像ですが、ギターポップやソフトロックがベースとなりつつも、その楽曲ジャンルの幅広さは相当に広く、それもまたオールラウンダー菅野よう子さんの「プロデュース力」の賜物だと思います。菅野よう子は天才作曲家でもありますが、坂本真綾4部作通して「天才プロデューサー」でもあるということを改めて認識させられます。菅野よう子さんは坂本真綾さんというアーティストやマクロスFといった作品を「プロデュース」も素晴らしい偉大なお方です…(マクロスFの楽曲はすべて!菅野よう子さんプロデュースです!!!)。
また、ざっくりで恐縮ですが、アルバムのうち数曲はビートルズを参考にしているのでは?と感じる曲があります。他にも、この頃からもマクロスFやアクエリオンに通じるサウンドを感じることが出来、菅野よう子サウンドを楽しむことが出来ると思います。近年の坂本真綾作品は一流ミュージシャンを複数起用したり、他にも「色彩」「逆光」「躍動」「独白」の2文字作品により楽曲間でブランドを築いていたりと新しい方向に進んでおり、(坂本真綾さんのブランドという一貫性はありつつも)初期とは大きく異なります。近年の作品はアニメとのタイアップが多く、配信が流通した時代のため、単品で個性が強い楽曲が多いのに対し、初期作品4作品はすべて菅野よう子プロデュースで、当時は配信も無いためアルバムベースでの作品となっており、このように様々な点で対称的です。
どの楽曲も単なるギター、ピアノ、ドラム、ボーカルの基本楽器で構成された楽曲ではなく、和声だったり、コードだったり、転調だったり、シンセの音色だったり、楽曲の構成だったりどれも「普通のJpop」に収まらない菅野よう子節がよく分かる、素晴らしい楽曲がたくさんありますので、是非お聴きくださいませ。
※冒頭の数字はトラックナンバーです。
1stアルバム「グレープフルーツ」
5.「ポケットを空にして」
マンドリンが活躍する1曲。スカのリズムがありながらも、全体的にゆったりとしたビート(キックが1拍目だけにくる感じ)、右から聴こえる小物の打楽器、アーコディオン、タンバリンなどが使用されており、マンドリンのトレモロ奏法も相乗効果で、楽器の小隊編成が面白い1曲です。それぞれが楽器を持ち寄って自然と音を奏でている姿まで想像出来てしまう、このサウンド構成力が本当に凄い…。いい音楽を作るも物凄いことなのに、それだけでなく、曲からその音楽の姿、イメージまで聴者に呼び起こさせるそういう楽曲になっているのは、本当に天才的と表現せざるを得ないです。
5.青い瞳(ドリアン)
菅野よう子作品を俯瞰したときに、この曲のような少女が一人で目を閉じながら祈りを捧げるように歌う姿が浮かび上がる楽曲は「Cloe」「VOICE」「時の調べ」「オムナ・マグニ」「アイモ」「 Early Bird 」など多数あり、モード(特にドリアンスケール)を使わせたら敵うものがいないのでは…というくらい菅野よう子さんの武器のひとつであることがよく分かる楽曲です。
(個人的に「少女祈祷曲」シリーズと呼んでいます。それくらい多く菅野よう子さんに特徴的)
8.「約束はいらない」
センスの時代の代表曲。低音でベースとして鳴り続けるピアノの使い方が奇抜だし、知らない間にめちゃくちゃ転調していたりと、当時から異彩を放っていたことがよく分かる楽曲。こんなに自然に転調してしまう(特にAメロ、Bメロといった節の中での転調)楽曲はそうそうないと思います…。(プラチナも相当するでしょう)サビがあまりにも美しくメッセージ性が強いので、何度も繰り返すという手法は他作品にも多いです。(落ちサビ、ラストサビ、更にサビと3回繰り返している)
2ndアルバム「DIVE」
2.「走る」
イントロの弦編曲から一瞬にしてキャッチーさとワクワク感がたまりません。イントロの長さも今ではちょっと考えがたいくらい長い(のも面白いです)。サビで一気に景色が変わる感じ、1番を基本、弦のみで構成し、ベースがない(入っても本当に少しだけ)という構成は彼女が大好きな手法です。サビに白玉で1音ずつ上昇するストリングスもあるある。スネアのクローズリムショットは前半から登場するものの、メインビートとして登場するのは2番のサビからという意外さ、この発想力が素晴らしい…。4:32~で一度落としてから4:47~のエンディングでひたすらストリングスがスケールで下降する動きと、白玉で1音ずつ上昇していく構成と、アウトロを作らず、フェードアウトで締めることで「走る」を表現しております。この構成力…天才的です。全体で5:34もあるのにこの構成力があることで、何一つ無駄なものはなく、必要な展開、構成になっているのが特徴です。とにかくこの曲は聴いてほしいイチオシです。
はBPM=170、この「走る」はBPM=168とかなり近い。更に視野を広げてみると花物語OP「the last day of my adolescence」
(作詞:meg rock 作編曲:ミト 歌唱:神原駿河(CV:沢城みゆき))のBPMは177。神原がスポーツ少女であることを考えればこの他と比較した時の高さも妙に納得がいく…。このBPM=170付近は、人間の「走る」という行為にピッタリのテンポなのかも…?非常に興味深いですねぇ。
3rdアルバム「ルーシー」
筆者の4部作の中での一押しです。今から丁度20年まえの作品ですが、毎年数回は自然と聴いてしまいます。超名作だと思います。4作品の中でもかなりとっつきやすいのではと思います。オススメです。 楽曲の時間が「Lucy」1:43、「アルカロイド」4:09、「Life is good」4:13の3曲を除きすべて5分超えしており、「坂本真綾&菅野よう子の4部作の中では収録時間が59:17と一番長い作品です。菅野よう子得意の楽曲の展開のされかたがよく分かるアルバムではないでしょうか。
1.Lucy
フランス印象派を感じる。ゆったりで素朴なピアノと対称的にストリングスが艶やかに奏でられているのが美しい1曲。
2.マメシバ
ルーシーからのアタック感がしっかりあるギター鳴る、この流れが気持ちいい(この頃の曲はアルバムで聴く想定であることがよく分かる)。
曲中にツーファイブがいくつも組み込まれているのが美しい曲。
ストリングスはやっぱり1音ずつ順次上昇するし、分かりやすい菅野よう子らしさが詰まっている曲です。
4:00~のベースが8分で刻み、ドンドン展開していく感じも菅野よう子のお得意の手法です。全体で6:07!こちらも構成力が光る1曲です。
3.ストロボの空
Dメロの終わりが「ダイヤモンドクレバス」。笑っちゃいますね
(※「ダイヤモンドクレバス」の方が後の作品です!)
