gyosonというか、トーマさんが再始動するので、このタイミングで出したら結構いろんな人が見るのかなと思い。というより、単に本アルバムが好きで偶々未使用ネタだったので使ってしまおうというのが一番の動機ですけれど。さして大したことは書いていないので、初見の人はあまり期待しなことをお勧めします。
1.潜水艦トロイメライ
強烈なイントロで始まる当楽曲。トーマさん自身もアルバムの最初の曲という点を意識して作った模様。トーマ節が好きというか、マダルカルトが好きな人は好きになれるくらいの混沌さが、当アルバム全体を通して見ても、かなりある。a,bメロからサビへと全く毛色の違う音が鳴ってるのがいい。「そこに愛はあった〜」でサビかと思いきや、「栄光の対価 禁制文明〜」のところでまた一つ仕掛けてくるのが流石(トーマさん自身、意識して二回サビを入れている)。間奏のギターから二番につなげる展開で1m48に持ってくるのもthe トーマさんって感じがします。そしてラストの盛り上げで「想像を超えた、時代を超えた 幾万里深い底に残された想いは 仄かな声をあげた。そして、また、深く眠ってしまう」の語感の良さとそれにマッチした音の構成。とにかく全てが変わってるなーと思える楽曲。
2.リベラバビロン
バビロンのリプロダクションなので、バビロンを聴いていないとどんなもんかというのがわからないので、未聴の人は、まずそちらを聴いてください。歌詞も一新されていますし。バビロンでは「タタッタ タタッタ」のような裏打ちが入っていたのが、こちらでは入っていることには入っていますが、少しローテンポで、サビへ向かうにあたりでアッチェレランドになっていく。ここら辺はいい編曲の仕方かと思います。そして二番へと入いるんですが、歌詞の語感が本当に良い。
そして「流れ流れる人の海〜」の前のベースのつなぎもいい。「愛されたいというこの街の願いは〜」からの盛り上げておいて、最後はギターで改め直した後、あのアウトローに持っていくのもこれまた良い。トーマさん本人はアルバムの世界観に合わせるためにメロディーラインと歌詞の切り口を変えただけであり、これが最新版だとか、そういう意図はないと言っています。
3.サンセットバスストップ
これはトーマ節が顕著に出ている楽曲かと思います。
gyosonであげていた動画内では、これが一番近いですね。2014年の冬のものなので、まだトーマの名残があるというのは期間的にも頷けます。
1,2に比べたら、そこまで変わった要素はない普通の曲かなと。
トーマさんは、当楽曲を、タイトルから浮かんだ世界観で書いているとのこと。
4.魔法少女幸福論
そもそもこの曲の衝撃というのは、リアルタイムでトーマさんを追っていないとあまり分からないところがあるんですけれど、とにかく本記事でも終わりの方に書く「ヤンキーボーイ・ヤンキーガール」のような曲を作った上で出てきた楽曲と考えると、どんだけ作風というか、引き出しがあるんだとと、思った人も少なくないはずです。魔法少女なんて洒落たタイトルからもそれは察せるかと思います。
また、前半と後半で明らかに違う瞬間があるものの、結局最後は最初の感じに戻るのが、この楽曲の魅せどころ。この楽曲、確かりゅーせーが一部手がけているんですけれど、イヌカレーを真似た(というより、13年時点での魔法少女のイメージは間違いなく、まどかマギカなので、そういう意味で当楽曲はそれらに近い世界観に寄せて作っているのは明白なので、悪い意味ではないです)動画編集が入って、mvと曲、そしてそれを担当する人選、全てにおいてリンクしているので、本楽曲はmvと付きの見ると、一層楽しめます。トーマさん自身が、魔法少女ものが好きで、なおかつそれらは日本独自の文化だと思い、継承の意を込めて作られた楽曲。最初の段階では、すべてシンセで作られていたようです。
5.envy cat blackout
こちらはエンヴィキャットウォークのセルフリメイク。これも歌詞を少し変えていますので、エンヴィキャットウォークを聴いてからこちらを聴いてください。バビロンのリメイク「リベラバビロン」に比べて、原曲に近い。後でやってるピアノがすごく下地を支えている。全体的にピアノが輝いているというより、あまり目立たないように施されている気はするが、よく聴けばしっかりと凝っている作りになっているのが目に見えてニヤリとしてしまうところ。そして一瞬だけピアノを全面に出すあざとさ。アウトローなんてほぼピアノのメロディがなければ成り立たないと思うほど激しい主張をしています。
6.九龍イドラ
これも2,5ほどではないが、リメイクされている作品。やっぱり何と言っても間奏のベースがかっこいい。でもここはレトロの方がかっこいい。サビから歌詞が変わってます。変わっているのに、同時に聞くとしっかりと合わせていくのが徹底している。そこまで大胆な改変はない。本作の魅力はなんといっても体言止めの歌詞の流動性。この言葉遊び的感覚とベースの掛け合わせこそ本楽曲の本質だと私は思う。
7.廃景に鉄塔、「千鳥」は田園にて待つ。
当時、クロスフェードで、歌唱:トーマ が出た瞬間に「これはハチと同じルートでシンガーソングライターデビューか!!」と思い、それが外れとても落胆したほど、トーマさんが歌っても、なんら違和感のない曲に仕上がっていた(ハチ的に言うなら、ハチ楽曲に区切りをつけたゴーゴー幽霊船的な位置)。
当然ではあるが、ボカロとは違う作り方がする楽曲。が、しかしそれでもしっかりと主体であるトーマ節は一貫していて失われていない感じが最高。gyosonで一番いいのは、個人的にシンガーソングライター路線。
8.オレンジ
トーマ楽曲で一番再生回数が多い楽曲であり、1-7トラックとは打って変わってバラード色の楽曲。
