人見元基(本名:人見典明)というヴォーカリストをご存知ですか?80年代に渡英したバンドVOWWOWのボーカルであり、その異質なまでの歌唱力は今なお色あせることなる評価を獲得している別格な存在。っと私は思っている。テレビ番組の歌うまで一位をとるような歌手よりも、圧倒的にうまく、誰もが納得する力量を持っている。
VOWWOWは海外に勝負した数少ないバンド(loudnessと同時期)でLoudnessがTHUNDER IN THE EASTで
アメリカビルボードにランクインしたのに対してVOWWOWはアルバムVIBEで、全英チャート75位の結果を残し、国内では30万枚の売り上げました。しかしそれ以上に人見元基という存在が84-90年という短い間ながら音楽シーンにいたというのが私とっては凄いことだと言える。なぜなら彼ほどのvo.はそれ以降現れていないからだ。他の歌手とは一線を画す英語の発音の上手さや、ビブラートのかけかた(ディストーション)、音域の広さ、表現力、どれをとっても破格、別次元といって過言ではない。それらの魅力を伝えるために、まずVOWWOWが発表した六枚のアルバムを簡素に紹介します。
アルバム第一作
BEAT OF METAL MOTION
・Break Down
一曲目から強烈。というのもこの曲は日本語と英語の歌詞が入り混じってるタイプの曲なんですが、人見さんが歌うと全部英語に聴こえてしまうほど(よく聴けば日本語なんですが)で、この曲だけでネイティブさというか、母国語と英語の差がパッとわからないところに発音の凄さっていうのが伝わるはず。曲も途中のキーボード厚見玲衣のメロディが泣かせますよね。のちに重厚なバラードでいきてくる魅力がここで片鱗をみせていると言って過言ではない。
・Mask of Flesh
beat of metal motionの中で一番かっこいいと思う楽曲。 1m37s~の声の豪快な上がり方、そして山本恭二よろしく、ギターソロ、そしてバトンタッチするかのような交代で厚見玲衣が技巧を走らせる。たまらない。アウトローまで流動的なまでのかっこいい楽曲です。
・Sleep In a Dream House
ローテンポの楽曲だからこそ人見さんの声がより印象的に残る楽曲。声域の広さはこの曲を聴くだけで充分わかると思います。あとこの曲は「泣かせ」のギターメロディが印象的。山本恭二さんがその手のプロというか達人なので後の曲になればなるほど印象深くなると思います。
二作目
CYCLONE
このアルバムで象徴的なのはこの曲
重々しいギターに時たまはいるバラード的展開の交差。ここに歌いかたの差がある。
ここがこの曲のいいところ。後述するが人見元基の歌唱ルーツにもつながるいい点がある。その他にもシャウトが聴ける(3m45s付近)。これがたまげるんですよ。live版で聴くと音響もあって音源以上の感動が味わえます。残念ながら音源がなかったのでAmazonのリンクを貼っておきます。
この二曲はセットで語るべきですね。
二曲とも主軸がボーカル。ブルース的な歌い方をしているのが明確である。この歌い方こそ人見元基のある種本質であることが、次作で明らかになる。
三作目
III
多分、私だけでなくほとんどのファンが最高傑作にあげるであろうアルバム。
酒井康(BURRN!初代編集長)をもって94点という評価を勝ち得たことからも評判が高いことがうかがえるし、本作以降世界に売っていく方向に舵をとるわけですから。VOWWOW全体を通してもこのアルバムの完成度は異常なまでに高いのである。しかも日本人が歌っている楽曲というのがより凄い。このクラスのhr/hmアルバムは世界的にみても中々ないと思う。それくらいあたり曲が多い。
・Go Insane /Shot In the dark
・Shock Waves
究極のバラード楽曲。ここにきて人見元基は実はブルースが下敷き畑の人だということがよく分かる。Shock Wavesのような情緒的な楽曲に厚みを持たせて歌わせる表現の仕方がブルース系楽曲の表現であると。厚見玲衣のキーボードが貢献しすぎているくらい役割が大きいとも思う。そこに荒々しい含みを持たせて歌っているものですから、バラードの極地みたいな楽曲といって差し支えないんですよ。そしてオールタイムベストバラードがあるとしたら、絶対入れてしまう。
・Pains of Love
ためて爆発するタイプの楽曲なんですが、やけに声の伸びが聴けるのがいいですね。また、サビ手前の抑揚なんて表現の塊&シャウトなどから分かるように人見元基の全てが凝縮された一曲でもあるわけですよ。
四作目
V
前作があまりに凄かったので、それに比べると凡ではありますが、それでもクオリティは高いし、ベースにはのちにブラックサバスに行くニールマーレイが加入しているという。そのため本アルバムのベース安定している。本作で重要な二曲はこちら
・CRY No More
作曲が山本恭二なのにメインはキーボードでブルースを人見さんに歌わせているところが流石わかっているというかなんというか。イントロと違ってアウトローは「I won't cry i won't cry no more」の盛り上がりで曲が終わるのがいい。
・Don't Leave Me Now
作曲:厚見玲衣 作詞/編曲/プロデュース:WETTON JOHN
という布陣があまりにも凄いなんせキング・クリムゾンのメンバーの一人だからだ(名盤redを手掛けた時期のメンバー)こういった組み合わせが可能になったのも一重に海外展開がある程度成功していたのかもしれないと推測する。楽曲についてだが、やはりアクが強いですね。シンセとベースがメインでギターが抑えめていうところは作曲者が厚見玲衣で、編曲をしたのがベーシストだからかといったところ。この曲のシングルは3週間、全英チャートのtop100圏内に入り、最高位83位という成績を収めました。
五作目
ViBe
・helter skelter
かのビートルズの名曲をカバー。
当たり前ですけど原曲と比べるとロックテイストが加えられてますね。それ以上にキーボードの主張が強いところも聴きどころ。しっかりとVOWWOWの音楽に仕立て上げているところは流石といったところ。