4.アルカロイド
3連ベースでスキップしている感じなのは分かるとして、
サビ頭がAM7(ⅣM7)で始まって、次にDM7(#11)(⇢E調にないコード、転調)が来るのがもう天才…。
これによってより浮遊感が出るからすごい…。
この「気持ちよさの核」があるから、繰り返していても良いし、繰り返す「べき」なんですよね。本当に見事だなぁと感服します。
5.紅茶
R&B感もあるけども、ベースが頭でしか鳴らないという、大胆なリズムの空白が魅力だと思います。この手法はマクロスFの「射手座☆午後九時 Don't be late」にも通じます。
ベースなし(あるいは本当に部分的に必要なところしか鳴らない)が手法の1つとして使いこなしているのが凄いですね…。右でずっと鳴っているハープも8分を基本としつつも16分でフィルイン的に機能していたり、コード構成音の3or4を鳴らすのではなく、add9でバラけさせたり、その登場タイミングが巧(うま)すぎる…。左右でハイハットをバラけさせているのもスパイス的に機能していたり、どこを聴いても面白いです。
6.木登りと赤いスカート
ものすごくビートルズ感ありません…?この頃からギターが低音単音で鳴らしていて、菅野よう子らしさが垣間見える作品です。
7.Life is good
坂本真綾&菅野よう子では、一般のJpopに近いかなり分かりやすい作品と思いきや、音楽的にはBメロ頭をE/Dのオンコードで始めたり(雰囲気がガラリと変わる効果がある)、キメの「life is good」でBmのままでもいいのに、そこからCまで進むことで引っ掛けたりとただの1曲に収まらない小技も光る楽曲になってます。
4thアルバム「少年アリス」
2. ソラヲミロ
少なからずマクロスFのサウンドに繋がっているところがある思います。
マクロスFのしか知らないという方はこの作品に触れ、サウンドの原点に触れてみてください。
3. スクラップ~別れの詩
筆者イチオシ。とにかくカッコいい。
Aメロでリズム感(刻む感じ)を作らず空白を作りだすことで、ドラムのフィルインが更に強烈な印象になるこの美しさ!(参考に「射手座☆午後九時 Don't be late」)他にも、ベースも2度の音程で動いていく感じが気持ちいい。
後半は同じフレーズを繰り返してしますが、この繰り返しがひたすらに続いていく感じ、ドラムとベースでドンドン熱情的にボルテージを上げていく感じ、アルバム間で言えば、この曲は前作の「走る」に対応している楽曲と捉えることも出来るのではないでしょうか。
7. ヒーロー
このサウンド感、広い意味で捉えたときに、のちのマクロスF「サイレントでなんかいられない」「モノクローム」「天使になっちゃった」にも繋がっているのかな、と。菅野よう子サウンドのひとつの原型が垣間見える作品です。
「ヒーロー」は長めの曲が多い菅野よう子作品の中でも3分を切る珍しく短めの曲。
8. 夜
モーダルの中で自由に動かす感じはアクエリオン(特にOP曲)にも通じるところが感じられます。Lucyの「マメシバ」やDIVEの「走る」などにも見られるように、8分でベースが刻むのが(ただのベースの演奏ではなく)曲の核になっている作品が多く、初期のブームだったのかも知れません。
9 CALL TO ME
テンポが近く、英詩ということもありますが、サウンド感が特に「gravity」に近い。もしこの曲が菅野作品のアニメで使用されるなら「WOLF'S RAIN」かな、なんて想像してしまいます。Dメロの展開はビートルズっぽくもあり、やはり真綾作品はビートルズ感があるな、と作品を通して聴いたときに認識したことです。
10. 光あれ
強烈なサビで始まるイントロが天才だと思います…(あり得ないくらい気持ちいい)。
サビのリズムと跳躍が「光あれ」というタイトルを体現している。
これは、「light of love」にも通じる、気持ちの開放を音の跳躍で表現するという音楽の大事な要素で、それが気持ちよく表現されていると思います。繰り返しになりますが、この曲はとにかくサビが強く、リズムと跳躍の相乗効果が最高だと思います。フレーズが強いので、これをモチーフにドンドンドラムやベース、ギターの楽器隊で盛り上げる手法がすごく活きると思います。
11. ちびっこフォーク
コードのボイシングでぶつかる感じが非常に気持ちいい。
近年の2010年以降の曲よりもかなりしっかりダイナミクスレンジがあるように聴こえるし、バラ弾きのタイム感の効果などもあって、ギターの魅力を最大限に引き出している素晴らしい曲。
12. park amsterdam (the whole story)
ビートルズに感じるんですよね…。
14. おきてがみ
菅野よう子作品を聴いていると、このピアノのサウンドだけで菅野よう子サウンドだと分かります。コスモ石油でおなじみの「Seeds of Life」マクロスF「songbird」のピアノと同じサウンドです。ストリングスもそうですが、菅野よう子作品は楽器単体で聴いてもらしさがあるのも強みですね。
以上、坂本真綾さんの初期4部作から観る菅野よう子らしさでした。
・菅野楽曲史とJPOPとビートルズの流れから考える坂本真綾ポップスソング(rino評)
アニメで提供する劇伴音楽より大衆的な意味でのポップス性が出ているため、人によってはこのラインの曲が好みという人も多いと思います。菅野プロデュースの中から生まれた曲で言うとを代表する一曲がプラチナは外せないでしょう。
そのほかにも
このともだちはギターが聴きどころ。メロディが歌主体でそれらの効果音的な側面を担っている。常にちょっとした音の付け足しが入ってきてその音がチョイスがいい。でありながらそれまではキーボードや笛が主体だったのが最後のアウトローは締めに使うところが構成における妙だなと思います「大好きなともだち」までは色々な楽器がなっているので余計にスッと落ちる感じがこの曲の潔さみたいなものと繋がっている。あとこれは意識しているかどうかわからないがどことなくメロディがキャロルキングのYou've got a Friendを彷彿とさせている。
そのせい70年代の洋楽にありそうなポップス感がこの香りがどことなくする。
グレープフルーツより青い瞳
(remix版を貼ったのは坂本真綾作品のアルバムに入ってるver.にしたかったからでそこに拘り的な意図なし)
これは元はエスカフローネの挿入歌。ハープ、打楽器、オーケストラ系の楽器でのみで紡がれる楽曲。歌は単調、しかしこの音楽での聴きどころはむしろ曲にライドするタイプ。そしてアウトローである。最後の最後まで弦楽器が響いて終わる感じも素敵。アニメ挿入歌だから劇伴よりのポップスとも言えます。それがわかるのが1m50sからの弦楽器のメロディ。実際にどうかはさておき、中盤のあの感じはすごくドヴォルザーク味がするのですが、それっぽい言及がないので私の思い違いでしょうか。潜在的に出てる可能性はあると思う。あとこれは致し方ないことなんだけど鍵盤ハーモニカと弦を使われるとどうしてもニーノロータが(というよりイタリア風)ちらつく。少なくともこういう入れ方は普通のポップスではあまりしない。(というより入れる余地がない)
それでは次にアルバム作品について各トラックについてはλさんが書いてくださったので4枚のアルバムで線を書くように全体を俯瞰して考えてみる。
・グレープフルーツ