これはトーマさんに限ったことではないですが、アーティストの曲って果物の名前ほど名曲だったりしますよね。あれなんでなんでしょう。米津のlemonとか、チェリー - スピッツとか。曲がどうこうと言うより、こう言う曲も作れんだって言う作風の広さを表したナンバリング曲です。
9.未来少年大戦争
リメイクだったり、ニコ動に投下されているものが意外に多い中、アルバム収録曲限定という意味で数少ない楽曲の一つ。がしかし、そこまで強烈なものはないと思います。
未来少年大戦争 - トーマ
10.ヤンキーボーイ・ヤンキーガール
トーマ楽曲で人気の高い曲という点と、よりトーマらしいという意味ではこちらが一番人気が高いと言えるんではないでしょうか。イントロからトーマ楽曲の中でもかなり異色な始まり方をしていますね。あまりタイトルや歌詞は見ていないことが多いのですが、このヤンキー(ボーイ、ガール)はすごくセンスあるなと思います。例えば「少年少女〜」のようなありきたりなタイトルだったらちょっと萎えるとじゃないですか。トーマさんだからそういったことはあり得ないんですけれど。この楽曲は音源ではないんですけれど、歌い手がくわえたちょっとしたアレンジが入っているのも結構気に入っています。そらるとか。こちらも、魔法少女幸福論と同様に、「ヤンキー」というものが、アイコン化できる日本の文化という発想から生まれた曲。現実だとささくれているが、漫画や映画だと「ヒーロー視」されるようないい奴が多い。そういう現実的な点より、エンタメ的要素を抽出して作られた曲です。一番いいのはラストの歌詞。これぞトーマの作詞家としてのうまさ奇抜さです。
11.クジラ病棟に或る前夜
月面廃墟とか、式日の繭とかそっち系。だからeureka時代のトーマさん風味の曲かと。2m18らへんがちょっとハチっぽいのもポイント高い。オレンジも恋人ランジェみたいなところあったし、第一に、ハチ系譜のボカロp(当然根幹となる毛色は違うが)なので、やはり少し意識しているところはあるだろう。
12.アザレアの亡霊
人では絶対に歌えず、歌えたら、それは加工を施したものであると、あの鋼兵さんが全盛期でまだ人気と歌唱がすごいと言われていた時代に称した
ほど高いキーの連続で、歌い手殺し(そもそもボカロ楽曲なので、歌い手云々関係ないじゃんと言われたらそこまでだが)の楽曲。当楽曲のイラストを見て、東京喰種の金木を連想する人は少なくないのではないか。曲としては悪くないが、強烈な楽曲群が前半に来すぎてあまりパッとしないとのが正直なところ。当アルバムを作る際に、一番最初に作れた楽曲。
13.心臓
心臓
- トーマ
- J-Pop
- ¥204
ラストにふさわしいイントロっていって通じる人が何人いるだろうか。そしてトラック7同様、作曲者であるトーマさんの歌唱。二曲もセルフ歌唱が入っているのだからと、メジャーデビューを当時100%期待していた自分からしたら、残念な気持ちにさせる一方、「離れてしまっても、殺されてしまっても、どこかで生きているからね。」の一言で「あー、トーマさんは今もどこかで生きているんだなー。復活せんかなー」と思えることができたので、そういう意味ではとても希望が持てた楽曲であり、自分にとってとても大事な曲です。だからこそ、gyosonでパッと存在を出してきたときの嬉しさといったら、もう感無量でした。「慰めあっても、ボロボロになっても〜」は、トーマさんの声だからこそ感動できる場面だと信じて疑いませんね。トーマさん自身、一番伝えなければならない気持ちがあったがゆえに、自身でヴォーカルを担当していますし、歌詞が全てともいっている楽曲でもあるため、トーマさん本人からしてもかなり特別な曲の模様。最後に心臓の鼓動が入っているのも高評価。流石。
総評。アマゾンレビューでも結構言われていることなんですが、やはり楽曲の引き出しがとても多いアルバムだなというのが、第一印象です。本作は著者からしたら生涯ベスト100ぐらいに食い込むくらいの評価はしているほどの名盤で、VOCALOID歌唱がメインで売り出しているものではあるが、それら抜きで、全くボカロ楽曲について無知な人にも、迷わず薦められる。そんな一品です。ダブルの意味で。あとボカロというアングラな世界の中でもここまでの作品を作れる作曲家は相当稀有なので、その意味でも本作は音楽が好きであれば必ず聞くべき「必修名盤」です。
ここまででかい才能を持っていたからこそ、本作が出た後すぐにメジャーで勝負して、そして、成功を収めて欲しかったですね。一部の人はご存知でしょうけれど、
ギアナの一員としてやっていく世界線もあったわけで。それがなぜ辞退というか、(彼にとって音楽が全てではなかったことから日の目を見ることはありませんでした)っていう風になってしまったのか。人にはそれぞれ様々なことがありますからあまり考えないほうがいいのですが、とても疑問です。本作から6年経った今、復活というか、gyosonという名で何かしらのアクションがあるのはファンとしてはとても嬉しいことに変わりはないですが、その一方「今更かよ」っていう気持ちも少なからずあります。こんなことをグダグダ書いても、過去のことなので、どうしようもないですが。今は名前をgyosonと改めた、零に還った世界(言いたいだけw)でどうするかを見守りたいです。
最後に、長々と書いたこの感想文で、トーマさんの魅力が1mmでも伝わればとても幸いです。
アルバム点数は9/10です。
アザレアの心臓 - トーマ
参照記事
news.dwango.jp
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