・TURN ON THE NIGHT
これはVにあった
some where in the Night
の変化球ですね。作曲が厚見玲衣なので、節がところどころ決まっているとでもいいましょうか。
・Rock me Now
おそらく最もポップで歌いやすいであろう楽曲(まぁvowの楽曲のカバーとかレベルが高すぎて誰もできないが) beat of metal motionの rock meのリメイク的ポジションの楽曲です。全体的にポップさが目立つのが捉えようによりますが、守りの姿勢と感じてしまう自分にとってはVOWWOWの作品群の中では一番平凡と感じます。しかし本作の英語版は全英アルバムチャートで75位という結果を残しているので、ある程度の評価は漁れていたと考えてもいいでしょう。
六作目
Mountain top
本作はボブエズリンといった巨匠をプロデューサーに迎え、アメリカ市場進出をはかったわけですが、その点不十分であったがために空中分解し、バンドは解散し人見さんは英語教師になり、、と現在に至るわけですが、Black Outや、I'm Gonna Sing The Bluesなどの名曲が収録されており、それぞれアプローチが違うもののそこに出てる歌い方などには驚かされるものばかりです。
ではpains of loveやshock wavesほどの重々しさはなく、どちらかというと明快なまでのブルース楽曲ではある。それを圧倒的な響きをもつビブラートやハイトーンが味わえるという意味で、人見元基の歌の真の魅力ここにありという内容になっています。
その意味では
も近いテイストですね。
こちらは山本恭二作曲。流石というべきか、人見元基に何を歌わせたらいいかをわかっている気がする。ブルースにこそ本質があるというのをおそらく山本さんもわかっていたのであろう。そのくらいこの曲は意識的なまでに人見さんの表現に掛けているといって過言ではない。
・Love Lies
これは Love walksのリメイクですね。これはこれでいい気もするのですが、やっぱりLovew walksの方が優れていると思います。より過激になっているという意味ではliesの方がっていうこともできますけど。まぁ、好みの問題ですね。
move to the music
この曲はSlaghterのカバー楽曲です。
しかし原曲を食っているようなレベルでVOWWOWのカバーの方が素晴らしい出来ですね。
・Black out
先述した通り本作はアメリカ市場を狙っていたこともあり、楽曲にもローカライズされている節がみられ、本楽曲はまさにといったところ。アップテンポでわかりやすいギターメロディが一貫されているのを踏まえるとこれは「アメリカ人受け」する曲として作ったんだなということがよく分かる。
ここまでVOWWOWのアルバムを簡単におさらいました。
次に人見元基の歌唱はなぜ凄いのか。散々言っているようにバックボーンがソウルやブルースのジャンル畑だからというのが私の結論です。意外と思われるかもしれませんが下地がロックばかりでは迫力や高音域の確保はできるものの、声のビブラートにディストーションをかけるいった、人見元基の意外の日本vo.は誰もできないような技術が成立しているのもここが大きい。
では具体的に誰の歌唱法がベースになっているのかを挙げます。
ロバートプラント(LED ZEPPELIN)
ジャニスジョップリン
スティーヴ・マリオット(humble pie)
CCRのジョン・フォガティ
こうしたアーティストが歌い方のいいところを取った歌い方をするからこそ、総合威力が海外のアーティストにも匹敵しうるのです。
レイチャールズのような中低音の表現力+プレスリーの低音の深み+スティーヴマリオット・ジャニスのような声の張り方+ロバートプラントのシャウト=人見元基
このように図式かすると低音になると厚みというのが出やすいというのは誰もが納得できるであろう。そこに、最も影響をうけているであろうトムジョーンズ
に代表される迫力ある息遣いやイアンギランのような声量が加わることで、より人見元基の歌の巧さというのに磨きがあります。そのようにして初めて生まれる表現が人見元基の歌唱の奥深さ(ナチュラル・ディストーションのシャウトやハイトーンなど)なのです。英語の発音に関してですが、歌い方よりも、東京外国語大学を卒業されている方なので、学術的な影響も大きのかなと思ったりします。
これらを通した上で
などを聴きなおすと文脈をしっかりと感じることができます。
そしてなんとRock'n Roll Standard Clubにゲストで参加した時に歌ったのがMOVE OVER とCOMMUNICATION BREAK DOWN
なんとギターがB'zの松本さんというこれまたビッグな方。興味のある人は是非買って聴いてみてください。
現役を退いた後も、GENKIという名前でボチボチ活動されており、YOUTUBEに転載動画が上がっているので、引退後の歌唱が聴きたい人はチェック。
一推しはこちら
サムネのインタビュー記事も全体的に非常に興味深いというか、原点を知ることができて面白くよめましたし、今回記事を書くにあたって、一部参考にしました(30万部売り上げとか).以前まではYAHOOブログからPDFで閲覧できましたけど、サービスが終了したため今では閲覧不可です.内容が気になる人は私のアカウントに一報をいただければ。
以上,VOWWOWと人見元基さんについてでした。当ブログを開設して間もない頃
なんて記事で一度は紹介していたので、今回ネタとして扱うのは二度目になるんですが、今にして思えば出すのが早すぎたのもあり、結果過去記事として埋もれてしまっているのでここで今一度VOWWOWを振り返る意味も込めて書きました。
正直VOWWOWを知っている人の方が珍しいし、おっさんホイホイみたいな記事になりましたけど未聴の方にはこのバンドの素晴らしさ、人見元基というvo.がいかに凄い人物であったかは伝わったと思います。なのでこの記事を機に音源も聴いて、いろんな人に広めていってください。