グレープフルーツはデビュー作ということもあり、模索の面が感じられる。あと坂本の声がまだ17歳の未成熟なところもあって、全体的二曲に対してあどけなさが残っているそれが逆に混じりっ気のない、醇乎な歌声として機能しています。全体的にアニメソングが好きな人には向かないタイプの曲が多いというのが流石菅野よう子。そしてなによりも青い瞳などのお得意楽曲も含まれているため、語るには外せないアルバムではあります。
余談
λさんが少女祈祷曲と評した曲の中で挙げた作品群ではvoiceが個人的に好きなのですが、以前某番組でElements gardenの上松氏がどこか異世界の民謡的であり、ノスタルジーとコメントしていましたが、「祈祷曲を歌っている」少女というフレーズの方がわかりやすいなと思った次第です。
DIVE
さて、diveはどうか。これも良作ばかりなのだ。i.d. 走る、そして表題作にdiveこの三作品だけとっても素晴らしい。まず一番分かりやすいのでいくとI.D.これは多分皆さんもパッとくるでしょう。イマジンのイントロであると(ピアノの音もそれなりに加工してるし)
まぁなんだ。とりあえずイントロでこれを真似しとけばウケるだろっていう奴ですね。この手法で世界的にセールスを成したバンドで言うとオアシスがそうかな。まぁこのバンドは90年代における「The Beatles」なんて呼ばれてますからね。
Don`t Look back in anger
(今年はこの曲が別の意味で流行りましたね。なにでとは敢えて書きませんが。)
ちょっと脱線しますけどイエスタデイという映画は「ビートルズのいない世界線」に売れないシンガーが飛ぶっていう側から見たら、なろうもびっくりなあらすじなのですが
当然なろうの9割を占める石みたいな作品群よりちゃんと考えられていて面白いのですが
(劇中にはコカコーラ、ハリーポッターもない世界なので見方のフレームワークを広げた上で解釈するのであれば「既存の人気コンテンツがない世界」に飛ばされて、そこにビートルズも含まれていたと言うべきでしょうか。)
ともかく、その世界線に飛んでから主人公が慌てて色々な検索ワードをかけるのですが、その時にオアシスは出てこないのです。他にも色々出てこない単語があるのですがちゃんとした意味で「ビートルズ」なしに存在しないバンドという意味合いのもと意識的い出されていたのがoasisだったので鑑賞したときうなってしまいました。いやまぁ、その道に詳しい人からすれば当たり前だとは思うのですが。ちなみにローリングストーンズは出てたのですが、こっちも危ういだろと突っ込んだのは私だけでしょうか。
そう言うネタもそうですが、単に一本の映画として面白いですしビートルズが存在しない世界線だからこそできる展開をラストにもってきてて、これはちょっと意外だったけど、感動できた。ぜひご鑑賞ください。お茶の間で見ても問題ない家族向けですし、映画ファンが見たら「このアーティスト写真ってあの監督の写真の作品を意識してるだろwww」という小ネタも満載ですのでおすすめの逸品です。ちなみに本作の監督のダニー・ボイル作品だとトレインスポッティングとかが有名です。
これもまた名作の一つなので押さえておきましょう。
脱線が過ぎたので戻ります。
なんというべきかDIVEは声優2作目にしてはコーラスやストリングスなどあり得ないくらい豪華だし、ベース・ドラム・ギターのプレイヤーはなんと外人どころかマスタリングがテッド・ジェンセン(Lucyにも関わってます)ですよ。Talking HeadsやThe Rolling Stones などの大物アーティストの楽曲にも関わったことのある大物が関わっています。なので、決して声優アルバムだからと言って色眼鏡で馬鹿にはできない度でいうと本作は化物です。最高のポップスアルバムです。
以下リンクを押せばテッド・ジェンセンが手がけたディスコグラフィーが出ます。
こういう人たちが関わっているため名盤が生まれるのは必然といえばそうなんですが。
本作での推し楽曲はやはり「走る」ですかね。なんかリズムラインにアーハのtake on meを感じられて
この方向性の曲を坂本真綾が歌っているっていのは凄く合うなぁと。しかもイントロがあの弦楽器のメロディというところに痺れます。しかもだんだんと調和していつの間にかギターのポップメロディに落とし込んでいるというバランスの調合さがたまらないです。あと歌詞を橋渡しっていうのはここでも感じられます。
Lucy
挑戦作という意味ではLUCYであり、それが意外にも、いや必然的なのかもしれない。見事に楽曲の幅を広げた名盤になった。何といっても全力ハズレがないという奇跡のトラック群云々以上にやりたいことが明確に見える。ここら辺からビートルズの匂いがし始めるのです。life is goodやアルカロイドなんかもろに。
この曲の構造はThe BeatlesのBeing for the Benefit of Mr. Kiteからの影響がまずある。
そういった菅野よう子曲の変遷を一番肌身で感じられるのが本作。
同時にやはり時代の流れの影響も受けていて、それが顕著なのが「Tシャツ」。さて、2000年代初頭でこのイントロ特にピアノラインが全体を纏うこの感覚。そう、この曲の冒頭〜の構造やギターの鳴らし方は椎名林檎のギブスそのものである。
(まさか2年連続でこの曲を貼ることになるとは思わなかったが、この曲は時代を超越するレベルの名曲だから真似したくなるし、そのくらい普遍性を獲得している)
亀田誠治のアレンジの力を菅野よう子がこういう形でポップスにするというのは非常に面白い点である。タイプの違う音楽プロデューサーではあるが、同時にやっぱり流行りの曲も当然意識していることが分かります。マストアルバムです。
驚きより熟した意味での完成度の意味合いなら本作が一番の傑作である.少年アリスは集大成の意味合いではそれ相応の楽曲群がある。それまでのアルバム群との対比で表現するとデビューは良盤程度にとどまっているのに対して、以降は全部名盤。それも毛色の違った。diveは坂本真綾が菅野楽曲とのマッチング性、菅野よう子の作曲家としての力量が明確に出ているのがlucy 。だから単純な曲のアプローチの面で考えるとLucyが坂本真綾×菅野よう子作品としては最高傑作と言ってもいい。そしてこの2作を経て「少年アリス」という作品という流れだからこそ光あれ、coll meoutなどを聴くとそれまでの作品と比べて歌唱の安定さが格段に違うし、尚且つ感動できるクオリティ以上の曲が収録されている。(もちろん菅野楽曲のクオリティが上がっていることも関係している)
なにより本作が2003年で、以降菅野楽曲の流れを考えると丁度バランスのいいポップス作品になっている。λさんがCALL TO MEでgravityとの類似性を挙げていたが、まさにそこで。のちの名曲のプロトタイプ(あるいは下地)を作ってしかもそれを23歳の坂本真綾に歌わせた。そういった絶妙な軌跡が重なったアルバムである。
言い方は悪いが、40を超えた坂本真綾が今、菅野楽曲を歌ってもこういう作品群の強度にはなり得ない。
そしてこのアルバム全体にちらつく色々な意味でのThe Beatlesの音楽味(というよりもジョンレノン的な音楽のアプローチなのかなぁ)。また、λさんがビートルズっぽいと言う感想だけ残したアルバム:少年アリスの収録楽曲のpark amsterdam (the whole story)は、それこそ後期ビートルズ、とりわけsgt.やホワイトアルバムに代表される作品の影響を感じます。
こういう感じのタッチの曲や
あとこの曲で一番近いThe Beatles作品でこの感じが出ているのはacross the universe
(一般的な音楽ファンには馴染みのない楽曲だと思いますが、これを持ってくる菅野よう子のセンス!!)
ですね。とりわけ少年アリスの楽曲群は下降気味のギターや曲調がパッと変わる時の仕草等が全体的「ビートルズやりたいだけ」という印象を受けます。もちろんこれは良い意味で功を奏しているからこそ今聴いてもまったく色褪せない楽曲群になっているわけで。その意味でビートルズの構造を使いながら、菅野よう子特有のコードの妙やセンスが煌めいている。しかし一方で、同じくビートルズからのアプローチを邦楽に持ち込んだ小林武史という邦楽の巨星プロデューサーの作品を生み出すセンスには一歩及ばずと言った印象も感じる。つまるところ
小林武史の洋楽→邦楽の変換力は多分日本一で、スティングの使い方ですら菅野よう子が凡になってしまうほどなのだ。だから比べてしまうのがこの場合おこがましいのですけど。
stingよりEnglish man in new york
( そしてタイトルがビートルズからの引用でもあるっていう料理が上手い小林御大)
まぁ比較ははさておき、とにかく上には上がいるがそれでもビートルズを咀嚼して、再解釈した作品としては秀逸な作品であることには違いない。
ではこれらの事を踏まえると何が見えてくるか、菅野よう子楽曲の素晴らしさはコード、展開などに魅力的なのは勿論密接に関係しているが、それ以上にそれまでに出てきた映画の劇伴(坂本龍一からヴァンゲリス、lunatic calm,イエス等)や多角的な方向での洋楽の多様さなどを丁寧になぞった上で日本のポップスに置き換える(とにかくアプローチとインプットの幅を広げ続け、咀嚼して自己流に整える)ことによる意外性や不意を打たれた感覚がするのである。じゃあ誰もがそれをこなせるかと言ったら別問題で、詰まるところ菅野よう子の最大の才能は既存曲の構造を忠実に再現することなのである(全てがこれに該当するわけではないが)。それなのに「菅野楽曲」として聴けてしまうところが氏の「凄さ」なのだと思う。
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名盤
さて、おすすめ楽曲+菅野よう子論を語ったところで「じゃあ何聴けばいいんだよ?」「色々なアルバム曲から引っ張ってるけど、全部聴く時間ない」「結局どのアルバムがいいの?」「菅野よう子入門はなんですか?」など色々な方がいると思うので、総合的に考えた名盤をここで発表したいと思います。
λさん選出名盤5枚
1.劇場版マクロスF サヨナラノツバサ netabare album the end of triangle
マクロスFの曲はどれも大好きなのですが、今回はこちらのアルバムをセレクトしました。初心者向けで1枚ということであれば、VOCAL COLLECTION 娘たま♀
が選ばれやすいのですが、このアルバムも最高の1枚です。
特にボーカル曲をピックアップし、ご紹介したいと思います。
1曲目、「禁断のエリクシア」
強烈なイントロ。マクロスFでも最高峰にセクシーな楽曲です。化学的、サイケデリック感でありシェリルの蠱惑的で妖艶な様がシンセで見事に表現されています。モーダルなAメロから始まり、転調する後半。サビに4分で半音で動き続けるシンセがこれまた怪しい。サビの後半にストリングスのホールトーンも加勢し、とても盛り上がります。
特に、佐野康夫さんの阿修羅のように炸裂するドラムは本当に聞いていて気持ちよく、まさしく「浴びるドラム」です。一般的なJPOPでは8ビートなど基本のビートがあり、どうしても単調になりがちですが、佐野さんのドラムは毎回ところどころ変化があり、この微妙な変化やフィルインがとてもハイセンスです。アップテンポなこともあり特にドラムが光る曲ではないでしょうか。2:04~の一瞬止まるフレーズ、2:15~のハイハットとキックの裏2発からのクラッシュシンバルもクール。3:13~の静寂からのフィルインが炸裂すると思いきや、3:15~で一瞬空白が作られており、この数秒も最高にクールです。そして続くドラムソロは3拍と2拍が混在しており、まさに化学反応が起こっていることをビートで表現されているように聴こえます。
最後には、4:43~ではライドが刻まれつつも、左手で更に刻まれるハイハットのアクセントがカッコよく、楽曲の温度は更にヒートアップします。この楽曲が当初8分でタイトに刻まれていたのに対し、最後に16分で刻まれることで盛り上がりと構成美が演出されています。他にも、1番のAメロからモーダルに暴れるベースやBメロの右へ振り切られていくシンセのパン、2番Aメロでベースがほぼ抜けてしまうのも空虚感が醸し出します。4:00~ではギターのピッキングスクラッチが左右でリバーブされていたりと、エフェクトも一層この楽曲を盛り上げている点も聞き逃がせません。
3曲目「虹いろ・クマクマ」
ハイファイサウンドの行進ビートから始まり、なんといってもランカの「リラメルララメルランルララン」の呪文のワクワク感がたまりません。6/8拍子は面白いリズムが作成しやすいことが特徴の一つですが、Bメロの「何を」「怖れ」でリズムを提示しつつ「何を」「隠し」で倍の速度で加速してから、「胸の鍵」の(「のかぎ」の箇所で)6/8の付点4分音符の4つ割りのリズムが本当に天才的だと思います。音の高低だけでなく、リズムの伸縮性と緩急により、このサビに向かうBメロのフレーズは最高に光る楽曲ではないでしょうか。この曲を聴けば、いつだって雄大に広がる空に向かって両手を広げているランカが浮かび上がります。イントロで鳴っていた「ド#ララミララ」がサビの決めの「乙女心勇気出して」にも転用されており、この曲のキーになっているのも構成美のひとつでしょう。3:34~Dメロのピアノにも使用されており、「リラメルララメルランルララン」の言葉としての呪文とは対称的に、この6音が「音としての呪文」になっていると思います。このフレーズは最後のアウトロにも使用されていますから、特に重要なファクターになっています。
サビに全音符で流れるストリングスも加わり、音楽が幸せに満ちている、明るい未来を感じさせる、そんな1曲です。
4曲目「恋はドッグファイト(FIRST LIVE inアトランティスドーム)」
マクロスFはクールな曲や可愛らしい曲だけなく、このようにちょっと変わり種の楽曲も多数あります。ランカの歌い方も、ライオンなどの曲よりもポップな声色で歌われているのも聴きどころだと思います。電波的なエフェクトや発射音なども多様されており、面白い楽曲になっています。
6曲目「星間飛行(LIVE inアルカトラズ)」
観衆の声が入っていたり、ランカの掛け声が入っていたりと、アニメ後期OPよりも盛り上がりに富んだアレンジになっています。構成的にもギターの音の動きがよく分かるアレンジになっており、ユニゾンしたりと正しくライブらしい演出になっています(一方でストリングスが控えめ)。そして、後半は転調するアレンジもこの曲ならでは。最後のドラムフィルインなんて正しくライブバージョンらしいです。
単純に星間飛行をLIVEバージョンにするのではなく、アレンジを通して更に面白いものにしている点が、菅野よう子のスーパーなアレンジ力のひとつだと思います。
7曲目「Get it on~光速クライmax」
BPM=205のハイテンポビートは、まさしく光速を体現しております。
この曲の魅力は、なんと言ってもAメロからBメロを介さずすぐにサビに行くこの展開の気持ちよさではないでしょうか。もたもたしてる場合じゃない!今すぐ楽しんじゃえ!という感じ。先述した、菅野よう子の魅力である構成力に繋がるところであります。また、この曲はマクロスF曲の中でもハーモニーが通常の楽曲のハーモニーより強めに出ており、このトップボーカルに負けることなく遠慮しないハーモニーが同時に力強く鳴っているところが耳にとても心地よい楽曲です。サビのB♭から動く「E♭9」で、ちゃんとテンションが用いられている点が、抜け目のないというか、どこを聴いても美しいなと思います。内声の「レ→レ♭→ド」の動きも美しい。よく聴くとBPM=205の16分でシンセが高速で小刻みに鳴っているところも面白いです。止まることを知らずに動き続けるベースも魅力的。1:23~で無線の会話やエンジン音も一瞬あったりとエフェクトにも富んだ作品で、2分音符でスケール的に鳴る高音シンセも歌詞にある星を表現しているようで、どこまでも見事な楽曲だなぁ、と感服するばかりです。
10曲目「放課後オーバーフロー」
マイナーから始まるイントロとその後のメジャーとの対比が美しい楽曲です。Bメロの特徴的なリズムや、3:16~8分音符のアクセントとそれと絡み呼応するドラムソロも聴きどころです。リハモや2番Bメロで「君を」のリズムのパターンが変化する点など、飽きさせない工夫もされています。
全体的にギターが低音で鳴るフレーズも多く、この手法はマクロスFでもそれはもう非常によく使われている手法で、この曲も違わず使用されている点も、マクロスFの楽曲の1つであることを示しています。
12曲目「娘々FINAL ATTACK フロンティア グレイテスト☆ヒッツ! ノーザンクロス~虹いろ・クマクマ~ライオン~ユニバーサルバニー~オベリスク~愛・おぼえていますか」
名の通り、長さ、構成力ともに最強の楽曲の1つです。
ストリングスを基調とした「ノーザンクロス」に始まり、名曲が続々展開されていきます。続く「虹色・クマクマ」ではシェリルも加わっています。
更に、ライオンはベースが細かく刻まれていたり、テンポも通常よりもアップしており勢いがついています。一度ライオンに戻りますが、あの有名なフレーズも聴こえてきます。4:44~では「愛・おぼえていますか」のフレーズは聞き逃がせません。
ユニバーサルバニーへのつなぎへの転調が、単純な転調というより「転調!転調!!転調!!!」の転調の嵐でこれでもかというくらい転調しているのが気持ちがいいです。続くランカもハモっています。サビ直前の「泣いてた天使がほら悪魔」をランカが歌っている箇所など、ランカファンにとってたまらないと思います。メドレーならではの醍醐味です。続く「オベリスク」は「劇場版 マクロスF ~イツワリノウタヒメ~ ユニバーサル・バニー」に収録されている代表楽曲でアルバムを越えてこちらでもそのアレンジver.を聴くことが出来ます。メドレーですが、アレンジにも富んだ、菅野よう子のストーリー構成力が光る1曲です。
余談ですが、この楽曲は7:30もあるロングナンバーなのですが、更に長い「娘々スペシャルサービスメドレー(特盛)」もあります(構成は大きく異なります)。物足りない方はそちらも是非。
13曲目「サヨナラノツバサ」~the end of triangle~
難易度最高ランクの楽曲。映画の代表曲ポジションです。
モーダルなAメロ、どこかプログレッシブなBメロのミニマルなリズム、サビの単純な8ビートではなく、部分的に8分が後ろに移動しているビートも最高にクールです。全体的に、フラムが多様され、スネアもハイピッチ、特にタムも他の楽曲よりハイピッチまで聴こえるのがこの楽曲の躍動感にも繋がっています。ドラムの推しポイントとしては、4:08~のドラム16分の最高にクールなフィルインは必聴です。4:55~からは「放課後オーバーフロウ」のDメロを絡めています。このような、「他楽曲のモチーフの援用」はマクロスFで非常に多様されている手法です。
14曲目
「ホシキラ」
激しい楽曲が多い本アルバムの中で、癒やしになる「ホシキラ」。
Bメロの転調の技がとても自然で、プロすぎて真似できません。1番はストリングスとピアノを主体し、2:09~から入るドラムが一層盛り上げます。シンプルながらも、力強いサビは一度聴けば忘れられません。イントロのメロディーがアウトロにも使われている美しい構成です。
15曲目「dシュディスタb」
イチオシの楽曲です。多幸感に溢れる本当に本当に最高の1曲です。
歓声に始まるイントロ、4つ打ちのキック、16分のシンセでライブの世界観の枠組みが出来ています。サビ頭には右スピーカーから発射音が聴こえ、後半頭には左から聴こえている遊び心も忘れずに。
7曲目「Get it on~光速クライmax」
でも挙げたように、積極的に観客の歓声を使用することで、ライブ感を自然とリスナーに溶け込ませている点がマクロスFの楽曲の素晴らしさの一つです。特にこの曲は3:58~に入るシェリルとセリフが特徴です。そしてなんと言っても、この曲を語るに欠かせないポイントのひとつは、4:35~の最後のラスサビだけコードがB→D♯7になるところです。それまではB→Baugであったことに対する、この対比が本当に美しい!このコードが鳴ることで「ラスサビ感」が、今で言う「エモさ」が一瞬でパッと現れる技はまさに天才だと思います。
17曲目「ダイアモンド クレバス ~ thank you , Frontier」
重厚なストリングスで奏でられるダイヤモンドクレバスです。
通常曲に対し、一切ドラムなどのビートがないアレンジになっている点も聴きどころです。最後にこの楽曲がくることにより、アルバム全体をしっとり仕上げるナンバーになっています。以上楽曲の推しポイント語りでした。
マクロスFのアルバムと言えば、「VOCAL COLLECTION 娘たま♀」
は王道of王道ですが、この「劇場版マクロスF サヨナラノツバサ netabare album the end of triangle」も本当に名曲揃いで、洗練された下世話の時代を最高に楽しめますので、是非ご試聴ください!!
2.Napple Tale 妖精図鑑(itunesでリンクがなかったのでamazonリンクです)
ドリームキャスト用ゲーム『Napple Tale』のサウンドトラックなのですが、
生楽器で録音されておりかなり豪華です。「はとどけい」から始まる不思議な世界観は、他には聴いたことのないものだと思います。フランス音楽的な印象もある本アルバムは、ゲームをやっていなくても十分に楽しめる名盤で、ラウンジミュージックとしてもおすすめです。坂本真綾さんが好きで「しっぽのうた」は知っているという方は、それが主題歌にもなっている是このサントラも是非聴いていただきたいです。
楽曲のおすすめは、木管を基調にした「Chocolate forest」、マーチでコミカルな「Jumping Cracker」、コミカルなピアノが面白い「たのしいさんすう 」の3曲です。「Jumping Cracker」クシコス・ポストを彷彿とさせますし、「 Skipper」は「ゴリウォーグのケークウォーク」をとてもうまく利用していると思います。このアルバムと対を為す「Napple Tale 怪獣図鑑」もおすすめです。
ジャズを通して描かれる人間模様が美しいアニメ「坂道のアポロン」。
とっつきにくい印象があるジャズの入門としても、自然と楽しめるもってこい名盤です。演奏は松永貴志(ピアノ)、類家心平(トランペット)、石若駿(ドラム)などが参加されています。おすすめは、軽快なナンバー「Blowin' The Blues Away」
ホールトーンスケールが印象的な「YURIKA」
ネコのようなピアノかわいらしい「Jazz For Button」のメロディーラインは妖精図鑑にもありそうで、菅野よう子らしさを感じられると思います。
中でもイチオシはアルバムの中でもかなり激しめのホットなナンバー「Four」です。
ジャズは歴史が深く、源流をたどる楽しみもありますが、まずはそんな堅苦しさを一切忘れて楽しんでいただきたいです。
4.COWBOY BEBOP Knockin'on heaven's door O.S.T. FUTURE BLUES
劇場版「カウボーイビバップ 天国の扉」のサントラになります。
「24hour OPEN」から始まる本アルバム、楽しい遊園地かと思えば、銃声と悲鳴が聴こえるこの狂気さ、アルバムの始まりとしては最高にクレイジーでキャッチー…この時点で最高だと思います。
1.「Clucth」
高速ジャズナンバーながらもストリングスが絡んだりとサントラとして光るで1:57~のキメが最高にクールです。
2.「Yo Pumpkin Head」…映画の重要シーンで流れるナンバー。チューバのマーチ感をベースにコミカルに仕上がっています。印象的なバッキングのフレーズは、Royal Crown Revue の「Hey Pachuco」から引用してたら面白いなぁ…と想像する筆者です。
3.「What Planet Is This?!」…この曲は外せないでしょう。アニメ版サントラが強化されており、ドラムソロが倍の長さになっていたり、途中にスカのパートが入ったり、アジテーター的な声が入っていたり、最後のアウトロも異なります。
4.「7minutes」…この曲は「攻殻機動隊」で流れていてもおかしくないのでは…?と思います。こういうコンテンツを跨いで感じられる菅野よう子サウンドはとても興味深く、特に本楽曲は菅野よう子が多いに得意とするサウンド、構成だと思います。
5.「アクエリオンEVOL」 LOVE @ New Dimension
神of神アルバムです。個人的にはジャケからして最高に官能的で美しいです。
アクエリオン楽曲の後期作品が集められており、OPの「君の神話~アクエリオン第二章」を筆頭に
「Go Tight!」「パラドキシカルZOO」も聴ける珠玉揃いのアルバムです。
おすすめは、牧野由依さんのボーカルが素晴らしいED曲「オムナ マグニ」
宗教的でハーモニーがとても美しいに「月光シンフォニア」
アクエリオン楽曲の中では愛をストレート表現しつつも切なさが光る「ZERO ゼロ」
以上がおすすめアルバム5選になります。
rino選出名盤5枚
1.アルジュナ into the another world
異質なアルバム。マクロスや攻殻でもない「ここだけ」でしかない音楽が沢山詰まっている。趣向性の富み具合ではおそらく1番凄い作品であると言い切れる。λさんが評した少女祈祷曲でいえばearly bird やcloeなどがこの作品には収録されている。
gabriela robin名義の楽曲も沢山収録されています。λさんが田中公平さんの評を引き合いにだしていたセンスの時代/サウンドの時代/洗練された下世話の時代の中ではちょうどセンスとサウンドの間に発表された作品ということもあり、如何様にも楽しめる。特菅野楽曲ならでは意味では。そんな1作です。
2.MACROSS FRONTIER COSMIC CUUNE
たった8曲。それだけしか入ってないのに楽曲の密度が爆発している。ベストでも推したsong birdやリーベ ~幻の光などとにかくピアノメインのポップスが多い。λさんがベストに挙げたMerry Christmas without Youもこの作品に収録されています。そのほかにも
R&B調に見事なボーカルのデュエット性を成立させた一曲。may`nの歌唱先述のようにルーツでもあるからこそ歌いこなしている感じがあります。とあるフレーズを聴けばはそれがわかると思います。絶対に残るフレーズです(後半部分です)
そしてお気楽&アップテンポの傑作「サイレントでなんかいられない」といった
歌詞との融和性がとてつもない一曲が収録されており、ハズレなしといっても過言ではない作品です。
3.攻殻機動隊 S.A.C SOLID STATE SOCIETY O.S.T
菅野よう子とorigaのコンビによる最高傑作playerなどが収録。エレクトロ、テクノ、ロックなど、一曲一曲にテクニカルな技術が詰まってる。音が成熟して迷いがない.攻殻のサントラの中でも作品としてのSSSがppv(ペイパービュー)でスカパーで公開されたのが2006年(劇場版として映画で流れたのは2011年)というのから分かる通り、sac一期(2002)、sac 2nd gig (2004)のOSTを経ての本作なので、サウンド攻殻集大成として聴くこともできる。(攻殻サントラは総じて名盤なのでどれが一番かというのは聞き手の好みがでる)菅野よう子のサウンドの時代の幕引きであり洗練された下世話の時代の開幕前夜に作られたので個人的には一番聞き応えがある時期の作品だと思います。
近年のアルバムのなかではこれが一強。まず本作を構成するトラックの6割がピアノがメインの楽曲が多いことが一つ。その中にvonみたいな曲もあれば、Waltのようなライヒよりメロディを主軸とした澄み切った展開とそれを補助するオーケストレーションで二重に楽しめる楽曲
攻殻ostで鍛え上げたビート、エレクトロニカな楽曲veatなどあらゆる音楽を経て辿り着いた境地としてこの作品を考えた時にある種の集大成といっても過言ではないほどサウンド、トラックの面でもに統一感があり最後blessで締めるのが最高ですね。音作りの面でも機材の進化などを含め成長を感じられる一作。絶対に外せません。一推しはnc17です。
5.wolf`s rain
アーティスのアルバムで明らかにディスコグラフィーの中でこれは異質みたいな作品ってあるじゃないですか。菅野よう子の数ある提供作品の中でそれに当たるのがこれだと思っていて、メジャーではないが、そこにはめざましい作品群が収録されている。gravityをはじめ、ラクエンではピアノ(清々しいまでのドビュッシーライン)とオーケストラの兼ね合い
leaving on red hillはボサノヴァ風味なギターにリズミカルなドラムのタッチを融合した作品だし
ギターソロがかっこいいsilver river,sold your soulなど多種多様です。
しかしこの作品そういう所を除いてもぶっ飛んでいる。なぜならブラジルを代表するボサノヴァのカリスマプレイヤーであるジョイスがいて、track3, 4, 8, 10, 16, 19にはパンデイロの名手マルコス・スザーノ(日本ではGANGA ZUMBAのパーカスで有名ですね)
track3, 4, 8, 10, 16, 19のコーラスにはBoca Livreの存在。アニメのサントラに「お願いします」程度で持って来れるアーティストではないんですよ。プレイヤーをボサノヴァ、サルサ系の陣形で固めていることから作品の傾向はブラジル音楽+クラシック+ポップス(添える程度の坂本真綾)という感じですかね。アニメのサントラ以上の「何か」がこのアルバムにあり、それがあるからこそ名盤として今なお聴くに耐えるものになっています。
※因みにwolf`s rainのOSTは2もあり、こちらも一聴の価値があります。
m(´・ω・`)m←かわいい
ここの5枚にビパップOST入ってないじゃん、にわか乙と思われそうなので弁明しておくと凄く迷ったけど、よくよく考えてみればサントラの完成度といいますか、あれらを名盤たらしめているの菅野よう子以上にそれを見事なまでに再現する演者:シートベルツという集団が凄いからというのがある。そしてジャズである以上楽曲なんてのは似たり寄ったりになるのは必然のため、菅野よう子だからこそ!!という意味での采配はそこまで大きいものではないと感じたため省きました。ちなみにジャズとか漁りたい人はメジャーなものよりもそれこそ「ビパップ」というジャンルの音楽から漁っていた方が面白さがあると思うので興味のある人はそういう方向性で考えてみてはどうでしょうか
フィル・ウッズ演奏のaireginとかは演奏そのものに技巧が顕著にわかって楽しいですよ
同様の理由でエスカフローネOST3も除外しました。名盤に変わりないが菅野よう子性が薄い(白状するとエスカフローネの方は当初5枚の内の1枚に入れていました.)
エピローグ的なおまけ
以上菅野よう子特集でした。
本記事をもって、今年の更新はおしまいです。(振り返り記事は出すかも知れないが)
今年の下半期はこの2本しか
書いてなくて、しかも片方が映画記事という体たらく。いや、紹介記事としては中々纏まっている記事だとは思いますが、生憎フォロワーは音楽リスナーばっかりで映画記事はあまり見てくれませんでした。伊福部昭の記事も相当時間をかけた割には伸び悩んだので(相当凹みました)、この後書く予定だった武満徹、大瀧詠一の特集回もとりやめ全くどうしたものかと。昨年は推しアーティストに逃げてなんとかなりましたけど。
※おかげさまでこの記事も公開してから1年足らずで主要検索ワードの検索順位的にEGOIST関連の個人ブログ内で一番読まれる記事になりました。
流石にryo(supercell)さんネタを2年連続も、きついなぁというのは馬鹿な私でもわかるわけで。アドベントカレンダーの主題である「今年の楽曲10選」をやってもいいが、単曲10枚紹介したところで、自分は面白い文章はかけないことは19年の時に証明されたので
甘えで現在の世間の人気のアーティストを取り上げるってのも、悪くないが、絶対悪戦苦闘するのは目に見えているし、ありふれたアーティスト記事を出すのも性に合わない。というか書く気にならない。(NHKがYOASOBIを激推しするあの感じ)
昨年、本来かきたかった「音楽の文化的多様性と総人口クリエイター社会」とかをリライトするのもありではあるが、なんとなく違うなと思い
ここは一発、クリスマスカレンダーだしスペシャルな記事にしたかったので大物作家の菅野よう子に決めた次第です。読者の方々が楽しめたかどうかはさておき、λさんと私は全力で取り組んだ次第ですのであとは皆さんがこの記事から菅野よう子楽曲を一曲でも汲み取って、そしてその凄み、偉大性に浸ってくれれば本望です。
これだけ曲数あるのだからプレイリストつけろと思う方もいるかもしれませんが個々で全部一曲一曲を洗い直し尚且つ自分の中で咀嚼して初めて効能、曲と曲の流れを理解するのであって、あらかじめ何も考えないで聴けるわかりやすいまとめリストがあるとそれ以上のものを汲み取れなくなる可能性があるのあえて作りませんでした。
当ブログ初の試みとなる共作記事がまさかのアドカレで、菅野よう子で、どうかなと思っていたのですが杞憂で、どころか自分の浅学が露呈してる始末の完成度と強度を提供してくださったλさんには本当に感謝です。あとは読み手の皆様がこれらを読んだ後それぞれが自分なりの菅野よう子楽曲について、考えていただければ最高です。
以下、当ブログの常連&21年産ベスト楽曲10選が読みたい人向けの
一応そういう流れの企画カレンダーなのでちゃんと、21年にリリースされた楽曲の中で私のベストをここで紹介します。単品で出してもどうせ伸びないのでおまけ的な流れで発表します。
1.what if?:orchestra, choir and piano 作曲:鷺巣詩郎
この一曲。今年はこれが強すぎた。ポップス、劇伴等ジャンルを問わず大量に聴いてはいたが残ったのはこれだけ。それくらい音の強度、構成、メロディあらゆる面で桁違い。鷺巣詩郎の神髄ここにあり。元々オーケストレーション楽曲とコーラスの兼ね合いを作らせたら日本一かっこいい曲をかける作曲家であり、それが今までのエヴァ作品では短い劇伴に止まっていた節があるが、最後の最後で集大成みたいな楽曲を書いてきた(草案としてかなり前からあった楽曲らしいが)。やっぱりこの曲のすごいところはピアノの扱い方。入れるところを巧妙に調整しているし、アルペジオ、オクターブで奏でるメロディ、サビで追いかけるような荘厳さ。ジャンルによって曲の作り方というのは変わるが、そういう前提が吹っ飛んでしまうほど終始美しいこの楽曲を21年度 NO.1とします。エヴァという作品の補正と思われるかもしれませんが、それはタイアップ系全てに言えることで。とにかくこの曲はいいし、使われるシンエヴァのシーンも素晴らしい。本当にエヴァンゲリオンが終わるんだなぁっていう考え深い気持ちになりましたよ。全然世代じゃないですけど()。
そのうち鷺巣詩郎も特集しないとなぁと思っています。この人について言及された記事があまりに少ないから。それはあまりにもったいないし、多分求められているラインではあるから。
2.エドシーラン/shivers
なんというのかなぁ。安定感がありますよね。リズミカルでそこに透き通るような声が入るから耳にスッと入る感じしていい。元々
you need me, I Don` t need you
みたいな楽曲を成立させてしまうところがエドシーランの凄味の一つなのですがshiversはそういったキテレツな感じの曲調ではなく、むしろ正当な感じの楽曲なんですけど一つ一つが丁寧に作られている感じするんですよね。それがツボでした。
3.easy on me/アデル
月並みで申し訳ないが、アデルって本当外さないよなぁってただそれだけの理由で選出。ただ、グローバルのストリーミングでここまで人気を保ち続けてるのは怪物として言いようがない。入門アデルは007skyfallよりskyfall
4.デヴィッドゲッタ/alive again
ゲッタはGuetta Blasterというアルバムを聴いて以降、面白えなぁと感じていて
そのあとなんとなく追ってはいたんですけどまさかここにきて傑作を出してくるとは思わなかった。なんていうのかな、鳴ってる音の調整具合が私にとっては抜群でそうそう聴きたいエレクトロニックってこんな感じという感覚を久しぶりに味わえた珍作です。
5.エンターテイナー 作曲:堀江晶太&じん
アニソン派でも推されてましたけど
とにかくじんと堀江両者の混ざり具合がいい。なんといっても複数人以上の男女のボーカルの掛け合いの曲をこの二人が作るとこうなるのか感があってそこにすごく納得した。それぞれ擬態しあったと、じんさんはラジオをで語っていたが私が思うに大枠はじんさんだと予想。見分ける時は歌詞と歌わせ方の二点で判断。例えば「同じ今日に立つ君と約束〜」のフレーズなんてのはじんさんが歌っているフレーズそのものでしたし、「ひとりぼっちが〜」という歌詞はじんさんのテーマみたいなところがあるじゃないですか。堀江さんは2番以降のフレーズ集約型がもろにpenguin researchでしたね。「もうげんなりムード〜」の件はそれこそ生田が歌っても違和感ゼロな感じで良かったです。
6.光る地図/長谷川白紙
最高に狂っている これ作ったやつ誰だよどうせあいつだろうと思ったらまぁ的中。
長谷部白紙
18年の時に注目し,19年のベストにちゃんと入れておいて良かったと心底思いました。
9.長谷川白紙作曲-妾薄命
妾薄命、、なんというか平沢進と同じような匂いがして、なかなかカオスな曲を作るので入れました。
現役音大生ということで、すごく将来を期待出る気がします。かなり異質です。
・エアにに/長谷川白紙
長谷川白紙が頭のおかしい音楽を作っていることは処女作を聴けばわかります。
昨年のベストに彼の曲を入れておいて良かったと心から思えるほど最高のアルバムでした。
既存概念の破壊といってもいいめちゃくちゃな曲が入っています。
ごちゃまぜでカオスな世界の中には長谷川さんの声が入ってくるという
系統としては平沢進に近いものがあります。
No.3の「怖いところ」は明るさやファンタジックな音楽など様々な側面が出ている曲で、初めて聴いたときは
なんだこれっと声に出してしまったほどです。
「砂漠で」などの電子音楽をメインに歌が進行していくのもメロディの激しさとの絡めあいが綺麗で
不思議と耳に入ってきやすいタイプの音楽です。
「悪魔」という曲はひたすら効果音で構成されているような楽曲でハチ楽曲に近い因子を感じしました。
散々ぶっ壊れた曲を出しておいてラストトラックの「ニュートラル」では普通のピアノをメインに進むという
ギャップがまたいいですね.2m20s-31sからの展開好き。
あとvtuberとか全く興味ないのですが、このアルバムの組み合わせからわかるように分かってるやつが推しアーティストに曲を依頼して、結果的に名盤が生まれる(そのくらい月の兎はヴァーチャルの夢を見るは傑作です。タイトルは言わずもがなディックオマージュっていうのも世界観を崩してなくていいですね)という現象は以降も継続してほしいです。脱線はさておき、この長谷川白紙、超絶凄い作曲家にここ2年でなったのだなぁと実感。別に顔出しとかそういう「どうでもいいところ」はさておき、誇張抜きにデジタル音楽界の特異ポジションにいると思う。レイハラカミやimoutoidなどを通って、今の音源でテクニカルな楽曲を作る(しかも音大の人間だから理論が通っている) っていう人材はそうそう生まれないので、以降もちゃんと投資対象の作曲家として応援していこうと思います。
7.タクト 作曲:ryo(supercell)
ryo(supercell) さん信者だからとか、推し作家だからというよりも、心底出す曲が良いのです。とくにこの曲はまふまふの起用が話題を呼びましたが、まふまふ個人の楽曲では到底しないタイプの発声(これはタクトのような曲がまふまふ楽曲にはないから)だからこそ、ボーカリストまふまふの魅力がより広がっているし、gakuとの親和性も高レベル。最近はデュエット形式にこだわっているのか、#Loveが男女のいってみればディズニー的な楽曲でしたが
本作は男二人のデュエット。(だからこそまふまふが選ばれたという解釈もできますが)それなのに曲として全然ぶれていない、その上それぞれの声の持つ利点をこれでもかというほどに生かしている。高音が得意のまふまふをあえてオク下に運ぶくだりとか、その他にもまふまふのボーカル表現もいい後半の「夢と呼ぶには馬鹿みたいで」の(馬鹿みたい)の母音aaiaiの発音が凄かった。とにかくフレーズは見事すぎました。だてに10年歌ってないなと。何よりも曲がいいのはご存知の通り。ピアノの音作りからサビの爆発する感じとか、既存作品で言うとmy dearestとかeverlasting guilty crownの合わせ技な感じがします。ただ、楽器全体の運びは罪の名前たっちともいえますね。作曲:ryo(supercell)のクレジットの信用度がよりあがりました。
8.キミエモーション作曲:kamome sano
アニソン派でもkz(livetune) さん激推しの一曲。その前からヤッベェ曲だなとおもってはいたんですけど、改めて聴き直すとやっぱぶっ飛んでるなぁと。歌詞と楽曲の混ぜ方もそうだし、ベースやキックの音の繊細さ、1m50sくらいのラップもこれだけ流動的に尚且つ、自然と耳に入ってくるのは中々ないと思う。その後の楽器遊びも実に富んでいる。どうやらこのmarprilというのはvtuberの連中らしく、そこには一切興味ないのですが、音楽リスナーにこういう曲を提供してくれる一点においては評価してもいいですね
9.A Minor Astronomical Event
このクレジットの並びを見ると悲しくなる。なぜかってこの曲を作ったヨハンヨハンソンは現世にもういないからだ。最新の新規特集で考えたのも実はこのヨハンソンで、つまりは北欧出身のアーティストはいかしにてこのような作風を手に入れたか。という点を掘るつもりだったのです。そして亡くなった後に彼の遺作とも言えるアルバム「last and firstman」これは哲学家であり作家オラフステープルドンの代表作「最初にして最後の人類」(これを読みたい人はいまちくまで売られてるステープルドン(のちのsfイメージソースをたった数作でやり尽くした巨人.いわゆる壮大な宇宙を扱った作品のネタ下は全部ステープルドンからだし、フリーマンダイソンがお馴染みダイソン球という概念を提唱するにあたり、スターメイカーという作品の影響を受けている。ちなみに、最初にして〜を正規価格で読みたい人は今すぐ復刊されたスターメイカーを買って再販運動につなげましょう。公式も検討する感じになっているので)を映像化したもののOSTでその世界を見事に表現している音楽ばかりなのですが、この曲は中でも群を抜いている。微妙に変わる音の調整、女性コーラスの入れ方強弱。どれを取っても映画的ではあるのですが、奥深さが尋常ではないのです。深淵とでもいいましょうか。それにひたすら浸かるだけで音楽の表現幅を思い知らされると思います。
10.No way(どんぐりず)
多分、読み手でどんぐりずを知ってる人はいないのでは?それほど今マイナーだけどいい曲を書くアーティストという立ち位置にいる。MVは不可思議なものが多いのですが反面、作る曲はどれも独創性に満ち溢れていて、かっこいいんですよね。これが収録さているのは6曲epなのですが、全部いいです。とくにジレンマなんかはボーカルの声の良さを知るには最適だし、このアーティストがやりたい方向性というのが如実にあらわれている一作になっています。今のうちに注目しておくといいかもしれませんよ。
おまけのおまけ
熱心にここまで読んでくださる方向けにエピローグ的なメイキング裏話を書くと、元々はなまおじさんの企画(2021楽曲カレンダー)より前から出そうとは思っていた題目で一年以上前から取り組んでいたものなのです。
3.菅野よう子 女流音楽作家
こちらは今のところ4部構成となっております。手掛けた楽曲数が1000を超えるためです。色々書きやすそうと思い、書き始めたものの全然そんなことなく、むしろ一行埋めるだけで一ヶ月終わったとかそういうレベル。なんとか乗り越えて一般に出したいです
読んでわかる通り本来は4部作(5000字×4=2万)にわけて出すのがちょうどいい思っていた記事です.知り合いから5000字~1万字クラスは長すぎて読まれないから分けろというアドバイスを受けて「それもそうだよなぁ」という反省をこめて4部作ととりあえず打ち出してはいたのです。ただ、分作で書き出すと全然進まないで結局9000字書いてやっと一段落という作業が何回か続いた結果「分作は無理」と思い直して、
(というよりも記事を分けると、移動する時間で読み手の集中力がある程度落ちるから自分からすれば、一本にまとめて書いた方が、仮に全体を把握して読むのに1時間かかったとしても、その時間こそが圧倒的に有意義である。無駄な工程をしなくてすむ。)
じゃあ一本記事にするかというタイミングで12月になってカレンダー企画が出てしまって、ここに合わせて出してしまおう(イベントだから字数が多くても許されるだろうという甘い考えの元)という気合が入り、そこにλさんのお力添えをいただけたこともあって今こうして世に放たれているわけです。まさか全体で6万字近い記事になるとは流石に思いませんでしたが。参考までにこれまでの最近の長編記事の字数はを編集モードで調べたら
・伊福部昭特集=14597字
・秋田ひろむ(amazarashi)特集=20175字
・久石譲特集=16211字
・まふまふ特集=8960字
(この記事で21年度に編集字数は約10万字以上に上るので文庫本一冊分になります)
(コンセプトは地球大進化かなって思いレベルであらゆる音楽を包括した結果です。)
※知らない人は是非見てくださいね。
なので今回も雑談パート含めてそれくらいかなとおもったら結果的に倍以上で驚きました。今回は全体うち2万字がλさんによる提供文章なので実質5万字です。デジタルタトゥーとしてこれから残っていく分には申し分ない字数なのかな。ちょうど今日はクリスマスですし、これを読んでいる皆さんは恐らく自宅で趣味やインターネットサーフィンに勤しむ人ばかりだと思うので(他ならぬ自分がそう)いい暇つぶし記事としても有効活用できます。自分の書きごたえはどうかといえばこれだけ書いても正直物足りない。白状すると当初は10万字を超えていたのだが、自分が語りたいことがあり過ぎて文章が止まらなくなり期限に出せなくなるため、短縮版にしました。それほど菅野よう子は曲数が多い&一曲ずつが精緻でありながら分かりやすい構造で作られているからこそ探り甲斐があるのだ。「期待して読んだけど時間の無駄だったわw」と感じたのであればそれは自分の文章パートが面白くないということで総合的な意味での力量不足です。がしかし今の自分にはこれが精一杯なのでどうかあまり厳しくしないでいただきたいです。
ではそろそろこの辺で。ここまで一スクロールも飛ばさずに読んでくれたあなたに感謝です。それではまた来年(出す時間があれば)の記事でお会いしましょう。それでは良い年末をお過ごしください。
happy holidays!